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「ただいまー」
ヤマトの戦いを見届けたトウカが家に戻ると、そこには死んだ顔でハンバーグを焼いている南條がいた。
「・・・・・・」
「あ・・・ご、ごめん。つい緊急で」
「私の手、ねちょねちょ」
「はい」
「対価、おk?」
「分かりました・・・」
使命のためとは言え、仕事を放り投げたツケを支払う事になったトウカ。
とりあえず対価は食べてから決めると、トウカがこねて南條が焼いたハンバーグ定食を頂く。
「意外とちゃんと作れましたね。私、死なない程度に適当に焼いてただけですけど」
「まあ、家庭で食べるハンバーグならそこまで難しくないだろ。そしてごめんなさい」
「実際何か考えないと駄目ですよね。いくら使命のためとはいえ、これから家事をする度にそれをほっぽって消えられるとこっちが困りますから」
「何かって言っても・・・早めに準備したりすればいけるかな」
「今回みたいな戦いって夜にしか起きないんですか?」
「・・・別にそういうルールも無いなぁ」
トウカの知識にも特に夜に出やすいといったものは無く、なんならその滅びの原因がどこから来ているのかも分かっていない。
それに関する情報は彼女には授けられていないのだ。
「となると・・・あ、分身とかどうです?」
「分身?」
「ほら、自分が忙しいからもう一人の自分にやらせる的なのって多いじゃないですか。日常に隠れるヒーロー物とかだと身代わり的なのを用立てたりして」
「分身か・・・『分身』」
それは良いかも知れないと考えたトウカは実際に分身してみた。
彼女の隣に瓜二つの少女が現れる。
「おおー、分身してみてどうですか?なんか頭がこんがらがるとかあります?」
「うーん、特にそういうのは無いな」
「でも二人分の感覚を得る事も出来るな」
「ああ、確かに。でも自分のものと混乱することは無いから何か新鮮な感じというか、この感覚はちょっと形状しがたいな」
二人のトウカが交互に喋り、ふざけて鏡写しの動きをしてみる。
その姿を見た南條は閃き、その閃きを遂行するための情報収集に入る。
「ちなみにその姿の時ってお互いに同じ力なんですか?」
「いや、魔力自体はほとんど俺が、本体が持ってるぞ」
「こっちの俺は本当に低消費の魔法しか使えなさそうだな。まあ、家事専門と見れば十分だと思うが」
「なるほどぉ・・・じゃあ先輩、早速対価を払ってもらいますね?」
「「は?」」
素早くスマホを取り出して撮影モードに移行した南條は指示を出す。
「その分身した状態で片方の先輩は金髪碧眼になってください」
「あの?」
「これが対価ですよ、はよ!」
「あっはい」
「で、そのまま向き合ってお互いの手をそれぞれ重ねて、交わらず、でもべったりくっついてる感じで全身をくっつけて下さい。もちろん顔もですよ。あ、向きはカメラにね」
南條監督の命令通りにポーズを決めて、表情も作っていく。最初はただ鏡合わせのようにくっつくだけだったポーズから徐々に絡みが増えていき、最終的には少し過激な百合漫画で見たことのあるポーズで終了となった。
自分の分身とそんなポーズをさせられたトウカの精神力はかなり摩耗している。
「ふむふむ・・・うん、最高」
「・・・お前、こんな趣味あったの・・・?変に燃えてたし・・・」
「いえ、別に百合はそこまででも無いんですけど。ただ、美と美が重なれば炎になるって、昔サークルの誰かが言っていたので試してみました。本当にその通りですね!家宝にします!」
「・・・美ってなんだよ、火だろ、美と美重ねても何の漢字も出てこねぇよ、そしてそれが見つかったら社会的に捕まるぞ?」
「大丈夫ですよ~。従妹の姉妹って言い張れば私は死にません。まあ変な騒ぎは起きそうなんで誰にも見せませんけど」
「そ・・・はぁ」
今の数分でとてつもなく疲れたトウカは元の姿に戻るのも忘れて、分身だけ消して食器を片付け始める。
そして思うのだった。
(本格的にアイツに借りを作らないようにしなきゃいけないな・・・)と。
ちなみに南條は(よく考えたら美少年にもなれるだろうから次は美少年×美少女の写真を撮らせて貰おう)なんて事を企み始めていた。
南條によるトウカ写真コレクションは、果てなく増えていくことになる。




