【ルデン5ー5】ルデンとストレリチア
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ベリルが立ち去ったのを見計らって、ストレリチアは先ほど音のした茂みの方に視線を向けた。
「────ルデン」
茂みに向かって名を投げると、その名の人物が木の後ろから姿を現した。
「…………」
「……ふっ、立ち聞きか?」
「……気付いていましたよね、最初から」
「ふ……まぁな」
偶然その場に居合わせたルデンは、立ち去るタイミングを失ったまま木の裏で息を潜めていた。
それに早々に気が付いていたストレリチアは、最初はルデンに対して悪戯のような気持ちで、ベリルの本音を聞き出そうと話をしていた。
実際ベリルの本音はストレリチアも、もちろんルデンにとっても想定以上のものだった。
「 ───にしても、お前自ら心を寄せる女がいるとは……正直驚いたが、彼女なら頷ける」
「…………」
「とても心優しい、芯の強い女性だな、彼女は」
「…………はい、本当に」
「…………ルデン。何を迷っている?」
「え……」
「想い人にあれだけ言わせて、お前は何も告げないつもりか?」
「しかし……僕は────」
ルデンがその先の言葉を口にすることはなかった。
しかし、ストレリチアにはその言葉の続きが分かっていた。
その立場も、責任も───ストレリチア自身が経験してきたことだ。
「あんな良い女、逃すなよ。グズグズしてると、他の男に横からかっ攫われるぞ。……俺のようにな」
ストレリチアは目を伏せ、自身の昔の出来事を頭に浮かべた。
決して色褪せない、甘く、苦い失敗談。
ストレリチアは自分のような後悔を、弟には残してほしくなかった。
「 ………兄上」
「───安心しろ。王位は俺が継ぐ。だからお前は────自由になれ」
「……っ!」
王族として生まれた限り、その立場や責任からは、一生逃れることはできない。
それが誇りだと思うこともあれば、時には自身が想う個人よりも、国や民を選ばなければならないことだってある。それは王になろうがなるまいが、変わらない事実だ。
しかし、それでも───とストレリチアは思った。
「ふっ、俺はお前よりも優秀だからな。王には適任だろう? ……あー、こういう発言が不仲説とか言われる原因か?」
場を和ますつもりで言ったただの軽口だ、とストレリチアは誰に聞かせるでもない弁明をした。
この場に兄弟の仲を疑う者はいないというのに、とルデンは可笑しく思って吹き出した。
「……ふふっ、そうだね」
その笑顔がストレリチアにとって、昔のまだ幼かった弟の姿と重なった。
「……ふ。さっさと行け。明日は朝早いぞ」
「うん───ありがとう、リチア兄さん」
昔のように愛称で呼んでくれた弟に驚いた表情を見せたストレリチアだったが、次に「ああ」と返したその表情はとても優しく慈愛に満ちていた。
王子としてではなく、久々に兄弟で話ができたことに、ストレリチアは嬉しく思った。
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