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週明けが期限の宿題をせずに遊んでいた事が親にバレて渋々宿題をしていたヤマトは、ふと何かを察知する。
「ん?今のは」
「ヤマト!この前の奴がまた現れたよ!」
力強くそう言うのはヤマトの相棒。
家族には見えておらず、ヤマトも相棒としか呼んでいないため、「相棒」が名前になってしまっている。
その相棒の言葉を聞いたヤマトは「奴」の元に向かうために家を飛び出した。
「相棒、場所は!?」
「5分先の公園!」
「分かった!」
始まりは12月末、ヤマトの誕生日の後。
クリスマスと正月に挟まれてる中でも無事に祝ってもらい、貰ったゲームを楽しみにしながら眠った次の日に突然「相棒」が現れた。
最初は寝ぼけ頭で知らないぬいぐるみだと思ったが普通に喋り出し、混乱しながらも話を聞くとヤマトは世界を救うために選ばれた戦士なのだと言われる。
自分は子供だがそこまで子供ではないという意識も持っていたヤマトは最初は半信半疑だったが、相棒に言われるままに自分の戦う姿を想像しながら呪文を唱えたら変身することに成功し、自分が本当に戦士になったと喜んだ。
(まるで漫画のような、アニメのような人物になれる!)
この事実に浮かれながら、勧められるままに意識空間で闘い方などを学びながら年を越したある日。
突然、悪寒のようなものを感じたと思ったら相棒が騒ぎはじめ、今の感覚は敵が現れた時のものだと教わった。
そして先導された場所にいたのが・・・。
「あれは、前と同じ・・・だよね」
「うん。前回僕たちが倒せなかった獣型モンスターだ」
公園の真ん中に佇む黒い影のような物体。
そのしなやかな体つきは猫や豹を彷彿させる。
ヤマト達が公園に入っても顔を向けるだけで動かない、その態度に僅かに恐れを感じる。
「とりあえず結界貼るね!もしかしたらそのせいで来るかも知れないけど」
「お願い!『変身』!!」
相棒が『隔離結界』という結界を貼ると同時に変身をする。
以前、駐車場で戦った時に結界無しで戦った結果、駐車場に戦いの跡が残ってしまいそれを誤魔化すためにかなり力と時間が掛かったので、その対策として結界を貼ることにしたのだ。
この結界があれば無機物の損傷を無かった事に出来、更に無関係な人を巻き込む危険性が無くなる。
運良く前回は何も無かったが、後からその危険性に気づき対策することにした。
ヤマトの服装がパジャマから短パンのガンマンスタイルと二丁拳銃に変わり、その銃を敵に向けた瞬間、黒い影が溶けた。
「来るっ!」
危険を察知して思いっきり前方に跳ぶと、ヤマトの首があった位置を影の刃が通り過ぎた。
以前も初手で同じ攻撃を喰らい、その時は相棒の咄嗟の反応で何とか死なずに済んだが無傷では済まなかった。
「ちゃんと訓練してきたんだ!!」
ヤマトは明晰夢の中で相棒と訓練した、片方の銃で光を作りもう片方で攻撃をするという相手の奇襲性を消す作戦を実行する。
影から影に跳ぶ特性を封じられた豹型モンスターは不快そうな表情を浮かべ、その状況を作り出しているヤマトの命を刈り取ろうとするどい爪撃と影の刃で四方八方からヤマトに攻撃をしかける。
戦士に選ばれてから地道にしてきた訓練と筋トレのおかげである程度その攻撃を見切って避ける事が出来、ヤマトの意識外から襲う刃は相棒が防御魔法で防ぐ。
「今度はっ、負けない!!」
獲物を仕留めきれないことにイラつき始めたモンスターの様子にチャンスがやってきたと確信したヤマトは、再戦のために用意したもう一つの武器をモンスターめがけてぶん投げた。
一瞬そちらに意識を飛ばすが、自分に当たらないと判断し、前方から絶えずやってくる攻撃の対処を優先したモンスターは背中から衝撃に襲われる。
ヤマトが投げたのはモンスターの隙を作るための手榴弾であり、元々モンスターの背中に落ちるように狙ったのだ。
その隙に彼は唯一の必殺技のために、両手を前に突き出して構える。
「必殺のぉぉぉ!!」
特大の光弾をぶっぱなす。その光弾は大きい分、ただ光を放っているだけでなくモンスターに傷を与えうる威力も内包していた。
これを喰らうのは危険だと判断したモンスターは幾重にも影の刃を重ねて迎え撃つ。
影と光がぶつかり合ったその瞬間、光弾は盛大に爆発し、その中からヤマトが突進する。
「スペシャルっ!」
光弾と同時に突進しなければありえないタイミングに、モンスターは反応が間に合わない。
その体に刃を生やした左の銃が突き刺さり、その銃を固定ピンとして右の銃は更に深く突き刺さる。
「バーストォォォォ!!!!」
突き刺さった双銃から放たれるはヤマトの力が尽きるまで続くフルオート射撃。
相手が死ぬまで絶対に撃つのをやめないという気迫で撃ち続けると、モンスターは悲鳴も無く体が崩れていき、ついに消滅した。
「はぁ、はぁ・・・」
消滅した後に残っていたのはヤマトと相棒だけである。
「ヤマト!やったな、初勝利だ!!」
「はぁ、はぁ、やった。やったー!!勝ったよ相棒ー!!!」
前回の敗走からのリベンジ成功に二人で喜び、抱きしめ合う。戦いの影響で公園内の遊具などはボロボロだったが、相棒が結界を解除するとそれらは全て元通りになった。
生えていた雑草の類は元に戻らなかったが、それくらいなら誰も気にしないだろうと二人はるんるん気分で家に凱旋するのであった。
トウカはその戦いを結界の外から見ていた。
ヤマトの力を感じたトウカはマンションを飛び出し、目的地に一瞬でたどり着いたが結界の中に入れず、外から見ていることしか出来なかった。
結界自体は彼女の力であれば破ることもすり抜けることも簡単だ。しかし、彼女の使命は器が未熟なヤマトを助けることであり、代わりに戦うものではない。
つまり、ヤマトが勝てない状況にならないと介入出来ない。
彼女にはそんな制約が付いているのだ。
故にハラハラドキドキしながら戦いを見守っていた。
時には「うしろうしろ!」と叫んだり、危なくなった瞬間につい目を覆ってしまったり。
いつでも介入出来るようにしながらも、結局は最後まで観客として終了したのだった。
「・・・子供があんな戦いをするのかよ。怖くてしょうがないんだけど・・・」
昼間の不良達とは違い、自分も危機感を覚える相手。
その時トウカは理解した。
自分が昼間のチンピラ達にまったく脅威を感じなかったのは、無意識的に自分を傷つける事ができないと判断していたのだと。
先程の豹のようなモンスターは自分を傷つける事が出来ると判断したゆえに、脅威を感じている。
「でも、いざとなったら俺が助けなきゃいけない・・・俺が、強くなければ」
月の下、己の恐怖を払拭するかのように月を見上げながらそう呟くトウカ。
傍から見ると、公園の陰で月を見上げている巫女コスプレした仮面少女という、職務質問不可避な絵であった。




