20 」
祝☆白い日
桃香が変身している際の名前が月光猫で決まったのに、その英語読みを悩み始めた小学生に対して「英語で名乗ることないでしょー!」と真理を突くことで迷宮から掬い上げることに成功した。
やっとデザートのバニラアイスの果物添えというおしゃれスイーツに辿り着けた南條は、上機嫌で新しい議題を上げた。
「しかし先輩がいよいよ戦い始めたなら、新しい衣装も考えないといけませんね〜、うむうむ」
「・・・は?何の話?なんで新衣装?」
「え、そりゃ覚醒イベントのための衣装必要でしょ?」
「しないよ!?」
漫画脳で語り始めた南條に対して現実を叩きつける桃香。しかし南條はその程度では折れない。
「いやいや、ありますって。先輩は無くてもそのヤマト君にはきっとあるでしょ?」
「いや、それは知らないけど・・・」
「ヤマト君が覚醒して武装とか衣装とかが変わったら先輩も変わってあげなきゃ!一人だけ変わるなんて可哀想じゃないですか!」
「完全にお前が見たいだけだろ」
桃香の真実の刃は、南條の理論武装を突き破って本体に届ける事は叶わない。
というより、単純に不都合な事実を聞かずに南條は続ける。何故なら、着せ替えがしたいから。
「その点巫女って難しいですよね〜。日本神話の女神っぽい姿が正統進化なんですかね?それともフリルとか追加します?」
「無いから。ナイナイナイ。戦っていくうちに強くなるのは普通だろうけど、そんな覚醒して更に変身するとか無いから!」
「ヤマト君がそうしたいって望んでしたら?」
「・・・まあ、それは個人の趣味というか」
漫画とアニメが好きな現代少年なら「覚醒」というのは垂涎の一場面のはず。
桃香もその可能性が大きいとは思ったが、だからといって自分まで付き合う必要は無いだろうと思い直した。
「ま、それなら仕方ありません。私も諦めます」
「そう。それでいいんだよ、お姉ちゃん」
「で、どんなコスプレします?」
「南條!??????」
結局、南條にとって重要なのは桃香が衣装を変えることだった。どうせ覚醒しても現場を見ることは出来ないのだから。
「知り合いに服飾系の人がいるから色々頼んでみようかと思いまして」
「やめろやめろ!少なくとも今じゃない!もっとこう、女性になってからするべきだ!」
「何言ってるんですか!まだ男性の感覚が残ってる間にやった方が強い羞恥が生まれて芸術点が上がるんじゃないですか!?」
「だまらっしゃい!」
どこからともなく現れたハリセンで叩かれた南條だったが、彼女はまだ負けていなかった。
「それに今の先輩は今しかいないんですよ!?これは親心、いえ姉心のようなものです。今の桃香ちゃんの可愛い姿を残す使命なんです!お母様にも頼まれてますし!」
「母さんに頼まれてるの!?」
「先程、先輩が変身した格好の写真が欲しいと言われたので送りました!」
「クッソ車の中で変身したからー!!」
自分の身の回りの女性が着せ替え魔な上にコレクターであることを尚更実感した桃香。彼女のヒットポイントはあと僅かだ。
「じゃあとりあえずメイド服と変身した姿送って考えてもらいますね」
「・・・着ないぞ」
「安心して下さい、着ます。絶対に」
「・・・家出しよっかな」
「それは困ります。私の胃袋と生活環境は先輩が握っているんですから!」
「じゃあもうちょっと大人しくしてくれよ・・・」
実生活においては弱い立場だと理解しているのにやたら強気な後輩に対して苦言を呈した。
それに対して南條はニッと笑いながら答えた。
「だって先輩なら受け入れてくれますから!神崎先輩お墨付きです!」
「あいつも余計な入れ知恵してくれたもの───」
こうして桃香コスプレ計画は正式に始動し、桃香は考えないことにした。
明後日から学校が始まるのだ。他に考えるべきはいくらでもあり、考えてもしょうがないことは考えない方が良いのだ。
次の日、入学直前の日曜は南條と二人で徹底練習、女子小学生振る舞い検定が行われた。
「はい!そこ背筋曲がってる!」
「ぐっ」
「頭上の本も揺れてる!」
「あの、南條さん?」
「手首の角度甘くなってるよ!手のひらは真下!」
「遊んでるよねぇ!?」
今の桃香の格好は、買うだけ買ってまだ着たことのなかった膝上スカートに白シャツと何故かあったルーズソックス、頭に桃香が買ったレシピ本を載せ、両手は体の後ろで手のひらを下に向けながら組んでいるというものだった。
顔にはパンのおまけシールが貼ってある。
「遊んでませんよ。全部必要な振る舞いです」
「ルーズソックス履く小学生なんていないでしょ!!あと本を頭に載せて歩く練習をする小学生もいないし、顔にシール貼る小学生がいるかぁ!!?」
「ルーズソックスは私の目に付いたので履かせただけです。他はいますよ」
「嘘つけ!」
怒鳴りながらも頭上の本が落ちない点は流石桃香と言ったところか。
「本に頭を載せて歩く訓練をする小学生なんてゴロゴロいます。えぇ、最近は分かりませんけど、私の頃は漫画の影響でちょっと流行りましたとも!」
「それマネしたくなっただけじゃん」
「顔にシールを貼った事だってありますとも。一番多かったのは手の甲でしたけど」
「え、本当に貼ってたの?」
「低学年でしたけどね。あ、パンのシールは貼ってませんでしたよ」
「それはそうだ」
子供時代の収集欲の発露にシールの収集はかなり嵌っていたらしい。友達とシールを交換することもあれば、どこでそのシールを手に入れたかの情報交換も行っていたと言う。
自分が小学生の頃にそんな流行りがあったのか?と少し疑ったが、消しゴムや定規を弾いて楽しく遊んでいたことを思い出すと自然と納得した。
「あと、その手は上目遣いで男子に媚びるためのものです」
「必要性は?」
「やかましい男子に言う事を聞かせる武器です。身長差は腰である程度カバー可」
「・・・なるほど」
ただのぶりっ子ポーズだと思ったらきちんと意味があったことに驚きつつ、納得する。
(確かに小学生の頃に女子にこんな頼まれ方したら断れないな。されたこと無いけど・・・)
「全部一斉にやった理由は、時短です!タイムパフォーマンスis正義!」
「いつからそんなタイパ教信者になったんだ」
「さぁ?ただ最近の子供達はタイパを重視するって聞いたので、それに合わせてみました」
「・・・私も動画はしごする必要性出るかな?」
「興味は無いけど聞いてるのが楽しいって言っておけば、後は先輩のコミュ力でどうにかなりますよ」
「年下相手に聞き上手なんて無理難題じゃないか・・・!」
こうして、適当にネットで拾ってきた女子小学生の生態と南條の実体験を混ぜた振る舞い練習が行われた。
この練習によって桃香の女子小学生レベルは1つ上がり(南條談)、本人はまったく実感出来ないのであった。
20話達成〜
18日連続投稿達成〜(予約)
たぶん1話辺りの文字数が少ないので達成出来ました。
基本的に2000から3000で出してますが、区切りの良さで決めてるので将来は未定です。
これからも出来るだけ、可能であれば、きっと、毎日投稿しまーす。




