ノアと一線を越えた
「……刺激が足りない」
自室でゴロゴロしながらそんな事をつぶやいた。
日本って本当に恵まれた環境だったんだな……
学校は授業をして後は貴族同士の権力闘争や情報戦ばかりでつまらないし、眼鏡達は鍛えかいはあるが思っていたよりも物覚えが良いのでほとんど手が掛からない。
エムリアール嬢は……商売の話ばっかりだな。あるいは領地運営について話し合ったりとか?
でもこれらが日常となると刺激が足りない。
日本じゃ暇ならスマホだ、漫画だ、ゲームだと色々あるがこっちにある娯楽はほとんどない。
小説とか料理とかあるかもしれないが……小説は紙が高いからそう何冊も変えないし、料理の方は……かなり面倒くさい。
何でかって?手抜きによく使っていた焼き肉のたれとか、出来合いの調味料の類が全然ないからだ。
料理人が一からソースを作る姿を見ると厨房に入って暇だからなんか作らせてとは言い辛い。
食材だって無駄には出来ない。何せ日本と輸送コストが段違いなのだから。
そうなると辺境に住んでた頃は森に言って実験と称して森に行ったりしている方が性に合ってたな……
王都だと演劇とかもあるが、あれ個人的に長すぎるんよ。映画感覚1時間で終わらないし、途中寝たりしたらもう展開がどうなっているのか分からなくなる。
俺に合う暇つぶしは全然ないな……
「あなた?どうした??」
ゴロゴロしているとノアが入って来た。
起き上がりながら贅沢な悩みを言ってみる。
「やる事がない。暇だ、仕事とある?」
「ないわよ。ゆっくりする暇があるのだからゆっくりすれば良いじゃない」
「それは分かるんだが……だからって寝てばっかりなのも勿体ない。リリアは殿下の所だっけ?」
「ええ、あんまり距離が近すぎるのもちょっと考え物だけど」
そう言いながらノアは俺の隣に座りながら身を預けてくれる。
だから肩を寄せながら考える。
「これは近すぎるとは違うのか?」
「ええ。だって今は殿下が一方的にグイグイ来ているだけだもの。こうして隣にいる事が自然な状態ではないから」
「なるほど。でもまぁ殿下にはかなり厳しい状態だな」
「意外ね。あなたが殿下の肩を持つなんて」
「まぁあれだ。同じ男としてこうして好きな女にこうして触れられないというのは酷な話しだって少しは分かるってだけ」
「……これ以上の事もしていいのだけど」
何て言いながら目をつむるのでそっとキスをしてみた。
「……これだけ?」
ノアが物足りなさそうに、ちょっと怒りもこもった感じで言う。
「……すまん。こういうの本当に初めてだから線引きが分からん」
「その、前世の頃はいなかったの?婚約者」
「いないいない。彼女すらいなかったからな。こういうのは……創作物の中だけの話でそういう知識もほとんど創作物の中でしか知らん。実際に経験して、ああだったこうだったみたいなのはない」
「……仕方ないから許してあげる。初めてじゃ仕方ないわね」
急に機嫌が良くなったと思えば今度はノアの方からキスをしてきた。
かなり積極的なキスで純情とは言い難い。
「……こんなに激しくしていいもんなの?」
「私はそう。というか前にも言ったでしょ、私は積極的だって」
何て挑発的に言うから俺はそっとノアを押し倒した。
ゆっくりだったからか驚きはないが意外そうな表情をする。
「押し倒してどうするの?」
語るよりも行動で語った方が早そうなので下手くそなキスをしまくる。
相手の事なんて考えない、ただ自分の欲望をぶつけるだけ。
お互いに呼吸が乱れているとノアは何故か嬉しそうに言う。
「あなたも激しいのが好きだったんだ」
「そういうお前は怒らないのか?」
「怒る?何でそんな風に考えたの?」
「だってほら、女って言うのはこういうのロマンチックなのが良いとか、色々あるんだろ?俺はガサツだからそういうの疎いから分かんないけど」
「へ~。まぁ私だって女の端くれだし、分かるわよ。でもあなたにはもっと色々求めてるの」
「色々?」
具体的にどんな物なのかよく分からない。
だがノアはそんな俺の表情を見てほほ笑みながら教えてくれる。
「本当に色々よ。今私が知っているのは私に優しくしてくれる所ばかり。少し距離を置いて傷付けないように、怖がらないようにってずっと優しくしてくれてる」
「それは当然だろ。俺の所に来てくれたんだから」
「押しかけ女房って言ってたくせに。でもそれでもあなたは私を大切にしてくれている。他の男だったら都合が良いと言ってもっと乱暴にしたっておかしくないのに」
「それは……俺の好みじゃない。俺は……お互いに落ち着ける関係でいたいし、あと普通に嫌われたくない」
「ふふ、なにそれ。押しかけられた方の言葉なのそれ?」
そう言われると確かに。
でもまぁ出会い方はともかく今はそれくらい大切にしたいと思っているという訳だ。
だからこれ以上は止めておこうかと思っているのに、ノアは俺の背に手を回す。
「……だからこれ以上の事もしていいの。キス以上の事もね」
そう言われた瞬間俺の中で何かが変わった気がする。
具体的に何がと聞かれると答えられないが……ノアに対する意識が変わってしまった気がする。
「そういう顔も出来るんだ……」
「どんな顔してる?」
「男の顔。それとも雄の顔って言うべきかしら?私は構わない。来て」
――
……中毒者が居るという事実が初めて理解できた気がする。
でもってエロ漫画とかでそういう行為にドはまりしてしまったキャラたちの気持ちがようやく本当の意味で理解できた気がする。
「……けだもの」
ノアはそう言いながら恨みがましい視線を向けてくる。
「ご、合意だろ?」
「合意だけど途中そうじゃない時もあった。興奮しすぎ」
「……すまん」
「謝ってもらうほどじゃないけど……別に嫌だったわけじゃないし」
「それってどっちなんだ?今後も続けていいの?それとももう辞めた方が良い?」
「……続けていい。でも長時間はダメ」
「難しいな……」
言っている意味もよく分からん。
布団の中でノアを抱きしめながら頭を撫で、考えてみるが線引きがさっぱり分からない。
それなのにこうして腕の中に居るノアはなんだか嬉しそうだしさ。
「とにかく獣状態はダメ。こっちの身が持たないから」
「え~。めっちゃ気持ちよかったじゃん。あんだけ喘いでたのにもうダメなの?」
「だ、だから長時間はダメって言ってるの!あれその物は気持ちよかったし……」
「本当か?創作物の中でしか知らない童貞だぞ」
「もうそうじゃないじゃない。あとなんでそんなに体力あるのよ?体鍛えてる訳じゃないのに」
「それは……俺にも分からん。あとスケベは認めるがこんなに続けられるとも思ってなかった」
「……けだもの、ドスケベ、依存症」
「依存症ってなんだよ?まぁいいか」
そう言いながら起きる。
「ノアは起きるか?というか起きれる?」
「……抱っこ」
「はいはい。一緒に風呂行こうか」
ゆったりとした服を着させて風呂場にノアを抱えて行こうとすると、扉の前でレムルシャールが待機していた。
「お風呂は既に沸いております」
「……まさか聞こえてた?」
「いいえ、そのような野暮な事は致しません」
「配慮どうも」
内容が聞かれていた以内に関係なくノアは顔を真っ赤にして顔を隠した。
リリアが返ってくる前に綺麗にしておかないと。
「それとシーツとか交換してもらってもいい?」
「お任せください」
レムルシャールの生暖かい視線を感じながら俺達は風呂に向かった。




