18:夏休みの前に
今朝はなんか引っかかる始まりだった。
逸乃はぼーっとしてるし、学校着いたら金岡って奴が待ち伏せしてたし。
まさか逸乃、あいつと付き合うってこと無いよな。
っつうか、俺逃げることなかったし……バカ。
それにさっきの女子のは
「良かったら一緒に夏休み、遊びに行きませんか?」
って言われただけやき。
俺は逸乃とバイトするって決めてたっちゃ、断ってもおかしぃなかやもん。
……もしその子と遊びに行ったら逸乃は何か思うっちゃ?
「原田!」
「はいっ」
担任のトーンの大きさにビビッて立つ。
「またぼーっとしてたな」
「……はい」
「原田みたいに浮かれてたら事故るからな、責任の重さも中学生とは違うんだぞ」
何の話か聞いてなかったから黙ってるしかない。
「座って良し」
座りなおして机の上のプリントに目線を落とす。
夏休み、いろんなことが起きそうに思えてきた。
カバンに荷物を入れてると……
「え?また俺ん家?」
タクが逸乃に何か言われて返した言葉。
「どうしたん?逸乃、タクの家に行きたいん?」
カナも違和感があるようだ。
どういうことだよ……俺は足を速めて逸乃の横に行く。
「えっと……あの、ほら、私に本、貸して、ね?」
なんかおかしい……。
「あ~ぁ、私も漫画貸してぇ」
カナは違和感無い。
「いいけど……今日は姉貴居ねぇから」
姉貴居ないって言い訳は、おやつがでないというだけのことだろ。
本を借りるだけなのに、カナがコープに寄ると言うので俺とタクだけ先に家に向かう。
「なぁ、タク、俺とカナが一緒でなくても、逸乃はタクの家に行くんかな」
「そうじゃね?」
「え……お前、逸乃と二人きりになる気?」
「は?お前が聞いたから答えたんだろ」
そっか、聞き方が悪かったか。
「俺と新河がどうにかなるって心配してんのか?」
また語尾に笑いが混じってるぞ。
「……逸乃とめっちゃ喋るじゃん」
「またそれか。……でも、進展しないとは言い切れないな」
「おいっ、嘘だろ、いや、マジで?」
慌てる俺の反応に笑いだすタク。
「原田、お前、余裕なさ過ぎ」
確かに。……でも俺で遊ぶな。
「俺も女子のこと好きになるってそうそうないけど、新河は趣味が合うから話しやすいんだって」
それはわかる気もするけど……。
「カナは?カナ可愛いじゃん」
なんでカナ推ししてるんだろ。
「あぁ、まぁ、可愛いけどな」
なに、その終わり方。
しかも笑ってるし。
玄関を開けようとしたら内側から開いた。
「父さん……」
アルコール臭がすぐに鼻を突く。
「あぁ、拓弥の友達か、悪いことすんなよぉ」
言いながら離れの家に向かっていった。
「大丈夫なん?飲んでるみたいやけど」
余計なこと言ったかな。
「あれくらいなら大丈夫、いつものこと」
タクは平然と玄関で靴を脱いで自分の部屋に向かった。
タクが言うんだからそうなんだろ。……後を追う。
10分後ぐらいに逸乃とカナが玄関から声をかけて入ってきた。
「タクは日向夏サイダーとゼリーどっちがいい?」
タクはサイダーを手に取る。逸乃はゼリーにハマってるんだな、可愛いっ。
「逸はこれ」
カナに渡されたのは“ゲンキ快”元気だよっ。
カナはレモネードを飲みながら日向夏ゼリーを振っている。どっちも飲み物……。
「新河さ、今朝3年生と居たろ」
タクの問いかけた内容に驚く。
「金岡さんって言うっちゃが」
俺は横目で様子をみる。
「黒木さんの彼氏の友達だっけ?付き合うの?」
スラスラと聞くタクに感心する。
「ええっ、逸乃そうなん?」
カナは知らないのか。
「ほら、LINE交換しちゃったから、無視できなくて」
「言ってたね、逸乃。でも気が無いなら断ったほうがいいと思うで」
カナが逸乃にアドバイスしている。
断ったほうがいいと俺も思う……理由はなんでもいいけど。
「そうっちゃ……話すことも思いつかないし、正直困ってたっちゃ」
その言葉に俺は少し優越感……と、タクが気になりだす。
「3年生だしね~篤美ッちに言ったらなんとかしてくれんじゃない?」
カナはあっけらかんと言った。
そんなもんか?
「いいんじゃね?黒木さん、おせっかい好きじゃん」
タクは逸乃が他の男と付き合うのを阻止したいのか、俺のサポートなのか、という考えが頭の中巡りだした。
“またかよ”と言われると思うと容易に聞けない。
「うん、篤美ちゃんに相談してみる」
「いいねぇ、なんか恋愛相談っぽい」
カナが嬉しそうに言った。
いや、まだ恋愛に発展してないやろっ。
「ねぇねぇ、話変わるけどさ、夏休み、健一が“たこパ”しよかって」
カナが謎なこと言いだした。
「えっ、楽しそう!健一さんがしてくれんの?」
逸乃の顔色が変わった。
「なん?たこぱって」
「健一の作るたこ焼きめっちゃ美味しいん。みんなで焼きながら食べるんよ」
「おやじさん、キッチンカー、たこ焼き屋してるって言ってたな。見た覚えないけど」
そういえば聞くけど見たことない。
「あちこちでしてるけど……ここらへんではしてないかも」
「こないだ俺、会ったよな」
あん時カナは不機嫌な顔してた。
「三者懇の時ね~先生に赤点のこと言われてさぁ、他にもダメ出しされてさぁ、健一がイチイチ謝るんだもん。それにしょーもないこと言って滑ってたし」
そこは健一の愛だろうが、と俺は思うが。
「楽しみぃ、カナのママめっちゃ美人さんよね~」
「まぁねぇ、健一あんなんだけど」
カナは笑って言うが、いいお父さんに見えたけどなぁ。
結局、雑談で時間を使い、カナはタクに漫画を借りて、で、逸乃は小説を借りることは無かった。
逸乃、……何しに来たん?
夏休みの計画で決まったことは、ボーリングに行くのと、カナの家で「たこパ」をすること、タクの家の庭でBBQをお姉さんが企画してるということ。二人には内緒だが、俺と逸乃で父ちゃんに頼んで少し遠出する予定。
タクの言ったことや態度が気にはなるけど、動くってきめたっちゃが。
そして逸乃とバイトもする……ワクワクよりもドキドキかな。
18話、読んでいただきありがとうございます。相変わらずこれといった動きがなくて……夏休みに入るんやなぁ……で、終わりましたが。次回は番外編で、クラスメイトの小野寺美鈴ちゃんとオタクの柊君のお話です。柊君はパラ中でもちょこっと出てもらってます。3部に分けてて、その後恋ロジの続きに戻ります。恋ロジは夏休みに入ります……ので7月3日(金)投稿予定で、番外編は6月12日(金)です。




