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「よいしょっと」
家に着いてから荷物置き部屋の掃除を始めた二人は、まずいらないものをポイポイと収納に放り込んでいった。
『伸縮』で口が広がった巾着袋に入れながら、つい不安になって南條はトウカに尋ねる。
「これ、ちゃんと取り出せるんですよね?」
「取り出せるから安心しろ。最悪、存在を忘れても問題ない」
「こっ・・・まら無いかもしれませんけど、困ります!」
「ほら早くしないと夕飯作りに入れないぞ~」
買ったけどあまり使わず、しまい込んでいた謎のダイエット器具やどこからか貰って来た電化製品などを全て収納した後の部屋を見た本人は「この部屋こんなに広かったんですねぇ」と爽やかに笑っていた。
「じゃあここから掃除機かけて拭き掃除ですか?」
「いや、もうそろそろ夕飯の準備をしないと不味い」
「え、後日に回すんですか?」
「だから魔法で終わらせる。『掃除』『浄化』」
トウカが唱えると一瞬で部屋中の埃が消え、更に謎の黒ずみなどが消えた。
「うおっ・・・まるで新築同様のピカピカさに!」
「我ながらすごいな。とりあえず掃除はこれで終わりか」
「いやぁ、ビフォーアフターが劇的すぎてびっくりしますねぇ。机と棚とベッドは明後日来ますけど、わたし仕事なんで気を付けてくださいね」
「別に気を付ける事も無いだろ?専用のスタッフが入れてくれるし」
「平日の昼間に小学生が一人で家にいたら相手は警戒するんじゃないですかね」
「・・・・・・いや、まあ今のご時勢なら特に何も言わないでしょ、うん」
「そうですね。それもどうかとは思いますけど」
普通なら学校に行っている時間帯に一人で家にいる子供という状況を客観的に見てしまった二人は同じ展開を垣間見たが、現代日本なら大丈夫だろうと考えるのをやめた。
「さて、じゃあ夕飯の準備するか」
「今日は何ですか?」
「ハンバーグにしようと思う」
「おっ、本気モードですか?」
「家庭レシピを覚えるならこれが最初かなって思って作るだけだよ。レシピ見ながら作るし」
「点数付けはお任せください!」
トウカはキッチン、南條はリビングのソファに向かった。
片やタブレットと睨みっこしながら料理する中、もう片方はテレビを見ながら笑っているという現代では不評を買いそうな構図だが、トウカ自身が家政婦領域を貼り始めているため特に文句が出ることもない。
南條も助けを求められれば助けに向かう気概を備えているのだ。
(今回は一番簡単なハンバーグに挑戦するから、玉ねぎを微塵切りにして・・・)
猫の手で玉ねぎを抑えながら玉ねぎを刻む。
別に手を切りそうになっても切れない体なのだが、昔からの習慣で彼女は猫の手を続けている。
微塵切りにした玉ねぎを火に掛け、キツネ色になったら一旦冷ます。
そしてひき肉にパン粉やたまご、焼いた玉ねぎなど調味料も含めて全て入れ、捏ねる。
(ねっちょねちょしてるなぁ。しかしハンバーグを作るなんて何年ぶりだろう。家庭科で一度作った気がするけど、10年以上は確定だよな)
材料が混ざりきった所でハンバーグの成形に、と思ったところで脳裏に電流が走り、思考が。
「っ!?南條!少し出てくる!『変身!』」
「はっ、ふぇ!?ちょっと先輩!?私のご飯───」
トウカが感じたのは使命。
僅かに感じた魔力の波動から己の職務に思考を占拠された彼女は、つい先程までのネチョネチョしていた手も魔法で綺麗にして魔法少女的な姿に変わった。
ちなみに一度『降臨』に変えた呪文だったが、身バレしないことを重視した場合、人前で変身しないことが最適解なのだから格好つける必要が無いと悟り、デフォルトに戻していた。
その代わり最初は無かった猫の仮面が顔に被さっている。(最初は狐にしようとしたが流石にそれは狙い過ぎだろうと南條に言われて猫にした)
家を飛び出した彼女は現場へと急行する。
そこは、周りから離された四角い公園。




