俺の魔力量は異常?
「何その速攻デッキ!!0コストのスピリットだけデッキ組んだの!?」
「仕方ないだろ。10個もデッキ考えるの面倒臭いからこういう速攻デッキも組まないとやってられん」
「う~!!なんかズルい!!」
「ズルくはねぇよ。まぁ速攻封じられたらヤバい運ゲーだけど」
今回リリアと戦ったのは0コストのスピリットだけを入れた超速攻デッキ。
相手の手札に防御や破壊系のマジックが合ったら即お終いである。
本当はこんな博打デッキ組みたくはないんだが、10個も作れと言われてはこういう手抜きデッキだって作りたくなる。
というか考えるのが面倒くさくなって作った。
「なぁノア。俺だけじゃなくてノアも相手してくれよ。というかこれ本当に相手の表情や腹芸を覚える訓練になってるのかこれ?」
「あくまでもこれはその切っ掛けとやり方の基礎を覚える物なのでこのくらいでいいの。あと私だって色々なれないけどデッキ作ってるし」
「でも紫と比べれば作りやすいだろ」
「……私の場合どうしても凝っちゃうから」
確かにそれは分かる。
一応色んなデッキを組んでとにかくリリアと勝負を続けた。
毎日デッキコンセプトを考えて弄繰り回すのは面白い部分や発見もあるが、それ以上に労力が高い。
これもう本当に他の連中を巻き込んだ方が良いんじゃないか?
せめて同い年の友達とかが居ればもっと良かったんだが……俺達にそんな存在居ないからな……
「リリア、勉強は……してなさそうね」
何てやっていると母親が様子を見に来た。
「お母様、これは訓練です。お兄様に勝つための」
「違うだろ。表情を読まれない訓練と相手の表情を読む訓練だろ」
リリアの目的が分かってしまっている事にやっぱりこれじゃダメなんじゃね?っと思ってしまう。
ノアもあくまでも切っ掛け作りと言っていたのであくまでも初級編と言ったところのはず。
というかもうすでに俺に勝つためにやってると言ってる時点で目標見失ってるだろ。
「ノア……これ本当に大丈夫なのか?ちゃんとリリアに腹芸覚えさせれてる?」
「それに関しては後でちゃんとテストしてみるから」
「腹芸のテストって何?」
「相手に何を言われても表情を変えないかどうか確かめるの」
そんな風に言われてもよく分からんて。
これが本当にリリアの訓練になっているかどうか不安だ……
そしてリリアはネタの速攻デッキに対抗心を見せているのか、デッキを見ながら速攻デッキに対して同対策しようか考えている。
「リリア。あんなネタデッキにそこまで本気にならなくていいだろ?モンキーパニックは元々速攻系だし、キーカード引けばほぼ勝ちだろ。変にいじって強み消さないようにしろよ」
「でもぶっちゃけこのデッキコスト高いからキーカードを引くまで弱くない?」
「弱くないだろ。スピリットカードがマジック同様に使えるんだから」
モンキーパニックデッキ。
それはスピリットでありながらマジックとしても使える効果を持ったカードを主体としたデッキ。
基本的に召喚時効果を持つスピリットカードを中心に入れ、その効果をフラッシュに使う事が可能となるキーカードの力。
しかも本来はそのカード達はマジックとして使われるため、本来はトラッシュに置かなければならないのだが、そのキーカードによってトラッシュではなくフィールドに置く事が出来る。
これによりただマジックを使うだけではなく、スピリットを横展開する事も出来るクソ強カードだ。
なので要求されるのは魔石管理。
召喚する効果があっても魔石切れを起こして思うように横展開できない事もあったため、緑の魔石ブーストの効果を持つカードを混ぜるプレイヤーもいた。
あるいはトラッシュから使用した魔石を回収して使用するようなデッキの組み方をする人もいたな。
「でもお兄様と戦う時は何か一手足りない感じがするときがある……」
「それはお前の魔石管理の問題。そろそろ止めるか?」
「……ちょっと休憩する」
やはり短時間で色んなデッキを相手にするのはリリアにとっても疲れるようなので休憩を挟んだ。
そしてどこからか現れたシルフィードがクッキーを渡してくる。
「疲れた時は甘いものが良いと昔仕えていた姫が言っていた。マスターも食べるといい」
「そりゃどうも。いくつかもらう」
そう言って寝っ転がりながらクッキーを2枚口の中に放り込んだ。
「寝っ転がって物を食べるなんてはしたないですよ」
「あと菓子は要らん。これっきりですよ、お母様」
そう言って目をつむりながらいろいろ考える。
本当にこれでリリアの腹芸が学べているのか、本当に嫁入りする準備は出来ているのか、本当に欲望の坩堝の様な王宮でやっていけるのか。色々心配だ。
俺自身もこの領地の経営について考えなければならないし、俺の手で領地経営をするのであれば何を強みにするのか、国境の防衛についてどうするのか、色々現実的にも考えなければならない。
まぁ多分最も簡単なやり方は俺がスピリットを召喚しまくって領地の防衛に努める事だろう。
そして倒した魔物は素材として売りに出せば食いっぱぐれる事はないはず。これは両親もやってる事業の1つだ。
そして新しく取り入れたのが魔道具作り。
他の領地で既に兵器開発みたいな事をしているからこっちは日用品に近いものを作る事で競合を避ける。
魔道具のイロハに関してはその領地に勝てるとは思えないからな。それに今はまだタイプライターで金を稼いでいる途中だが、識字率の低いこの国では重要も大きくはない。
今は物珍しさと便利さで売れているようだが一度普及しきれば後は壊れたら交換という感じだろう。
みんなパソコンを使っていたような前世とは違う。
そうなると……国外に売るというのも手の1つか。
でもその伝手もどうやって見つけるか……
いや、その辺は商人に任せればいいのか?海外に売れると思えば売り出すだろうし、海外に売ってこの領地でまたタイプライターを買ってくれるなら循環は生まれる。
ならそこまで深く考えなくてもいい?
タイプライターの特許は国外申請しておいたし一応問題ないはず。
パクってきたら訴える事も可能。というか絶対に訴える。
となるとやっぱり今考えるべきはリリアの事かな……
目の前の問題という事もあるし、王族が相手だからな……
まぁ何故か俺はその王族の娘を妻にもらった訳だが。
「ところでアレックス。今あなたは魔法の訓練をしていますか?」
色々考えていたら母親が聞いてきた。
「魔法の訓練?魔力を上げる訓練しかしてませんが」
「それで今どれくらいの魔力を持っているか分かっています?」
「そう聞かれると分かりませんが……数値化できる物なんですか?」
「出来ます。あとでちゃんと訓練していたか確認しますね」
どうやら母親が来た理由はリリアの様子を確認しに来ただけではなかったらしい。
面倒な事はさっさと終わらせるに限るという事で母親の魔法研究棟にやって来た。
そして魔力量を計るのはこの水晶玉らしい。
「これで魔力量を計る事が出来るんですか?」
「はい。と言っても潜在的な数値までは出ませんので魔力をこの水晶に放出する事で計測します」
桶に水を注いでグラムを計る感じだろうか?
そう思いながら魔力を水晶の中に注ぐイメージをすると水晶に数字が表れた。
1、2、3と少しずつ増えていく。
「あ、なんかちょっと面白い」
「限界を感じたら止めてください。めまいがしたり立ち眩みを起こすようであればすぐに止めるように」
「ほ~い」
魔力を流し続けるとあっという間に100を超えた。
そう言えば平均値ってどれくらいなんだろ?
あと水晶の色が真っ黒になったけどこれ大丈夫なんだよな?
「ところでお母様。他の魔法使いの場合平均数値はどれくらいですか?」
「およそ50~60くらいですね。私くらいだとってストップですストップ!!」
慌てて止められたので俺は水晶から手を放す。
水晶に書かれている数字は131。平均が50~60と言っていたから2倍近いのか。
「お~。となると俺結構魔力量はあるんですね。ざっと2倍か」
「アレックス。あなた体調が悪くなったりしていない?めまいとか気分が悪くなっていませんか」
「何ともないですよ。くすぐったい」
ボディーチェックをするように体を触ってくるのでくすぐったい。
母親は俺の顔色を真剣に見てホッとしたように言う。
「本当に大丈夫なようですね。無理をしなくて良かったです」
「無理をした場合どうなるんですか?」
「無理をした場合よくて気絶、最悪死に至ります。魔力は生物の生命力でもありますからそれを消費しきると死んでしまう事もあるんです。だから平均50と言いましたがあれはあくまでも安全に出せる魔力量の事です。無理にひねり出そうとすればそれ以上の数字が出るでしょうが……」
ん?もしかしてそれ、俺が最初の方で召喚すると気分が悪くなってた奴か?
となると俺の体感は間違っていなかったという事だ。
なんとなく嫌な感じがする程度の物だったが、本当に命の危機に関する物だったらしい。
そして131という数字。そして俺の魔石は現在20個。
魔石1つで魔力10とすれば計算は合うな。1つはシルフィードの召喚維持のために使っているから使えないけど。
それが普段スピリットを召喚するのに最低でも魔力10を消費していたと考えるのが妥当だ。
コストを消費すれば戻ってくるのは深夜0時だし、それまで魔力が回復する事はない。
これは今後の方針に関わる重要な事に気が付けたかもしれない。
俺にとってこの魔石の数が生命線になるだろう。
もっと魔石増やせるだけ増やしておかないとな。




