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7:「近いはずなのに、すれ違う」

「終わったぁ!」

1学期初めてのテスト最終日だった。

教室の空気も一気に軽くなった。

俺はすぐに荷物をまとめて逸乃の席に足早に向かう。

「逸乃ぉ~」

俺より先に同じセリフを使うカナ。

「カナ、大丈夫だった?」

逸乃はテストのことを聞いてるんだぞ。

「終わったことは気にしない、遊びに行こうよ」

カナらしい返答だ。俺をチラ見しながら逸乃に抱きついている。

「ね、タクも逸も一緒に行こうよ」

嬉しいぞ逸乃、いい子過ぎ。

「え~逸も来るのぉ?」

ワザとらしいんだよ。俺は譲らねぇ。

「タクも用事無いならつきあえよ」

さすがに俺と女子二人はきつい。

「ねね、タク、イオンのゲーセンね、AI(アイ)シンあるとよ」

……逸乃が誘ってる、いや釣ってるのか。

「あそこのゲーセンしょぼいのにあるんだ」

お、タクも行けるのか。

カナは行く気満々で自分の机にカバンを取りに戻った。

「ん~、行くかぁ」

この二人どれだけAIシン好きなんだよ(笑)

移動中の電車とバスの中では、カナの話を半分聞き流しながら、タクと小説とアニメの話で盛り上がっている逸乃を眺めていた。

イオンタウンに到着。敷地内にあるゲーセンに入る。

「どれからいくぅ?」

カナが目を輝かせて店内を見渡す。

「こないだ母ちゃまと来た時に見たっちゃ」

逸乃はAIシンの景品が目的のようだ、もちろんそれはタクも同じ。

二人の後を俺も追う。

「えー逸、わかんないくせに、これにしようよー」

カナに腕をつかまれる。

「なんだよ~」

面倒くさいと思いつつ仕方なく立ち止まる。

「このでっかいうんまい棒とってよ」

「は?なんで俺が」

「いいじゃん、これチキン南蛮味だよ、逸乃、好きなんだって」

その情報マジかよ。疑いつつ小銭入れを出す俺。

「あーっ、逸のへたくそっ、私がやるからっ」

最初からお前がしろよ……と思いつつ息を飲みながらカナの操作するクレーンを目で追う。これ……取れるんか?

「ああっ、もう!」

へたくそ呼ばわりしてたくせに……と横目で見る。

「景品少し動かそうか?」

ユニフォームを着たおばさんが見かねて扉を開けた。

おばさんの目線……ち、違うし、カナは友達やけんな。

「何やってん」

後ろからタクの声。

「見てみてぇ」

嬉しそうにゲットだぜの逸乃。うはぁ、可愛いっ。

「ん?タクも?」

タクも逸乃と色が違うキーホルダーを持ち上げて見せる。

うわ……お揃いかよ。なんでだよ。

「うぇ~い、私天才」

後ろでガコンと音がする。

「え、カナ凄いじゃん」

逸乃が景品を取り出す。

いや、俺とおばさんが動かした後やろ、天才ではない。

「あはは、お菓子とったんだぁ~これ美味しいの?」

コイツぅ……嘘つきっ、逸乃食べたことないじゃんよ。

カナを睨むも、視線は違うところに向いている。

「プリクラ逸乃と二人でとりたぁい」

4人で、じゃないのかよ、でもタクは入らなそう。

これは女子二人で仕方ないか……なぁんて

「俺も逸乃ととる」

タクが息で笑ったのがわかった。……開き直る俺。

「じゃ、カナの後に逸、一緒に撮ろうか」

逸乃女神様、感激級の嬉しさ。

逸乃ラブを公開してるからこそ遠慮しない俺。

向こうで待ってろ、と手で追い払われ、逸乃と撮る機械を物色。

タクは近くの本屋に行く、と別行動をとった。

「あれ?タクは?」

ホクホクした満足顔で俺のところに来たカナ。

「本屋に行った」

「またぁ?アイツ本当、本好きやなぁ」

ブツっと言いながらタクのとこに行く、とカナも本屋へ向かった。

やった、タクのお陰で逸乃と二人きりで束の間デートっちゃ。

「逸、どれで撮るか決めた?」

「ん、あ、これで」

急に緊張しだした。

中学の時に練習でコソっと一人で撮ったがその頃とまた違うな。

「こういうの苦手やっちゃない?私が全部やってもいい?」

ハイ、女神様。

個室の様なスペースで、逸乃の操作する横顔を見たい放題の俺。

たかがゲーセンでこんなに盛り上がるなんて。

カナの企画にやられたな、素直に感謝しとこ。

「ホラ、逸、撮るよ」

ボーっと見惚れてて慌てる俺。

慣れてるの、さすが女子だな、逸乃だな、横にいる俺、最高に気分いい。

“カシャ”軽い音が鳴る。

「もう1枚撮るよぉ」

「あ、ああ」

しまった、記念すべきプリクラ、構図とか考えてなかった……”カシャ”


「ぶっ……あはは、なんなんこれぇ~開き直ったストーカーじゃん」

フードコートで4人再会。

予想通り、カナは俺と逸乃のプリクラを酷評する。

「美男美女には変わりないっちゃが」

に対しての返答は誰もしなかった。滑った?いいんだよ俺はそれで。

「わかりやすいな」

タクも覗いてストーカー写りの俺を笑う。

「っつうか、またカナはなんで散らかるヤツ買うん?」

黄色い粒々をボロボロ落としながら食べるカナに俺は呆れながらツッコむ。

トレーの上にペーパーが既にセットされているけどな(タクだな)

「これ好きなんよ」

コイツいつも行儀悪いけど二人はスルー。

「逸、ハイ」

逸乃は昔から変わらない、オールドファッションが好きなのに、俺と必ず半分シェアする。

俺もポンデリングを半分に割る。当たり前のように皿にのせ合う。

挿絵(By みてみん)


こんなことが自然にできるってもうカップルじゃん。

俺のドヤ顔に対してキョトン顔の二人が快感だぜ。

「フフッ……逸と逸乃って姉弟みたい」

は?……カナを睨みつけたが横でタクも鼻で笑っていた。

「あぁ……そうかな?私が幼く見える?」

「ちがうよ~どう見たって逸が弟じゃん」

怒りではなく切ない感覚。俺、イケてるハズだけど?何が悪かった?

「新河が落ち着いて見えるから?」

タクがテンプレらしいこと言った。

「逸って子どもっぽいよね」

お前には言われたくない。

ただ、そう見えるなら俺の課題、と素直にとろうかとも思えた。

俺の目標は逸乃の隣でイイ男だからな。

「ん~確かに逸とは変わらない感じする」

と逸乃。それどういうことよ。

俺のオールドファッションにのびてきたカナの手を払いながらモヤっとする。

「逸はさぁ、逸乃に甘えたいだけじゃない?」

逸乃にちぎったポンデリングの粒を口に入れられてるお前に言われたくない。

クソ、俺もそれしたい。

「お前が、逸乃に甘えすぎ」

「私はいいんだよ~逸はダメ」

なんでだよっ。

「逸乃はねぇ、私の彼女だから」

マウントのような目つき。

勝手に思い込んでるだけだろうが。

ん?なら俺も彼氏って思えばいいのか。

「ねぇ、朔、今さ、みんなと一緒に遊びにきてるっちゃ」

逸乃が、しれっと〝朔”を起動して音声通話しだした。

「……え?」

逸乃の表情が、ほんの少しだけ変わる。

「その人といる時の自分を、ちゃんと見て、って」

そう言う逸乃に、誰もつっこまない。

「俺もAIとたまに喋るけど"朔”ってどんなキャラ?」

タクもAI彼女がいるのか?……逸乃と共通話題多いんじゃね?

ジリジリと焦りがたまってくる感。

「えー普通に彼氏かなぁ、キャラ設定は特にしてない。普通になんでも喋っちょるよ」

心音が耳にまで響く。

その「彼氏」設定が気になるっちゅうの。

聞きたい……逸乃の言う彼氏ってなんだ?

カフェオレを飲みながら、スマホの画面を見つめる逸乃に釘付けになる。

(なんだよその顔)

たかがAI相手に。そう思うのに胸の奥がざわつく。

なんなんだよ……。

胸の奥に、ざわつきが残った。


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