表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/113

殿下襲来、強制送還

 予定より少し時間がかかって3日目の昼、彼らは到着した。

 そしてその中のお偉いさんに1番びっくりした。


「何で殿下が混じってるんですか」


 正直呆れながら俺は口を出した。

 その両隣にはいつもの従者達。

 お前ら止めろよ。次の王様第一候補だぞ。


「父上の判断だ。何も考えずに来たわけではない」

「それでもなぜこんな危険な地に来たのです?」

「少しは戦果を持ち帰れという事なのだろう。そして格を付けろとな」


 王族と言うのはよく分からん。

 普通子供を危険なところから遠ざけてなんぼではないだろうか?

 そう考えていても来てしまったものは仕方がない。

 とりあえず騎士団長と会わせて話し合わせればいいのだろうか?


 そんな感じで騎士団長と会わせ、あとは放置しておく。

 あとは勝手に話し合え。


「アレックス様、あれ本当に殿下何ですか?」

「おそらく本物ですよ。従者2人も知ってる顔ですし、一体何しに来たのかさっぱり分かりません」

「さっき言ってた通りだぞ」


 俺達の話は言ってきたのはシルフィードだ。

 クッキーを食べながらその理由を語る。


「王が殿下に箔をつけるように参加だけさせているだけだ。あとからあの戦争に参加して帰って来たという事実を付けようと王が考えただけだ。だから戦闘に参加する事はないぞ」

「それじゃこの大軍殿下の護衛のためか?」

「いや、彼らのほとんどは戦争のための援軍なのは間違いない。同盟に基づいて5000人の兵力だ」

「5000人……嬉しい所ですが維持するのも大変そうですね」

「その通りだが向こうにも見栄えを重視しているんだろう。ほぼここまで休息なしで突破していたからな、まず彼らを休ませなければならない」

「となるともう1日休んでから最後の拠点を収める感じですかね」

「それが良いかと。この拠点にいた者の話によれば歩いて半日ほどの距離だそうなのでもしかしたら気付かれているかもしれません」

「もし気付かれていたら?」

「向こうから攻め込んで来るか、あるいは撤退するか。ですが彼らの考え方だと撤退するとは思えません」

「ですよね。それじゃ一応は次が最後の一戦になるんでしょうか?」

「一応と言う意味ではそうですね。終戦する訳ではありませんが拠点を制圧し帝国兵を捕らえる、それで一応の終息にはなるかと」

「それじゃ十分に戦えるようにしっかり休んでおきましょう」

「そうですね、次が決戦です」


 という感じで俺達は明日に向けて休息をとる。

 つもりだったのだが……テントがさっきから何やら騒がしい。

 声を荒げているのは騎士団長のようであり、他の声はその怒鳴り声でかき消されてしまっている。


「何事でしょうか?」

「さぁ?」


 俺達だけではなく他の騎士達も何事かとテントの外で聞き耳を立てる。

 その内容は――


「彼をこの場で任務終了させるとはどういう意味だ!彼が居なければキメラの対応は出来なかったんだぞ!!」


 キメラの対応、任務終了って俺の事かな?

 ゴルドーと他の騎士達と視線を合わせた後改めて会話に耳を傾ける。


「だが彼は勝手にこの戦場に単身乗り込んだ。それに関しては罰するべき命令違反だろう」

「それは命令違反ではなく迅速な対応をしてくれたのだ!実際彼があの日到着していなければ被害は今の倍以上に膨れ上がっていた可能性が非常に高い!!それに彼が居なくなったらキメラの対応はどうする!お前達が対応できるというのか!!」

「その通りだ。あとは我々がキメラの対応をし、討伐する。そのための準備はしてきた、そして約束しようではないか。無傷でこの戦いを終わらせると」


 バカ殿下め……そんな事実現不可能に決まってるだろ。

 信用を得るための大口なのが丸わかり。

 何体いるのか分からないキメラ相手によくそんな事が言えるな。


「あの王子はそれほどまでに強いのですか?」

「知らん。戦った事はないし見た事もない。だが従者の1人とは戦った事があるが……年相応だぞ」


 その方が自然だとゴルドーも他の騎士も頷く。

 元々彼らは戦場で戦うのではなく、安全な城で指揮を取るのが役目。前線に立つ必要などどこにもない。

 だが実際の戦場も知らずに上に立つ立場になるというのもおかしな話か。

 おそらく陛下からの実績作りとはそういう事なんだろう。

 一度も戦場を経験した事がない者に付き従う者が居るのか?そういう疑問を消すための一手と言う所か。


 それにしても意外なほどに騎士団長が俺の事を擁護してくれるし、持ち上げてくれている。

 その事が少し不思議だと思っていると表情に出ていたのかゴルドーが説明してくれる。


「騎士団長は実力至上主義です。騎士でも魔法使いでも実力があれば評価してくれます。ですが最近の魔法使いは希少性という立場だけで大した魔法が使えないのに戦場に来たりしていた事を嫌っていました。アレックス様への対応が最初厳しかったのはそのためです。ですがアレックス様は実力でキメラを倒し、活路を見出してくれました。ですからあのように言葉を荒げてくれるのです」


 なるほど納得。

 しっかりと実力がありキメラを引き受けたからこそ信用を得たと。

 それにしても名ばかり魔法使いと言うのも面倒だな。

 魔法使いと言うだけで特権階級だと勘違いしている者も少なくないんじゃないだろうか?

 結局相手を倒す実力が無ければ意味がないって言うのによ。


「なんにせよ本当にキメラを倒せるのかは疑問だな。1体だけならどうとでもなるかもしれないが……」

「どれだけの数が居るのか分かりません。それに次に攻略しようとしているのは最初に取られた領地であり帝国にとってこの国を呈入れるための重要な拠点です。もしキメラを配置しているとしたら……」

「今までの最大数かも知れないよな~。そうでなかったとしても大型のキメラを相手に一体何人の騎士を投入すればいいのか分からない。人と変わらない大きさであっても動物の身体能力と言うか、とにかく生物としては向こうの方が強い。安全に戦うとすれば最低でも4名から6名の人員が必要。5000人増えたとしても大型のキメラに立ち向かえるのか……」


 色々な事を想定しながら騎士団長の怒鳴り声を聞く。

 俺達に向かって怒鳴っている訳じゃないけどたまにびくっとするのはご愛嬌。

 でも本当のたった5000人の兵力でキメラ全てを倒す事は出来るのか?


「仕方ない。バカ殿下を止めに行きますか」

「な、なにをするつもりですか?」

「別に、いつものことをするだけですよ」


 そう言ってから勝手にテントに入る。

 ゴルドーも遅れて入ってくると騎士団長は俺を一瞬睨みつけた後、申し訳なさそうに言う。


「すまない。うるさかったな」

「ええ、なので話の内容はお聞きしました」

「品のない奴だ」

「殿下も。見栄を張りたいお年頃なのは分かりますがこれは盤上遊戯ではありません。本物の戦場です。キメラと言う狂暴な生物を前に無傷と言うのは不可能です。それくらい分かってください」

「それでもやらなければならない。陛下はそれを望んでいる」


 本当に望んでるのか?戦場での活躍ってそれだけじゃないだろ。

 ゴルドーと騎士団長もどういえば引いてくれるのか考えているが俺はいつも通りの事をしよう。


「殿下が殺される訳にはいかないので後ろに下がっていてください。これは決定事項です」

「一体誰が、何の権限で決めた」

「俺が、何の権限もありませんが決めさせてもらいます。ここで殿下が殺されたら面倒臭いんですよ。外交的にも、うちの国的にも。俺が倒したキメラを殿下が倒した事にしておいていいんでそれで功績は十分でしょ」


 めんどくさいな~っと思いながらそう提案する。

 この提案に驚いたのは騎士団長とゴルドーだ。

 心底驚いているようで俺を止めに入る。


「ちょっと待て。それでいいのか?アレックス殿は今回最大の功労者だぞ。貴殿が居なければキメラの討伐は叶わなかった。その功績を自ら捨てると?」

「それはいくらなんでも勿体なさすぎます!複数のキメラを相手取ってくれたおかげで我々は帝国兵に集中する事が出来た。これは事実です!」

「そうかもしれませんけどね、ここで殿下殺して外交問題になる方が面倒ですよね。そりゃもちろん絶対ではありませんが、その可能性が非常に高いのが事実。そしてキメラがどれだけいるのかも不明。どんなキメラなのかも分からないの殿下を連れて行く訳にはいかないんですよ。そのためなら功績くらいくれてやりますよ」


 本当にそれでいいのかと騎士団長とゴルドーが訴えてくるが、それ以上に怒りに震えている人物がいた。


「まるで私が邪魔者扱いだな」


 殿下自身だ。


「え、その通りに決まってるじゃないですか」


 はっきりと事実を言うと俺以外あっけにとられた。


「殿下ねぇ、一応とはいえ家の妹と婚約結んでるんですよ。そうなると俺も殿下を守る義務出るし、ぶっちゃけ生物を殺した事もない甘ちゃんが戦場に居たって何の価値もないんです。ぶっちゃけ帰れ」

「か、帰れだと!?無礼にもほどがあるぞ!!」

「もういいや、敬語使うのも疲れた。とにかく死ぬと面倒になるから戦場からさっさと帰れ。帝国がどんな攻撃してくるのか分からない以上足手まといは要らないんだよ。シルフィード」

「何だマスター?」

「強制送還」

「分かった」

「な!?ちょっと待て!!」

「舌噛むなよ」


 シルフィードはそういって殿下を脇に抱えて飛んで行った。

 文字通り強制送還としてシルフィードに城に送ってもらうつもりだ。

 風精霊らしく速攻なのは非常に心地いい。

 従者2人はどうしようと顔を見合わせているが2人も強制送還だ。


「お前らもシルフィードが帰ってきたら帰ってもらうぞ。お前らだって死にたくないだろ」

「しかし……どうするつもりだ。殿下の言っていた事は事実だ。殿下は陛下の命を受けてこの戦地に来た。どう誤魔化すつもりだ」

「恐ろしいキメラがいる事が分かったので殿下とその従者を逃がしたって言っておけばいいだろ。戦場で予想外のトラブルに襲われたと言っておけばいい」

「……不敬罪で罰せられるかもしれないぞ」

「殿下を生かすために逃がしたのに不敬罪食らってたまるかよ。いざって時は……領地に引きこもって生きてやる」

「つまり無計画という事だな。はぁ。その口裏、私達も合わせておこう」

「え、何で?それこそ大丈夫かよ?」


 意外な言葉につい確認を取ってしまう。

 眼鏡の方も似たような事を言う。


「私達も殿下が戦場に赴くのは反対でした。あのように殿下は現在精神が不安定であり、実績づくりに躍起になっています。それに皆様の言うキメラもどのような力を有しているのか分かりませんし、殿下は安全な所に居てもらう方が都合がいいのは我々もです。ですのでそこだけは協力してあげます」

「そりゃどうも。そしてその意味は殿下を逃がす所だけ、なんだろ?」

「さぁ?それはどうでしょう」

「腹芸が達者だな~。これだから貴族社会は面倒なんだ」


 その後戻ってきたシルフィードにより従者達も強制送還となった。

 もちろん殿下はブチギレており、陛下に色々言っていたようだが全部は聞いてなかったらしい。

 その後シルフィードは屋敷に戻っていつも通りリリア達を守ってもらう事に力を注いでもらう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ