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お助け『魔女』になりまして  作者: ふつうのひと
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橘が前で教鞭を取っている間、生徒達が静か・・・かと言えばそうでもなかった。


筆談だったり小声だったりで話していて、授業は意識半分であった。


そして表面上は真面目に授業を受けていた桃香もその流れに巻き込まれる。


隣の桜庭と教科書を共にしていた桃香は板書しながら、桜庭が自分の匂いを嗅いでいると気付いた。


「くんくん、くんくん・・・」

「えっと、桜庭さん・・・?」

「あっ、ごめんね。なんか、桃園さん良い匂いして」

「そ、そうですか?」


と答えた所でふと思い出す。南條から桃の香りがすると言われたことを。

自分ではまったく分からないが、他人は桃の匂いを感じる不思議な現象である。

今のように肩がくっつくような距離感でなければ気付けない点から、そこまで強い匂いではないと思われるが人に嗅がれやすい体臭というのは何とも恥ずかしいと感じていた。


「香水、じゃないよね?先生に怒られちゃうし」

「は、はい。特にそういうのは・・・」

「うーん、なんかズルい。スンスンスン」

(凄く綺麗で頭も良さそうなのにこんなに良い匂いなんてめっちゃズルい!)

「えぇ・・・」


こうして桃香の匂いを嗅ぎ続けた桜庭は、授業の内容をほとんど覚えていなかった代わりに桃香の匂いを覚えた。


「ではここまでです。日直」

「きをつけー、れいー!」


50分の授業が終わり、挨拶が終わった瞬間にほとんどの女子生徒達が桃香を包囲した。


「桃園さん!趣味とかある!?」

「桃園さん、好きなユーバーいる!?」

「桃園さんどこから来たの?」

「桃園さん」「桃園さん」「桃園さん」


「あっ、あの・・・」


周囲から質問の集中砲火を受けアワアワしていると、隣にいた桜庭が助け舟を出した。


「まあまあ落ち着いて。桃園さんが困ってるよ」

「あっ、あやちゃん隣の席だからって余裕ぶってる!」

「あやちゃんずっと桃園さんになんかしてなかった?」

「桃香ちゃんスポーツとかやってる?」


助け舟が蛮族に乗り込まれて奪われた。

だが、皆の意識が舟の方に向かったおかげで心を整える事ができた桃香は冷静に質問に答え始める。


「スポーツとかはあまりやったことがありません。趣味は一応料理になるでしょうか?動画は好きなジャンルであれば見るという感じなので、あまり配信者まで好きというのはいませんね。出身は東京寄りの千葉県になります。この髪型はその、姉にやってもらったものでして、自分で出来るかは少し自信がありません。ありがとうございます、そちらも可愛らしいと思います」


アワアワしながらも全ての質問を聞き取り、それら全てを何となく覚えた桃香は的確に答えを返していく。

その聖徳太子の如き偉業に女子のボルテージは爆発し、さらなる質問と雑談を生み出してしまうのだった。


男子達はそんな一団に対して少し残念そうな、しょうがないかという視線を注ぐのだった。

(一部の強かな男子は聞き耳を立てて情報収集に努めた)


それから国語、理科、英語と授業は進み、その隙間の時間では入れ替わりしながら常にコミュニケーションを取り続けた。

流石に2回目の休憩からは精神ゲージを保たせるのが辛く、早く授業来てくれと願うのだった。


その授業では主に桜庭から攻められ、国語の授業までは「桃園さん」呼びだったのが次の授業からしれっと「桃香ちゃん」呼びになっており、とにかく桃香の情報を得るために話しかけられ続けるのだ。


これは彼女達の中で桃香の存在が大きくなっているのが原因である。


まず綺麗で可愛いというだけで上位カーストなのは確定であり、更に算数、国語、理科、英語の授業にて当てられた問題を全て正解している点から頭が良いとも判明し、休み時間の質問攻めから漫画アニメゲームにもある程度通じていると分かった。

桜庭がつい漏らした良い匂いがするという情報も相まって、仲良くなりたい子No.1の地位に据えられたのだ。


意識していたりいなかったりするが、自分達の仲間に入れたいという欲望もある。


だから一番近くにいる桜庭はとにかく攻めまくるのだ。


(そういえば小学生の時ってこんな感じだっけ・・・。いやもう少し静かだった気もする。これだと観察もろくに出来ないなぁ)


このせいで桃香は学校に通っている目的を遂げられずにいる。

何故小学校に入学したか?

ヤマトをサポートするためである。

だから勿論、彼女が配属されたクラスにはヤマトがいる。


ヤマトは桃香の方を気にしてたまにチラチラ見ているが、本来は桃香がヤマトを見ているべきなのだ。

だが小学生社会に入ってしまった以上、その中での関係性を疎かに出来ない桃香の性分上、桜庭の意識を授業の方に向かせるように穏やかに注意するのだった。


(しかし、最近の小学生って結構ちゃんと英語学ぶんだねぇ・・・)


いや、桃香本人もノスタルジーに浸りながら授業に集中しているので、桜庭だけの問題では無いかもしれない。



望月学園初等部は朝の4限が終わるとお昼ご飯になる。

校内で作られた給食をそれぞれのクラスに給食係が運び、先生の監視のもとで配膳を行う。

決められている給食班で机を合わせて食べるルールになっており、桃香は桜庭が属していた班に加えてもらうのだった。


「桃香ちゃん嫌いなものある?私はピーマンとトマトが嫌いなんだ」

「私は特にありませんね。ただ、あえて言えば味が濃すぎるものでしょうか」

「濃すぎるもの?例えば?」

「白子やすごく脂っこいラーメンなんかでしょうか」

「あー、確かにそういうラーメン嫌いかも。でも白子って何?」

「えっと・・・魚の部位の一つのようなものです」

「へー」


小学生女子に対して、「魚の精巣」と言うのは躊躇われたので濁した。

決められた順番に従って給食を受け取った桃香が席に着いて周りを見ると、同じ班になった子達から見られていることに気付いた。


「えっと・・・?」

「お、おれ、竹内!よろしく、」

「僕は丸山、です」

「あの、わたし、鈴木って言います、お願いします!」

「そういえば名前を伺っていませんでしたね。改めまして桃園です。よろしくお願いします」

「・・・あ、私は」

「桜庭さんのことは十分に存じてますよ」


授業中の雑談で桜庭の情報は十分に得ていた。


桃香に対して少し引き気味ではあるが興味津々で尋ねてくる3人+1人と楽しく食事をして、お昼休みに入った。


ちなみに、久々に食べた給食は非常に美味しく頂けるものであった。

(多少の当たり外れはあるけど、給食って基本美味しいよねぇ・・・。コンビニ弁当より美味しい)



30人分の名前を考えて覚えていられるかは分からない

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