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お助け『魔女』になりまして  作者: ふつうのひと
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週が明けて月曜日。


小さなアラームの音で起きたトウカは朝の準備を始め、大きなアラームが鳴り出したのを聞いてから南條の部屋に向かった。


「んー・・・」

「起きろー。朝だぞー」

「やだ・・・めんどい・・・」

「朝ご飯の用意してるんだから起きろ。そして仕事に行け」

「仕事やぁだぁ・・・」

「問答無用!」

「ひぃん!」


うるさいアラームを消してから南條の布団を剥ぎ取り、起床を促しながらリビングに向かわせる。

食卓には既に出来立ての品々が用意されており、そこに朝のコーヒーを添えて完成である。


「はい、目玉焼きソーセージサラダ食パンコーヒーのセット」

「挽きたてー?」

「コーヒーミルを買ってから言えください」

「じゃあ今日注文しときますねー、あむ」


適当に返事をしたら朝の仕事を増やされて少しイラッとしながらも、朝の仕事に行く前のだるさを理解できる大人として何も言わずにおいた。


トウカ本人は気づいていないが、以前の体と比べて寝起きの辛さが皆無になったので朝から許容する心が広くなっていた。

以前の彼ならば、一言「ふぁ きゅー」と言っていたに違いない。


前日の就寝前に言われた通りにアイロン掛けしておいたスーツを渡し、まだ少しぎこちないがお風呂上がりのヘアーアイロンを行って、南條を理想の社会人に仕立て上げていく。


「お弁当はなんですかー?」

「昨日の残りのハンバーグと適当」

「・・・彩りは考えてくれました?」

「ちょっと男子力が高すぎてわかんない」

「要勉強してください」

「気が向けばな」


全ての準備が終わった時点でタイムリミットまで30分を残しており、これまでの南條の起床時間では絶対に不可能なクオリティでの準備完了に感動する。


そう、しっかり朝食を食べ、シャワーを浴びて身支度をし、弁当を用意して、アイロンの掛かったスーツに身を包んでも30分残っているというのは、現代の奇跡と言っても過言ではない御業なのだ。


「いやぁ、すごいですね。メイドさんって。朝食をしっかり食べて、スーツもパリッとしてて、お弁当まで用意されてるのに優雅にお茶を決められる余裕さですよ。世のお金持ち達に強い嫉妬を覚えますねぇ」

「宝くじを当てた程度じゃこの生活は出来ないだろうな」

「こんなの住み込みメイドを雇えるレベルじゃないと無理でしょうからね。これからの時代は一家に一人、先輩が必要になりますね、間違いない」

「この体になってまでブラック業務をするつもりはありません。なんなら裁判所で会おう」

「一人当たりの労働時間はそうでもないと思いますけどね。このあとのご予定は?」


南條に予定を問われ、トウカは一言で表す。


「わからん。おそらく今日辺り俺の葬式が行われるだろうから、養子縁組の手続きが出来るようになるまでは暇かな」

「葬式出るんですか?」

「まさか。どんな顔で出ればいいんだよ」

「先輩が号泣しながら棺桶にしがみついてたらそれはもう悲痛な葬式になります!」

「藍子辺りが笑うから絶対ダメ。まあ、色々調べ物したり、練習したりするよ。コーヒーの挽き方なんて知らないしな」

「おっ!言ってくれましたね?じゃあちょっと良いミルと豆注文しておくんで、丁寧にお願いします!」

「・・・財布がゆるいな」

「そりゃあ、十全に自分のために使ってくれる人がいるなら緩くなりますよ。あ、それじゃあ会社行ってきますね」

「おう、いってらっしゃーい」

「喋り方の練習もしておいてくださいねー」


最後にそう言い残して南條は扉を閉めた。

まだ前世の喋り方がから脱する事ができないトウカだった。


朝食の片付けを済ませたトウカは南條のパソコンで動画を探し始める。


内容は、剣術。それも刀だ。


昨夜、戦いを見たトウカは早速夢の中で同じ環境を再現し、同じようなモンスターと対峙した。


その中で大きな問題点として、恐怖心と技術の無さが出てきたのだ。


今のトウカにとって、そこらへんの不良集団は一枚の葉っぱ程度の脅威だが、あのモンスターは細長いカッター程度の脅威であった。


葉っぱを振り回して襲いかかってくる人と、カッターを振り回して襲いかかってくる人であれば、後者のほうが脅威だろう。(恐怖は前者かもしれないが)


前者は適当にはたき落としても何にも感じないが、後者は下手すると傷を負う。

その「傷を負う」という可能性に生前からの恐怖心を抱いているのだ。


それを克服するために仮想的な戦闘訓練を始めたのだが、武器が悪かった。


トウカの武器は通常、刀であり近接装備である。

そして彼女はかつて授業でしか竹の刀を扱った事がなく、更にトウカの刀は太刀の部類なため間合いが遠い。


最初は魔法による遠隔攻撃だけで十分かと考えたが、支援対象であるヤマトが二丁拳銃という近接戦闘のしづらい武器を扱っているため、仕方なく近接の訓練を続けた。


その結果、ボロボロにやられたため、動画サイトで剣道の型の動画や殺陣の動画を漁ることにした。


「うーん・・・二刀流の練習でもしてみようか・・・?」


動画を漁った結果、刀の使い方の探求に面白さを見出してしまった。

そのせいで無駄に二刀流やサイズ違いの刀で練習し始めたりするが、それはまた別の話。


こうして戦いのための勉強やコーヒーの勉強、その他様々な勉強をする傍らで、自らの葬式、養子縁組、小学校への編入手続きなどが行われた。


その際にトウカは両親から新たな名前を貰った。


「これから斗也は『桃香』ちゃんになりました!拍手!」

「お〜」


縁組をする際に必要だろうということで、両親が(特に相談無く)話し合ってきめたのだそうだ。


「桃の香りって・・・桃園なのに更に桃を重ねるの?」

「でもこれが一番可愛い当て字だと思ったもの」

「女の子らしい名前だし悪くないだろ?」

「・・・まあ、それでいいけど」


余りにも女の子っぽい名前すぎて他のを考えたが、元が適当に付けた名前。

代案の当て字が思いつかなかったので、彼女は諦めて『桃園 桃香』になった。


その後の小学校編入は魔法の力も合わせて強行突破し、晴れて小学4年生として、望月学園初等部に通うことになったのだった。



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