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仕事終わりの家主と食卓を囲みながら近況報告をする。
「え、編入の時に魔法使ったんですか?」
「面接の時に少し?試験自体は簡単だったから使ってないよ?」
「試験?もしかして私立ですか?」
「うん。そこまで進学校という訳では無いみたいだけど、学費も安く、そこそこ人気がある学校みたいだった!」
まさかの私立小学校に驚きながらも、それよりも気になることがあって桃香に尋ねる。
「・・・それキャラ付けですか?なんか所作がぶりっ子味を感じると言いますか」
そう突っ込まれた桃香は、THE純真無垢少女みたいな振る舞いから一転、いつもの雑な所作に戻った。
「そうだよ。女子っぽさがいまいち分からないから、テンプレート可愛いキャラをやってみた」
「なるほど、そのキャラで学校に行くと・・・、猛者ですね」
「いやいや、流石に学校ではやらんから。学校では敬語キャラで行くよ。その方が波風立たないと思いますので」
そう言いながら箸を進める姿にちょっとしたお嬢様を感じた南條は、波風は絶対に立つだろうなぁと未来の彼女に同情した。そして面白い展開も期待した。
しかし女性としての先達として一応注意しておく。
「ずっと敬語だと周りから距離を置かれてるって思われますよ?」
「・・・まあ、接するうちにタメ語を覚えるよ。半年あればいけるだろ。そういえば明日有休取れたか?」
自分が小学生女子と対等に話している姿を想像出来ない桃香は話を変えた。
「はい。どうにか取れました」
「じゃあ明日はお金貰いに行かないとな」
「いよいよ10億円が我が手に・・・!」
「私の手です」
「トウカちゃんかわいい!トウカちゃんいい匂い!トウカちゃんのお金は私の!」
「適当に褒めながら欲望を出すな」
手を擦りながら近寄る南條を箸で追い払う。
「いえ、適当では無いですよ?先輩いい匂いしますし」
「は?」
「先輩は気づいてないみたいですけど、最近の先輩の体臭は桃を彷彿とさせる香りです。前はそうでもなかった気がするんですけどね」
「うそだろ!?」
自分の体をふんふんと嗅ぎまくるが、桃香にはそれを感じ取る事ができなかった。
「わからん・・・」
「まあ、臭いよりはいいんじゃないですか?私は大歓迎です。アロマセラピーとして抱いて寝ていいですか?」
「自分のベッドがあるので結構ですわ」
「あらお嬢様言葉。メイド服なのに」
「おほほほほ、明日の夕飯ししゃも1匹にするぞ?」
「鬼!!でもなんで急に匂いが変わったんですかね?」
「うーん、俺の名前が桃の香りだからかな?」
「は?」
聞いたことのない話に疑問を浮かべる南條。それに対して桃香はそういえばと思い出す。
「あ、俺の名前、桃の香りと書いて桃香になったから。言い忘れてた」
「そういう大事なことはもっと早く言え〜〜!!」
「にゃにしゅるーー!?」
大事なことを祝う暇なくしれっと言われた南條は腹いせに桃香のほっぺたをうにょーんと引っ張った。
その感触は非常に柔らかくて良かったと言う。
次の日、銀行にやって来た二人は、南條が当てた雰囲気を出しながら桃香の通帳に入金させ、その足で少し高級な回らない寿司屋へと向かった。
「先輩は青物好きなんですか?」
「ほどほどかなぁ。正直マグロとたまごの方が好き」
「あら、可愛い」
「たまごの美味しい店は他も美味しい店という持論があるからな」
「ほぉ。私もマグロは好きですけど、万遍なく食べるタイプなんですよね」
「まあ、寿司を楽しむならそっちの方が良いとは思うぞ。私は美味しいを優先するけど」
「欲望に正直な小学生なこと」
お昼ご飯として合計6万円ほど美味しく食べた後は、桃香の要望で百貨店に入った。
「百貨店で何が欲しいの?」
「お姉ちゃんの会社に渡すお菓子」
「・・・え?何故?」
「今回の有休無理やり取ったでしょ?少しのフォローを入れておいたほうが楽になると思ったから買う」
「まぁ・・・よく考えてくれる妹だこと」
「姉がニートとかどうしようもないからね!」
「そんな簡単には堕落しませんから信じてくださいよぉ・・・」
意外と信用度が低い姉を連れて適当な有名菓子を購入する。
美味しそうだったので自分たちの分も買った後、ふととある事を思いついた南條はランジェリーショップに寄った。
「ちょっと見て行っていいですか?」
「え、ああ、うん」
桃香は未だにランジェリーショップから感じる威圧感に恐れを抱いている。
だから出来れば入りたくない店筆頭である。
「なんでしたら私一人でもいいですけど。あ、カードは下さい」
「わかった。じゃあ近くで待ってるから、終わったら呼んで」
「はーい」
(・・・慣れなきゃなぁ)
いつか何も気にせずに堂々と入れるようになろうと誓う桃香であった。
南條の買い物が終わり自宅に帰ってきた二人は、夕飯の準備を始めた。
「今日は何ですか〜?」
「肉じゃが」
「おっ、和食の王様ですね?」
「王・・・?まあ、代表の一つかもしれないけど」
「そういえば明日もお暇ですか?」
「いや、明日は制服買いに行く」
「お?じゃあ私も」
桃香の制服合わせに付いていこうとする南條だったが、桃香から拒否された。
「その後、前の家の引き上げがあるから駄目」
「えぇ・・・まぁ、先輩が隠したい物が沢山あるなら仕方ありませんけど」
少しからかうように南條が言うと、それに対して真顔が返ってきた。
「そうだよあるんだよだから付いてくるんじゃないよ」
「そんな真顔で言わなくて良いじゃないですか。じゃあ一人さびしく留守番してますよ」
「代わりに家事してもいいんだよ?」
「メイドさんの仕事を奪うのもなんなので、置いておきます!」
「・・・・・・」
堕落の快楽を知ってしまった南條を見て、絶対に仕事を辞めさせてはならないと思う桃香であった。




