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王都に引っ越した

 引っ越しの準備も終え、秋には移動となった。

 一応俺が社長をしている魔道具開発もどうにかこうにか複写機が完成したところ。

 ただやっぱり現代のコピー機とは大きく違い、1枚1枚コピーする紙を入れ替えないといけないとか、コピーデータを送る事は出来ないとか、色々不便なところは多い。

 それでも大きめの絵や文字なら問題なくコピーできるので革命だと他の人達は言っていた。


 ただし非常に値段が高い。

 改定用コピー機ではなく新聞会社が持っているような巨大なコピー機をイメージしてもらえればいいだろうか。

 非常にデカいし使っている素材が高価なためビルに置いておくような事は出来ない。

 もうちょい便利さを増さないと売れない気がするが……それでも売るといきこんでいる。

 せめて連続コピーと紙の自動入れ替え、カラーコピーが出来たらな……

 カラーコピーはインクの問題もあるんだけど。


「不安だな……」

「学園に通うのが不安?」


 馬車に乗るノアがそう聞いてくる。


「いや、あの程度のコピー機を売るって言っているところが。白黒だしコピーに時間がかかるし、紙も自動で補給される訳でもない。あれ売れるか?」

「私から見れば十分なのだけど……本当にダメ?」

「俺の中では。それに試してみたがカードみたいに小さいとろくにコピーも出来ない。リリアのカード事業には使えないな」

「まずは複写機が出来た事に喜べばいいのに」

「昔それ以上に高性能で小さい物を知っているとまだこの程度かって思っちまうんだよ。こればっかりはどうしようもない」

「でもここから発展させるんだよね、お兄様」


 もう既にノアにも前世の事は話している。

 だから前世の頃にこんなものがあった、こんな事が出来たと教えるとかなり驚いていた。

 最初は半信半疑と言う感じだったが今では信じてくれている。

 そしてリリアは当たり前の事を言った。


「当然。ここから紙の自動補給と連続してコピーする速度を上げていきたい。A4サイズ1枚コピーで1分は流石に長すぎるって」

「その発言。写字生が怒鳴り込んで来るわよ。そして彼らのその後に関しても考えはあるのよね?」

「まぁ……今の所はA4サイズより小さい物はコピーできないし、複雑な記号や絵の複写は無理だ。そっち方面はしばらく手を出さない事で調整したいと思ってる。だからこそ紙の補給と連続コピー、そしてコピー速度を上げていく事で時間を作る。俺の頭じゃこんな時間伸ばししか出来ねぇよ」

「まぁ実際カラーコピー?絵の様な物は複写できないからね。絵の具の方が調達できそうなの?」

「その辺もぶっちゃけ無理。みんな魔道具を作る事は出来るけど流石に絵の具は範囲外。絵の具を作る道具は作れたとしてもどの原料を混ぜればいいのかとかさっぱり分からん。植物性?それとも石とかを砕いた絵の具?黒のインクは既にあったけど他の色のインクはどうすればいいのか分からん。そもそもインクがあったとしてもそれをどうやって噴射するか――」

「お兄様。詳しく説明してくれてるんだろうけど全然分かんない。噴射って水を出す時の奴だよね?何で複写機にそれが必要なの?」

「まぁ……簡単に言うと色んな色のインクを吹きかけてコピーしてたんだよ。と言ってもこれはあくまでも家庭用、業務用と言うかカード用には……どんな技術を使っていたのか分からん」


 カードを見ながら言うが様々な加工をされていたのは間違いない。

 カードを作るだけでもいくつの肯定があるのか分からないし、それが素人が1から作れるのかどうかも分からない。

 でもやるだけのことはやりたい。

 俺だって色んな人とカードで遊びたいんだよ。


「仕事の話はそこまで。それより2人とも王都で暮らすのは初めてよね、色々大丈夫?」

「色々って物価とかか?」

「そうじゃなくてどこに何があるのかっていう土地勘よ。どうせないでしょ」

「……ないな」

「私もない。こっちに来るときはお城に呼ばれるときだけだったし、お城以外行った事ない」

「それじゃ王都に着いたらまずその辺の施設とかについて教えてあげる。学園への道順もあるからね」

「よろしくお願いしまーす」

「しまーす」

「調子のいい兄妹」


 言われてみればその通りだ。

 王都に行った時はほぼ城に直行。でイベントが終わったらすぐ帰るの繰り返し。

 王都だからと言ってはしゃいであちこち見たりしなかったな。

 文房具屋とか日常的に使うかもしれない場所も確認しておかないとな。

 王都で暮らすってのも大変だな。


 ――


 なんて思いながらも王都に到着して引っ越し完了。

 既に秋である事も含めて薪とか大丈夫なんだろうか?


「ノア。薪の量って足りてる?」

「流石に大丈夫よ。暖房用に料理用も準備してあるから」

「後食材とかは料理人軍団が用意しているから良いとして、あと必要なのは……」

「ねぇアレックス。ちょっと状況確認が一般的すぎない?」

「そりゃ一般的だろ。食料と凍死しないための薪の準備、必需品じゃん」

「そうなのだけど、こう所帯じみているって言うか、もうちょっと王都を楽しんでもいいんじゃない?」

「楽しむって……王都に娯楽ってあるの?」

「あるわよ!!それに案内もするからデートしましょ」

「デート?それまた今度にして今日はリリアも連れて店とか色々確認したい。羽ペンとかインクとか、入学するにあたって必要なもの買っておきたいし」

「ぐぬぬ。デート……」

「デートはまた今度な。お~いリリア、町の探索に出るぞ~」


 なんて声をかけて3人と護衛であるブレイド達を連れて街を歩く。


「それにしても物売ってる場所まで歩くと遠いな」

「あたりまえでしょ。屋敷は城に近い一等地、店がある場所は二等地と三等地の間だから歩くと遠くなるのよ。てっきり馬車で行くんだとばかり思ってた」

「う~ん。こうなると買い物は馬車できたときに改めてして、今日は本当に街がどんな感じなのか確認するだけにしておくか。リリアは何か欲しい物とかない?」

「むしろその、お邪魔してないかな~って」

「それはアレックス様自ら壊したから気にしなくていいわよ~」

「だからごめんて。今度改めてデートしようや」

「……忘れてたら襲う」


 ノアにそう言われてしまったが改めて街の探索をする。

 王都と言うだけあってうちの領地よりも色々な施設がある。劇場とか本屋とか、宝石店とか色々ある。

 でも今回は俺が入学に必要な物を売っている店の確認がメインであとはおまけ程度に見ていく。

 ノアが服屋を見て新作がどうこう言っているが俺だけではなくリリアもよく分かってなさそう。

 俺は元々服に関心はないし、リリアもカード産業のために努力してばかり。一応最近のトレンドみたいなのは確認しているようだが基本的にメイドさん達にお任せだ。


 それにしてもやはりノアとリリアは目を引く存在らしい。

 すれ違う男共がみんな鼻の下を伸ばしながらノアとリリアを見ている。

 おとこがいるからか、それともブレイド達を連れているからか声をかけてくる事がないのは良かった。

 でも客観的に見るとやっぱりノアとリリアは美少女の分類に入るんだな~っと改めて思った。


「どうかした?」


 ノアが聞いてくるので正直に答える。


「やっぱりお前らってモテるんだな~ってなんとなく思ってた」

「私も?」

「ほらあそこ、あの男お前の胸見て鼻の下伸ばしてる」

「……胸ばっかり見る人なんてヤダ」

「まぁ自己主張が激しいからな、それ」

「どうせ私は小さいですよ」

「ノアのは小さくないだろ。リリアが特別デカいだけ。そして俺は嫉妬の視線を向けられております」

「両手に花だものね」

「片方妹ですが?」

「他の人達から見たら変わらないでしょ。それでご感想は」

「ちょっと優越感」

「お兄様もそういうの感じるんだね」

「少しはな。だがここまで分かりやすい反応をされるとマジでシルフィードを貸さないとダメだな。そうしないとすぐにナンパの津波が来そうだ」

「確かに少し警戒しないといけなさそうね」

「シルフィードの他に精霊を召喚出来ないか試しておかないとダメかもな。シルフィードはそういう知り合いいない?」

「そうだな……守るという意味では土精霊の騎士が良いと思う。だが男性型だが問題ないか?」

「どうだ2人とも?」

「私は問題ないわ」

「私も大丈夫だよ」

「それじゃ帰ったらさっそく召喚するか」


 シルフィード以来の精霊召喚だ。どんな精霊だか分からないが頼むだけ頼んでおくか。

 街を見て周りながらそう決めた。

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