魔性の女?
レムルシャールを召喚してから殿下が屋敷に来る事はなかった。
その代わりリリアをしろに呼んで茶会をしたいというのでその誘いには乗っている。
てっきりまた向こうから乗り込んでくるとばかり思っていたのでちょっと意外。
そのおかげでリリア以外は穏やかな生活をしている。
「で、どうよレムルシャール。アームの効果は?」
「非常に手に馴染みます。これもマスターのお力なのですね」
俺が用意したのはアームカード、『護衛銃アイシクルマグナム』。
レムルシャールなら装備可能なカードだ。
『名前 護衛銃アイシクルガン
カテゴリー アーム
コスト 4
軽減 白2
種族 機械銃
レベル1 魔石1 BP4000
装備時 魔石0 BP+4000
装備条件 種族、護衛騎&コスト5以上
効果 【装備時】相手のアタックステップ
相手スピリットを破壊した時、破壊時効果を発揮させない』
見た目は白いハンドガンであり、設定では銃口から出てくるのは銃弾の形をした氷。
本当に相手を倒せるのかどうか分からないがないよりはいいだろう。
「協力ありがとうな、ノア」
「ええ。まさかこんな形で魔法を使うとは思ってなかった」
今の俺のデッキではレムルシャールに装備できるカードを出す事は出来ない。なので代わりにノアにカードを使ってもらい装備してもらった。
ノアは贈り物こそもらえなかったが魔力はある。
ただその影響なのか器用貧乏という感じで決め手が足りない。
レムルシャールはさっそく空き瓶に向かって引き金を引くとあっさりと当てる。
初めて使うはずなのに随分上手いな。
「すっげー。もう当てたよ」
「この銃という物が素晴らしいからです。これでノア様をお守りさせていただきます」
「それはありがたいんだが……みんなから聞いてるぞ。色々手伝ってくれてるって」
「わたくしはただ何もせずに居るのが落ち着かないだけです。むしろ何か仕事をしている方が落ち着きます」
この辺は性格なんだろうか?
メイドや騎士達からは評判良く、メイド達からは洗い物を魔法でしてくれるので非常に助かっているとか、騎士達からも一緒に訓練して参考になるとか。そんな話を聞く。
「追加報酬とか要らない?色々細かい事してくれてるみたいだし」
「ふふ。問題ありません。先ほども言ったように仕事をしている方が落ち着くだけですから。菓子を食べているだけの騎士と違って」
「何だと!!」
声に振り返ってみるとそこにはリリアとモンクー、そしてシルフィードが居た。
「お兄様ただいま」
「お帰りリリア。殿下の様子はどうだった?」
「もう婚約したのにまだ口説こうとしている感じ。愛してっとは言ったけど歯に浮くようなセリフは好きじゃないみたい」
両肩をさすりながら言うリリアは殿下と相性が悪いのかもしれない。
普通ならあんなイケメンにギザっぽいセリフを聞かれれば女子はコロッと落ちるもんだと思ってた。
だがリリアはそう感じないのであれば相性が悪いのかもしれない。
「どうする?婚約取り消す?」
「お兄様、さすがにそれは無理でしょ。相手が何か悪い事をしたわけでもないのに。それに夢も叶わなくなっちゃう」
「アレックス様。あんなのでも一応私の兄だからもう少し考えてあげてよ」
「でもリリアの反応を見る限り脈ないぞ。それはそれで哀れと言うかなんというか……」
暖簾に腕押し?でいいのか?
とにかく脈のない相手にひたすら求愛行動を見ているとなんか寂しい気持ちになる。
なんて思っているとシルフィードとレムルシャールの口喧嘩が始まった。
「まるで私が何もしていないかのような言い方は止めろ!私だってリリア嬢の護衛として守っているんだぞ!!」
「そんなの契約の最低限じゃない。何もない日なんてクッキー食べてそれで終わり。あなたほとんど働いてないでしょ」
「一切問題ないだろ!あくまでも私達が召喚された目的はしっかりと果している!お前は働きすぎだ!そしてそれを強要するな!!」
「魔力をもらっているのだから当然でしょ!むしろ罪悪感とかわかない訳!?魔力だけをもらって何もしないなんて契約違反よ!精霊の面汚しよ!!」
「そこまで言う事はないだろ!?マスターだって満足しているし、最近は城へ出かける機会も多くなった。しっかり仕事はしているぞ!!」
「それだけじゃ恩に報いる事が出来ていないって言ってるのよ!!」
「ああもう!!だから貴様は働きすぎだと言っているんだ!!少しはクッキーを食べながら落ち着け!!」
「どうせ精霊が食べ物を食べても力に変わる訳じゃないんだから食べる必要はないでしょ!!魔力だけじゃなくて食べ物までもらうなんて卑しいのよあなた!!」
「卑しくなんてないぞ!!もういい!!決闘だ!!」
「それはちょうどいいわね~。動く的を相手にどこまでできるか確かめてみたかったからね!!」
そう大喧嘩しながら2人はどこかに消えた。
「2人はどこに行ったの?」
「多分……精霊の世界とか?魔力の繋がりは感じるけどこの世界にいない感じがする」
「まぁ王都に被害が出ないのであればそれでいいわね。それじゃ屋敷に戻ってお茶にしましょ」
「ノアお姉さま。相談したい事があるのでお茶の時に相談してもいいですか?」
「もちろん良いわよ。分かる事なら何でも聞いてちょうだい」
こうして俺達は屋敷に戻った。
お茶をしながらリリアから報告を聞く。
「ノアお姉さま。最近殿下に呼ばれてお茶してますけど、クロエス様がお茶会に同席していないんですけどこれって大丈夫なんですかね?」
「……リリアを呼ぶ頻度が増えているからあまり良くないかも。何か適当な事を言って断った方が良いかもしれないわね。そうしないとお互いのためにならない」
「お互いのため?」
「クロエス様にもリリアにとってもよくないって事よ。今は辺境から来た側室を招いているだけに見られるかもしれないけど、これがずっと続くと正室よりも側室を優先していると見られかねない。そうなった場合苦労するのはこちら側でしょうね」
「それ結構ヤバいんじゃないか?こっちは側室だからって一歩引いている状態なのに、殿下の行動で正室と側室のバランスが崩される」
「そうなったらヘキサグラム家は一気に王族の腹心一家の仲間入りね。私が嫁いでリリアが王族に嫁ぐ、これ以上ない裏切れない関係なるわ」
「もう既になっていると思うが?」
「そのレベルが段違いになるの。私はあなたの正室、リリアも殿下の正室になったらその関係性は大きく跳ね上がる。そして周りの貴族達は上手くやったと思うでしょうね」
「うわ~……」
ちなみに今のうわ~はリリアの口から出た。
リリア自身は殿下の事特に好きでも何でもないからな。俺のようにひたすら面倒臭いと考えていそうだ。
「リリア……お前本当に人に好かれるな」
「あんなのただのストーカーだよ~……しかも地位があるせいでストーカー罪にならない……」
「私も殿下がここまでリリアの事を気に入るとは思ってなかった……それまでは女の子に一切興味なんてなさそうだったのに」
「……リリアってもしかして魔性の女?」
「お兄様!?」
「状況的に見ればそうとしか言いようがないのよね~。求婚も凄かったし」
「お姉さままで!?私そんなつもりないです!!」
「無自覚だからこそ余計に魔性感出てくるのはなんでだろうな?」
「きっと他の男達から見るとリリアは口説き落としやすそうに見えるのかしら?」
「あ~、それはありそう」
基本的にリリアって純粋そうな雰囲気あるし、最初男に怯えていたから強引に行けばもしかしたら。みたいな感じでもあったのかもしれない。
まぁ実際にはカード事業を成功させようとするバリキャリなんだが。
「私そんなに弱そうかな……」
「俺にから見ると強くなったの方が正しいな。だって社交界だってお前他の男達から隠れてばっかりだったじゃん。今じゃカード事業のために普通に話せるようになったけど」
「強くなったのは確かね。私の指導もあるけど、アレックス様の言う通り明確な目標が出来てからは強かになった。私は今のリリアの方が好きよ」
「お兄様お姉さま……魔性の女と言われなくなるためにはどうしたらいいですか?」
「お前が実現しようとしている事業は生半可じゃ成功できないし、いっそ強みとして認めて使い潰せ」
「その方が良いかも。それにあなたの魔性は保護欲をかきたてられるものだし、ちょっと弱いふりをして助けてって言えば大抵の貴族は助けてくれるかもしれない。リリア自ら動かなくても勝手に気に入られたいと動いてくれるのであればそれを利用しないのは勿体ないわね」
「私、出来ればお姉さまの様な仕事のできる女性になりたかったです……」
リリアの理想とは違うが目的を果たすためには仕方ないのかと諦めたご様子。
となるとリリアにはこれから色んな領地の男共を口説き落とすのがお仕事になりそうだ。
リリアは気乗りしないだろうけど。
「ただいま戻りました」
なんて話しているとレムルシャールがシルフィードの首根っこを掴んで戻って来た。
手を放すとシルフィードは「げふっ」っと口から空気を漏れ出しながら床に崩れる。
しかしレムルシャールはいつも通り優雅に俺達の前で礼をする。
「少々お時間を使ってしまい申し訳ありません。意外と粘られました」
「お帰り。2人とも俺の契約精霊なんだから本気で潰し合うような事は出来るだけ避けてくれよ。ただの喧嘩なら許可する」
「ありがとうございます。それからお願いを1つよろしいでしょうか」
「何だ?」
「わたくしをノアお嬢様専属のメイド、あるいは執事をさせていただけないでしょうか?今の護衛の仕事だけではその、物足りないと申しますか」
「物足りないって本当に大丈夫なのか?仕事一気に増えるぞ」
「問題ありません。わたくしは精霊、人間のように睡眠は基本必要ありませんし、夜間はほぼ仕事がないのでその間に休めます。ですのでもう少し仕事をいただけませんか?」
こいつ……まさかワーカーホリックか?
ちょっと危険な雰囲気を感じるが、人手が増えて助かるのも事実。それに魔法で家事をしてくれるとマジで時短になるからスッゲー助かる。
「……ノアのメイド達に確認をしてからだ。もしかしたら執事側に回されるかもしれないがいいんだな?」
「構いません。護衛をしながら執事業も兼任できますので構いません」
「それじゃ今度相談しておくよ」
「ありがとうございます」
ただその場合メイドと執事、下手すれば騎士の間でレムルシャールの奪い合いが起きるかもな。もしかしたらだけど。
何て考えているとシルフィードが子供のようにじたばた暴れながら泣き始めた。
「また、また負けた~!しかもいつもよりも早く負けたー!!」
「あなたの動きは単純すぎるんですよ。もう少し攻撃を色々工夫しなさい」
「私達風精霊はその速さで相手を一気に屠るの戦い方が好きなんだ!それに自分達の特性を理解しているからみんなそうしているんだぞ!!」
「だから吹き飛ばす事が出来ない相手には圧倒的に弱いんですよ。突っ込むだけなら誰にでも出来ますよ」
「それにマスターもズルいぞ!!レムルシャールにだけ武器をお与えになるなんて!!」
「え?だって武器もってる方が最大レベルになった時十分に力発揮できるし……」
「私だってマスターからの武器欲しい!羨ましい!!」
じたばたするシルフィードは完全に子供だ。
風精霊ってこういうのが多いのかな?
「シルフィード。騎士を自称するのであればそんなみっともない真似はよしなさい。それだとただの大きな子供ですよ」
「でも……レムルシャールだけズルい……」
「どうしましょうマスター様?」
「……リリアと相談して武器を装備できるかやってみる」
「ありがとうございますマスター!!」
すぐに元気になった姿を見るとどこまでも子供っぽいな~っという感想は抜けなかった。
後日アームをシルフィードに装備させたらめっちゃ喜んだ。
柄の両方に薙刀のような刃が付いた槍で『双刀カザグルマ』というアームだったのだが、喜び過ぎてカザグルマを体にこすりつけて喜ぶ。
その姿がポールダンスでもしているように見えたのは、多分気のせいではない。
『名前 双刀カザグルマ
カテゴリー アーム
コスト 4
軽減 緑2
種族 樹武
レベル1 魔石1 BP4000
装備時 魔石0 BP+4000
装備条件 コスト4以上のスピリット
効果 【装備時】このスピリットのアタック時
疲労状態のスピリット1体をデッキの下に戻す』




