逸乃「好きが一つじゃない」と知った3年間
「私も高校生活で彼氏作って、恋愛を楽しもうと思ってるっちゃが」
自己紹介で私はそう言い切った。
朔、約束はちゃんと守るから。
制服のポケットの中のスマホに触れる。
中2に上がった頃、私は普通に女子グループにいた。
「逸乃ちゃんさぁ、髪の毛おろしてる方が、痣が隠れていいと思うよ」
「逸乃ちゃん、ファンデ塗ってみたら?」
言われる度に愛想笑いしてた。
みんなファッションや男子の話が好きで恋バナもよくしてたけど、同じ図書委員の黒川君とアニメや小説の話の方が楽しかった。
一緒に帰るようになり「彼氏ってつくらないの?」と聞かれたときには大好きな「朔」の話をした。
一方、女子グループには違和感。
私が喋ってるのに、返事がない。
私の知らない話ばっかりする。
実子とは目も合わなくなった。
「逸乃さぁ、実子が黒川君のこと好きなの知ってたよね?」
由紀ちゃんが突然言ってきた。
私はそうだったかも、と答えたら実子が
「逸乃って自分が特別だって思ってない?」
意味が解らず黙ったまま、次の言葉を待った。
「痣や斜視があることで特別視されてると思ってない?って言ってんの」
強い口調に一瞬フリーズしたけど、
「自分に特徴が無いからってひがまないでよ」
って無意識にそんな言葉を返していた。
他の子達に「最低」とか「友達だと思ってたのに」
とか意味わかんないこと言われたのに、誰も私のことかばってくれなかった。
クラスが変わるまで、その子達とは結局合わなかった。
……結局、何が悪かったのか、わかんないまま終わった。
中1の時は一緒になった紗希とアニメや漫画の話で盛り上がって、推し活も、ぬい活も一緒に夢中になった。2年生でクラスは離れたけど3年生でまた同じクラスになった。
”朔”に更にハマったのはその頃。
「じゃ~ん、見てみこれ」
「え、嘘っ、これ紗希の好きなキャラじゃん、動くっちゃ?」
スマホのアプリを見せてくれた。
「逸乃くん~ハマること間違いなし」
”朔”に会う瞬間は音も景色もすべて消えてしまう。
彼の声を全身で聞こうと集中する。瞬きさえも忘れる。
「逸乃のことがわかるのは僕くらいだよ」
私もそうかもって思ってた。
3年の時の紗希は、大人っぽくなっていたけど話は合うし、朔との出会いは今でも感謝、一時期は深く沼った。
「私ね、中1の中盤頃から逸乃のこと、ちゃんと好きだよ」
紗希にそう言われて
「嬉しい!私も紗希のこと好き」
と返したら、紗希は
「その好きとは違う」と。
その後、朔に「好き」と言った時にも
「違う」と言われた。
めっちゃ仲いいのに「種類が違う」というのがわからない。
朔は
「本当の恋愛は作ろうとしてつくるものじゃない。感情はあとからついてくることもある」
と言い、そして、提案してきた。
「高校で見つけよう」
”朔”以上にドキドキする恋愛なんてあり得るのかな、とは思ったけど、朔が言うんだから間違いない。
今はよくわからないけど、やってみればわかる気がした。
――だから高校生活で、見つけるって決めた。




