ホディ達、チートアイテムを手に入れる
学校のすぐ隣にある学生寮。
そこに行くと眼鏡達が裏庭で魔力量を底上げするための訓練を行っていた。
しかしその周りには意外な事に他の生徒達もおり、総勢7人となっていた。
「よう。元気そうだな」
俺がそう声をかけると眼鏡達はかなり驚いた表情をした後に泣きながら言う。
「ご無事で何よりです!!」
まるで死ぬことが前提だったような言い方だな。
まぁ学生が戦争に参加するとなれば死ぬ確率の方が圧倒的に高いか。
「無事だったよ。それで彼らは?」
「あ、彼らはその、同じ男爵で魔法が使える者達です。魔法の使い方を教えて欲しいと言われて……」
「全員召喚士じゃないだろ?」
「そうです。なので僕達も分からなくてとりあえず魔力量を増やす方法だけ教えて一緒に修行したり、勉強したりして魔法を覚えてました」
「なるほど。まぁいいんじゃないか」
「いいんですか?アレックス様から見たら見ず知らずの人に魔法を教えるのはその、よく思わないと思っていたので」
少し意外そうに言うが俺は特に気にしない。
俺の知り合いが俺の知らない知り合いと一緒に居る事くらい普通にあるだろう。
まぁ敵対している陣営だとか色々面倒事はあるかもしれないが。
「別にいいよ、それくらい。結局教えられているのも魔力量の増やし方だけなんだろ?」
「はい……魔法には詠唱が必要と言うのは分かっているんですが、そこまで調べてなかったので……」
「俺達召喚士だもんな。まぁ初級だったら俺も教えられるから、このまま継続していいんじゃない」
「良いんですか?」
「いいよ。それに自衛できる手段が増えるのは良い事だ」
そう言いながら新しい連中に初級魔法を教えていく。
魔法は基本的に発音が重要だから、詠唱を正確に唱えるのが重要。覚えたら後は早口言葉のようにすぐに呪文を唱えられるように繰り返して練習するしかない。
いつでも暗唱できるくらいにならないとな。
そんな感じで彼らの様子を見てから1つ提案する。
「今度うちの庭で何か召喚するか。お前達も何か召喚したいだろう」
それを聞いた眼鏡達は大喜び。
後日準備を整えて彼らの召喚をする事にした。
――
後日、彼らを屋敷に招待して召喚を行う。
それぞれどんな精霊を召喚したいのか要望を聞き、魔方陣に描いていく。
「みなさん、初めまして。妹のリリア・ヘキサグラムと申します」
「アレックス・ヘキサグラムの妻、ノア・ヘキサグラムです。お見知りおきを」
2人が対応してくれている事に眼鏡達は顔を真っ赤にしてあたふたしている姿は耐性なさそうだけど大丈夫か?っという感じ。
魔方陣の準備中、様子を見に来たノアが言う。
「あの子達ずっと顔真っ赤で面白い」
「あまりからかってやるなよ、耐性なさそうだし」
「私にはあなたがいるから必要以上に近付いてないわよ。それはリリアもだけど、元々人懐っこい性格だからかなり積極的」
「あいつ一応殿下の婚約者であること忘れてねぇよな?」
「そこまでではないけど、召喚士として、カード事業を起こそうとしている身として彼らのカードに興味があるみたい」
「あ~、スピリット達とは違うカードだからな。最初のうちはもっと単純でも良いと思うし、なにも1つの製品にこだわる必要もない。複数のカード事業を起こすのもありではあるが……紙足りるかな?」
「その辺りはあの子の手腕次第。それより今回はどんな子を召喚するの?」
「あいつらに合った低コストの精霊が召喚できるように調整中。俺やリリアの力に引き寄せられないようにしておかないと」
「また風属性の精霊が来ちゃうから?」
「それもあるがあいつらにとって相性のいい相手ってのは必ず存在するはずだ。あるいはあいつら自身が求めている精霊が召喚できるようにしてやるのが役目だろ」
「…………そう。それじゃ私はリリアを止めてくるわね。そうしないとあの子達勘違いしちゃいそう」
「お~」
勘違いってまさか~っと思っていると顔を真っ赤にしながら頑張って気を引こうとしている眼鏡達。
リリアは一応殿下の婚約者だから手を出すと後が怖いぞ。
何て心の中で思っていても魔方陣が完成したので眼鏡達を呼ぶ。
彼らは魔方陣に手をかざし、召喚すると意外な物が召喚された。
「あの、これなんでしょう?」
「さぁ?」
彼らが召喚に成功したのはどれも道具だ。
本にホイッスル、眼鏡に関しては鍵である。
まるで贈り物をもらったかのような意味不明な召喚に全員が困惑する。
「魔方陣何か間違えた?」
「確認してるが……スペルミスとかはないな。精霊って文字もしっかり入ってる」
「属性の特定はしていないけど召喚者との相性を重視した魔方陣。特にこれと言った問題は見当たらないわね」
俺とノアで確認していくがそれらしいミスはない。
となるとこの道具達は正しく召喚されたという事であり、精霊である可能性が高い。
「で、道具の精霊っているの?」
日本なら付喪神みたいなのがいてもおかしくないが、この世界ではそういう概念があるかどうかすら分からない。
最低でも聞いた事はない。
「こういう時こそシルフィードかレムルシャールに聞いてみればいいんじゃない」
「お答えします」
レムルシャールノアの隣にいたので確認してもらうと意外な事実が発見された。
「これらは精霊が作った道具です。と言っても鍵に関しては何とも言えませんが」
「それじゃ本と笛の使い方は分かるか?」
「本に関しては精霊魔法の使い方が書かれておりました。それから笛に関しては吹く事で周囲にいる精霊に対して呼びかける事が出来る物です」
なんかレアそうな感じだな。
で、鍵は何だ?
「この鍵に関しては……適当な鍵穴を見つければ分かるはずです」
「適当な鍵穴って、鍵と鍵穴が揃わないと開かないし閉じないぞ」
「ですがこの精霊が作った鍵に関してはどの扉の鍵に差しても回ります。見たところどこかに繋がっているようなので適当な鍵穴を見つけ、扉の鍵を開けるように回せば分かると思います」
「…………とりあえず玄関に行ってみるか」
ぱっと思いつく鍵穴のある扉は玄関だ。
扉が閉まっている状態で眼鏡は鍵穴に鍵を入れ、回すとかちゃりと音が鳴った。
その先には屋敷の玄関ではなく、木漏れ日の館。
みんなで入ってみると壁中に本が収められており図書館である事は想像がついた。
雄大な木が中央に生えており、その根だろうか、本棚の周りにも木の根が絡みついている。
森の中にいるような心地よさを感じるここは一体?
「ここは一体……」
「あら、人間の客さんだなんて珍しい」
そんな知性を感じる声の先を見ると、不思議な魔女がいた。
絵本に出てくるようなとんがり帽子をかぶった眼鏡をかけた魔女。
ただ特徴的なのは魔女の格好だけではなく頭の上にある猫耳と尻尾だ。
彼女の姿を見てレムルシャールは気軽に声をかける。
「久しぶりですね、シュレ」
「お久しぶりねレム。あなたが図書館に来るなんて珍しい」
「今の主の友人がこの図書館に繋がる鍵を手に入れたの。その確認ね」
「あらそうなの。鍵が1本どこかに行ったのは分かっていたけど、イタズラ妖精じゃなくて人間の手に渡っていたなんて面白い事もあるのね」
そう言ってシュレと呼ばれた魔女は眼鏡の前で優雅に礼をする。
「初めまして。私はこの精霊図書館の館長、シュレディンガー。館長としてあなたを歓迎します」
「え、あ、その。僕はホディ、です」
「そう。この鍵があなたの前に現れたという事はそれだけ知識欲があるという事。この図書館にいつ来てもいいわ、ただし本を汚すような物の持ち込みはダメ。それから持ち出しもダメ。最後にその鍵を大切に出来るなら、ここに来て良いわ」
「あ、ありがとうございます!!」
こうして眼鏡、ホディは精霊図書館に繋がる鍵を手に入れた。
彼らを見送った後、ぽつりと俺は言った。
「いや、あの鍵精霊契約以上の価値あるよな?」
「彼らにも言ったけど、あの鍵や道具は本当に人間の中で話が広まったら戦争の火種になりかねない物よ。その事は十分に説明したから大丈夫なはずよ」
「だよね……」
真剣な表情でノアが彼らに問い詰めていたのはこの事か。
つまり俺達があの図書館にいた間は精霊の世界に居たという事だ。
あの幻想的な図書館の外には何があるのか、少し興味はあるが深入りしない方が良いだろう。
それがお互いのためだ。




