ヴィーナ家に呼ばれた
後日改めて魔物の討伐についてあっちこっちで説明された。
その内容は殿下が中心となって騎士団や魔法師団と共に魔物を討伐したという内容。そして予想通りというかシルフィード達に関する情報は一切ない。
それから何故魔物が現れたのかと言う所は調査中という事になりもみ消された。
でもって俺が持ってきたワニ皮などは別の魔物と言うとでオークションに出品されたらしいが、なかなかの額になったので非常に驚いた。
ノアも最初こそバッグや財布などの革製品を扱っている店に売ろうとしていたのだが、高級品過ぎて買い取る事が出来ないと言われたそう。
なので代わりにオークションに出したらいいお小遣いになったという事だ。
ここまでは多分いい話。
そしてここからは悪い話。
とうとうヴィーナ家に呼ばれちった……
向こうから来た手紙によると、魔物事件の時に娘を保護してくれた事に対して礼を言いたいから是非屋敷に来てほしいという物。
これだけ聞けば悪い感情は抱いてなさそうだが……
それでも正室と側室の家族として何らかの因縁をぶつけられても文句は言えない。
何せ本来正室に向けるべき愛情を側室であるリリアが独占しているという状況。親としても格という意味でも許せないだろう。
そして気になるのは俺1人で来て欲しいという内容。男同士で語り合いたいと書かれていた。
となるとヴィーナ大公と1対1で話す事になるのか……失礼のないようにするつもりだが、ちょっとしたミスでも突いてきそうな怖さがある。
あ~あ、王家に振り回されるって疲れるな……
なんて思いながらも屋敷に到着。馬車を下りるとトレインさんが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませアレックス様。改めてクロエス様の事、ありがとうございます」
「いえ、当たり前の事をしただけですし、実際に守ったのはシルフィードですから」
「そう謙遜されずに、旦那様はこちらです」
うちの屋敷よりも広い屋敷に入り、生活感と豪華さがよく目立つ。
それに執事やメイド達の動きも機敏であり、さすが大公の屋敷と言ったところか。
そう思いながらトレインさんに連れられて部屋の前に到着する。
「旦那様、アレックス様がお越しになりました」
「入ってくれ」
トレインさんが扉を空けて入るよう促してくれたので「失礼します」と言ってから入る。
そこにいたヴィーナ大公はワインを選びながら待っていた。
「よく来たな。座ってくれ」
「失礼します」
なんか面接みたいになっちゃってるな……
緊張しながら座る俺を見てヴィーナ大公はワインを開けながら気軽に言う。
「そう緊張しなくていい、酒はいける口か?」
「ええっと、少量なら」
本当はザルだけど、軽くても人ん家で酔うのは良くないのよ。
でも全く飲まないというのも失礼かと思い少しだけいただく事にした。
「そうか。まずは娘を守ってくれた事に礼を言う」
「いえ、実際に守ったのはシルフィードですから。私は何もしていません」
「それでも君の精霊に守られたのは事実だ。後日改めて礼の品を送ろう」
「いえいえ!そこまでしていただくほどの物では!!」
「娘から聞いた。相手は本当に恐ろしい魔物であったと。その魔物から守り、討伐してくれたのだからそれくらいの事をしなければ大公として不誠実と思われかねんのだ。ぜひ受け取ってほしい」
「は、はぁ」
貴族の見栄と言う奴なんだろうか?
娘を守ってもらったお礼として素直に受け取っていいのかどうか俺には判別できない。
「今回君を呼んだのは相談したい事があるからだ」
「相談とは?」
「……殿下の事だ」
そりゃ話題に出ますよね……
「君の目から見て殿下はどう思う」
「どう……とは?」
「殿下は王にふさわしいと思うか」
思っていたよりもヤバい質問してきた!!
まさか婚約者としてみたいな話じゃなくて王としてふさわしいかどうか聞かれるとは……
これわざと酒飲んどこ。アルコールのせい、あるいは自白剤が含まれていたせいでって事にならないかな?
「……正直に申しますと、私の前で見る殿下はその、色ボケしている姿ばかり見ているので王にふさわしいようには見えません。もちろん殿下が城でどのような業務をしているのか知らないというのもありますが」
「なるほど、色ボケか。続けてくれ」
更にワインをグラスに注ぎ、飲むよう勧めてくるがこれ以上は要らないだろう。
今度は酒に手を出さずに答える。
「私の前で殿下は妹に対して気を引こうとしてばかりいるのでその印象がどうしてもぬぐい切れません。これが政治などに影響を与えないのであればそれでいいですが、もし影響が出るようであれば王にふさわしくないかと」
「魔物事件の事はどう思っている」
「殿下の愚行ですね。私は召喚士なので母から強く召喚に関して注意を受けてきました。条件次第でどのような存在が召喚されるか分からないので細心の注意を向けろと。今回の事件は殿下が召喚魔法を甘く見ていた事が原因としか言いようがありません」
ヴィーナ大公にとって想像以上に正直に言っていると思われたのか、少し驚いているような気がする。
だが俺にとって今の殿下はそういう存在だ。
リリアに良い所をアピールしたかったのか、それとも召喚魔法が使える事共感の様な物を生み出したかったのか、それは直接聞かなければ分からない。
なんにせよ愚行は愚行。
次の王としてふさわしいのかどうか、それは俺1人の判断で決める物ではないのだから他の大人達に任せておけばいい。
「そ、そうか。ずいぶん腹の中の物を出すな」
「ワインのせいですよ。聞きたい事はそれだけですか?」
「……君の妹は正室の座を狙っているのか?」
「全く狙っておりません!」
「食い気味に言うな!?ほ、本当に狙っていないのかね?」
「ぶっちゃけ妹は殿下の事を全く愛していません。ただ利用しているだけです。愛なんてありません」
「そこまで愛がないと聞くと殿下が不憫に思えてくる……ではなぜ側室とはいえ求婚に応じた?」
「国の識字率を高めるためです。そのためには王族の協力は不可欠、なので殿下を利用しているだけに過ぎません」
「…………殿下が本当に可愛そうに思えてきた」
目を覆うヴィーナ大公だがここまで何度も強く殿下の事を愛していないというセリフにちょっと心を痛めている。
なのでこっちから仕掛けてみる。
「ところでクロエス様は本当に殿下を愛しておいでですか?」
「……何だと」
「先日殿下がリリアが無事か尋ねてきました。その際にもリリアの事ばかり気にかけてクロエス様の事を全くと言っていいほど気にかけておりませんでした。その際悔しそうな顔をしたり、リリアに怒りを覚える方が自然だと感じますが、クロエス様から感じたのは諦め。もう殿下の事は何とも考えていないように感じます」
「…………」
「愛そうと努力している時にその努力をことごとく無視されれば当然と言えます。もしクロエス様との婚約を破棄した場合は……」
「……場合は」
「こちらも婚約破棄する予定です」
「な!?」
婚約破棄に対して非常に驚いている様子だった。
やっぱり向こうとしてはそのまま正室の座を手に入れるつもりだと考えていたのだろう。
「だって俺がノアと婚約した事でただでさえ他の貴族から疎まれてるんですよ。そこからさらにリリアが正室になったらもっと立場危険になります。それはヘキサグラム家として望んでいません。なので仮に殿下がクロエス様との婚約を破棄した場合、こちらも破棄します」
「し、しかしその場合リリア嬢の結婚相手は……」
「一から探し直しですね。まぁリリアは恋よりも仕事を選ぶタイプに見えるのでどうなるか分かりませんが」
こればっかりは未来がどうなるかにかかっている。
案外リリアが惚れそうな相手って仕事に関係する相手だと思うんだよね。
仕事の相棒にいつの間にか~みたいな。
「他にお聞きしたい事はありますか?」
「……それでは最後に。もし殿下が玉座にふさわしくないとしたら、誰がふさわしいと思うかね」
「さぁ?最近は殿下に付きまとわれていたので考える時間がありませんでした。他の王子達ので横行も確認しておかないと。有望な方って知ってます?」
「……こちらも慎重に事を進めているので何とも言えないな」
「そうですか。それではお酒が回ってきたので帰ります。ワイン美味しかったです。ごちそうさまでした」
酒のせいで色々話したという話にしておいたが、これで正解なのだろうか?
権力を持続させるための努力と言うのは、思っていた以上に大変なのかもしれない。
大公からそう感じた。




