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お昼休み。学生にとっては最高に自由になれる時間。やんちゃな男の子は食後ということを感じさせない速度で遊びに行くと言われている。
4年3組にもそういう男子は存在し、ボールと何かの袋を持って数人が駆け出した。
(ああ、流石小学生男児。キラキラした顔で駆けていくなぁ)
桃香はその姿を見ながら穏やかな感想を抱き、自分も準備しないとなとランドセルから袋を取り出す。
授業中に見つけた時間割から5限目の授業は把握しており、体育である。
幼い頃はクラスで適当に着替えていた記憶があるが、昨今の風潮を考えると更衣室でないと許されないのだろう。
袋を持った桃香は桜庭に尋ねた。
「桜庭さん、更衣室はどこでしょうか?」
「えー、もう着替えるの?もうちょっと後で良くない?」
「だよねー。いくらジャージがあるからって、寒いのは寒いよぉ」
(ああ、確かに今から着替えて校庭に出ると体が冷えるか)
寒い感覚が久しい桃香は自分のミスに気づいて、体操服が入った袋を膝に置いて女子たちの会話に混じった。
合計30分の休憩で聞かれたことに全て答えた事でもう質問攻めにされる事はなくなり、雑談が出来るようになっていた。
「今日の体育って何をするのでしょうか?」
「さぁ?マラソンは嫌なんだけど」
「球技大会の種目が決まってたらそれじゃない?」
「そういえば球技大会あったね。楽な奴だといいなぁ」
「球技大会?種目が決まっていないんですか?」
事前に存在は聞かされていたが、種目が未定だとは思っていなかった。
詳細を尋ねると知る限りを教えてくれた。
「3年生から参加出来るんだけど、種目によって結構変わるそうなんだよね」
「私のお姉ちゃんが言うには、野球が一番楽でドッジボールが一番キツイらしいよ。野球だと学年を超えてクラス単位でチームを作るけど、ドッジボールだとクラス毎にやるから面倒だって」
「バスケとかはどうなんだっけ?」
「それも学年混合だけど色んなチームを作るらしいよ?」
「暖かいと良いなぁ」
「結構色々な種目をやるのですね」
「そだね。応援する方は楽しいよ」
「先輩達とかカッコイイよね」
かなり本格的な球技大会であることが分かり、自分はどう参加すべきか考えさせられる。
(・・・まあ、女子としてほどほどに参加すれば良いか。不良生徒と思われるのも困るし)
スポーツ大会で活躍しても高嶺の花案件には影響しないだろうと考え、教師陣の印象を悪くしない方面で動こうと決めた。
そしてそろそろどかしたいので後ろに声を掛ける。
「あの、鈴木さん?そんなに良いものでも無いと思うのですけど・・・」
「そ、そんなこと無いよ!」
一緒に給食を食べた鈴木が桃香の髪の毛に埋もれていた。
「柔らかくて良い匂いがして、こんな羨ましい髪、ずっと触っていたいもん!」
「ずっと嗅がれるのも少し恥ずかしいというかキツイと言いますか・・・」
「ほら、すずちゃんアウトー」
「あぁ~」
挨拶の時には内気な子かと思ったがどうやらそれは緊張していただけのようで、桃香の髪にグイグイ来る変態(微)に化けていた。
更にその鈴木のせいで球技大会の話は桃香の話へと変わった。
「確かに桃園さん良い匂いするよね」
「香水?」
「いえ、特にそういうのは付けていませんが」
「この匂い嗅いでると落ち着く〜」
「枝毛も無いし・・・このあとの着替えが楽しみだね」
「いえいえそんな・・・」
まだ女性としての成長が始まっていない子もいれば、始まっている子もいる中でも互いの成長具合は気にされており、顔の偏差値がトップクラスの桃香の体型は皆気にしている所だった。
中には既に創作に目覚め、その資料として桃香の体を見ようとしているものもいる。
テクノロジーによって子供達の耳年増が加速した結果、小学4年生にして既に成人女性の階段を登り始めていた。
ある意味一番子供なのが桃香である。
「そういえばこの前ユートブで爆裂マンがさー」
「アレまだ見てたの?毎回爆発オチってきつくない?」
「えー?粉々になるの面白いよ〜」
「そんなユーバーがいるんですね」
「桃園さん興味ある!?えっとね、色んなジャンルに手を出してるんだけど───」
すぐに別の話題に話が移ったことで桃香は安堵したが、それは間違いだったとすぐに気づくことになる。
昼休みも半分終わり、そろそろ着替えに行こうということで皆で更衣室に移動する。
更衣室は全学年共通で、2クラス分の生徒が同時に入れるように設計されていた。
何故2クラス分かと言えば、2クラス合同で体育を行うからである。つまり、桃香が着替える所を見るのも2クラス分である。
「う、うわぁ・・・!」
「桃園さん、なんか、」
「え、エロくない?なんかエロく無い?」
「あ、あのー」
それぞれ適当なロッカーの前で着替え始め、桃香も何気なく上部を脱いで肌を晒した瞬間食い付いていた。それはもうがっしりと。
「桃園さんスタイル良いーー!」
「下着大人っぽい・・・」
「日焼けの跡とか全然無いよ?」
「顔も良くてスタイルも良いって反則じゃない?コツ教えろー!!」
「ま、待って!せめて着替えを──」
四方から半裸の女児に引っ付かれたり触られたりして着替えを行えない桃香はもう、周りに(精神的に)配慮して目を瞑って着替えるなんて事は出来ず、事態の収拾に翻弄される。
「は、早く着替えないと授業に遅れますよ!」
「まだ大丈夫だって!この下着、シルクって奴?うちのお姉ちゃんのよりも高そう」
「白一色なのに地味じゃないってすごいね」
「私もこういうの付けたいなぁ」
「・・・もうちょっと時間経ってからがいいんじゃない?」
「ほ、ほら!このまま下着姿でいると風邪も引きますし!」
「私着替え終わったから変わって〜」
「あ、じゃあ私着替えてくる!腰とか私と全然違ったよー」
「どれどれ?わっ、すべすべ。今、冬なのに鳥肌立たないの?」
「スンスンスン、桃香ちゃん全身から桃の香りするし、服からも少しする。体臭が桃になるってどれだけ桃を食べればいけるの?」
「す、鈴木さん!流石に同性でもそこまでするのはマナー違反では!?」
「おお・・・とーかの胸、抱きつくと気持ちいい」
「名橋さん!?」
「あっ、下と上合わせてるんだ。桃香ちゃんブランド教えてよ。私も欲しくなっちゃった」
「姉が買ってきたので私は知らないのですがスカートを捲るくらいなら着替えさせてもらえませんか!?」
まったく収拾を付けられず翻弄され続けていたが、予鈴が鳴った瞬間に彼女達の動きが変わった。
「あっ!チャイム鳴った!ほら、桃香ちゃん早く着替えて!」
「えっ、あ、はい」
「遅れたらどうする?」
「桃香ちゃんの案内と説明でーって言えば良いんじゃない?」
「橘先生なら桃香ちゃんの着替え姿に見惚れて〜って言っても通じそうだよ?」
「それを男子の前で言うのは嫌」
「たし」
かなり強かな同級生たちに驚きと呆れが混じった感情を抱き、別の懸念を考える。
(予鈴一つでこの姿の変わりよう。ていうか私は高嶺の花としていられるの?完全におもちゃになってない?)
作戦の崩壊に不安を覚えつつ高速で着替えを終了させるとそれに対しても感嘆の声を貰い、そして皆で校庭に急ぐのだった。
高嶺の花作戦。
南條も考慮出来ていなかった項目として、桃香は慣れ親しんだ人間でなければ強気を見せることは無いというものがあった。
この小説を読んでくださっている読者の数が、生涯で知り合う人の数を上回ったと思います。
ありがとうございます。




