紅蓮偽神皇カタストロフィードラゴン
紅蓮偽神皇カタストロフィードラゴン。
それはアニメ版SWでラスボスのカードとして使用された事もある超ド級のパワーカードである。
当時はその破格の破壊力とBPに出せれば勝ちという評価を得た。
そう。出せれば。
超重量級コストに加えて最大レベルを維持するためにも魔石が大量に必要であり、他のサポートスピリットが居なければ出しても大した脅威にならないと言われていた。
そして現在ではスピード重視の速攻デッキが流行っていたのもあり、時代遅れのカードの1つとなってしまった。
カードゲームというのはどうしても過去のカードよりも現在の方がインフレを起こしてBPが膨大だったり、少ないコストで強力なカードが増えてしまうもの。
だからこそ、俺は今でも古いカードを大切にしたいと思っているし、こうして身内の中だけでも使っていきたいと思っている。
「………………いや~……アニメでデカいとは思ってたけど、実物見ると更に壮観だわ」
カタストロフィードラゴンには関節がない。
より正確に言うと神と言う異質さを強調するためなのか体のパーツパーツがくっついていない。
手首と腕がつっくいていない。太ももと胴体がくっついていない。背中の翼が背中とくっついていない。
それなのに体を動かす時は他の生物と同様に腕と手が連動して動くのだから余計に異質さが際立ってしまう。
両足で立っているはずなのに、膝が無くて太ももと胴体がくっついていないのにしっかりと足で立っている。
それは巨人の更に倍以上の姿。もうこの国に居ればどこからでも姿を見る事が出来るのではないかと思ってしまう。
呆然としていたのは俺だけではなく、騎士団長もゴルドーもその姿に圧倒されてしまっている。
巨人すら見上げるのは初めてなのか呆然としてしまっている気がする。
今が絶好のチャンス。少しでもカラストロフィードラゴンの姿を一瞬で済ませるため最後のダメ押しだ。
「マジック、『スカーレットカタストロフィー』を発動。そして、カタストロフィードラゴン。攻撃」
聞こえているとは思えないが、カタストロフィードラゴンは咆哮を上げ巨人を鷲掴みにする。
あっさりと捕まった巨人はまるで人形。もがきはするがあっさりと握り潰された。
これで終わったかと思えばそうではない。
カタストロフィーは胸の前で紅蓮のエネルギーを溜め、まるでもう1つの太陽になったエネルギー体を両手で圧縮し始める。
巨大なエネルギーだったが、関節が無く浮いているからか手を伸ばし、いや飛ばして圧縮し続ける。
最終的にカタストロフィーにとってソフトボールくらいの大きさまで圧縮して、両手で潰した。
その瞬間紅蓮のエネルギーが俺達を包んだ。
その光は爆風もなく、ただ紅蓮の光が体をすり抜けていったように感じる。
しかしその光はまるで世界全体を覆うかのような広がり方を見せ、まるで世界が紅蓮に染まってしまったようだ。
あまりにも意外なほど静かな決着に、俺はカタストロフィーから魔石を取った。
これにより消滅し、まるで幻を見ていたかのような静けさが辺りを包む。
これで終わったはずだ。
マジックの効果が正常に働いていれば仮にキメラが残っていたとしても今ので一掃できたはず。
だが……何と言うか、精神的な疲労が酷い。
ただ召喚してマジックを使っただけなのに、ひどく疲れた。
あまりの疲労感に両手を地面に付けて休んでいると、慌てた様子で騎士団長とゴルドーが声をかける。
「おい!大丈夫か!!」
「アレックス様!アレックス様!!」
「だ、大丈夫。疲れただけ……だ」
元々コストはクリムゾンのおかげで魔石は大量にあったし、魔力的には問題なかったはずだが……何でこんなに疲れているんだろう。
「よくやった。あとは我々に任せておけ。ゴルドー!今すぐ兵をかき集めろ!ディクト・ゼレン王国の連中にも分かるように連絡を!!」
「は!!」
あ~、あとは本職に任せるしかないか。
おそらく周囲に帝国兵がいないかどうか、徹底的に探すつもりなんだろう。
キメラが一掃された後ならどうにかなるかもしれない。
――
あ、気絶してた。
目を覚ますと既に周りの騎士達が戦後の片づけをしていた。
俺は気に寄りかかっていたところを見るに、誰かにここで寝かされたようだ。
ご丁寧に毛布も掛けられているし、最悪の事態にはならなかったのだろう。
ただ……あぐらをかいた姿勢で寝てたせいか少し体が硬い。
「あ、アレックス様起きられましたか」
一般の騎士が俺に気が付いた。
「おかげさまで。どのくらい寝てた?」
「およそ3時間くらいでしょうか?あの巨人を倒すために無茶をしたとお聞きしました。もう大丈夫なのですか?」
「ああ、少し頭痛がするくらいだ。命に別状はない」
「それは何よりです。落ち着いたらテントに向かってください。騎士団長と副団長がお待ちです」
どうやら騎士団長とゴルドーが俺を待っているらしい。
伸びをしてから歩こうとすると、足がしびれた……
変な格好になりながらもテントにたどり着くと、騎士団長とゴルドーだけではなく、王国側の指揮官達も一緒だ。
「お疲れ様です。寝てしまったようですみません」
「おお、起きたか。やはり随分負担だったようだな」
「ええそのようです。残党はどうでしたか?」
「それが周囲にはいなかった。もしや王都や他の領主の町に向かっている可能性があるため引き続き警戒するようには通例している。残念ながらどこに行ったのか分からない」
「そうですか……それは少し不安ですね。他のキメラに関しては?」
「あちこちに死体が見つかった。その中にはこの辺りにはいなかった離れたところでキメラの死体だけが見つかったと情報が入った。原因は不明だが突然死んでしまったかのようで外傷は見当たらないらしい」
「……油断はできませんがキメラも不完全だったのかもしれません。それにもっと遠くにキメラが逃げたり侵略のために身を潜ませている可能性もありますので徹底した捜索をお願いします」
「そうだな。一応退けたが帝国が諦めるとは思えない。引き続き気を引き締めるとしよう」
マジックの効果範囲がどこまでなのかは分からないが、効果はあったと思いたい。
ふと気が付けばまだロマンス達は存在しているようなのでこのまま片付けの手伝いでもさせるべきだろうか?
いつキメラが襲ってくるかも分からないし、もうしばらくここで暮らさないといけないかもしれない。
「私からもいいだろうか」
そういったのは家ん所の騎士団長だ。
俺を見ながらはっきりと言う。
「アレックス・ヘキサグラム。君はここで大きな働きをした。よって先に帰投する事を許す」
「……え?帰っていいんですか?」
「そうだ。ここからは私達軍人の仕事だ、というよりは本来最初からなのだがな。なんにせよ君は十分に働いたのであとは私達に任せろ」
「しかしキメラは?帝国からまたキメラで襲ってくるかもしれませんよ?その時俺が迎撃しないと――」
「君は思っていた以上に傲慢なのだな」
「え?」
傲慢と言う言葉を使われるとは思わなかったのであっけに取れれていると家の騎士団長は続ける。
「つまり君は我々がキメラに全滅させられると思っている訳だ。確かにキメラは脅威だがどうしようもない敵と言う訳ではない。だが勝つ事も守る事も十分可能だ。君はそれを信じられないと」
「あ、いや、そんなつもりで言った訳では」
「だがそう思っているんだろ?我々ではキメラに勝てないと」
「しかし……あの巨人キメラみたいなのがまた襲ってこないとは限らない訳で――」
「それは百も承知だ。それでも国を守るために力を振るうのが我々騎士の使命。その時は命懸けで戦うさ」
「でもそれじゃどんな犠牲が――」
「アレックス殿。私からも言わせてもらおう」
そう思っていると騎士団長も俺に向かって真剣に言う。
「アレックス殿は他国からの援軍であり、この国の者ではない。よっていつまでも甘えるつもりもないし、甘えてはいけないのだ。我々の身を案じてくれるのはありがたいが、これ以上は甘えだ。我らの国は我々が守らなければならない。違うか?」
「それは……でもそんなこと言ってる場合じゃないでしょ?巨人キメラがまた来たら本当に死んじゃうかもしれませんよ」
「もちろん死が怖いとは言わない。しかし怖いと言って逃げる訳にもいかない。この国を守ると決めたのだから戦わなければならない。弱音を言っている暇はない。その事を知ったうえで騎士になったのだから」
そういう騎士団長の目には覚悟が決まっている目をしていた。
それに騎士団長が言いたい事だって分かる。
結局俺は他国の人間だ。いつまでもここにいる訳にはいかないし、キメラが来るかもしれないとはいえいつ来るかも分からない。
そんな状態で何年も過ごすかもしれない環境にいつまでも入れるのだろうか。
それに俺を気遣ってくれているのも分かる。
あるいはこれ以上貸しを作るのが嫌なのか、なんて皮肉った考えもしてみる。
「分かった。分かりましたよ。俺はお役御免という事で帰ります。キメラが襲ってきても知りませんよ」
「その時は返り討ちにしてくれる!」
「それからこれを。正式な帰投である事を証明する書類だ。これを見せれば誰もが納得する」
「ありがとうございます」
「帰るのか?」
書類を受け取っているといつの間にか居たシルフィードが聞いてきた。
俺以外の全員が驚いているが、魔力で繋がっているかなんとなく近くにいる事は分かっていたので俺は驚かない。
それよりも聞きたい事がある。
「シルフィード。弱くても精霊って召喚できるか?」
「出来なくはないが……今はマスターに召喚されている身なので戦える精霊は召喚出来ない。それに今の状態だと私の力ではなくマスターの魔力で召喚されるぞ」
「それでもいい。連絡が出来るような精霊であれば何でもいい」
「そういう事なら簡単だ。大した魔力も消費しない」
そう言ってシルフィードは緑色の小鳥を召喚した。
ぱっと見は普通の小鳥に見えたが、よく見ると薄っすらと透けている。
「本当に俺の魔力使ったのか?全然消費した気がしないんだけど」
「普段の精霊召喚で魔力を多く消費しすぎているだけだ。それでは帰るぞ、リリア嬢もノア嬢も寂しがってる」
「そりゃ急いで帰らないとな」
その前にロマン達の魔石を回収して消滅させる。
シルフィードに担がれて帰る前にゴルドーが声をかけてきた。
「アレックス様。この度は助けていただきありがとうございました。このご恩は忘れません」
「別に忘れていいよ。結局仕事だから恩を着せるつもりはないし」
「それでも礼を尽くすのは騎士ではなく人として己に恥じないようにです。何かありませんか?」
「そうだな……あ」
「何かありますか?」
「それじゃ戦争が終わったら飯奢ってくれ。出来るだけ美味いので」
俺がそう言うとゴルドーだけではなく騎士団長達も笑った。
「そんな変な要望だったかな?」
「変ではないが、欲がないなアレックス殿は!ここは金銀財宝を要求するところだろう!あるいは勲章か?」
「騎士団長。勲章こそこの国の者でなければ王からもらえません。あるとしたら褒章でしょう」
「そうだったな。それでは次に会う時は褒章をもらう時だな!」
「要りませんよ……どうせなら食える物が欲しい」
「ふははは!!もう少し欲を出せばいい物を。それではな」
「お元気で。次に会う時は戦争が落ち着いた頃だと良いですね」
「……本当にどうしようもない時は呼んでください。駆け付けますから」
「そうならないように努力しよう」
こうして俺はシルフィードに担がれて一足先に家に帰る事になった。
本当に、戦争が落ち着いた時にまた会えたらいいな。
『名前 紅蓮偽神皇カタストロフィードラゴン
カテゴリー スピリット
コスト 12
軽減 赤6
種族 偽神
シンボル 赤2
レベル1 魔石1 BP6000
レベル2 魔石4 BP10000
レベル3 魔石10 BP20000
効果 【レベル2~3】アタックステップ時
自分フィールドにある種族『偽神』『偽神将』を持つスピリットが
アタックした時、デッキの上から1枚ドローできる
【レベル3】
種族『偽神』を持つスピリットが相手スピリットだけを破壊した
時、そのスピリットの上に置かれている魔石を全てボイドに置く』
『名前 スカーレットカタストロフィー
カテゴリー マジック
コスト 3
軽減 赤2
効果 【フラッシュ】このターンの間、種族『偽神』を持つスピリットが
相手スピリットだけを破壊した時、相手フィールドの同じ種族の
カードをすべて破壊する』




