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存在しないカード情報

 その後屋敷にはあっちこっちから懐妊祝いの品が届けられた。

 その中に育児用の道具などは一切なく、何と言うかぶっちゃけ要らない。


「こういうのって贈与税かかるのかな?」

「つまらない冗談言ってないで片付けるわよ」


 どうやら贈与税はないらしい。


「しっかし酒だのアクセサリーだの、そんなもんより子育てアイテムが欲しい所なんだが?」

「貴族じゃ送らないわよ。そういうのは民衆がやる事じゃない?」

「おむつは何枚あっても足りないと言われるくらいなんだからせめておむつが欲しい」

「まぁ貴族だとそういう物よ」


 こうなったら魔道具とか関係なく子育てに便利な物を会社で作ってもらうか?

 洗濯機を大まかに伝えた時は売れそうだという事でパンサーも乗り気だったし、家庭向けに改良して売る事も出来るだろう。

 ある意味家電って一度作れば結構発展させるきっかけになるもんなんだな。

 一般家庭から工場まで、使う人が多い物と言うのはやはりそれだけ売れるという事に繋がる。

 それに洗濯機が出来ればメイドさん達も手洗いしなくて助かるだろうしな。


「それにしても祝い酒ってのは定番かもしれないが、妊婦に渡すもんではないだろ」

「それはそうよね。だって私飲めないもの」

「腹の子に何かあったら嫌だからな」


 ノアが妊娠したという知らせを聞いてからさらに守るという事に意識が向いている気がする。

 だからまだ未完成な雰囲気はあるが、全色使った偽りの神デッキを新しいデッキとして組み込んだ。

 超重量級であり、すでに魔石をかなり持っているからこそできるパワープレイ。まぁ結局コンボを決めるにはいろんなスピリットを召喚しなければならないので偽神のカードは1種類1枚ずつ入れた1枚差し。

 他のプレイヤーだったら1色か2色に絞って強いデッキを組むんだろうが、こいつら6体揃った時の破壊力はすさまじいからな。

 結局ロマンデッキから切り離せていない。


 魔石を増やすカードだけではなく防御面も調整してある。

 カタストロフィだけでなく強力な効果を持つ神を使いこなせるかは、まさに運と俺の実力次第なのだろう。

 何がなんでもノアと生まれてくる子供、そしてリリアや使用人達家族を守れるようにならなければならない。


 現在の魔石は1つ増えて30個使用できる。

 フィールドに何もいない状態でも召喚する事は出来るが、穴は非常に大きい。

 特に今回の偽りの神は防御面に力を注いでいるがそれは特定のスピリットを召喚している事で力を発揮する。

 そのカードが引けなかった時の保険も用意している。


 その保険としてフィールドカードが多く存在している事。

『偽りの紅蓮銀河』の様な偽神の力を底上げするフィールドカードを入れる事で軽減シンボルの確保、そして魔石の全回収を目指している。

 そのためブレイドドラゴンやモンクーのような0コストスピリットは1枚も入っていない。

 相手の初手を妨害するフィールドカードでもあるので、こいつらを入れるのであれば要らないと判断した。


 後の問題は……いつどこで攻めてくるのか分からない事。

 現在フィールドに居るのはカードとは関係なく召喚しているシルフィードとレムルシャールの2体だけ。

 俺の護衛が現在いない事になる。

 かと言ってスピリットを常に召喚し続けるのは迷惑であるし、目立ち過ぎる。

 戦場ならいいがこういう町中では大き過ぎるスピリット達ではちょっとな……


 とりあえずある手札から妨害系フィールドカード『偽りの白夜神殿』『偽りの青嵐海域せいらんかいいき』を配置しておく。

 これで白と青のシンボルが1つずつ確保できる。

 残りの3枚の手札はマジックのみ。

 やはり新しく精霊を召喚しておくべきか。


「あなた」


 何て考えているとノアに声をかけられた。


「どうしたノア?」

「もらった物は倉庫にしまっておくけどいいかしら?」

「ああそれでいい」


 ノアは俺に何か違和感を感じているようだが、はっきりとしたものはまだ分からないので追求しないと言う感じ。

 その事に少しホッとしながらやはり俺にも護衛が必要だと思い次の精霊を召喚する事を決意した。


 ――


「それで、次は一体何を召喚するの?」


 庭で魔方陣を用意しているとノアが声をかけてくる。


「俺もブレイドだけじゃなくて精霊の護衛も必要かな?って思ってさ。それで召喚の準備してる」

「……そう」


 どこか悲しそうな表情をするノアに疑問が浮かぶ。


「何でそんな悲しそうな顔するんだ?」


 分からないので聞いてみると、ノアは小さく息を出してから言う。


「戦地から帰って来たばっかりの顔に似てたから」

「……そんな顔してたのか」


 どんな顔をしているのかは分からないが、ノアはそういう顔をする事をやけに嫌がる。

 別に誰かを殺そうと考えている訳ではないんだがな。


「ええ。嫌いという訳ではないのだけど、複雑な気持ちになるの。眉間にしわが寄って、厳しい顔をしているのが。私達を守ろうとしているのは分かるのだけど、あなたにばかり負担をかけているような気がしてなんだか嫌なの」

「そんな事ないって。考えすぎ。それに男が妻と子供を守るのは自然な事だろ?ちょっとくらい男らしい事をさせてくれ」


 落ち着かせるためにキスをするとノアは少しだけその感触にわざと流されてくれる。

 目を開けるとため息をつきながら仕方なさそうにする。


「分かった。その代わり私はあなたを支え続ける。絶対に」

「ありがと」


 そう言いながら抱きしめる。

 まだ不安じゃないかと思いながらそっと頭を撫で続ける。


「あの~お兄様、お姉様。私達が居ること忘れないで欲しいんだけど」


 何故かリリアがそんな事を言う。

 リリアの周りにいるみんなもまたやってるよ、みたいな表情をする。


「何だよ、別にいいだろ?」

「良いけど……イチャイチャしすぎだよ……」


 何故疲れたように言うのか分からないが、とにかく魔方陣は描き終わったので召喚を行う。

 今回はどんなのが現れるのか、期待しながら待つと召喚されたのは小さなドラゴンだった。

 ブレイドと比べると大体同じくらいで違うのは完全な四足歩行であり、ちょっとぬいぐるみっぽさがある事くらいだろうか?


「あれ?ドラゴンって精霊の扱いで良いのか?」

「いい、のかしら?私達の知ってるドラゴンは魔物だけど、精霊に属しているドラゴンもいるのかしら?」

「それとも前みたいに精霊の人が飼ってるドラゴンだとか?」

「ブレイドはまた違う感じだしな。そっちの精霊組は何か――」


 知っているのか聞こうとしたら2人して頭を抱えていた。

 それでも俺に伝えなければならないと思ったのか、レムルシャールが言う。


「マスター様、その方は火の精霊の中でも特にくらいの高い方の分霊です。完全に目を付けられましたね」

「え、それいい意味?それとも悪い意味?」

「現状ではどちらとも言えますね。協力すべきだと思われれば協力してくれるでしょうが、もし仮に精霊にとって危険な存在であると判断された場合何をしてくるのか本当に分かりません。最悪この国滅びます」


 想像以上にヤバい奴が召喚されたらしい。

 でも召喚時に消費されるはずの魔力は全然減っていないし、もしかして魔力消費が無かった?


 それにしても、そんなヤバそうなドラゴンの分霊の割には随分のんびりしている。

 のん気にあくびをし、口をもごもごさせている。

 何か食べたとかじゃなくてただなんとなく口の中を動かしている感じ。

 とりあえずしゃがんで話をしてみる。


「え~っと、うちの家族傷付けない?」

「んが」

「……暴れたりしない?」

「んが」

「…………契約する?」


 そう確認すると俺のカードを置くフィールドが光り、このドラゴンの情報が提示された。

 ってマジかこれ?


「うっそ~ん」

「どうしたのあなた?」

「お兄様?」

「何と言うか、今までと全く違うカードが出てきたんだけど」


 このドラゴンのカード情報その物は他のスピリットと変わらない。

 しかし表示が『スピリット』ではなく『トークンスピリット』という初めて見るカードだった。


「トークンスピリット?お兄様こんなカードありましたっけ?」

「ねぇよ。シルフィードとレムルシャールを召喚した時だってスピリットって表示されてたのに、トークンってマジかよ」

「トークンってどういう意味なのあなた?」

「簡単に言えば疑似カードって感じ。似たような能力は一時期あったけど、トークンカードがこんな風に存在するとは思わなかった」


 他のカードゲームだとたまに存在するトークンカード。

 だがその表示はゲームにより色々で、その多くは裏側のままフィールドに置く事で疑似カードとして扱われる事が多い。

 SWでも似た能力のカードがあったが、その時は裏側のままフィールドに置くスタイルであり、このカードの様にトークンカードとして作られる事はなかった。

 というか疑似カードなんだから製作側も一々作ってられないし、ぶっちゃけ無駄だ。


 そして効果も特になく、0コストと言う所も見てやはりバニラカードと言っていい。

 BPは思っていたよりも高いけど。


「まさかSWに存在しないカードとして表示されるとは思ってなかった。まぁ本来関係ないからこうなるべき?なのかもしれないけど」


 シルフィードとレムルシャールの表記も無理やりSWに合わせたと言われればそれまでだが、突然SWに存在しないカードが出てきて驚くなと言う方が無理だ。


「でもまぁ契約できたみたいだし、敵認定されている訳でもない。今まで通り面倒見るしかないか。よろしくな、アバタードラゴン」


 カードに書かれた名前を見て分かった名前を呼ぶとアバタードラゴンはあくびの様に返事をした。

『名前     偽りの白夜神殿

 カテゴリー  フィールド

 コスト    3

 軽減     白2

 シンボル   白1

 レベル1~2 魔石0

 レベル2   魔石2

 効果    

【レベル1~2】お互いのアタックステップ

 お互いのコスト0と1のスピリットはアタック、ブロックが出来ない

【レベル2】

 自分フィールド上に『偽神』がいるとき、

 自分の手札は相手によって影響を受けない』


『名前     偽りの青嵐海域

 カテゴリー  フィールド

 コスト    3

 軽減     青2

 シンボル   青1

 レベル1~2 魔石0

 レベル2   魔石2

 効果    

【レベル1~2】お互いのアタックステップ

 お互いのコスト0と2のスピリットはアタック、ブロックが出来ない

【レベル2】お互いのアタックステップ

 自分フィールド上に種族『偽神』がいるとき、

 コスト4以下のマジックを使用できない』


『名前    アバタードラゴン

 カテゴリー トークンスピリット

 コスト   0

 種族    古代竜 分霊(ぶんれい)

 レベル1  魔石1  BP4000

 ※このカードはデッキに入れられない』      

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