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ブルーストーム シーズン2  作者: Fawole Oluwaseyi


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13/19

第13章:物事を正す

翌日――。


ナイチンゲール校の全学年、全クラスの生徒たちが、朝礼のためにホールへと集まった。


「えっ?」と、ある3年生が目を瞬かせた。「本当?」


ホールの最前列にはリョウが立っていた。その両脇にはジン、ミソラ、レイナの姿がある。リョウのまぶしいほどの笑顔が、ホール全体を明るく照らしているようだった。


「そうだよ~!」リョウは両手を大きく広げた。「先週の中間テストを頑張ったご褒美として、2日間の休みがもらえることになったよ~!」


彼は嬉しそうに腕を上下に振った。「だから、みんな! 自由に過ごして、思いっきり楽しんでね~!」


さらに満面の笑みを浮かべて、彼は付け加えた。「テストを頑張った、みんな一人ひとりへのご褒美だからね!」


ホールは瞬く間に、興奮した話し声と明るい笑顔で満たされた。


「やったー!」


「やっとゆっくり眠れる~!」


リョウが仲間たちを見渡す中、ジンとレイナは彼の方を見て微笑み、ミソラもその隣で穏やかな笑みを浮かべていた。


クラスの列に戻ったアオイは、腰に片手を当てて微笑んだ。


「まあ、これなら帳消しってところね」


「うんうん」と、隣でメイも微笑んだ。


アヤネは興奮した様子で拳を握りしめた。「最高! でもその前に、まずはホームルームのために一度移動しなきゃね」


「ああ、そうだな」とリクヤが頷いた。


少し離れた場所で、カズキがシズカの方に視線を向けた。


彼女は数歩先に立っていた。背を向けた彼女の淡い紫色の髪が、周囲の生徒たちの動きに合わせてふわりと揺れている。


カズキの表情が揺らぎ、心臓が激しく鼓動し始めた。


彼は慌てて視線を床に落とした。……彼女に、謝らなきゃ。


............................




「さて、みんな」アラタはニヤリと笑って口を開いた。「学校が2日休みだからといって、課題から逃れられると思ったら大間違いだぞ」


彼は手にしたプリントの束を掲げてみせた。「というわけで、中間休暇中のちょっとした課題を用意した。休みを満喫しつつ、これに取り組んでくれよな~!」


「ええーっ!」クラスのほとんどから、即座に不満の声が上がった。


「勘弁してくださいよ、アラタ先生~!」誰かが泣き言を漏らす。


「嘘でしょ~!?」


「いや、至って本気だよ」


「せっかくの2日間の休みなんですから、楽しませてくださいよ!」ヒカルが抗議するように声を上げた。


「正確には4日間だ」アラタは訂正した。「今日は木曜日だから、休みは4日間あることになる」


彼はニヤリと笑みを深め、プリントの束を少し掲げ直した。「これくらい、合間を縫ってこなせるだろ?」


「そんな~!!」ヒカルは再び声を上げると、大げさに机へと突っ伏した。


アオイたちはヒカルのそんな様子を見て笑いながら、アラタから課題のプリントを受け取った。


しばらくすると、教室はいつもの賑やかな雑談の雰囲気に包まれた。


カズキは教室の後ろの方に立ち、クラスメイトの一人と話をしていた。だが、会話に耳を傾けながらも、彼の視線は時折、シズカの方へと向けられていた。


彼女は机に静かに座り、視線を落としていた。


しばらくして、静は立ち上がると、妹の方を向いた。


「何か飲み物買ってくるけど」と、彼女は穏やかな声で言った。「何かいる?」


沙耶香はまばたきをした。「あ、えっと……アイスティーでいいかな」


静はうなずいた。「わかった」


彼女は机の間をすり抜けてドアへと向かい、教室を出ていった。


和樹の視線は、彼女が廊下に消えるまでその姿を追っていた。


今だ。彼はクラスメイトのそばからそっと離れ、ドアの方へと歩き出した。


だが、数歩も進まないうちに、突然、しっかりとした手つきで肩をつかまれた。


和樹は足を止めた。振り返ると、彼の青い瞳が、琥珀色の瞳とぶつかった。


「どこへ行くつもり?」


「沙耶香……」和樹はそうつぶやき、彼女の方へ完全に向き直った。


ピンク色の髪の少女は、眉間にしわを寄せ、腕を組んだ。


「ねえ……」声は穏やかだったが、その裏に苛立ちが滲んでいるのは明らかだった。「お姉ちゃんにしたこと、本当に許せないから」


カズキは体の横で拳を強く握りしめた。「……わかってる」


彼の表情が真剣なものに変わる。「だから、償いたいんだ。ちゃんと、元通りにしたい」


サヤカは腕を組んだまま、しばらくの間、彼の瞳を見つめ返した。


部屋の向こう側では、ヒカルが二人の様子に気づき、静かな好奇心を抱きながらそのやり取りを見守っていた。


……………….


自動販売機の取り出し口に、アイスティーのボトルが二本、音を立てて落ちた。


シズカはその前に立ち、悲しみに曇った瞳でしゃがみ込み、ボトルを取り出した。


二本のボトルを手に取ると、ゆっくりと立ち上がり、手の中の冷たい飲み物をじっと見つめた。


「シズカ!」聞き覚えのある声に、彼女は動きを止めた。


振り返ると、カズキがこちらへ急いで駆け寄ってくるのが見えた。首にかけたヘッドホンが、走るたびに軽く揺れている。


「あ……カズキくん」彼女は小さく、当たり障りのない笑みを浮かべたが、その声にはいつもの温かさが欠けていた。


カズキは彼女の目の前で足を止め、息を吐き出した。心臓が激しく鼓動する中、彼は体の横で拳を握りしめた。


「あのさ……」彼は唾を飲み込み、言葉を継いだ。「どうしても、話しておきたいことがあるんだ」


シズカは彼を見つめ、わずかに眉を上げた。


カズキは深く息を吸い込んだ。勇気を振り絞るように、彼の頬がほんのりと赤らむ。


「あのね……僕、シズカに対して本当にひどいことをした」


彼の表情が、より真剣なものになる。「ミナト先輩と一緒にいたいという理由だけで、ダンスの練習の約束をすっぽかしたこと……あれは、間違ってた」


罪悪感に瞳が揺れる。「僕、すごく自分勝手だった。シズカがどう思うか、どれだけ君を傷つけてしまったか……僕たちの関係をどれだけ壊してしまったか、何も考えていなかったんだ」


彼は視線を落とした。「何一つ、言い訳なんてできない」


彼の指が、さらに強く拳を形作った。 「君を傷つけてしまった」彼は彼女を振り返った。「本当にごめん、静香」


静の瞳がわずかに見開かれた。唇が少し開き、手にした冷えたボトルを握る指に力がこもる。


「いいのよ」


和樹は目を見開いた。「え?」


「つまり……」静は静かに続けた。「どうしてそうしたのか、わかるから」


彼女は視線を落とした。「湊先輩は、ずっとあなたの憧れの人だったものね」


その唇に、どこか切なさを帯びた淡い笑みが浮かんだ。


「だから、ずっと憧れていた人と一緒に過ごすこと……それは、決して悪いことじゃないわ」


和樹は小さく息を吐いたが、その表情には依然として悩ましげな色が残っていた。


「それに……」静は彼の方へ視線を上げた。「あなたたちは男同士だし。私が二人の予定の邪魔をしちゃいけないでしょ」


声は穏やかだったが、その奥にはかすかな重苦しさが滲んでいた。


「憧れている人と一緒に過ごして……楽しい時間を共有したいと思うのは、当然のことだもの」


彼女は再び視線を落とした。「私みたいに、これといった取り柄もない人間とは違って……」


「違う!」和樹の声が廊下に響いた。


突然の大きな声に、静は驚いて顔を上げた。


「静は、地味なんかじゃない!」和樹は頬を赤らめながら、一歩近づいた。「それに、自分で思っているような『中途半端な人間』でもない! だから、そんなふうに自分を言うのはやめてくれ!」


彼の表情が和らぎ、青い瞳が温かな光を帯びた。


「むしろ……」彼は拳を握りしめ、より真摯な響きを込めて言った。「君こそが、僕の憧れの人なんだ」


静香は目を見開いた。


和樹は、真摯な、控えめな笑みを浮かべた。「君と過ごす時間は、すごく楽しいよ!」


その言葉に、静香は目を見開き、わずかに唇を開いた。


和樹は、さらに誠実な響きを帯びた声で続けた。


「君と出会ってから……一緒に踊るようになってから、君は僕が好きなことを続けていけるよう、ずっと背中を押してくれたんだ」


彼の表情が和らいだ。「ダンスも、音楽を聴くことも……君はすべてを受け入れて、一緒に楽しんでくれた」


彼は少し照れくさそうに、首の後ろをさすった。「これまで出会った女の子たちは、僕の好きなものをなかなか理解してくれなくて。共通点も、あまりなかったんだ」


彼の顔に、温かな笑みが広がった。「でも、君は違った」


彼はまっすぐに静香を見つめたまま言った。「君はそばにいて、僕の好きなものを分かち合ってくれた。僕のダンスパートナーになってくれて……」


笑みがさらに深まった。「それに、僕の友達にもなってくれたんだ」


彼は小さく笑った。「君と過ごす時間は、本当に楽しかったよ、静香。自分でも気づかないくらいにね」


彼は深く息を吸い込んだ。頬がさらに赤く染まる。「君は、僕が出会った中で一番素敵な女の子だよ!」


静香は目を見開いた。


和樹の声が、優しく響いた。「君と過ごす時間は大好きだし……それに、君自身のことも、すごく好きだよ」


静香の心臓が大きく跳ねた。輝くような濃い紫色の瞳を大きく見開いたまま、彼女の頬はみるみるうちに赤く染まっていく。


和樹は、赤らんだ彼女の顔を見つめ、自分の言葉がどう聞こえたのかにハッと気づいた。


彼自身の顔も、真っ赤に染まった。


「あ、あの……つまり……!」彼はぎこちなく両手を上げた。「本当に……えっと……」


必死に説明しようとするあまり、言葉がうまくまとまらない。


静香は、少しだけ頬を膨らませた。


そして――


「ふふっ……」と、彼女は小さく笑い声を漏らした。


和樹は動きを止めた。


静は口元を覆い、肩を小さく揺らして笑った。その目元は、温かな笑みで細められている。


不意を突かれた和樹は、ただ彼女を見つめることしかできなかった。


(笑ってる……)その光景に、和樹の心臓が跳ねた。(笑うと……すごく可愛いな)


やがて静の笑い声は収まり、柔らかな微笑みへと変わった。


「私も同じ気持ちだよ……和樹くん」


和樹は息を呑んだ。頬は真っ赤なままだ。


「埋め合わせ、させて。約束するよ」和樹の声は温かく、真摯だった。「君が望むだけ、一緒にいよう。どれだけでも、何をして過ごしてもいい」


一呼吸置いて、和樹はパッと表情を明るくした。「スケボーの教え方だって教えられるよ!」


静の頬が再び赤く染まった。彼女は視線を逸らすと、冷えたボトルを和樹の方へと差し出した。


「え……?」和樹はボトルと、それから静の顔を交互に見つめた。


「受け取って」静は少しだけ唇を尖らせて、和樹と視線を合わせた。「……許してあげる」


和樹の瞳が潤んだ。安堵の笑みが、ゆっくりと彼の顔に広がっていく。


「ありがとう」


静もまた、温かな笑みを返した。


和樹は手にしたボトルを見下ろして言った。「でも……こんなの、もらわなくていいんだよ」


彼は少し首を傾げた。「飲み物を奢るべきなのは、俺の方だし」


「妹と仲直りしたいとき、私はいつも、その子の好きな飲み物を冷やして渡すの。それが『仲直りのしるし』だから」と静は説明した。


彼女は自分の手に持ったボトルに視線を落とした。「……まあ、これはアイスティーなんだけど。あなたの好物じゃないかもしれないけれど、今はこれで許してね」


和樹は優しく微笑んだ。彼は一歩歩み寄ると、飲み物を差し出している静の手に、そっと自分の手を重ねた。


静は、まばたきをした。彼女の視線は、自分の手に置かれた彼の手へと落ち、それからゆっくりと彼の顔へと戻った。


「実は、そうなんだ」と、カズキは静かに明かした。


彼の手の温もりに、シズカの頬が赤らんだ。


彼女の唇には、小さな笑みが浮かんだ。


二人は、数メートル先、壁の陰に隠れるようにして立っている人物に気づいていなかった。


さやかは腕を組み、壁に寄りかかりながら、温かく満足げな笑みを浮かべて二人を見つめていた。


「よかった、無事に解決したね」


「人の話、盗み聞きしちゃダメでしょ?」


突然、横から声がした。


さやかはビクッとして顔を向けた。「ヒカル? どうしてここにいるの?」


金髪の少年は肩をすくめた。「なんとなく、君が何してるのか気になってついてきただけだよ」


彼は壁から少し身を乗り出し、話し続けているカズキとシズカの様子を眺めた。


「何かあったみたいだけど、仲直りしたんだね?」彼はさやかに視線を向けた。


「うん」さやかは小さく微笑んで頷いた。


「シズカなら自分一人でも解決できたかもしれないけど、念のため見守っておこうかなって」


「どうして?」ヒカルは片方の眉を上げた。


さやかの笑みが少し消え、表情が真剣になった。腕を組んだまま、彼女はヒカルを見つめる。


「シズカは私の双子の姉だから……」一呼吸置いて、彼女は続けた。「……姉さんを守るためなら、何だってするよ」


ヒカルはしばらく彼女を見つめた。琥珀色の瞳が、さやかの瞳と重なる。


さやかはふうと息をつくと、壁から背中を離した。


「それじゃ、終わり!」


彼女はヒカルの腕を掴むと、そのまま引っ張って歩き出した。


「ほら、行くよ。私たちがこっそり見てたってバレる前に、ここから離れなきゃ」


「おっと……おい……」ヒカルはよろめきながら、彼女のあとについていった。


歩くたびに揺れる彼女のピンク色の髪。ヒカルの視線は、その背中に釘付けになっていた。


やがて、彼の視線は繋がれた二人の手へと落ちた。


彼の頬が、ほんのりと赤く染まる。彼女に引かれるまま歩きながら、ヒカルの胸の奥で、心臓が小さく高鳴った。


.................................


「やったー!」あやねは両手を高く掲げて声を弾ませた。彼女たちは今、学校の正門をくぐり抜けたところだ。「今日は一日中、思いっきり楽しむぞー!」


「そうね」と、めいは背中で手を組みながら、みんなの横を歩いて微笑んだ。


みつるも微笑みを浮かべる。「さて、まずは何をしようか?」


「みんなが心から楽しめる場所がいいね」と、ひかるが提案した。


「楽しめるに決まってるでしょ」と、あおいとらいとが声を揃え、楽しげに笑った。


あやねが突然みんなの方を向き、目を輝かせた。「いいこと思いついた!」


彼女は得意げに片手を掲げた。「ボウリングに行こう!」


さやかは腰に手を当て、ニッコリと笑った。「いいじゃない!」


普段は表情をあまり変えないしずかも、目を輝かせた。「私、ボウリング大好き」


隣を歩いていたかずきが、温かな笑みを浮かべて彼女の方を見た。


「ボウリングか、面白そうだな」と、りくやは眼鏡の位置を直しながら頷いた。


「賛成。でも、なんでボウリングなの?」ひかるが片方の眉を上げて尋ねた。


あやねは手を下ろすと、いたずらっぽい笑みを浮かべた。「だって、この私がボウリングしたいんだもん!」


らいとは眉を上げた。「つまり……ただボウリングがしたい気分ってこと?」


あやねは勢いよく頷いた。「そう! なんか、大きくて重たいものを思いっきり投げたい気分なの!」


みつるはニヤリと笑った。「なるほど、そういうことか」


その横で、めいがクスクスと笑った。


あやねは笑いながらくるりと向きを変えると、後ろ向きに歩き出し、みんなを手招きした。


「さあさあ、行こう行こう!」


みんなは彼女に続き、楽しげなお喋りや笑い声を響かせながら、ボウリング場へと向かっていった。


「そのあとは、カラオケに行こうか!」とかずきが提案した。


「いいよ!」ヒカルとサヤカが即座に賛成した。


「もちろん」ライトはニヤリと笑った。


「うん」アオイは微笑みながら頷いた。


アヤネはクスクスと笑うと、ひょいとアオイの背中に飛び乗った。


「わっ、ちょっと!」アオイは笑いながらアヤネの足を受け止め、姿勢を支えた。


「よし、行くよ~!」アヤネは片手を高く突き上げて声を弾ませた。「ボウリング場へ、レッツゴー!」


「おー!」みんなも声を揃えて拳を掲げ、彼女たちの後に続いた。


……………….


「さあ、みんな!」アヤネは腰に両手を当て、目の前に広がるレジャー施設を見つめながら、期待に満ちた瞳を輝かせた。


アオイたちは彼女の周りに集まり、楽しげな笑みを浮かべた。


「さあ、思いっきり楽しもう!」


みんな満面の笑みを浮かべて、施設の中へと入っていった。


「まずはボウリングシューズに履き替えないとね」リクヤがそう言いながら、シューズラックの方へ向かった。


アヤネは急いで彼の元へ駆け寄ると、満面の笑みでシューズを2足取り出した。


リクヤは彼女に微笑みかけ、自分の分を受け取った。


アオイもシューズを手に取り、ベンチに腰かけて履き始めた。


隣に座ったメイが尋ねた。「アオイ、ボウリングは初めて?」


「ううん、そうでもないよ」アオイはもう片方の靴を履きながら答えた。「都会の東京にいた頃、中学1年生の時にナオミと一緒にボウリングに行ったことがあるんだ」


メイは微笑みながら頷いた。「そうなんだ」


「あなたは?」葵が彼女の方を向いて尋ねた。


芽衣は指を顎に当て、少し考え込むように首を傾げた。


それから目を細めて微笑み、「実は、私、初めてなの」と答えた。


「えっ、マジで!?」満が目を丸くした。


「うん」


光はすでにボウリングシューズを履き、右手にグローブを締めながら、ニカっと笑って二人の方を向いた。


「よし! 思いっきりボウリング楽しもうぜ~!」


「おー!」


一行はそれぞれ選んだボウリングボールを手に、木製のレーンへと向かった。


レーンに到着すると、スコアリングシステムにそれぞれの名前を入力した。


まずは陸也の番だ。彼は軽く息を飲み込み、決意を込めた表情でレーンに立った。


「せーのっ!」掛け声とともに、ボールを放つ。


重いボールはレーンを転がり、7本あるピンのうち5本を倒したが、2本が残った。


「あーっ! 惜しい!」陸也は悔しそうに後頭部をかいた。


彩音が微笑みながら駆け寄り、励ますように彼の背中をポンと叩いた。


「大丈夫だよ! すごく良かったよ!」


陸也は彼女の方を向き、頬を赤らめながら、少し照れくさそうに、でも温かい笑みを浮かべた。


「おいおい、ラブラブな二人さんよ~!」後ろから満がニヤニヤしながら声をかけた。「そろそろ次の人にレーン譲ろうぜ!」


彩音は振り返って、「そうね! それに、次は私の番だし!」と返した。


彼女は自分のボールを手に取り、レーンへと足を踏み入れた。そのターコイズブルーの瞳には、強い決意が宿っていた。


彼女は滑らかな動作でボールを放った。


ボールは真っ直ぐにピンへと転がっていき――


ガシャーン!


7本すべてのピンが吹き飛んだ。


「ストライク!」あやねは両拳を突き上げ、満面の笑みを浮かべた。


「やるじゃん、あやね!」陸也が声を弾ませ、恋人を見つめて誇らしげに微笑んだ。


続いて、さやかが自信ありげな笑みを浮かべて前に出た。腕を振り、ボールをレーンへと送り出す。


ガシャーン!


6本のピンが倒れたが、1本だけ残った。


さやかは舌打ちをして、指をパチンと鳴らした。「あー、惜しい……!」


次に静香が進み出た。彼女は落ち着いた様子でボールを手に取り、レーンへと近づいた。


そして、振り返りもせずに、背後へと何気なくボールを放った。


ボールは滑らかにレーンを転がっていく。


皆がその行方を見守った。


ガシャーン!


7本すべてのピンが吹き飛んだ。


「うわっ!」さやかは笑い声を上げた。「すごいよ、お姉ちゃん!」


静香はレーンの方を振り返り、口元に小さな笑みを浮かべた。


続いて和樹が前に出た。構えをとって腕を振り、ボールを放つ。


ガシャーン!


5本のピンが倒れ、2本が残った。


和樹は少し照れくさそうに笑った。「まあまあ、かな……」


次は芽衣の番だ。彼女は緊張した面持ちでボールを手に取り、レーンへと歩み寄った。


「よし……」息を整え、ボールを放つ。


ボールは前へと転がったが、やがてゆっくりと横へ逸れていった。


芽衣の視線がそれを追う。


ポチャン。


ボールはガターへと消えていった。


静寂。


芽衣はその場に立ち尽くした。前髪の影が目元にかかる中、無理やり引きつった笑みを浮かべている。


こめかみには、ピキリと青筋が浮かんでいた。


皆は、緊張の混じった笑みを浮かべ、額にうっすらと汗を滲ませながら彼女を見つめていた。


「ガターだ!」ヒカルが声を上げて笑った。


メイはゆっくりと彼の方を向いた。その、無理に作ったような笑みは、寸分も崩れることはなかった。


ヒカルの笑い声は即座に止んだ。「ひっ!」


事態がこじれる前に、ミツルがさっと前に出た。


彼はボールを放った。


ガシャーン!


7本のピンがすべて倒れた。


「ナイス!」彼はニカっと笑った。


続いてライトが前に出ると、落ち着いた様子でボールをレーンに転がした。


ガシャーン!


またしても完璧なストライク。


ヒカルがニヤリと笑って前に出ると、ボールをレーンへと転がした。


ガシャーン!


またしても完璧なストライク。


その後も彼は投球を続け、一度も外すことなくすべてのピンを倒し続けた。


「7連続ストライクか……」リクヤは目を見開き、眼鏡の位置を直しながら呟いた。


「見事な7連続ストライクね」サヤカが口角を上げた。「やるじゃん、ヒカル。上手いね」


ヒカルは軽く肩をすくめた。「どうも。実際、結構簡単だよ」


「俺たちのグループで一番のボウラーってことか」カズキが言った。


その隣でシズカが頷いた。


ヒカルは誇らしげに胸を張った。「まあ、俺の最高スコアは190点だからね」


「190点!?」ミツルが驚きの声を上げた。「俺は150点だよ!」


「俺も同じだ」とライトが続いた。


「160点」アヤネとシズカが声を揃えた。


「140点」サヤカがニヤリと笑った。


「同じ」カズキとリクヤが同時に言った。


「別に、発表することなんてないけど……」メイはそう呟いた。笑顔を浮かべてはいるものの、苛立ちは隠しきれていない。


ヒカルは腰に手を当て、注目を浴びる状況を存分に楽しんでいる様子だった。


「まあ、ボウリングっていうのは精密さが命なんだよ。滑らかなスライドを維持して、腕の振りも――」


ガシャーン!


ボウリング場に大きな衝撃音が響き渡った。


全員がそちらを振り返る。レーンの前に立つアオイが、静かにボールを手に持っていた。


7連続ストライク。


「アオイ!」アヤネの目が輝いた。


「7連続ストライクだなんて!」サヤカも感心した様子で笑った。


メイはヒカルの方を見て言った。「どうやら、ここにいる天才はあなただけじゃないみたいね」


ヒカルの笑みが消えた。


目を見開き、あんぐりと口を開ける。「そ、そ、そんなバカな! ありえない!」信じられないといった様子でスコアボードを見つめる。「俺のパーフェクトスコアに並ぶ奴なんて、今までいなかったんだぞ!」


アオイはただ、まばたきをして彼を見つめ返した。


ヒカルは慌てて別のボールを手に取った。「よし!」


レーンに立つと、勢いよくボールを投げ放つ。


ガシャーン!


またしてもストライク。


彼はアオイの方を向き、得意げな笑みを浮かべた。「これを超えてみろよ!」


アオイは肩をすくめて、「いいよ」とだけ答えた。


ボールを手に取り、投球する。


ガシャーン!


またストライク。


ヒカルの目元がピクリと引きつった。歯を食いしばりながらボールを掴むと、再び投げた。


ガシャーン!


今度はピンが5本しか倒れず、2本が残った。


「えっ――?!」彼は目を見開いた。


「ヒカル、2本残しだ!」リクヤが声を上げた。


アオイは落ち着いた様子で、再びボールを投げた。


ガシャーン!


完璧なストライク。


ヒカルは彼女をちらりと見てから、自分のボールを投げた。しかし、ピンをかすめただけで、1本が残ってしまった。


「嘘だろ!」と彼は叫んだ。


葵は何も答えず、ただ前へ進み出ると、レーンに向かってボールを転がした。


ガシャーン!


またしてもストライク。


「葵ちゃん、ヒカルよりずっと勢いよくピンを倒すね……」と、感嘆の声を漏らす静香。


「ああ……」と、カズキは頷きながら呟いた。


ライトは葵をじっと見つめていた。その瞳には、感心の色がわずかに浮かんでいる。


ヒカルは歯ぎしりをして、再びボールを投げた。


ガシャーン!


ピンが2本、残った。


「そんなバカな!」と彼は声を上げた。


葵は落ち着いた様子で前に進み出ると、もう一度投げた。


ガシャーン!


またしても完璧なストライク。


ヒカルは葵の方を向き、指を突きつけて言った。「何かズルしてるんだろ! そんなのありえないって!」


葵は彼を見て、まばたきをした。「何もしてないよ」


アヤネはニヤリと笑った。「すげーよ、葵! あんた最高!」


「最高スコアはいくつなの!?」とミツルが尋ねた。


葵は彼を一瞥して言った。「パーフェクトゲーム」


その場に静寂が訪れた。


そして――


「パーフェクトゲームだって!?」サヤカとリクヤは、信じられないといった様子で目を見開いた。


「冗談でしょ!」とメイが笑った。


「えっ、300点まで出したってこと!?」と、ライトが声を上げた。


ヒカルは再び彼女を指さし、「そんなのありえない!パーフェクトゲームなんて、できるはずがない!」と叫んだ。


アオイは片方の眉を上げ、口元にうっすらと笑みを浮かべた。


「信じられない?」


彼女はボウリングのボールを掲げ、その表面に刻まれた数字を見せた。


18ポンド。


「18ポンド!?」全員が声を揃えて驚いた。


(ずっと18ポンドのボールで、ピンを完璧に倒し続けていたのか……!?)と、ライトは心の中で思った。


(一番重いボールじゃないか!)アヤネとリクヤも同時にそう思い、あんぐりと口を開けた。


ヒカルもまた、開いた口が塞がらない様子だった。


アオイは再びレーンに向き直った。何気ない、落ち着いた動作で重いボールを振り出し、それを放った。


18ポンドのボールが、レーンを滑らかに転がっていき――


ガシャーン!!


すべてのピンが勢いよく弾け飛んだ。頭上のスコア表示が明るく点滅する。


パーフェクトゲーム

アオイ — 300


「本当にパーフェクトゲームを達成しちゃったよ……」リクヤが呟くと、彼の眼鏡が鼻筋を少しずり落ちた。


「信じられない……」ミツルも呟いた。


ライトは瞬きをし、その瞳には感嘆の色が浮かんでいた。


「アオイ!」サヤカが笑いながら駆け寄り、アオイの首に腕を回して横から抱き寄せた。


「今の、最高にかっこよかったよ!」サヤカは満面の笑みを浮かべた。


「どうやったの!?コツを教えてよ!」アヤネがノートとペンを手に、興奮した様子で駆け寄ってきた。


メイは、サヤカに抱きつかれたままのアオイの周りにみんなが集まっていく様子を眺め、小さく微笑んだ。


「本当にすごい人だね……」そう言ってから、メイはヒカルの方に目を向けた。ヒカルは床にうつ伏せになって、ぐったりと倒れ込んでいた。


「これで少しは、その鼻っ柱も折れたかな?」メイはクスクスと笑った。


............................


ゲームセンターでしばらく過ごした後、一行はその場を後にした。葵に負かされたことをからかわれ続けるヒカルを囲んで、みんなは楽しげに笑い声を上げている。


金髪の少年は肩を落として歩いていたが、時折、葵が彼を励ますように背中をポンと叩くたびに、周囲の笑い声はさらに大きくなった。


次に彼らが向かったのは、カラオケ店だった。


それぞれが歌いたい曲を選び、順番に思い切り歌い上げる。部屋の中は、笑い声と音楽、そして楽しげな歌声で満たされていった。


やがて葵も一曲選び、マイクを手に取って歌い始めた。彼女の甘い歌声が部屋いっぱいに響き渡る。


皆が葵の方を向き、心を込めて歌う彼女の姿に耳を傾けた。


ライトは静かに彼女を見つめていた。その茶色の瞳には、温かな色が宿っている。


カラオケの照明の下、葵のラベンダー色の瞳が輝いていた。彼女はそのまま歌い続けた。


……………..


日が沈み始め、空は柔らかなオレンジ色とピンク色に染まっていた。一行は、それぞれ帰路につくために別れ始めた。


「またね!」アヤネが葵とライトに手を振ると、足早に自分の帰る方向へと駆けていった。


他のメンバーもそれに続き、それぞれ家路へと向かっていく。


葵とライトは顔を見合わせて微笑むと、再び歩き出した。


しばらくの間、二人は何も言葉を交わさなかった。並んで歩く足取りは、自然と心地よいリズムを刻んでいる。


ライトは、ちらりと葵に視線を向けた。


彼女は満足げな笑みを浮かべ、リュックの肩紐に両手をかけたまま、前を見つめていた。


彼もまた前方に視線を向け、口元に小さな笑みを浮かべた。


「歌えること、すっかり忘れてたよ。さっきはすごく良かった。」


葵は微笑んだ。「ありがとう。あなたもなかなか良かったわよ。」


ライトはクスクスと笑った。「それにしても……あのパーフェクトゲームって一体どういうこと?」


彼はニヤリと笑みを深めた。「もしかして、何かズルでもしたんじゃないの?」


葵は頬を膨らませると、小走りで数歩先へ進んだ。そして振り返り、彼の方を向いたまま後ろ向きに歩き続けた。


「ちょっと! 最初から最後まで、私が正々堂々と勝つところを見てたでしょ?」彼女は不満そうに唇を尖らせた。


「まあね。でも、18ポンドのボウリングの球でパーフェクトって……」ライトは再びクスクスと笑った。「君、化け物かよ?」


葵はわざとらしく驚いたような声を上げた。「『化け物』!? 『プロ級』って呼んでちょうだい!」


ライトは声を上げて笑った。


葵は拳を握りしめ、再び頬を膨らませた。「ちょっと! 笑わないでよ! 私のせいじゃないわ、ただボウリングが得意なだけ!」


後ろ向きに歩いていた彼女は、かかとの後ろにある小さな石に気づかなかった。


足がその石に引っかかった。


「わっ――!」葵の体が後ろに傾いた。


「危ない!」


ライトは即座に手を伸ばして彼女の手を掴み、倒れるのを防いだ。もう片方の腕は、とっさに彼女の腰を支えていた。


葵は目を大きく見開き、彼を見上げた。


ほんの一瞬、二人はそのまま動かずにいた。


ライトの頬が赤らんだ。彼は素早く彼女の姿勢を立て直してやると、すぐに手を離した。


「……もっと気をつけろよ」彼は頬を赤らめたまま、視線をそらしてつぶやいた。


葵は地面に視線を落とした。彼女の頬も、じわりと熱を帯びていた。


「う、うん……。ありがとう」彼女はそう小さくつぶやいた。


「……ん」ライトは両手をポケットに突っ込んだ。


二人はそのまま歩き続けた。


再び、二人の間に静寂が訪れた。並んで歩く彼らの周囲には、ひんやりとした夕暮れの空気が漂っている。二人とも、視線は地面に向けたままだった。


ライトは唇を引き結び、ちらりと横にいる葵に視線を走らせた。


葵は地面を見つめたままで、その手は体の横で軽く揺れていた。


ライトはすぐに前を向き直り、静かに息を吸い込んだ。


「さて、どう切り出そうか……?」心臓が激しく高鳴るのを感じながら、彼はそう考えた。


ふと、母親の言葉が脳裏をよぎる。あの時、期待に輝いていた母の青い瞳が思い出された。


.........................


「葵ちゃんをデートに誘ってみたら?」と、恵子は提案した。


「えっ?!」ライトは目を見開き、頬を瞬く間に赤らめた。


「ほら、二人でもっと一緒に過ごしてみたらどうかな?」恵子は両手を合わせた。「映画に行ったり、公園を散歩したり、二人で楽しい時間を過ごすのよ」


「つまり、葵と二人きりで、ってことだ」と、ソウシロウがカップを口元から離しながら付け加えた。


「父さんも賛成なの?!」ライトは父親の方へ視線を向けた。


ソウシロウはただ肩をすくめた。


恵子はライトに歩み寄った。「別に深い意味はないわよ。葵ちゃんのこと、大切な友達だと思ってるんでしょう?」


ライトはまばたきをした。「まあ……うん。もちろん」


恵子は温かな笑みを浮かべた。


「二人で過ごせば、もっと絆が深まると思うの。いつもは友達グループみんなで一緒にいることが多いけれど、たまには二人きりで過ごしてみるのも悪くないでしょ?」


ライトは唇を引き結び、頬を赤らめたまま視線を落とした。


「……そうだね」


恵子の笑みが一段と輝いた。「じゃあ、誘ってみなさい!」


……………


母さんに、葵と二人きりで過ごしてみたらって言われたんだっけ……。


あの月曜の夜のことを思い出し、ライトの頬をひと筋の汗が伝った。


母さんはすぐに「葵ちゃんを誘ったの?」と尋ねてきた。期待に満ちたその表情は、今でも忘れられない。


火曜日も、同じことの繰り返しだった。


水曜日も。


そのたびに、母さんの期待に満ちた表情は、一向に進展のないライトに対する苛立ちへと変わっていった。


誘ってみるべきかな……。ライトは首の後ろをさすりながら、再びちらりと葵の方を見た。


彼は静かに息を吸い込んだ。「葵……」


その落ち着いた声に、葵が反応した。二人は同時に足を止めた。


「ん、ライト?」葵は彼の方を向いた。


「あのさ……」ライトは少し言葉をためらってから、続けた。「明日、どこか出かけない?」


彼の声が少し優しくなった。「二人きりで」


葵は息をのんだ。頬がほんのりと赤らみ、それから彼女は微笑んだ。


「いいよ! ぜひ行こう!」


葵がくすくすと笑うのを見て、ライトはまばたきをした。


……即答か。


彼の顔に、ゆっくりと笑みが広がった。


「よかった」


葵がうなずくと、二人は再び歩き出した。


「明日、どこに行くのかな?」葵は両手を背中で組みながら言った。


「それは心配しなくていいよ」ライトはそう請け合った。


「へえ、そうなの?」葵はニヤリと彼を見つめた。「じゃあ、覚悟しておいてよね、ライト」


ライトは舌打ちをした。「もちろん。それはこっちのセリフだよ」


二人は声を上げて笑い合い、その笑い声が夕暮れの空気に静かに響いた。

このシリーズを始めて以来、追記で補足説明を添えてこなかったことを、心からお詫び申し上げます。どうかお許しいただければ幸いです。


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