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氷精霊レムルシャール召喚!!

 どんな世界、どんな時代であっても急な来客という物は迷惑な物だ。

 シカもお偉いさんだと余計にだ。


「殿下。殿下をもてなすために準備が必要ですので急な来訪はお控えください」


 その来訪者がリリアの婚約者となると無理に追い出す事も出来ない。

 殿下は2人の従者を連れて屋敷に来ていた。


「リリアが来ていると聞いた。居るのか?」

「……いますよ。しかし今日は危険ですのでお引き取りいただけませんか?もてなす準備も出来ておりませんので」


 一応この屋敷で1番偉いのは俺という事になっている。

 ヘキサグラム家の次期当主と言う意味でもあり、貴族の中で1番年上だからだ。

 だから今回の様な偉い客人が来たときには俺が対応する事になっている。


「貴様、殿の命に背く気か」


 随分体格に恵まれた男性が威圧しながら声をかけてくる。

 しかし危険や準備が出来ていない事は今言っただろ。


「殿下は妹の婚約者、来ていただく事に関してはありがたいと考えております。しかしもてなす準備もせず屋敷にあげるのもいかがなものかと。殿下の口に合う茶も菓子も用意できていない事こそ失敬ではないかと」

「言い訳を!」

「よい。急に来たこちらにも非はある。しかし危険とはどういうことだ。説明してほしい」

「……妻に護衛を付けるため精霊を召喚する準備をしておりました。これより召喚魔法を使用いたしますので非常に危険です。召喚魔法の危険性はご存じでしょう」


 リリアとノアと話した時、シルフィードは魔法の相性の良さからリリアの護衛をすると言ってくれたのでこれからノアの護衛用精霊を召喚しようとしていた。

 しかし召喚ガチャが危険である事実は変わらないのでそう言えば引き下がってくれるだろうと考えて正直に言った。

 さてどう出るかと思っていると、殿下は少し考えてから聞いてくる。


「その召喚は貴殿がするのだったな」

「え?ええその通りでございます。ご存じかも知れませんが私は召喚士ですので私が召喚し、妻の護衛を命じるつもりです」

「その光景私にも見せてもらえないだろうか」


 その言葉に俺だけではなく従者も驚いた。


「殿下。申し訳ありませんが彼の言う通り危険かと。召喚魔法と言えば何が出てくるのか分からない危険な魔法。改めてお邪魔する方が良いかと」


 もう片方の小柄な眼鏡をかけた少年の様な従者も言う。

 そうだそうだ。帰れ帰れ。


「しかしあのアーシャ殿とバシレウス殿の息子、さらに言えば風の精霊を召喚しているのだからその光景を見ておきたいと思わないか」

「しかし危険が高すぎます。もし危険な魔物が召喚されたら――」

「それは百も承知だ。アレックス、貴殿の魔法を見てみたい」

「いやしかし万が一という事もありますし……」

「妻のための召喚、つまりノアの護衛を召喚しようとしていたのだろ?貴殿とノアの仲の良さは私の耳にも届いている。ノアのために召喚しようとしているのなら、危険はほぼないだろう?」

「それは確かに細心の注意を払っておりますが――」

「お前達も見てみたくないか。精霊が召喚される瞬間を」


 こいつ……何が何でもリリアに会わないと帰らない気だな。

 従者2人も全然強く出ないし、こちらが折れるしかないか。


「分かりました。しかし危険である事は間違いないので出来るだけ離れておいてください」

「承知した」


 背を向けてからため息をつき、裏庭に向かった。

 元々裏庭は魔法の実験をするためなのか結構広い。だからここに魔方陣を描いて召喚しようとしていたのに……

 気乗りしないまま裏庭に戻ると、リリアとノアは予想していたのか殿下に対応するため礼をする。


「殿下、お久しぶりでございます」

「リリア!久しぶりだな!元気だったか?」

「はい。お会いできたことを嬉しく思います。十分なもてなしが出来ておらず申し訳ありません」

「構わん。こうしてリリアと会う事が出来た事こそが最も嬉しい」


 お~い。2人っきりじゃないこと忘れてない?でもってリリアはあくまでも側室だぞ。最もなんていうもんじゃないと思うぞ。

 従者2人も大丈夫かな~って表情しているぞ。

 リリアは顔こそ笑っているが嬉しくないのは伝わってくるし。


「ちょっと、何で連れてきたのよ」

「誰が連れてきたがると思う。あいつなんか俺の召喚に興味あるとか言って引き下がる気なかったんだよ。とりあえず召喚してさっさと帰ってもらう」

「……まさか兄上がここまで色ボケするとは思ってなかったわ」


 小声で話している間も殿下はリリアに夢中だ。

 一体リリアのどこにそんなに惹かれるのかよく分からない。

 妹という頭があるせいなのか、それともDNA的に自然とそう見れないだけなのか、まるで理解できん。

 リリアには申し訳ないが殿下の対応をしてもらおう。


「それでは召喚いたしますので出来るだけ離れてください」

「殿下、こちらに。もう少し離れましょう」

「ああ」


 色ボケした奴ってああいう表情するんだな。

 本当にリリアの事しか見えていないというか、認識できていないのではないだろうか?

 今もリリアに誘導されているというよりは引き寄せられている感じ。

 なんかここまで何もしていないのに洗脳されているんじゃないかと考えてしまうような反応に恐怖すら感じてしまう。

 だってリリアはぶっちゃけ殿下に塩対応で手紙のやり取りしかしてなかったぞ。

 向こうからリリアに会いたいからそっち行って良いか?って手紙の時は遠いし危険だからやめとけと遠回しに拒絶してたし。


 それなのにあの反応は普通に怖いよ。

 リリアはいつの間にか魅了魔法みたいなの無意識使ってたりしないよな?


 何て考えながら俺は魔方陣に手を置く。

 そして魔力を流すと今回は7個の魔石がトラッシュに送られた。

 そして心なしか気温が低くなったと思うと魔方陣の中心に水が集まる。


「げ!この気配……」


 リリアの護衛をしていたシルフィードが嫌そうな声をあげた。

 シルフィードがそんな態度をとるのは珍しいと感じていると、スーツを着た女性が静かに執事のように頭を下げた。


「わたくしを召喚したのはあなたでしょうか」

「あ、ああ俺だ。俺が君を召喚した」

「召喚に応じました、わたくしの名はレムルシャール。氷の精霊です。本日はどのようなご依頼でしょうか」

「俺の妻であるノアの護衛を任せたい。対価は何が良い?」

「対価は魔力のみで十分でございます。それで期間はどれくらいでしょうか?」

「期間は……最低でも4年くらいになりそうだけどまずはお試しでもっと短い期間の方が良いかな?1週間とか」

「それはわたくしよりもマスター様の魔力の方が大丈夫か心配してしまいますが……」

「魔力を流すのは得意なんだ。シルフィードもなんだかんだで1年以上持続させている」

「……本当のようですね。では初めに4年間の契約といたしましょう」

「良いのか?かなり長いだろ?」

「精霊から見れば短い物ですよ。それではこれよりマスター様の妻であるノア様の護衛を開始します」


 この発言によりレムルシャールのカードが現れた。


『名前    レムルシャール

 カテゴリー スピリット

 コスト   7

 軽減    白4

 種族    護衛騎ごえいき 四元素よんげんそ

 シンボル  白1

 レベル1  魔石1 BP6000

 レベル2  魔石3 BP10000

 レベル3  魔石6 BP14000

 効果   【レベル1~3】[障壁(しょうへき)赤/紫/黄]

 このスピリットは指定された色のスピリット、マジック、フィールド、アームの効果を受けない

 【レベル2~3】お互いのアタックステップ

 このスピリットがアタック、ブロックした時。相手スピリット、またはフィールドを手札に戻す

 【レベル3】装備時、相手のアタックステップ

 このスピリットがアームを装備している時、疲労状態でブロックできる』


 あ~、こりゃ緑の天敵って言ってもいいわ。

 緑デッキは相手を疲労させて何もさせない事を前提にしているから装備時限定とはいえ疲労中もブロックできるのは強い。

 更にブロックした瞬間相手スピリット化フィールドを手札に戻すからさらにヤバい。

 それに障壁が付いているのも悪くないな。

 護衛にふさわしい効果と言えるだろう。


「それではノア様。これより4年間あなたの護衛をさせていただきます。よろしくお願いいたします」

「ええよろしくお願いします。レムルシャール」


 まだ魔石1つだから障壁くらいしか効果は出ていないがアームはどうしよう?

 ノアにしろのアームカードを渡して召喚してもらうのが良いか?一応アームカードはコスト低いし、出来ない事もない?


 何て考えていたがいい加減殿下を返さないと。

 リリアとの逢瀬おうせはまた今度にしてもらわない。


「殿下、本日の召喚は以上です。リリアとはまた次回よろしくお願いします。そして事前に手紙をお願いします」

「あ、ああ……失礼する」


 殿下はそういって従者と共に帰っていった。

 やっと面倒臭い奴らが帰っていったよ。

 もう二度とアポなし突撃はするなって抗議書いて城に送っておこっと。

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