【ルデン5ー7】巨大な宝石
※次回エピソードで【エンドルート】の分岐があります。
会話の内容が変化するため、目次から
【好感度が50以上ある場合はハッピーエンドルート、50以下の場合はバッドエンドルート】
のシナリオ(エピソード)に飛んでください。
───────────────────
───翌朝。
拠点を出立した私たち一行は、ついに目的の遺跡へと到着した。
遺跡の入口には左右に巨大な騎士を模した像が建てられていて、大きな扉は固く閉ざされている。
先に到着していた王宮魔導師が、扉の周りで試行錯誤していた。
「待たせたな」
ストレリチア殿下の到着に、王宮魔導師たちは慌てた様子で出迎えた。
「殿下! 申し訳ありません、やはり私どもではビクともせず……」
「そのようだな。ベリル、来てくれ」
ストレリチア殿下に呼ばれ、入口の前に誘導される。
ストレリチア殿下の次の指示を待っていると、殿下は気まずそうに口を開いた。
「……あー、一応聞くが、ルデンに手を出されていないよな?」
「っ!?!!?!」
想定外のことを尋ねられ、ゲホゲホと咽せてしまう。
すると隣に立ったルデンが私の背中をさすりながら、はぁ、とため息混じりに言った。
「兄上……ベリルに変なことを聞かないでください。出していませんよ」
「…………お前たち、朝同じテントから出てきたと思ったんだが……」
「はい。ベリルを抱きしめて眠ることができたので、とても暖かかったですよ」
「〜〜〜!?!」
ストレリチア殿下に目撃されていた恥ずかしさに続き、さらっと白状するルデンのせいでさらに居心地が悪くなった。
「……俺がお前を焚き付けた手前、手を出していても文句は言うまいと思っていたが───我が弟ながらよく耐えられたな」
「はい。おかげで寝不足です。生殺し、とはあのような状況を言うのだと身をもって痛感しました」
ニコリ、と微笑むルデンの笑顔に凄まじい圧を感じる。
「そ、そうか。よく耐えた。───ではベリル、この扉の装飾に己の血を流してみてくれ」
「は、はい」
ストレリチア殿下から短剣をお借りして、手のひらを少し切る。
私の血が扉の装飾と共鳴して、扉が淡く光り輝いた。
「よし、そのまま魔力を流してくれ」
言われた通り、魔力を流していく。
普通の人間なら昏睡してもおかしくない量の魔力が遺跡の扉に吸収されていった。
それを見ていた王宮魔導師たちが愕然としている。
「な、なんと膨大な魔力…………」
「……あ、ああ。話には聞いていたが、ここまでとはな。ベリル、身体は大丈夫なのか?」
「はい、まだ全然。使った魔力は一割くらいですので」
「一割!?!」
私よりも、その話を聞いた王宮魔導師の方が倒れそうになっていた。
遺跡の扉がギギギと重い音を立てて開く。
どうやら私は役目を果たせたようだ。
ルデンの手が私の腰に添えられる。
「ベリル、お疲れ様。協力してくれてありがとう」
「いいえ、貴方の役に立ててよかったわ。……ところで、遺跡の中には巨大な宝石があって、それが人工精霊のエネルギーになるという話だったけれど……何故人工精霊にエネルギーが必要なの?」
「ああ、人工精霊の加護の力は、永久に使えるという訳では無いんだ。加護の力は時と共にどんどん薄れていく。僕の魔力も昔と比べるとだいぶ弱くなってしまっていて……。そんな人工精霊の加護のエネルギーを補うべく、遺跡の宝石の力が必要なんだそうだ」
「なるほど……」
しばらくして、周辺の警戒と外で待機する兵の誘導を終えたストレリチア殿下とその側近の兵が戻ってきた。
「ここにいる王宮魔導師は、私の兵と共に遺跡の調査に向かえ!」
殿下が命じると、一同「「はっ!」」と応じ、遺跡の内部調査が始まった。
「ルデン、お前たちはどうする。拠点で待っていても構わんが」
ここはルデンの判断に委ねようと思い、彼に視線を移す。
すると、同じく私に視線を向けたところだったルデンと目が合った。
「僕も宝石の調査に向かいたいのだけれど……」
なんとなく、彼ならそう言うと思っていた。
「ええ、構わないわよ」
「本当かい? ありがとう、ベリル! 兄上、僕らも同行してもよろしいでしょうか?」
「あぁ、もちろん。では、お前たちは私と共に行動を。ベリルのことはお前に任せる。しっかり守ってやれ」
「はっ。ありがとうございます」
私たちはストレリチア殿下と共に遺跡の中に侵入する。
中は、遺跡と言うより神殿のような造りだった。
神殿の内部はさらに扉が存在し、無数に道が分かれているようだ。
「……くっ、これではまるで迷宮だな。一つずつ潰していくしかないか───」
「…………?」
「ん……ベリル? どうかしたかい?」
「あ……ううん。なんだかあっちの扉に呼ばれた……? ような気がして……」
無機物に対し『呼ばれた』とは、表現がおかしいのかもしれないけれど。
けれども何故だかそんな感覚があったのだ。
「……ふむ。入口も限られた者しか開かない仕組みになっていた───選ばれた者を導く何かが、この中にはあるのかもしれない。ベリル、お前が感じたものを頼りに、道案内してくれるか?」
「はい、分かりました」
私が感じたままに、神殿の深奥へ進んで行く。
いくつもの扉をくぐると───直感的に、次が最後の扉だと確信した。
おそらくそこが、神殿の最深部なのだろう。
「この扉の先に、巨大なエネルギーを感じます」
「エネルギー……もしかして───」
ルデンとストレリチア殿下が顔を見合わせた。
「あぁ、目的の宝石かもしれない。中へ入るぞ」
ストレリチア殿下の護衛の兵が先行し、最後の扉の中へと入る。
───そこには、空間が広がっていて、その宙には重力を無視した巨大な宝石が浮き上がっている。
宝石の輝く光が、床や壁、天井に反射して神秘的な光の屈折が起こっている。
「綺麗……」
その光景を目の当たりにして、目を見開く。
意識せず、賞賛の言葉が口から漏れ出てしまうほどに、それは周囲の誰もを圧倒させていた。
「これは……圧巻だな……」
「はい……ですが、想像以上の大きさですね……」
巨大な宝石は中央部分が丸くカットされていて、中央からは放射状にカットされている、いわゆるラウンドブリリアントカットと呼ばれる形だった。
厚みもあり、人一人が余裕で入れそうなくらい大きい。
よく見ると、宝石の真ん中がくり抜かれていて、人が入れそうな窪みがあった。
「こ、これはすごい魔力エネルギーだ……! 早く調査を……!!」
「……っ待て! まだ不用意に触れるな!」
調査のため同行していた王宮魔導師が、先走って宝石に触れてしまった。
───その時だった。
───ゴゴゴゴゴ。
神殿全体が大きく地響きを鳴らしながら揺れだしたのと同時に、宝石が一層輝きを放つ。
「……くっ!」
「なっ……」
宝石の眩い光が、光の粒となって私たちの方へと飛んできた。
その光は私のみを認識し、身体にまとわりつく。
「……!?」
私の身体は淡い光を放ち、次の瞬間───両足が地面から離れた。
「……っ!?」
私の身体は宙に浮き上がり、宝石に引き寄せられて行く。
「ベリルッ!!!」
「ルデン……っ!」




