両親が会いに来てくれた
「お父様お母様、お久しぶりです」
「生きて帰ってきたようで何よりだ」
「無事で何よりです」
久しぶりに両親と会った。ノアが言っていた通り俺の様子を見に来てくれたらしい。
父親の方は特に変化ない感じだが、母親はかなり心配していたらしい。
まぁいつの間にか息子が戦場に向かってたら心配くらいするか。
「隣国で色々状況を知る事が出来ました。なのでいろいろ情報共有できたらと思いますが、よろしいでしょうか」
「何があったのか聞かせてもらおう」
という事で屋敷に入った後に何があったのか説明した。
帝国によるキメラを使役しての作戦、小型から超大型まで事細かに説明。おそらく俺が居なかったら本当に隣国の軍は滅ぼされていた可能性が非常に高い事を伝えた。
それを聞いた母親が俺に抱き着く。
「本当に、本当によく生きて帰ってきました」
涙を流しながら安堵する母親の姿を見ると本当に危ない橋だった事がよく分かる。
父親も状況の酷さに色々思考している。
「この事を陛下にお伝えしたのか?」
「いえまだです。報告書の制作に少し時間がかかってしまいまして、陛下に報告書の完成と共にお伝えするつもりです」
「言葉だけでも伝えておいた方が良い。これは緊急を要する事態だと判断する」
「承知しました。あとで陛下にお伝えしておきます」
本当はもっと前にやろうと思ってたんだが、ノアに止められていた事は黙っておくべきだろう。
「ところでお父様。本当に俺は領地に帰らなくて大丈夫ですか?」
「ん?ああそれに関しては大丈夫だ。お前の会社もよくやっているし、工場も問題ない。ただタイプライターがある程度で回ったからか収入が落ちてきているくらいか」
「やはり次の事業が必要ですね。複写機に関してはどうでしょう?」
「あれは……様々な機能を継ぎ足しては減らすの繰り返しが増えてきたな。おかげで試作の複写機は大きくなったり小さくなったりを繰り返している」
「ちょっと様子を見に行きたいですね……迷走しすぎている可能性がありますし」
「それで、新しい事業とは何を考えている」
興味と不安が入り混じった表情を見せる父親だが、さすがに今の技術じゃ不可能に近いんじゃないだろうか。
「……戦地に言った感想と申しますか、食とは大切だと改めて思い知っただけです。それで少しでも改善できないかと考えていただけですよ」
「戦地での食事か。確かにあれは酷いものだ。飢えないように、動けるように食べるだけで食事とは言い難い。それでどう変えようというのか?」
「持ち運びしやすいように調理されたものを長期保存できる物が作れないかと考えていますが……常温で長期間保存できる物となるとその難易度は跳ね上がるでしょう。その入れ物自体は作る事は可能でしょうが、中の調理した物に関しては専門外。一から作るとなると……どれくらい時間がかかる事やら」
缶詰の歴史について詳しい事は知らないが、あの缶詰の容器そのものは作る事が出来るだろう。
頑丈な入れ物に開け口を人の手で開ける事が出来る物を作ればいい。あるいは缶切りを生産させればいいかもしれない。
しかし最大の問題は中身だ。
長期保存できる料理とは何か、もしできなかったら食材を入れる方が簡単かもしれない。トマト缶とかフルーツ缶みたいな感じで。
でもこの世界に長期保存を目的とした料理人を発見する事が出来るのか、それこそ大きな問題だ。
「料理を容器に入れる?瓶にスープでも入れるのか?」
「私が想定している形状とは異なりますが、概ねそのようなイメージで合っています。ですがそれが厳しいとなると加工した食材、トマトペーストなどを長期保存できるようにするのがいいかと考えています。料理を持ち運ぶのは難しくとも、食材ならある程度行けるのではないかと考えています」
「それは確かに今までとは全く違う発想だ。しかしそこまでする必要があるか?田畑から仕入れた食材をそのまま運ぶではいけないのか?」
「目的は運ぶだけではなく長期保存が目的でもあります。例えば瓶の中に入れた食材が1年も保てば農家が作り過ぎた農作物を買い取る事も可能です。そうすれば備蓄としての価値は大きく上がるかと」
「保存が目的か。そして現地で開けて料理すればある程度まともな食事にありつけると。だがそれはお前の言う通り長い道になりそうだ」
「その通りです。入れ物を作る事に関しては私達でも可能でしょうが、中に入れる物を選別するか、料理人を探して長期保存用に作ってもらう必要があります。そもそも料理人自体そう簡単に見つからないでしょう。大抵は家の料理人の様に美食を求める物で、ただ長期保存できる物を作る料理人は聞いた事がありませんから」
今現在いる料理人は大衆食堂にいる人達か、貴族や王族に雇われているシェフ達の事を指すだろう。
そして彼らは美味い飯を出して気に入られる事を目指しているのであって長期保存できる料理なんて考えた事もないと思う。
前世の頃だって手作りした物を保存と言ったら冷蔵庫に入れるくらいで常温で安全なまま保つ料理なんて作ろうとする人はいない。
そう考えると冷凍食品や缶詰を作っていた人達は本当に偉大だと思う。
だが同時に缶詰やそれと近い保存食を作っていた人達を料理人と呼んでいたかというと……個人的にはない。
あの人達の事は研究者とか、開発する人というイメージの方が多い。
そんな彼らをこの世界で見つけられるのかと聞かれると……会えないような気がする。
それに缶詰とかだけでなく参加しないために使われていた窒素、あれって人工的に作って良いのか??
いや作る事そのものは罪ではないし、使い方の問題なのは知っているが窒素を元に何か平気作られてなかったっけ?テレビの特集で見た気がする。
窒素を直接使ったのか、窒素を利用して兵器を作ったのかまでは覚えていないが、その切っ掛けになりかねないのも事実。
でも大抵の食糧保存のために窒素使ってたからな……酸化させないために窒素ガスを利用していたのは普通に知ってるし、それを使わない場合は……マジで防腐目的の砂糖まみれの菓子とか塩漬け肉くらいしか思いつかん。
あとその場合缶詰とか要らん。
「やはりいろいろ準備が必要だな。軍事に関わるものとしてはぜひ欲しいとは思うが……」
「ええ、実際に戦場に行って感じた事の1つでした。ひもじいとは違いますが、ただ生き残るためだけに食べている感覚は初めてでした」
「当然だ。そのような体験をする機会などないからな。そもそも貴族が戦場に出るなど普通はないがな」
「あくまでも指揮をするため、あるいは贈り物をもらった実力者が最終手段として用心しておくくらいですからね。それからキメラについてお聞きしたいのですが」
「なんだ」
「キメラの食糧はどう考えていますか?あのキメラの数を考えると人間よりもキメラに与える餌の方が高くつきそうな気がしたのですが」
戦っている最終は気付けなかったが、帰ってきて冷静に考えるとあのキメラ達は何を食っていたのか気になる。
キメラを仮に生物兵器と定めたとしても、生物である以上食わなければ生きていけない。さらに戦闘のためとなれば十分な食料が必要となるだろう。
だが俺達が拠点を襲った時はそれっぽいものはなかった。
人間用の食糧が残っていたりはしたが、キメラ用と思われる食糧がない。
馬とかだったらその辺に生えている草を食べさせていた、みたいな代用可能なのであれば話は変わってくるが、そうでない場合一体何を食べさせていた??
特に最後に戦った巨人のキメラ。
あれだけ巨大な生物を生かすにはそれだけ大量の食糧必要なはず。
一体どこから食料を手に入れた??
「確かにお前の報告を聞く限りその懸念は最もだ。だが私にはまるで予想できない。そもそも巨人のキメラが居たこと自体信じがたい」
「それに関しては隣国に確認を取れば詳細に教えてくれると思います。今頃あのキメラ達について調べていると思いますから」
「こればっかりは報告が来るのを待つしかないか。それで陛下への報告書はどうだ」
「まだ途中ですが、このような感じです」
タイプライターで打った資料を見せると、父親は読んだあとしかめっ面で言う。
「事実だけを書いているのは当然だが……本当にキメラの事しか書いてないではないか。敵の拠点の数、キメラ以外のどのような戦術をしていたのか、敵兵の装備などに関しても報告書を上げろ」
「は~い」
ダメ出しをもらったが注意点がそれだけならまだマシか。
今度は陛下に会いに行かないとな。




