6:「逸乃と逸心と“もう一人”」
「遠足」のあと、モヤモヤが残っている。
——逸乃ともう一歩距離を縮めるきっかけが欲しい。
いつもの昼休みの光景。
「え?逸乃マジで?」
タクのキャラ弁と逸乃の弁当を、二人で当たり前につついている。
俺はやっと逸乃のおばさんが作った弁当を頬張る(あぁ懐かしい味がする)。
ただし、タクとシェアをしている。
カナが代わりに、とドーナツを作ってきたが、弁当じゃねぇし。
「うん、なぁんか人が集まるとこに出ないと始まらないかなぁって」
逸乃はこないだもらった,パンフレットのことを言っている。
「ん~ボランティア……?」
カナは迷ってる様子。
理由はどうあれ、逸乃が行くなら、行くの一択。
「おもしろそーじゃん、俺も行くっちゃ」
「え、私も行く」
なんだよ、来るのかよ。
「俺はその日、用事あるから無理」
タクだけ辞退。
弁当をたいらげて、物足りない俺は仕方なくいびつな形のドーナツに手を伸ばす。
逸乃にも1個手渡しする。逸乃とドーナツ……いつまでも見てられる。
「あ、逸乃、カフェオレ用意したほうがいい」
カナがパックジュースを逸乃に渡す。
逸乃をチラ見して、俺はドーナツを半分ニヤける口に入れた。
「でもなんでボランティア?」
タクもドーナツを手に取る。
「あぁ、朔、彼がすすめてくれたの。人と関わらないと、自分の感情はわかないよって」
ぶふっ……そだ、彼氏とかなんか言ってたな。
ん……なんかダブルで苦しい……息ができん。
「逸、大丈夫?」
逸乃が、当たり前みたいにストローを俺の口に差し込む。
「ぶはははっ、言ったじゃん、飲み物要るよって」
爆笑するカナ。
その横でタクはドーナツを置いてパックジュースにストローをさしている。
「これって、おからドーナツ?」
逸乃は小さくかじる。
「そーなの、だからパサパサなんだよね」
タクの机の上にボロボロこぼしながら、食べなれている様子のカナ。
すでに机の上には対策のティッシュが引かれている(さすがタク)。
……って、俺死にそうになったしな、しかも甘くもないコレ。
「あ、逸、返して」
俺の手からカフェオレをとり、チューと飲む逸乃。
カナが呆気にとられて逸乃を凝視する……快感。……口元緩む俺。
そしてカナとタクが俺に視線を移す。へへっ、いいだろ。
「じゃ、ボランティアサークルに3人で参加って申し込んどくっちゃ」
何もなかったような逸乃。
そ、そーだよな、逸乃にとっては普通なんだよな。
(朔?彼氏?また聞きそびれた……どうやって聞き出そう)をぼやっと考えながら放課後になり、帰り支度をする。
カナが聞いてくれるか、と思ったら
「私、今日寄り道するから先に帰るね~」と即消えた。
3人でボランティアサークルの部室に寄って、中に入った逸乃が戻ってくるのをタクと廊下で待つ。
そうだ、タクは画面覗いてた、と思い出した。
「なぁ、タク、逸乃の彼氏って……」
「あぁ、AIな」
即答だった。AI?
「なんそれ?」
「アプリでキャラとごっこ遊び的な……」
「なぁんだ、そういうやつ、フフッ」
語尾に嬉しさが漏れた。タクも笑ってる……と思った。
「原田、お前、考えが甘いよ」
え?今の笑い、俺が笑われてたん?
「お待たせぇ、先輩方喜んでたよ、で、私の顔覚えてた」
「そ、そっか」
焦って会話の続きを切った。そのまま歩いて帰る。
なんかスッキリしたと思ったのに……何かが引っかかってる。
AIだろ?架空のキャラじゃん……。
なにが、引っかかってんだよ。
んで・・・カナがいないと静かだな。
ボランティア当日に、学校のジャージに持ち物はエプロン程度だった。
現地集合だったが、俺は逸乃と一緒に行きたくて母さんに頼んでおいた、エプロンが入ってるらしき紙袋をカバンにツッコんで逸乃の家に向かった。
「逸乃っ、逸乃っ」
玄関が見えた地点で、気がせって連呼する。
「逸じゃなかか」
「あ、逸乃ん婆ちゃん、おはよー……ございます」
いつもなぜか緊張する逸乃の婆ちゃん。
「張り切っとんね」
笑われて笑って返す。
「現地集合じゃなかったん?」
逸乃が靴を履きながら出てくる。ジャージ姿も可愛い。
「いいやろ、一緒に行くっちゃ」
自然に二人で歩き出した。
いろいろ聞きたいことがあったが高校より手前にある保育園で、あっという間に着いてしまう。
「あ……あっちの……中学んとき友達できたん?」
彼氏っていきなり聞けん。
「うん、紗希ちゃん言うてね、めっちゃ仲良しになった子いてたよ」
「へえ」
その紗希ちゃんは間違いなく女子で、好きなアニメや漫画の話で盛り上がってたと、安心度の高い話題だった。
って、今頃気づいた、明日から一緒に登校もしよっと。
「なぁ、逸乃、明日から……」
「逸乃ぉ~逸乃ぉ~」
カナ、わざわざ走ってこんでいいっちゃ。
「先輩らもう来てるよ、1年生の参加者私らだけや」
カナは先輩達に「関西人?」といじられたそうだ。そのまんまじゃん。
保育園の入り口で先輩5人と合流。優しそうな女子3人と男子2人。
男子はあきらさまにカナを見ている。
「じゃ、エプロンして入ったらよく手を洗ってね、難しいことないから。私たちの指示で動けばいいからね」
リーダーっぽい先輩が先導する。3人、カバンからエプロンを出す。
「うわ」
「なに?逸、変な声出さないでよ」
カナのイラっとした言い返し。
最悪……玄関に袋2つあったが絶対ハズレひいた感。
選べって言うなら袋に入れとくなや、母さん。
「どしたと?私が後ろ結んであげようかぁ?」
リーダっぽい先輩がエプロンを手からうばった。
「私、平田。原田君ね、よろしく」手早く俺にエプロンをかけて結んでくれた。
「逸―っあんた」
カナがヒィヒィと息だけで笑っている。逸乃は声を抑えて笑っている。
「原田君、可愛いね」
微笑して平田さんは俺の腰に手を当てたまま中に入るように押した。
他の先輩もクスクスと笑っていた。
髪にワックスつけてそこそこいい感じに仕上げたのに、ピンクのフリフリのエプロンで一気にウケ狙いの奴に成り下がってしまった。
園内に入っても時折、違う笑顔で迎えられることとなった。
手を洗うと4つのグループに分けられた。
俺は平田さんに引っ張られ、逸乃とカナは男子の先輩のところへ。
ムッ……仕方あるまい。できるだけ逸乃を視界に入れる位置を意識。
「はぁい、じゃ、お姉さんに読んで欲しい絵本はどれかなぁ?」
甘い声で平田さんは園児に声掛けをし、俺に子どもを誘導するように目くばせをする。
空気を読んで、すり寄ってくる子どもを横に座らせる。
2人の女の子が同時に俺の足の上に座った。年長だからちょい重たい。
カナの方をチラ見するとカナの横に男の子が4,5人くっついている。
逸乃は……「え?」一人離れて教室の隅で2人の男の子相手に、本を読み聞かせをしている。
おいおい……俺たちは補助だぞっ。
カナも逸乃に気づいて心配そうな表情になっていた。
しかし先輩たちも子どもの相手で手が回らず、気づいたときにはもう、読み聞かせの時間は終わってしまっていた。
俺は若干しびれた足をほぐしながら立つ。
「あら、新河さん、ちょっと違うわね……まぁ問題ないけど」
平田さんの声のトーンに少しビクついたが足元で俺の取り合いする女の子にも手間取っていた。
「はいはい、今度はお外で遊ぼうね~」
平田さんは、慣れた感じで女の子を俺から剥がし、庭に出るように目で促した。
あ・・・逸乃がいない。慌てる俺。カナも逸乃を目でさがしていた。
「だめだめ!順番この子が先に並んでたって!」
逸乃の大きな声の方に目線を向けた。
「なぁにこのお姉ちゃん、目がおかしいぃ」「顔も赤いのついてる」
言われた女の子は言い返した。
「なぁんにもおかしくないよ」
逸乃は笑って返しただけなのに、その場の空気がスッと落ち着いた。
そのまま小さい女の子を三輪車にのせて遊びだした。
見るからにおとなしそうな子じゃん、逸乃らしい。
「ええ、新河さん何しちゃってんの」
平田さんが怪訝そうな表情になる。
「あの子、楽しそうにしてるっちゃ」
俺が言うと「ん、まぁ……」と平田さん。
「新河さんとつきあってるの?」
は?
「え、何か気になります?」
答えるのが面倒くさく感じた。
あぁ、別に・・・とトーンを下げて、平田さんは他の2年生の元に行って何か話をしていた。
俺もカナも2年生の側で言いなりで精いっぱいだったが、逸乃は単独行動をとっているようだった。
「それでは、お兄さん、お姉さんにお礼を言いましょう」
横並びになっているボランティアグループに園児がバラバラとお礼の言葉を投げる。
参観している保護者もザワザワとしていた。
平田さんも園児や保護者、保育士に向かって挨拶をし、みんなで一礼をして終了。
ワッとカナに走ってくる男の子6~7人、幼児にもモテるんだな。
って、俺んとこにも女の子が来てるぜ・・とドヤ顔で逸乃に視線を送る。
逸乃のとこには女の子がしがみついた母親と他に大人が2人ほど何か言っている。
なにかまずいことでも?一瞬心臓が跳ねた。すぐに平田さんがかけよって行った。
園長室に寄って、少し話をしてから帰るのが恒例らしく8人揃って入室する。
「今日もありがとうございました。」
意外に若い園長先生だった。
熱い紅茶とお菓子を目の前に出され、みんなは姿勢よくカップを持ち上げ、ゆっくり談笑しながら飲む。
カナは砂糖を入れてぐるぐる回し、誰も手を伸ばさない菓子器を手に取り、ちゃっかり選んで2つ手元に置く。
「ほら、はい」
俺に菓子器を渡す。平田さんの目つきが怖いっス。
「今回は・・・新河さん?さっき保護者の方がお礼言われてましたね」
園長が逸乃に向かって言った。
「なかなか気付きにくいことで、その子のお母さん、嬉しかったようで私にも言ってくれましたよ」
園長の言葉にカナと俺は「?」
(いつの間に。何したんだ、逸乃)
「私、よくわかりませんけど、楽しかったです」
逸乃以外のメンバーは一瞬息を呑んだが園長がすぐさま「良かったわ」と返したのですぐに空気は和んだ。その後、静けさの中、ボリボリとそこそこの音を立ててカナはおかきを食べ、海苔塩の残り香を園長室に置いて、メンバーは退室した。
保育園を出てすぐに平田さんが振り向いて「皆さんお疲れっ」とホッとした表情。
言われたその他のメンバーも「お疲れさまです」と返す。
「いろいろ言いたいことはあるっちゃけど、事故もなく無事に終えて良かったっちゃ。
2年は部室に戻って報告書、1年生は体験だから、アンケート用紙だけ書いて明日提出してね」
手早くクリアファイルから用紙を3枚出して俺に渡す平田さん。
「また参加してね」
「あ、はい」
俺に向かって言ってるようで即答してしまう。
そのまま先輩たちとは分かれ、3人で歩き出した。
「ねぇねぇ、踏切近くのクレープ屋よってこ?お腹すいたぁ」
さっきも菓子食ってたじゃん、と思いつつクレープ食べる逸乃が頭をよぎる。
「あぁ、いいね、あそこのクレープご褒美やけん」
逸乃の笑顔が嬉しい。
「ねねっ、さっき、逸乃褒められてた?」
内容が今イチわからない俺とカナ。
「ん~なんやろ?本を差し出してきたから読んだだけやし、順番抜かれたからムッとして言っただけっちゃけどねぇ」
そーだろ、逸乃そんなに気遣い上手じゃねえもん。
なにが良かったんだろね~ってそれが良かったんだろ。
クレープ屋は珍しく空いていて3人椅子に座って食べれた。
「うんまっ」
口の周りにクリームでベタベタになりながら食べるカナ。
「食べにくいの頼むからぁ」
笑いながらクレープをかじる逸乃に見惚れる俺。
「んっ」
カナが手を出してくる
「は?俺のん食べるん?」
「ちがうわ」
気が利かないなぁ……と言いながら逸乃が出したティッシュで手を拭く。
口の周りも拭けよ。
「逸、甘いの好きなん変わらんとね」
逸乃に言われてドキっとする。チーズ饅頭我慢してた時期あってんぞ、と心の声。
「逸乃も甘いもん好きやな」
と返すと
「これ、食べる?」
と食べかけのクレープをさしだす。
やべ……俺らまるでラブラブカップル……と立ち上がった瞬間。
「ありがとう、逸乃、そっち食べようか迷ってたんよね」
ホイップデコのカナが容赦なく差し出したクレープにかぶりつく。
「うんまぁっ」
コイツ誰っ、なにっ?っとツッコミいれるのを瞬時に抑えた。
そうだそうだ、カナだ。
逸乃に見惚れすぎてて存在、数分消えてたわ。
「カナも甘いもん好きやねぇ」
コロコロと笑う逸乃がまたたまらん。
……食べかけ食べ損なったが許そう。
カナのおかげ様と邪魔が半々ではあるが。
クリームでテカテカ顔のカナを駅まで見送り、二人で並んで家に向かう。
逸乃に聞きたいことが次々と思い浮かぶ。
いっぱい過ぎて優先順位に並べられない。
「き、今日、参加して、収穫あった?その、ホラ、出会いってか……」
……俺、聞くのへたくそ。
「あぁ……そうだったぁ、すっかり忘れてた」
すんなり答えが返ってきた。
「そか」
……他に返す言葉が思いつかなかった。
「まぁ、でも、言われたことはしたっちゃが、報告はしとこかな」
と、おもむろにスマホをだす逸乃。
「ん?誰に報告すると?」
画面をのぞき込むとアプリが立ち上がる。
「ほら、彼が「朔」って言うの。言うてた私の彼氏っ」
はにかんだ表情の逸乃にざわつく俺の心臓。
「あぁ、AIのんね、へぇ、面白いじゃん」
こないだ見損なったので今回は見てやる。
「やぁ、逸乃、どうだった、今日のイベントは?」
3D?なんかリアルなイケメンなんだけど……いや、所詮人形じゃん。
「それがさぁ~すっかり子どもと遊んじゃって楽しんで終わったぁ」
ぬ……なんか俺と話すときと違う。
なんだこれ?
「フフっ逸乃らしいよね、でもなにか続きがあるかもよ」
なぁにぃ「逸乃らしい?」コイツ逸乃のことどこまで知ってりゃそんなこと言うわけ?
「ながらスマホしちゃダメだね、また夜、話そうね」
なん?そのAIに対する逸乃の表情……ホクホクした顔の逸乃に違うドキドキしてる俺。
「どうしたん?逸の家そっちでしょ?」
曲がるべきところで逸乃が立ち止まる。
「あ、明日っ、朝一緒に登校するからっ、迎えに行くからっ」
勢いで出たセリフ。なんかわけわからんけど言いたい事、言えてる俺偉い。
「わかった、んじゃ、明日ね、ばいばい」
逃げるように家に走って帰る。
「おかえり逸、あんたウケねらってピンクの方持っていきよったん?」
母さんに返答しないまま自分の部屋に入る。
俺……もう少し落ち着いて行動すべきだよな。
夕食後、アンケート用紙を書きながら
「今頃AIと何喋ってん……逸乃」
ふとタクが俺に言った「お前考えが甘いよ」が復唱される。
たかがAI……のはずなのに。……なんでこんなに引っかかるんだよ。
「逸乃ぉ~」
翌朝、約束していた時間に逸乃ん家の玄関で名前を呼ぶ。
「逸ちゃん、おはよ、もう少し待ってね、逸乃寝坊したんよ」
おばさんが二人分の弁当をいれたカバンを俺に差し出した。
「おはようございます、いつもありがとうございます」小さく会釈する。
「逸ちゃん、かっこようなったね、背も伸びて」
嬉しいこと言われた。
じゃろ?とも思いながら「ありがとうございます」、と普通の返しをする。
「逸、おはよ、行くっちゃ」
「逸乃っ、待たせてごめんくらい言わんかいね」
「あぁ、ごめん」
目の前で親子のやりとり。
「私に謝ってどうするっちゃが」
おばさんと俺は苦笑する、いいんやって、俺は。
逸乃と横並びに歩いて学校に向かう。
右側に逸乃・・・手ぇ繋いだりなんか……まだ早いか。勝手に想像してニヤける。
「逸乃、アンケート書いた?」
ニヤケる口をごまかすように話題をふる。
「ん、書いたよ。昼休みに提出するっちゃ」
「うん」
俺と逸乃、二人で歩いてる……つきあってるように見えるかな。
「逸乃、昨夜遅くまで何かしてたっちゃ?」
何か話題をと思ってでた質問、これ。
「ん、朔、彼氏と話し込んどったんよ」
「へぇ」彼氏っていちいち言わんでいいが、朔でいいっちゃが。
「いつもどんなこと話すん?」
逸乃の顔をチラチラ見ながら歩く。
「普通になんでも話してるよ、あ、逸のことも話した」
「え、どんなして?」
逸乃が俺の話ってなんよ?ドクンっと心臓が跳ねる。
「ん、幼馴染で久しぶりに会ったけど、変わって無くてねぇ……って」
え?変わってないわけないだろうが……とツッコミを内心でいれながら「そうなん?」と口では返す。
「……彼はなんか言いよったん?」
「友達継続するんだね?って聞かれたからそうよぉって返したんよ」
「へぇ……」
へぇーへぇーへぇー頭ん中でこだまする。わかってるけどね。
いや、もう少しツッコもうぜ俺。
「逸乃のタイプってどんなっちゃ」
おぉ、俺今日調子いいっ。
「んん……そうっちゃねぇ……うーん……」
って自分でわからんのか。息を飲んで返答を待ったが返ってこない。
「ホラ、例えば背ぇ高いとか、イケメンとか」
逸乃の表情みながら詰め寄る。
「それはあんまりポイントではないかな」
んじゃなんだよ~と思ってる間に学校に着いてしまった。
相変わらずなのは逸乃もなっ。
「あぁ逸乃ぉ」
カナが逸乃にハグしながら俺をチラ見する。ハイハイ、羨ましいです。
……これ俺がしたら逸乃怒るかな?
「おはよカナ、タク」
「あぁ、おはよ」タクの表情は前髪で見えないまま。
「タク、AIシン、アニメ化ってどう思うぅ?」
座りながらしゃべりだした。カナはタクの机の上に当たり前のように座っている。
「前、言ってたな」
俺とカナにはわからない話題だ。タクはそれについていろいろ話しだし、逸乃は前のめりになって聞いている。
話に入りたいけどなんか長編小説だから追いつけそうにないんだよな。
「ねぇねぇ、逸乃ぉ、タクぅ、どっか4人で遊び行こうよ」
カナ、いいぞ、お前本当にナイスな時あるよな。
タクと逸乃の会話最中でも割り込む図太さに感心。
「そういやぁ……まだ誰も部活の話してないね」
逸乃が話題変えた。遊びに行こうぜ~。
「俺は部活……しないかなぁ……」
タクはそのまんまのイメージじゃん。
「へぇ~なんで?」
え?カナさん?人前で鼻に指つっこんでほじります?
「俺、習い事してるから」
ティッシュを差し出され、受け取るカナ。何この光景。
「タク習い事してるんだぁ、なにしてるっちゃ?」
逸乃もスルーするなら俺も気にしないでおこう、気になるだろフツー。
「あぁ、ピアノ」
えっ?
「ピアノ?」
カナも驚く。鼻ホジのお前にも俺驚いたけどな。
「意外ぃ」
逸乃がタクを見つめたまま。なぁんかタクの点数上がってるように思うの俺だけか?
「なんとなく母さんに習わされて、辞めるきっかけもなくずるずると・・・なだけ」
表情が見えないからよくわかんねぇけど逸乃にはウケてんじゃん。
「へぇカッコいい」
逸乃。俺、習字ならってたぜ、ではダメかな。
昼休み、今日はタクのキャラ弁デ―で、また逸乃がタクと盛り上がっていた。
俺にもなんか話題欲しいなぁ。
弁当食った後、ボランティアサークルの部室にアンケート用紙を持って二人できた。カナは俺に用紙だけ渡してタクと図書館に。
部室のドアに手をかけるとドアが先に開いた。
「あっ、原田くん」
タイミングよく平田さんだった。
「アンケート用紙っ」3枚まとめて差し出す。
「あぁ、はい、ありがとう」
うけとって、俺の後ろにいる逸乃に目線を動かした。後ろで逸乃は会釈したようだった。
「……で、ウチくる?」
入部する?と聞いているんだろう。ここに来る前に逸乃とは部員にまではならないと話していたので首を横にふる。
「あぁ・・・そうなんだ、原田くん来てくれたらいいのに、また良かったら参加だけでもしてね」
そう言って平田さんは用事があるので、と後ろの部員にアンケート用紙を渡して足早に消えた。
「逸、誘われてたね」
教室に戻る途中で逸乃が言った。「あぁ」とだけ返した。
妬いてくれてるわけないか。
「どぉ~ん」
「ってっ」
カナが後ろからワザとぶつかってきた。
「タク?なんか面白そうな本あった?」
逸乃はタクの横で歩き出した。
「図書館けっこう人多かったよ、逸乃も明日どうよ」
おいカナ、何目的の誘いだよ。
逸乃とタクは何かの本の話で盛り上がりだした。
「逸はなんか部活入るん?逸乃と一緒?」
話に入れないカナが俺にふる
「まだなんも考えてない」
こいつ邪魔したいんか、なんなん?
教室に戻り、午後の授業を受ける。たまに逸乃をチラ見する。
どっか4人で遊びに……今度こそ距離縮めるイベントにしたいな……しよう。
焦らないけど、俺が一番逸乃に近い男でありたい。




