現実で戦うためのデッキ
俺はカードを前に非常に悩んでいた。
この間の戦い、戦争に参加してみてデッキの内容を改めて確認している。
正直言ってネタだ何だと言われながらも勝ちを探していたのは本当だ。
必要なカードが揃えばほぼ勝ち確定と言える一点特化型のデッキ、効果や残りのデッキ内容を確認しても一定の勝利は狙えるデッキ、相手を妨害して自分が有利に進められるようなコントロールデッキ。
色々組んでネットで強いというデッキを参考に組んでみたり、普通に引けたカードだけでデッキを組んでみたり、そう言えばと思い出して古いカードを引っ張り出したりと色々やって来た。
だがあの戦争に加わって同じカードバトルとして強いデッキと現実で戦わせるという意味での強いデッキは全く違う。
例えばあの巨人と戦った時、クリムゾンが攻撃していれば勝ててはいた。
だが他の騎士達を守るために攻撃に出られなかった事で負けてしまった感じは否めない。
それに改めてスピリット達の効果はプレイヤーとして扱われているため効果の範囲外。もちろんプレイヤーに影響を与えるカードもあるがカテゴリー化すると数は少ない。
あったとしても一定の条件が存在したり、効果が強い代わりにBPが低いというのもある。
かと言って今の帝国の戦略がキメラに頼った物になるのであれば、スピリットへの効果を無視してプレイヤーへの攻撃を中心としたものばかりにする訳にはいかない。
実際クリムゾンの効果は雑魚を一掃するのに役に立っていたし、魔石を増やす効果は非常に強力。おかげで必要なカードを出揃わせる事が出来た。
だが攻撃に特化していたために受けに回されると弱い。
そうなるとやはり混色デッキを作ってバランスを重視するの悪くはない。
ただ混色デッキの弱点は軽減コストを確保できない事だ。
重量級スピリットを召喚するためにはどうしても軽減コストは1つでも多いと助かるし次につながる。
その場合強いカードを1枚差しにして軽減を確保しやすい軽量スピリットを多く使用するか、逆に重量級のスピリットを揃えて強力な一撃を食らわせるか、選択するしかない。
普通のカードゲームだったら重量級スピリットを1枚差しにして軽量スピリットを多く使用するのが無難だ。
もし相手が速攻デッキだった場合あっという間にライフを削られて負けてしまうからだ。
でもこの世界はそうではない。
俺の場合常に29個の魔石があるため召喚しようと思えばできなくはない。
ある程度カードゲームのルールが適用されているが、完全ではない。
速攻デッキが強いと言われるのも最初に魔石が4つからというルールによるものだ。
もし最初から10個も20個もあればまた強いの定義が変わる。
だから俺は一度この定義を捨ててデッキを再構築しなければならない。
攻めるだけもダメ、守るだけもダメ。強いけれど出来るだけバランスの良いデッキを構築しなければならない。
それが難しいんだよな……
一応偽神でも全ての色をつぎ込んだデッキを作る事は出来る。
でもそれがこの世界で戦うのに強いのかどうかと聞かれると……まだ分からない。
それに偽神でデッキを組むとなるとブレイドやクリムゾンのような他のカードを入れる余裕がなくなるだろう。
デッキに上限制限がないとはいえ100枚デッキを作れば欲しいタイミングで欲しいカードが全然現れないという最悪の事態を起こしかねない。
だから多くても最大10枚、50枚デッキが限界だと考えておく。
まぁデッキをドローするのを中心にすれば10枚くらいフォローできるかもしれないが、偽神デッキってドローするスピリットカード少ないんだよな~。
マジックで補うのも悪くないが……それよりも防御系マジックを入れたい。
とりあえずカタストロフィーの様なカードは1枚差しでいいだろう。6種類あるし。
そこから6色軽減を取れるようなカードを中心に入れながら神を強化するカードを入れて………………
うん。全然納得できるデッキが出来ない!!
作ろうと思えば作れるしある程度は形になっていると思う。
でもこれでキメラ軍団を相手にすると思うと……心もとない。
それなりにスピリットもいるが全色補うためにフィールドもそれなりに入れてあるから他の強力なカードが入れられない。
マジで余裕が無さすぎる。
はぁ。
とりあえず今はこれで我慢するしかないかな……ドローするマジックもあまり入れられなかったし、事故らないかマジで不安だ。
それにデッキは完成したがまだ入れ替えなければいいだけかもしれないし、もう少ししっかり考えてみるか。
「お兄様大丈夫?」
デッキ構築をしているとリリアが不安そうに聞いてきた。
モンクーも首をかしげている。
「大丈夫だ。ちょっとデッキ構築で悩んでたから」
「新しいデッキ?また私ボコボコにされるの?」
「遊ぶようじゃなくて現実で使う事を想定したデッキ。つまり戦争とかで実際に使う事を想定したデッキ構築だよ。正直何が強いというのか基準が分からないから何とも言えない」
「……ブレイドとかを戦争に使うって事だよね?嫌じゃないの?」
「嫌だよ。でも今回の事でどうしてもスピリットに頼らないといけない場面が増えていくと思う。その時少しでも色んな人を守りながら、スピリット達も犠牲にしないデッキ構築が出来たらなって思ってる」
「それは……良い事だと思うけど……」
リリアは納得できないという雰囲気を出す。
これに関しては感覚の違いというべきか。
俺の魔法はスピリット達を召喚する事しか出来ないので自力では戦えない。
実際この間の戦争ではスピリット達のおかげで生き残れたのだからこれからも頼らざる負えない。
だがリリアにとっては家族とか、そういう類なのだろう。
俺だってそう思っているし、とても大切に思っている。
だが同時に戦うための手段でもあるのだ。俺にとっての最善手であり、最も力を発揮する文字通り切り札。
もし使わなかったら俺は死んでいただろう。
それにリリアも頭ごなしに否定していないのだから、生き残るために必要な事である事は理解してくれているはずだ。
「リリア。別に俺はスピリット達を戦争の武器として使うつもりはない。ブレイドみたいに一緒に居るだけでもいいし、本当は戦争に使いたくない。でもこの国はそれを望んでいる。人間よりはるかに強い存在に戦ってもらう事で楽しようとしてる。きっとそれは俺もなんだろうな」
「お兄様……」
「リリア。お前のデッキはいつどこで、どんなタイミングで使うかは任せる。使わない事だって選択だ」
「…………うん」
「お前はお前の考えで使え。他の人に左右されて使うな。きっとそれがお前のためである」
きっと使わずに済むのであれば使わない方が良いのだろう。
でも俺は戦うためにスピリット達を使う。
自分と家族、おまけで国を守るために。
「お兄様、バトルしよ」
「リリア?」
「私も少しは分かるから、お兄様はスピリット達の事を雑に扱ってる訳じゃない事」
「そうか」
「だからお兄様は少し休んでみたら?お仕事とか少しずつ始めてるけど、私よりかなり忙しいし」
「リリアだって他の人達と会って疲れてたりするんじゃないの?」
「だからバトルしてスッキリさせるの。バトル中はバトルの事だけ考えているからすごく楽なんだよね」
「リフレッシュになってるんなら何よりだ」
何て言いながら今日はどのデッキを使うか考えてみる。
今日の気分は……こいつかな。
俺が死ぬ前に轢いたシークレットカードが入ったデッキ。決まれば超火力の攻撃が決められる。
「それじゃやるか」
「やろうやろう」
リリアとの純粋なバトルはやっぱり楽しいな。




