平気にはなりたくありません
「あなた最近目立ち過ぎでは?」
こんなセリフを聞かされれば妬みとかそういう感情を持っていると思われるだろうか、心配していってくれている事は伝わってくる。
今日はエムリアール嬢とサロンにいる。
唯一気にかけてくれるクラスメイトと言っていい。
そしてその周りには聞き耳を立てる先輩や同級生達。また何か商売の話でもしていると思われているんだろうか。
「え~っと、何かしましたっけ?」
「魔物の件、本当はあなたが処理したそうですね」
「俺じゃねぇよ。現場にいたシルフィードが倒してくれただけだ」
「……まぁそういう事にしておきましょう。それからこれ、従業員たちからの複製機の改善案です」
「待ってました。こういう現場の意見が改良に1番役に立つ」
現在は技術的に無理でも将来的には改善して商品に反映する事が出来るかもしれないからこれは後でパンサーに送ろう。
軽く見通すと、『原本と取り換えるタイミングが分かり辛い』『複写した資料のインクが渇いておらず、触れたらかすれてしまった』『適当な紙を入れて複写したら滲んでしまった』など。
やっぱり複数の紙に対応できるインクは欲しいな……インクそのものを見直してみるか?それとも最初から紙もセット販売する??
「似たような意見もありますが、本当にこういうのが役に立ちますの?」
「立ちますよ。やっぱり技術者だけじゃこれくらいの機能があれば十分だろうと思っていても、あとから使ってみたらこれが欲しい、あれが欲しいってなるのが人間ですから。高性能化するのには必要な意見だと思っています」
「やっぱり商人という印書の方が強いですね。それからヴィーナ大公が随分悩んでいる様子でしたが何か知っておいでで?」
「大方殿下がクロエス様になびかないのが気になっているんでしょう。リリアからもそういう話を聞いているのでおそらくそれ関連かと」
「……そういう事もあまり口に出さない方が良いですわよ」
呆れながら言うがこっちだって困っているのだ。
殿下の色ボケっぷりに。
「しかしですね……殿下もリリアだけじゃなくてクロエス様の事ももう少し見ていただきたいんですよ。別に正室の座を狙っている訳じゃないんですから」
「本当にあなたの家は珍しいですわね。こういう事は普通喜ぶものですわ。殿下の正室になれそうだというのに」
「ぶっちゃけこれ以上王室と交わると嫉妬やら何やらで面倒臭い事してきそうな連中が動き出しそうで面倒臭い。こっちの仕事は外部から敵を入れない事が本業なのですが?その仕事に集中するために内部争いに参加する気はないのですが??」
「それを言われたらまぁ……理解できない訳ではありませんけど」
「王都で最初から仕事している人達は権力闘争だ好きかもしれませんが、こっちはそんなのどうだっていいんですよ。国が崩壊しなければ」
「元も子もない話はよしてください。内部崩壊なんて笑えませんわ」
だが今の殿下を見て王族派でも別の派閥に乗り換えようとする人だっているだろう。
「だがヴィーナ大公だって殿下が王にふさわしいと思うかどうか俺に質問をした。これだけで内部崩壊しかけている状況というのは想像に難しくないかと」
「……どの王子を気にかけているとか言ってた?」
「そこまでは何も。だがそうなった場合俺の事を奪い合いしそうな雰囲気もありそうなんですよね……気持ち悪」
自分で言っていて気持ち悪いが本当に起こりうる可能性は0ではない。
何せいろいろな場面でスピリットを召喚して戦っていることは周知されているだろうし、シルフィードの事だってみな知っていると思っていいだろう。
何より俺が複写機を持ってきた時のドラゴン事件で俺を寝返らせようと考える者達は実際に俺を勧誘して来た。
それが殿下だけではなく他の王子や姫達も俺を戦力として必要としたら……奪い合うだろう。
「俺の事をタダの便利な大量破壊兵器召喚装置としか見てないような奴が王になれるのは困ります。俺はそれを避ける事さえできればそれでいいですよ」
「……なるほど、そういう意味では死活問題と言えますね」
「ええ、文字通り俺にとって死に直結する問題です。それが殿下なら退いてもらいますが、そうでないなら王様にでも何でもなればいい」
「全く……貴族なら次の王に誰が成るかもう少し興味を持ちなさい。あなたを兵器として見る誰かが玉座に座るかもしれませんよ」
「分かってますって。とりあえずその情報を集めながらもう少し落ち着いて過ごそうと考えているところです」
「それならいいのだけど」
「ではこちらの資料はいただいていきます。何か故障したら彼らにお願いしてください」
「ええ、と言っても壊れる様子はないけれど」
エムリアール嬢と分かれ屋敷に帰る。
今日はみんな揃っていてホッとする。
「あなたお帰りなさい。エムリアール様との話はどうだった?」
「少し貴族情勢について聞いてきた。やっぱり殿下について悪い方向に進んでる感じ」
「この間の魔物騒動もあるからね。表向きは騎士団と魔術師団だけで倒した事になっているけど、やっぱり一般兵が口を漏らしたりしているようね。一般人に精霊の協力があったと耳に届いてる」
「人の口に戸は立てられぬって奴か。まぁこればっかりはな……」
酔った勢いなのか武勇伝のつもりで言ったのか分からないが、国民の耳に届いて殿下が王になれない事を避ける事が出来ればそれでいい。
そう思いながらノアに聞いてみる。
「ところでノア、王位継承権って殿下の次に可能性が高いの誰なんだっけ?」
「一応同い年で第二王子のジュード、さらに2つ下の第三王子レイガ。一応この2人」
「女の子は?それこそノアにも王位継承権はあるんじゃないのか?」
「あったけど嫁入りするときに破棄したし、どうしても優先順位は男子が優先。王子は全員で4人いるから当時も当然その下だったからもし本気で王位を狙うとしたら上の4人が相当な馬鹿か失態を起こすか、あるいは死んでもらわないと無理ね」
「なるほど。だからあっさり俺の元に嫁入りできたと。でその第二と第三ってどんな性格?」
「ジュードは頭は悪くないんだけど好戦的。最近の帝国の動きにかなり気にかけていたし、いざとなったら神からもらった剣で相手をたたっ切ってやると言っていたわね。レイガの方はかなり大人しくて自己主張はほとんどしない。でも相手の事をじっと見る癖があったから何を考えているのか分からなくて少し怖かったわね」
「ふ~ん。それじゃとりあえず第二王子だけは避けないとダメかな?ちなみに第四王子はどんな感じ?」
「まだ2歳だからよく分かんない」
「そりゃよく分かんないわな。というかそんな小さくても王位継承権ノアより上なの?」
「どこもそんな物よ。王としてえばるのなら女より男の方が威厳があると感じるんじゃない?」
「ふ~ん。仮に男の子が生まれなかったらどうすんのよ?」
「その時は女王になるわよ。仕方ないから」
「理由が仕方ないなのかよ」
「だからそんなもんなのよ。王位何て興味ないからどうでもいいけど」
本当に興味ないのが伝わってくる。
興味があったらあっさり嫁入りしたりしないか。
そう考えながらろくでもない事を王族から言われないと良いな~っと思う。




