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初めての決闘

「ブレイド、足止め頼む」


 すぐブレイドは相手に向かって体当たりをしてのけぞらせた。

 試合開始前にすでにレベル3にしていたのでBPは3000。弱い魔物を倒すのであれば十分なBPだと思う。

 しかし相手は人間であり、贈り物をもらっている可能性が非常に高い。

 お互いに贈り物をもらっているからこその決闘ルールなのかもしれないが、贈り物をもらってない人はそれだけで結構不利だろう。


 相手はのけぞらす事は出来ても倒す事はもちろんできない。

 というかあいつの贈り物はどっちだ?全身鎧なのか、それとも持っている剣なのか、あるいは両方か。

 剣と鎧一式でもらいましたみたいな事もあるんだろうか?

 贈り物は1人1個と聞いていたのでどっちかは偽物であってほしいが。


 そしてこちらの手札は5枚。スピリット3体、マジック1枚、フィールドが1枚。今使える最大の魔石数は28だがブレイドに魔石を3つ、シルフィードとレムルシャールに1個ずつ使っているので残り23個。

 フィールドにはブレイドの他に事前に配置していたフィールド、『偽りの紅蓮銀河』を2枚配置中。赤のシンボルを3つ有している事になる。

 とりあえずもう1体スピリットを召喚しておくか。


「召喚。『雑兵ドラグーン』」


 コスト2だが軽減コストも赤2なので実質0コストで出す事が出来る。

 姿は中国の龍のような姿だがワニっぽい印象が強い。

 持っている槍も青龍刀のような感じで中華っぽい。


「あいつに攻撃しろ」


 指をさして指示すると雑兵は相手に向かって槍を突き刺す。

 敵が増えたからか相手は剣だけでは非常に苦しそうだ。

 数だけで倒せるのであればそれでいいが、陛下の従者がこれで終わりとは思えない。


 だが残りのスピリットはな……かなり強力なんだよ。

 コストも高いし効果も強い。

 でもこんな所で手の内をさらすのは嫌だな~っと言うのが正直な所。

 強力なスピリットを出して警戒されるのも面倒だからな。


「く!『大地を揺らせ!』震脚!」


 勢い良く地面を踏みしめたと思ったら軽く揺れた。

 ブレイドはその振動で少しふらついた隙に俺に向かって攻撃しようとしていたが、雑兵はそれを許さない。

 下半身が蛇のように地面にくっ付いていたから揺れにも耐えられたのだろう。特に何の影響もなく槍を繰り出し続ける。

 ちなみに俺にとっては震度2くらいだったので何の問題もない。

 いや、人間の力でそれだけの振動を起こしたのは十分凄いか。


 スピリット達に妨害され、俺に攻撃が出来ないとなればおそらく魔法で直接攻撃を仕掛けてくるだろう。

 雑兵の後ろに隠れたり、細かく走って逃げ回っていると相手は苦し紛れに掌を俺に向けるが……


「『礫よ!我が敵を――』っ!」


 ブレイドが詠唱をさせないために顔に向かって火を噴いた。

 燃えるのは髪くらいだろうが火を浴びせられてそのまましゃべれる奴なんていない。

 こりゃ動き回る必要もないか?


 それにしてもあの鎧がやっぱり贈り物だろうか?

 さっきからブレイドと雑兵の攻撃を何度も食らっているのに凹むどころか汚れすらついていない。

 それに比べて剣はブレイドの火で少し変形してしまっているし、煤で汚れてしまっている。

 となると相手は元々攻撃よりも防御を得意としていた、と考えるのが自然か。

 俺と同じ半人前なのは当然かもしれないが鎧の力が無かったらとっくにリタイアしてただろうな。


「先生。もう俺の勝ちじゃダメですか?これもう虐めと変わりませんよ」

「しかしだね……相手はまだ降伏もしていないし、動けているからね……」

「殺さないようにって言ってたじゃありませんか。だったら本気の殺し合いになる前に止めるのも教師の仕事なのではありませんか?」

「君の言いたい事も分かるんだが……彼の実家私の実家よりも偉いから後が怖いんだよ」


 そっと俺にだけ聞こえるように言ってくれた。

 どうやら家の偉大さは教師陣も逆らえないらしい。

 それじゃあ勉強する場所として機能しない訳だ。教師でも家の関係が影響に出るってもはや学校じゃねぇ……


「そんなこと言ったら俺だけこのクラスで伯爵ですよ。先生だってお偉いさんなんじゃないんですか?」

「いや君の家の方が立派だよ。うちは名ばかり侯爵だし、重要度は辺境伯の方が上だよ」

「え、そんなことあるんですか?」

「あるんだよこれが貴族派閥の考え方だけど君の家は本来大公の地位をもらっていてもおかしくないくらいなんだよ。でも辺境である事と君の先祖が――」

「そこ!話していないでしっかり戦わないか!!」


 先生と話しているとなんか邪魔して来た。

 そういや決闘中だったな。


「いやでもそっち大苦戦してるじゃん。もう俺の勝ちじゃダメ?」

「そう簡単に勝ちを譲る訳がないだろう!真っ当に戦え!!」

「戦ってるだろ。召喚士として」


 それに決闘内容が贈り物限定と言われてはこうして戦うしかない。

 ぶっちゃけゲームでも数の暴力と効果によるコンボ狙いが基本だぞ。

 そもそも真っ当に戦うって何?拳での殴り合いか??


「え~アレックス君はちゃんと贈り物だけで戦っているので不正はありません。なので続行です」

「負けを認めさせるほかに勝利条件とかないんですか?」

「決闘だとないですね……基本的に本当にどうしようもない時にしか使われないので、ルールも非常に簡潔です。それがさっき言った負けを認めさせるか、殺すかの二択です」

「でも殺すと後々面倒そうなので殺すわけにはいかないので実質一択か……」


 もう面倒だし、さっさと終わらせよう。


「ブレイド、さっきより炎は弱めでずっと相手の顔に炎を浴びせ続けろ。呼吸できなくなる程度でいい。雑兵はそのまま戦って体力削り取れ」


 ブレイドと雑兵は俺の指示を聞いてすぐに動いた。

 ある意味ただ殺すよりも残虐なコンボ。

 呼吸できない時にフルボッコって自分で言っておいて鬼畜だわ。


 当然相手は火によって呼吸を妨害され、その状態で戦いを続けるなんて数秒も持たなかった。

 大の字に倒れたところを雑兵が首に槍を、ブレイドが口から洩れる火をちらつかせながら降伏を迫る。


「……参った。私の負けだ」


 ようやく負けを認めたので面倒事から解放された。

 そして俺は言う。


「さっきの誓約書よこせ」


 手を出すと彼は懐から誓約書を出す。

 それをしっかりと受け取ってから先生に言う。


「それじゃ先生教室に戻って良いですか?」

「ああ戻っていいよ。他の皆さんも教室に戻ってください。私は彼を医務室に送っていきますので少々お待ちください」


 本当に面倒な学校だ。

 ここまで貴族の子供だけで交流を深めさせたかったら学校という形でもなくてもいいような気がする。

 でもやっぱり子供を一か所に集めておくという意味では学校が1番通りがいいか?


 なんにせよ俺の学校生活は多分これで完全に終わったな。

 俺より地位の高い奴に勝ったんだし、おそらく他の連中も黙ってはいないだろう。

 下克上の象徴みたいな扱いになったら嫌だな~。

 でももし貴族のほとんどかこいつみたいな連中ばっかりだったら潰してもいいかもしれない。


 まぁこれも全部殿下が仕込んだ事なんだろうけど。

 大人しく金稼ぎに力を注ぎますか。

『名前    雑兵ドラグーン

 カテゴリー スピリット

 コスト   2

 軽減    赤2

 種族    蜥蜴人リザード

 シンボル  赤1

 レベル1  魔石1 BP1000

 レベル2  魔石3 BP2000

 効果   【レベル1~2】このスピリットのアタック時

       BPを+2000する』

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