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巨人と話した

 さて、精霊王と呼ばれる精霊の中でも特にヤバい連中に目を付けられてしまった現状を知った訳だが、特に打てる手はない。

 手と言えば精々精霊と敵対関係になるつもりはありませんくらいの物か。


 とりあえず監視2号っぽいアバタードラゴンは頭の上に居るのでいいとしよう。

 監視3号であるアバターバードは俺の言う事を聞いたと言うよりは、腹の中に子供がいるノアに興味があるから残ったと言う感じ。

 まぁ元々精霊王様がどれくらい俺に興味を持っているのか確かめるために召喚したから別に戦力などに関してはカウントしていないので別にいいのだが。


 さて、今考えている問題こそ戦力だ。

 この度トークンスピリットを2体召喚したのだが、シンボルがない。

 つまりアタックしても相手プレイヤーのライフを削る事が出来ないし、召喚するための軽減コストを確保する事も出来ない。言ってしまえばマジで邪魔。

 プレイヤーに攻撃できる、軽減シンボルの確保という意味ではブレイドの方が優秀だ。

 今のままだとアバター連中は俺の防御しか出来ないとカード上のルールでは判断される。

 シンボルのないカードは存在するが、大抵マジックカードが召喚時効果のあるアームカードくらい。スピリットで最初からシンボルがないって雑魚以前の問題だ。


 そしてシンボルがない=どの色のカードでもないと言う扱いになる。

 これもルール上の細かい裁定の話になってしまうのだが、例えば転生召喚の際の条件に赤のスピリットと書かれていた場合、赤のシンボルを持つスピリットでなければならない。

 つまりトークンスピリット達はその時点で様々な裁定から外れてしまっている可能性がある。

 元々デッキに入れられないと記述されているし、ただの壁として利用するならいいのかもしれないが……それでもシンボル無しは色々キツイ。

 なんせ魔石1は最低召喚し続けるのに必要なのだからこれだけで魔石を1つ使えなくなると同義。それが2体という事は2つ魔石が使えないと言える。


 シルフィードとレムルシャールはシンボルあるし、ちゃんとBPも高ければ効果もそれなりに強い。

 特に単体でコンボが成立しているのがいい所だ。

 だが今使える魔石の数は30、シルフィードとレムルシャールのレベルを最大にしているためすでに11個魔石を使っている。

 そしてトークンのために魔石2個使用中、合計13個。残り17個でやりくりしなければならない。


 まぁやろうと思えば今のデッキのまま魔石を増やす事は出来るし余裕が全くない訳ではないが、それでも節約できる事なら節約するに限る。

 元々魔石の管理がこのSWの醍醐味と言えるし、使う余裕がないのなら消滅させてもいい。

 だがその場合精霊王から不審な動きをする前触れなのではないかと思われるのも面倒臭い。

 召喚しておいてなんだが、これならブレイドをデッキに入れて護衛させておく方が色々後につなげられる。


 それにまだ少し引っ掛かるところはあるからもう少し様子見もしたいからな。


「ん?ありがと」


 色々考えているとファランゴル王国の精霊だ。

 小さな手紙のようで前の様に資料ではなさそう。

 手紙を取って中身を確認すると、意外な内容が書かれていた。


 何でも巨人キメラの司法解剖中に新たな巨人が現れたらしい。

 その巨人はしっかりと意思疎通が取れる存在で、簡潔に言えば仲間の遺体を渡してほしいとの事。

 そして人間の手によっておかしくなった仲間を開放してくれた人間、つまり俺に礼を言いたいそうだ。


 なんだかよく分からない事になってきたが、巨人って実際にこの地球上に存在する生物だったのか?

 でもそれならもっと知られていてもおかしくない気がするし、色々確認するためにも向かった方が良いかもしれない。


 出来るだけ早く向かうと書いて精霊の足に手紙を括り付けると精霊は飛んで行った。

 完全に世界が平和になるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 なので学校は中退し一度屋敷に帰ってから事情を話し日帰りで帰ってくるつもりだ。


「むす」


 事情を話すと予想通りノアは納得できない表情をしながら不満の表情を作る。


「ノア。これは今回かなり重要な情報だし、多分向こうも対応に困ってるんだと思う。だから行かなきゃ」

「……そう言って私とお腹の子を置いて戦地に行くんだ」

「今回は戦地じゃない。前戦ったところから離れたところで司法解剖を行ってる。それに今回は巨人の人と話してくるだけだ」

「……戦わない?」

「戦わない」

「晩御飯の前に帰ってこれる?」

「ちゃんと帰ってくる。だから少しだけ待ってくれ」

「……気を付けてね」

「ああ」


 そう言ってからノアにキスをしてシルフィードに連れて行ってもらう。

 俺が巨人キメラを倒したところからほんの少し開けた場所に今も巨人キメラの司法解剖が行われている。

 他の小型から大型まではある程度済んでいるようだが、巨人キメラは元々のサイズが大き過ぎるため調べるのも一苦労なんだとか。

 まぁ死体を解剖して調べるとなれば保存状態の維持が重要になる訳だし、スピード勝負なところもある。


 でも俺が戦争から帰ってまでそれなりに時間が経過していると思うんだけど、どんな状態なのだろうか?

 それを確認する意味でも情報を得なければならない。


 そう思って飛んでいると見慣れない物が見えた。

 巨大な人、巨人があぐらをかいて座っていた。

 服装は雪国の人が着ているような毛皮の服であり、非常にもこもこだ。

 その巨人は何かを感じたのか、振り返って俺を視線で捕らえる。


「おめが同胞を開放してぐれた人間か?」

「ああ、アレックスだ。初めまして、巨人の人」


 こちらは何というか、本当に巨大化し人間のような感じだ。

 倒した巨人キメラはどことなく猿っぽい感じだったのだから少し意外だ。

 あとちょっと訛ってる。


「おらはフランシス。土の精霊だ」

「巨人って精霊なのか?」

「んだ。本来の巨人族は精霊で、人間界に居るのはそれっぽい魔獣だど。人間界で精霊の巨人が倒されたと聞いたから、確認しに来たんだど」

「なるほど。そのためにわざわざ精霊世界からこっちに?」

「んだんだ。それでもなしてこの巨人がこんなになっちまったのかおらも気になって来たが、よくないもん混じっとる」

「よくない物?」

「こいつの中に入ってた石ころが悪さしとった。このせいでおかしな形になってしまったと思う」


 巨大な猿のような形状は本来の精霊としての巨人から見て変異してしまっているとみているのか。


「それでこの死体を持ち帰りたいと聞いたけど?」

「最近偉い精霊のもん達が騒がしいから、これ持って帰って調べたいんだど。だからこうして待っとった」

「もうほとんど骨しか残ってないみたいだけど」

「だから人間さん達にもどうだったか聞いてる所だ。最近精霊世界も騒がしいせいでピリピリしとるど」


 これは俺が原因なのか、帝国が原因なのか分からないな。

 まぁ俺が原因だったらシルフィード達が何か言ってくるか。


「教えてくれてありがとな」

「構わねぇだよ」


 そう言って手を振るフランシスさんは非常に穏やかな人だ。

 さて次は。

 そう思いながらゴルドーさんを探すと手を振ってくれていた。


「ゴルドーさんお久しぶりです」

「お久しぶりですアレックス様。お元気でしたか?」

「おかげさまで。それで内容は?」

「いや、その……」


 なんだか言い辛そうにしているが何だろうか?


「もしかして帝国が攻めてきそうだから精霊を貸してほしいとかそういう感じですか?」

「そうではなくてその、終わってしまいましたから」

「終わった、とは?」

「その、巨人の方と話してほしかったんです。もっと詳しい話を聞きたくて」

「あ、あ~」


 確かにさっき聞いたな。


「それじゃ他に聞きたい事とかあります?」

「いえおそらく大丈夫です。元々友好的な方ですし、こちらも何もしませんから」

「それじゃお仕事は終わりで?」

「はいそうなります。あ、少しだけ待ってください」


 そうゴルドーさんが言うので少し待つと何かを持ってきてくれた。


「これは?」

「この辺りで獲れる猪肉ししにくです。かなり上質な物だったのでお裾分すそわけと思いまして」

「ありがとうございます!お~これは立派だ」


 でっかいブロック肉をもらいホクホクになっているとフランシスさんが思い出したように言った。


「そだそだ、アレックスにお偉いさんから言付け言われとったんだった」

「言付け?」

「なんちゅーか、おめさんが召喚する特別な精霊はあまり召喚してほしくないといっとったな。あとこいつを倒した時みたいな特別なのは控えて欲しいと」

「あ~……緊急事態じゃなければ」


 という事は俺が目を付けられた理由はカタストロフィーを召喚したからか?

 滅多に出せる存在じゃないが気を付けておくか。

 あとノアに良い土産が出来たな。

 みんなで食おう。

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