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ファランゴル王国の戦場

 フレイム・スタリオンは空を駆ける事が出来たので思っていた以上に速く移動する事が出来ている。

 西の草原で戦っていると聞いていたが、具体的にどんな状況なの分からないので慎重に動かなければならない。

 でも早く行って終わらせたい気持ちもありどうしたもんかな?


 なんて思いながらファランゴル王国の西側を駆ける。

 その途中スタリオンは何かに気が付き耳を澄ませる。

 俺もその意識に集中すると戦っているような、鉄と鉄がぶつかるような音が聞こえてきた。


「スタリオン。ここからは地上から行こう」


 スタリオンの耳を頼りに地上に降りてファランゴル王国の兵を探す。

 帝国が現れたのは北側だったはずだから南側からくれば帝国兵と勘違いされないはず。

 そう思いながらスタリオンと共に歩くが意外と見つからない。

 もっと北側だったかと思ったが獣道の様な所を歩いていると騎士に出会った。


「な、何者だ!!」


 慌てて槍を向ける騎士の胸にはファランゴル王国の紋章が描かれており、問題ないようだ。


「私はディクト・ゼレン王国から来たアレックスという者です。みなさんの支援に参りました」


 俺がディクト・ゼレン王国紋章が入ったマントを見せながら言うと兵士は槍を収めてくれた。


「こ、これは失礼いたしました!それはつまり、援軍という事ですか?」

「そうなります。失礼ですが皆様の砦に案内していただいてもよろしいでしょうか」

「分かりました。お連れします」


 スタリオンから降りて一緒に行くと、砦と言うよりはテントを張った軍事拠点と言う感じだった。

 兵士の彼は入り口付近で俺に待機するように言い、少し待つと騎士と魔法使いと思われる人達が現れた。


「あなたがディクト・ゼレンからの援軍ですか?」

「アレックス・ヘキサグラムと申します。召喚士です」


 召喚士と言う言葉を聞いた瞬間騎士が気に入らなそうな目をする。


「申し訳ありません。援軍ありがとうございます。それで……他の方々は?」

「私が召喚した精霊の足が速すぎるので先に到着させていただきました。他の方々は後から到着します」

「なるほど、それではどうぞこちらに」


 魔法使いっぽい人の方がそう俺の機嫌を取るようにテントの1つへ案内する。

 その道中傷付いた騎士達を見たのだが、なんだか思っていたのと違う。

 違うというのは彼らの傷だ。

 剣や槍によって傷付けられたというより獣にでも襲われた様な傷が目立ったからだ。

 一体何と戦っているのだろうと思いながらテントで説明を受ける。


「今回は軍事同盟を受けていただきありがとうございます。副官のゴルドーと申します」

「改めてアレックスです。現状はどのような戦況でしょうか」


 そう聞くとゴルドーは無念そうに言う。


「今回の帝国の侵略は厄介でして、魔物を従えているんです」

「魔物ですか?」

「はい。それぞれ形が違うので何とも言い難いですが、おそらく戦闘用のキメラではないかと思われます。キメラを前線に立たせ、今までの戦争とは全く違う戦法を取ってきた事と、単純にキメラ達の強さに圧倒されている状態です。キメラ1体に騎士や魔法使いが10名以上で戦わなければならず、その隙に帝国兵も襲ってくるので反撃のチャンスもなく……」


 それで獣に襲われた様な怪我人が多かったのか。

 そして陛下が俺を戦場に出した理由はこれか?

 キメラが暴れているから俺のスピリットをぶつけて五分にしようと考えていた、って所か。


「今回ディクト・ゼレン王国からキメラをどうにか出来るかもしれないとの事でその軍隊を待っているのですが……どれくらいで到着するでしょうか?」

「あ~それ多分俺の事ですね」

「え、あなたが?」

「俺は召喚士です。精霊を召喚し戦う事が出来るのでおそらくそれで俺を戦場に駆け付けたのでしょう」

「し、しかし1人でキメラ全てを相手にする事は出来ないのでは……」


 まぁ不安に思うのも当然だろう。

 精霊のような強力な存在は1人1体みたいな印象が強いのかもしれない。

 だがその常識は俺には通用しないし、何より召喚時効果を使えば複数体いても対応する事は可能だ。


「それでそのキメラは全部で何体いるのでしょうか?」

「現在確認している限り大小含めて20体です」

「20体……どうにかなるかな?」


 あいつの召喚時効果は当然だが制限がある。

 BP3000以下は20体中何体なのやら。


「陛下から聞いた時は草原で戦っていると聞いていたのですが、それは今もでしょうか?」

「それは……はい。こちらも夜襲などをかけて少しでも帝国兵を減らそうとしているのですが……」

「もしかして敵本陣にもキメラが?」

「はい。より正確に言うと戦場から戻った後もキメラ達は本陣を守るために運用されているようなのです。斥候からの情報だと今回騎士は少なく、ほとんどがキメラを操る魔法使いか、調教師の様な物ではないかと予想されています。それ以外だと指揮官などではないかと」


 そうなると本陣に切り込む時もスピリットの力が必要かもしれない。20体いるというが全て戦場に出ている訳ではないだろう。

 というか不思議なんだが、キメラってそんなにコスパいいのか?

 特に兵站、つまり食糧問題などでキメラの食糧や飲み水は十分に確保できているのだろうか?

 それに本陣もキメラがいるって……


「どうなさいましたか?」

「いや、そのキメラの餌とか帝国はどう賄っているんだろうな~っと思っていただけです」

「それは……」

「心当たりがあるので?」


 改めて聞くとゴルドーは非常に重い口で伝えようとしたとき、他の者が答えた。


「我が騎士達の死体だ。あのキメラ達は人間の死体を食っている」


 俺を睨んでいた騎士団長だ。

 ゴルドーは副官と言っていたからこの人が指揮官なのだろう。


「それは本当ですか」

「事実だ。戦場から死体が酷く損傷している物が多く、獣の噛み痕があった。帝国兵共が考えそうな事だ」


 そう言って地面に唾を吐く。

 気に入らないのは分かるが汚いな。


「それで貴様があのキメラどもを相手取るというのだな」

「それが最も効率がいいでしょう。明日はいつから攻め込むのですか?」

「夜明けとともに攻撃を仕掛ける。貴様は精霊を召喚して1体でも多くのキメラを止めればいい。とどめは我々が差す」

「いえ、キメラはこちらで倒しておきます。むしろ初撃は私に任せていただけませんか?私1人でよいので」

「アレックス様!?」


 まぁ普通は自殺行為だと思うだろう。

 ゴルドーは止めようとするが騎士団長は少し感心したように言う。


「ではそちらに任せよう。全てのキメラをな。精々奴らの餌にならないよう倒す事だ」


 そう言ってテントから出て行くのを見る限り、俺の事を一切信用していない事が分かる。

 まぁ学生だから当然と言えば当然だが、一応援軍なのだからもう少し気を使っても良いと思う。


「申し訳ありません。司令官はその、軍勢を想定していたようで」

「それは後から来ますよ。それより戦場を見させてもらってもいいですか?」

「それは構いませんが……今日は終わったばかりなのでその、あまりいい状態ではないかと」

「それでも、現実は見ておかなければいけませんので」


 という訳で戦場に来てみた。

 草原と言うだけあって見晴らしのいい草しかない場所だが、それは戦死者が居なければの話だ。

 今は草原近くの森に潜んでいるが、ファランゴル王国の騎士達の死体が散らばっている。

 胃の中の物を吐き出さないように必死に飲み込んで我慢しながら死体を片付ける騎士達を眺める。


「これは酷い」

「ええ、今までの帝国も酷かったですが今回の戦争は特にです。キメラ達が暴れるせいで被害は大きいですし、仲間の死体を奪い去っていく事もあるせいでろくに弔う事も出来ません。敵を討ちたいですが、我々には力が無く……」


 無念さを噛みしめているようでゴルドーの手は震えている。

 俺は彼らに向かって手を合わせ、頭を下げる。

 とりあえず覚悟は決まったし、一切の情け容赦は必要ない事も理解できた。

 あとはもう、カードを切るだけだ。

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