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戦争に参加する事になってしまった

 翌朝、シルフィードが手紙を持って戻って来た。


「これがマスターの父から受け取った手紙だ。中身を確認してくれ」

「おう。それにしても随分時間かかったな」

「その手紙の内容について大分悩んでいたようだぞ。両親揃って書いていた」


 みんなの前で受け取り開けると確かに両親の字が書かれている。

 その内容は…………


「内容は?なんて書いてあるの?」

「お父様とお母様、大丈夫?」


 ノアとリリアが心配そうに聞いているが、内容は俺が思っていた物と少し違っていた。


「何と言うか、隣国から戦争を恐れてやって来た移民達をまとめるのに少し苦労しているらしい。魔物の森もあるからどうにか食糧事情を改善したいがいい案はないか、だって」

「それは……確かに思っていた物とは違うわね」


 移民が来るというのは確かに戦争の影響と言えるだろう。

 だがすぐに戦争が起きるという感じでもなく、その影響でやってきた移民問題についてどうしよっかという相談。

 その移民達の証言によれば戦争は現在うちの領地から離れた別の辺境伯の近くに向かっているらしく、こっちに来る事はほぼないだろうとの事。

 それでも逃げてきたのは帝国に襲われた領地の人達であり、全員近くの領地に逃げ込もうとしたがそれも敵わなかった人達がうちの領地にまで来たみたいだ。

 まだ襲われていない隣国の領地でもいいのではないかと思うが、もしかしたら他の領地も帝国によって奪われるのではないかと警戒した人達は移民として保護を求めているらしい。


「で、でもそれだけ戦争は酷い事になってるって意味だよね?」

「リリアが言いたい事は分かるが……ん?」


 手紙を読み進めている間に父親からの忠告があった。

 その移民の人達の話によれば帝国は化物を使って兵士達を倒したと言っているらしい。

 これがもしキメラだとしたら本当に俺の手を借りなければならない事態になるかもしれないから覚悟と準備だけはしておいて欲しい、か。


「この情報……本当にあなたが出ないといけないの?」

「そうかもしれないな」


 ノアはかなり複雑そうにしているが、自分から戦場に出るつもりはない。

 相手の数が不明である以上どれだけ倒せばいいのか分からないが、こりゃ想像以上にあのカードが切り札になる可能性が高い。

 でもな……この効果使うの怖いんだよな……


「とりあえず今日も学園に行って色々確認してみる。もしかしたら陛下から行けって言われるかもしれないし」

「あなた……」


 ノアが不安そうにしているがこればっかりは逃げられないんだよな……

 何度も言うが辺境伯とは他国の侵略に対して最初の防波堤であり、最初に戦わなければならない貴族。だからこそそれなりの地位が約束されているし、国からも重要視されている。

 その辺境伯の息子がいの一番に逃げ出すわけにはいかない。

 こういうことが起きた際に戦わなければならない事は、両親から何度も言い聞かせられてきたからな。


 それでも戦争嫌だな~っと考えながら学校に来ると、殿下が校門で従者と共に立っていた。

 そして俺を見つけると厳しい表情で声をかける。


「陛下がお待ちだ」


 その言葉だけで戦争に参加する事は分かった。

 嫌だなぁ~っと言う気持ちは変わらないが、そう国が判断したのなら従うしかない。

 本当に帝国ははた迷惑な存在であると認識した。


 学校には行かず城に直行し、陛下と久々に直接会う。

 その両隣にはおそらく騎士団長と魔術師団長が控えていた。


「アレックス・ヘキサグラム、参りました」

「面を上げよ」


 片膝をついたまま顔を上げると陛下は為政者としての姿を見せながら言う。


「この度我々は隣国、ファランゴル王国と軍事同盟を組む事となった。その先兵の1人としてアレックス・ヘキサグラムを派遣する事が決まった。何か異論あるか」

「承知しました」


 あっさりと承知すると周りは少し意外そうにする。

 おそらく色々言っていきたくないとごねると思っていたのだろう。

 まぁ実際戦争なんて大規模な理由じゃなければ了承したくなかったけどさ。


「では明日ファランゴル王国に向かってもらう。現在の戦地はファランゴル王国の西、ディニア平原で行われている。詳しい内容は現地で聞け」

「承知しました」


 こうなると学校に行ってる暇ないな。

 さっそく家に帰って準備しなければならない。

 あ~あ、ノア達に言うのが億劫おっくうだな。

 特にノアとリリアが怖がりそうだし、寂しがりそうだ。

 だがこんな大切な事を言わない訳にもいかない。本当に嫌だな……


「あ~……ただいま」


 学校に行ったはずの俺がすぐに帰って来たと分かれば、そりゃ当然何かしらの異常があったと察するわな……

 凍り付くみんなの中でノアが代表するように確認して来た。


「戦ですか」

「………………ああ、明日ファランゴル王国に行く」


 結局どう遠回しに伝えれば分からなくて、正直に話した。


「そう……ですか」


 覚悟はしていたが実際にそうなるとなるとやはり悲壮感漂う空間になってしまう。

 リリアなんてもう既に泣きそうになっているし、もう葬式みたいな雰囲気な気がする。


「おいおい。まだ戦場に出るってだけで死ぬと決まった訳じゃないんだぞ。そりゃ明るく見送るなんて無理だろうけどさ……」

「……陛下に抗議して参ります。軍人ですらない貴族を戦地に向かわせるなど何事かと申してきます」

「もう行くって言った後だ。それにこれは貴族の役目でもある」

「それはこの国を守るための義務です!他国に行って戦果を挙げろなどそれは騎士が行う事です!!いくらアレックス様が特別な力を持っていると言っても、私達はまだ子ども扱いです!それなのに……何で……」


 その答えを持っているのはおそらく陛下だろうが、答えてくれるとは思えない。

 俺だってまだ学生だから~で許されると思っていたのに裏切られたのだから。

 もしまだ陛下が俺の力を見くびっているのであれば、この戦争で思いっきり目立って俺を運用するという意味がどういう意味か、教える必要がある。


「悪いが必ず帰るから安心してくれとしか言いようがない。今回ばかりは本気だ、だから無事に帰ってくると信じてくれ」

「……この年で未亡人とか絶対に嫌です」

「正式に式も上げてないのに死んでたまるか。子供だって見たい。色々欲があるんだから死ねねぇよ」

「……分かりました。しっかりとこの屋敷をお守りします」

「リリアも頼むぞ。俺がいない間はリリアが1番偉い事になるんだから」

「う、うん!分かった」

「シルフィードとレムルシャールはいつも通り2人の護衛をしてくれ。あと精神的にも支えてやってくれ」

「承知!」

「ご命令承りました」

「他のみんなも2人の事を支えてやってくれ。何すぐ終わらせて帰ってくるさ」

「「「「「お帰りお待ちしております!!」」」」」


 とりあえずはこれでいいだろう。

 なんか全員意識高いし、これなら戦場に行っても問題なさそうだ。


 自室に戻って軽く準備。

 準備と言っても鎧とか剣とかを用意するのではなく、今のうちに盤面を固めておく。

 フィールドの『無限蟻塚むげんありづか』を新しく配置、外で移動用でありカードを使うための仕込みでもある『フレイム・スタリオン』を召喚。

 フレイム・スタリオンはたてがみひづめが炎に包まれている馬の形をしたスピリット。

 少しでも知っている動物に近ければ相手もあまり強く警戒する事はないだろう。


 これ以上は戦地の盤面を見なければ何とも言えない。

 今ここで大量にスピリットを召喚しても意味はないし、スピリットによって足の速い遅いはあるのだから1体だけの方が良い。


 だから盤面の準備に関してはこれで良し。

 ここだけはゲームと違っていい面だよな。ゲームだったらこんな仕込み出来ないし。

 そして俺の食料として干し肉と硬い保存食としてのパンを大量に、そして水だとすぐに腐ってしまうのでワインのボトルを2本。

 これは冒険者の皆さんからの知恵だ。武器になるのはカードだけなので不要な物は出来るだけ持ち込まずあとは食料に割り振る。

 向こうでも飯くらい出ると思いたいが……戦場じゃ物資が困窮していたもおかしくない。自力で持って行けるものは持って行こう。

 準備が大方終わると部屋がノックされる。


「どうぞ~」

「あなた、送別会です」

「……送別会?」

「いつ帰ってこれるか分からないから今のうちに英気を養っておけって事。みんなで準備したんだからいっぱい食べて元気つけて行きなさい」

「いや、すぐ倒してすぐ帰ってくるつもりで――」

「戦争がそんな簡単に終わる訳がないでしょ!!補給部隊の事とか色々あるんだから今のうちに食べてく!」

「いやありがたいとは思ってるんだがちょっと大袈裟じゃ――」

「大袈裟な訳ないでしょ。本当に、死んじゃうかもしれないんだから」


 その言葉を聞いてノアは想像以上に俺の事を心配してくれている事にようやく気が付いた。

 こういう時すぐに気づかないからモテないんだろうな。

 だから抱きしめながらちょっと頼む。


「それじゃ英気を養うために今晩夜更かししないか?」

「……明日戦場に出るんだからあまり遅くなり過ぎない範囲なら」

「頼む」


 ささやくように言ってから俺はみんなと飯を食う。

 そして夜はノアに英気をもらい、フレイム・スタリオンに乗り戦場へ向かった。

『名前     無限蟻塚

 カテゴリー  フィールド

 コスト    5

 軽減     緑3

 シンボル   緑1

 レベル1~2 魔石0

 レベル2   魔石4

 効果    

【レベル1~2】お互いのアタックステップ

 BPを比べ相手スピリットだけを破壊した時、アタックまたはブロックしたスピリットを回復させる。

【レベル2】自分のターン中

 相手はフィールドにあるシンボルと同じ色のカードでなければ使用できない』


『名前    フレイム・スタリオン

 カテゴリー スピリット

 コスト   4

 軽減    赤1

 種族    皇帝獣こうていじゅう

 シンボル  赤1

 レベル1  魔石1 BP3000

 レベル2  魔石2 BP6000

 効果   【レベル1~2】このスピリットのアタック時

       相手のフィールドカードを1枚破壊する』

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