俺なりの状況理解術?
「それじゃシルフィード、これを殿下に届けてくれ」
「承知した」
シルフィードは手紙を受け取って文字通り風のように飛んで行った。
これでリリアが見合いを受けるという手紙はすぐ届く。
本当は春に送るべきタイミングだが、シルフィードのスピードならすぐに届けられるという事なので出来るでだけ早く届けた方が良いだろうっという事でシルフィードに頼んだ。
上位精霊を手紙を届けるために使うのは贅沢だと母親に思われたようだが。
さて、リリアの見合い話を成功させるためにそれぞれが手伝う事になったのだが……
俺だけはちょっと違う。
それは――
「お兄様~……」
「今日もお疲れさん」
へとへとになったリリアを労うのが俺の役目となった。
まぁ見合いの前段階とはいえ野心を持って王族入りしようとしているのだから努力は必要だ。
そのため父親から勉強、母親から魔法、ノアからマナーを徹底的にぶち込まれている。
で、唯一教える物がない俺はそんな疲れたリリアを癒すのが役目になっていた。
「本当に大丈夫か?詰め込み教育は個人的に好きじゃないんだが」
「でもカードを作ってみんなと遊べるようになるには必要だから~」
「後個人的に相手の考えを読むってリリアにはあまり向いてない気がするんだけど大丈夫?」
「……よく分かんない。でも頑張る」
その頑張るリリアに少しでも何かできたらな……
――
リリアが見合いのために頑張っているのを応援して早10日、リリアは真っ白になっていた。
「これ流石にストップじゃない?ここいらで休憩挟まないとやっていけなくない??」
「ええ、だから今日は休みにする。リリア、よく頑張ったわね」
「……デッキ……SWする……」
「今から相手するから遊ぼうな。な」
真っ白になって最初にやりたい事がカードって筋金入りだな。
そう思いながらリリアが考えていた新しいデッキを俺が代わりに回す。
何でも新しいデッキを考えたのは良いが、それを試す機会が無かったらやりたかったとか。
「忙しい時でも新しいデッキ開発とかよく出来たな」
「頭の中でこのカードとこのカードを組み合わせたら面白そうって思っただけで他のカードはまだ粗削りだけどね」
「俺だったらとっくに投げ出してることをしてるから本当に良く頑張ってるよ。で、ノア。リリアの様子はどうだ?」
「領地経営や魔法、マナーに関しては今までの勉強の延長戦なので問題ない。しかしやはり相手の表情を読んだり、何を考えているのか予想するのは難しいようで……」
「あ~やっぱりそこで躓いてたか。ある意味予想通り」
「逆にアレックス様は表情を読んだり相手が何を考えているのか、あるいはどのような予想を建てるのが上手ね。どういう感じで考えてるの?」
「どうって……イメージで例えると……カード?」
俺はカードを指さしながら言う。
その答えにリリアもノアも不思議そうにする。
「お兄様相手の予想するのにカードをイメージしてるの?」
「あくまでもイメージだぞ?実際にはこうして対面している訳じゃないから表情は見えないし、何考えてるのか分からないけどさ。相手が得意な事、不得意な事をカードとして考える。そして相手プレイヤーはどのタイミングでカードを切ってくるのか、それを予想する。もちろんこれに関して相手の情報がある程度あるうえでの考え方だと思うから何とも言えないけど」
あくまでも俺なりの相手の考えの読み方を伝える。
普通相手がどんなデッキを使ってくるのか、どんな種族なのか、どんな切り札を使ってくるのか分からない。
それを俺の頭の中で情報を整理し、どんな強いカードを用意し、何に弱いのか予想する。
そしてこちらのカードも何が強いのか、何が弱点なのか知っておく。
そうすれば自然と相手の強み弱みを自然と分かってくる。
まぁそんなイメージで相手を想定しているという感じ。
「相手がどんなカードを持っていてこっちはどんなカードを持っているのか……」
「そりゃこんなゲーム脳じゃやっていける事に限界あるかもしれないが、まぁまとめる程度には役立つだろ。そんな感じだそんな感じ」
アドバイスになっているかなっていないか、自分でも分からないが一応伝えた。
でもこの考え方マジである程度情報がないと考え辛いんだよな……
まぁ相手がどんな手札を持っているのか分からないってのはどこでも同じだけど。
そう思っているとリリアが俺の顔をじーっと見ていた。
そして言う。
「そう言えば私がカードしてる時カードばかり見てお兄様の顔とか見てなかったかも」
「そう言われてみれば……そうだな。俺の顔じゃなくてフィールドにあるカードばっかり見てた気がする。でも別に間違ってないだろ」
気兼ねなくそう言いながらプレイを進めているとリリアは明らかに変わった。
フィールドをじっと見てどのように対応するか、それだけではなく俺の表情も見て何を悩んでいるのか、何を考えているのか読み取ろうとしているように感じる。
「……ブラディハントを召喚。続いてマジック、ネクロマンスを使用。トラッシュにあるスピリットを回収。ターンエンド」
「私のターン。スタート、チャージ、ドロー……水猿シャーマンリンを召喚」
そしてリリアは気が付いた。
俺がリリアがどんな表情で手札を使い、その動き、つまり迷いなく手札を使っているのか、それとも迷いなく使っているのか動きと表情から手札はそんなに悪くない事をが予想できる。
その事がリリアにも伝わったのか俺の事を睨んできた。
「お兄様。もしかして今までもそうやって私がどうするか探ってたの?」
「もちろん。プレイヤースキルって奴だ。相手の表情を読んだり、逆にこちらが無表情でいる事で情報を渡さない。これだけはカードの力だけじゃどうしようもない。本当に上手い奴はわざと渋い顔をして手札が悪いような偽情報を掴ませようとして来るし、その辺りは個人差だな。大抵は無表情、ポーカーフェイスって奴だけど」
「私って分かりやすい?」
「分かりやすい。本当に最初の頃なんてデッキからカードを引くたびに一喜一憂してたから良いカード来たんだな、とかあまりいいカード来なかったんだってまる分かりだったからな。今は悩んでいる顔ばっかりになったから分かり辛くなったけど」
「む~!!もっと早く教えてくれればよかったのに!!」
「なっはっは。そういうのはしごかれて学ぶもんだよ」
不満を漏らすリリアだがそういう雰囲気を読む力もカードバトルでは必須だ。
特にスマホなどを使ったカードゲームだと相手の表情は全く読めないからこのスキルは対面戦限定だろうけどな。
何てプレイを続けていった結果、俺が勝った。
「バットスライサーでアタック」
「……フラッシュ……ありません」
「これで最後のライフを砕いて俺の勝ち。ちょっとはスッキリできたか?」
「負けたからイライラ増えた!!もう1回!!」
「時間が許す限り良いぞ。次はノアがやるか?」
「…………アレックス様。次回からリリアの相手の表情や仕草から相手の行動を読む訓練をしてもらってもいいかしら」
「え?でも俺腹芸とか知らないぞ」
「リリアには今みたいにカードを通してしての感情を読み取ったり、次の行動を予想する方が向いていると思う。それにリリアにとっても遊びながらならストレスも感じにくいでしょうし、この方が良いかもしれない」
「……所詮遊びだぞ?」
「遊びからでもいいの。だからアレックス様は毎日デッキを10個作って」
「デッキ製作10個!?俺そんなに強いデッキぱっと作れるほど頭ないぞ!!」
「別に強い弱いは関係ない。他だリリアにいろんな状況を体験させるために色んなデッキを用意して戦った方が良いって判断しただけ。だから、ね」
リリアのためと言われては仕方がない。
少しため息をついてから了承した。
「分かったよ。とんでもないネタデッキでも怒るなよ」
「ええ。むしろネタって言うデッキがどんなデッキか楽しみ」
本当にロマン砲なんだよな……俺のネタデッキ。
でもまぁリリアのためになる事が増えたのは良かったのかな?




