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魔道具技師を呼んだ

「お父様、少々お願いがあるのですがよろしいですか?」

「……何だ」


 随分警戒してるな……

 ノアと婚約したのそんなに不安かな?


「ノアと相談してみたのですが、この領内で魔道具の生産で新しい産業にならないか試験的に雇ってみたいと考えているのですが許可していただけないでしょうか」


 そう相談してみると息を少し吐き出してから父親は言う。


「魔道具だと?それは既に他の領地で行っている。それではすぐに産業になる事はないだろう」

「俺が作りたいのは武器ではなく生活を便利にするための物です。これから他の領地と競争する事はないかと」

「生活を便利に?」


 ぱっと思いつかないのか首をかしげる父親。

 それなら俺が欲しいと思っている物を例として挙げれば分かりやすいだろうか。


「例えば今お父様が書いている報告書です。現在報告書は人の手で書かれているためどうしても字が汚い、綺麗とバラバラで読みやすかったり読みにくかったりします。それを道具を使って全て同じ字にすれば綺麗に読めると思いませんか?」

「確かにそれは便利だと思う。そういった物を開発させるというのか?」

「はい。最初魔道具と言いましたが実はそこまでこだわるつもりはありません。あくまでも生活を便利にするための道具を作っていく事を主目的にするつもりです」

「……なるほど。それで他の魔道具を作っている領地と差別化させると」

「はい。でも便利だからこそ軍事転用する事もいずれ可能でしょう。一応想定していますがそれはあくまでも副次的な使い方として容認しようかと」

「……その魔道具を作る職人に当てはあるのか?」

「ノアの方に当てがあるようですので任せています。試験的なので人数は最低でと言っておきました」

「…………いいだろう。ノア姫の推薦ならある程度の実力はあるだろう。しかしその者達の面倒はしっかりとお前が見ろ。これは領地経営の基礎を学ぶいい機会だ。しっかりと学べ」

「許可をいただきありがとうございます」

「それからもう1つ言っておこう」

「何でしょう?」

「さっき例に出した道具は実現可能なのか?」

「技術的な物は分かりませんがおそらくいけるかと。その辺りは技師を招いて実現可能かどうか確認しながらですね」

「分かった。期待しておく」


 やっぱり字の綺麗汚いは地味に面倒だよな……

 そう思いながら父親の部屋を出ると何故かリリアがじ~っと俺の事を見ていた。


「どうしたリリア?」

「……嘘つき」

「嘘?何の事だ??」


 本当に良く分からないので聞き直すとリリアはジト目で言う。


「カードを作るのは難しいって言ってた」


 何でカードの話になるんだっと思っているともしかしてと思って聞いてみる。


「もしかして俺がやる事業がカードに関する物だと思ってる?」

「うん……違うの?」

「う~ん。全く関係ない訳でもないが、今の技術じゃ無理だぞ。まぁその内?利用可能になるかもしれないが……」

「私もやる」

「え?」

「私もお兄様のお手伝いしながらカード作れるようにする!」


 …………なんか意外な方向から手伝いを申しだされた。

 というかまだカード産業諦めてなかったのか。


「あ~……一緒に勉強するか?カード作りの」

「うん!!」


 なんかよく分からないけどリリアが仲間になった。


 ――


 それから1か月後、ノアが呼んだという魔道具技師の人がやってきた。


「は、初めまして!ホルンと申します!これからよろしくお願いします!!」

「カルムと申します。仕事はきっちりしますのでご安心ください」


 やって来たのは眼鏡をかけた研究者っぽい見た目の女性と、くせ毛で目が半開きの眠たそうな男性。

 そして……


「その子は?」

「ああ、この子は私の妹です。名前はヘレン」


 女性の後ろに俺よりも幼い女の子がホルンさんの足に隠れていた。

 明らかに研究者ではないが確認する。


「ホルンさんと妹さんはもちろん一緒に暮らすって事で良いんだよな?」

「はいすみません。職場に連れてきちゃって」

「それは構わないんだが道具を作るのに危なくないか?小さい子が居るのは」

「その辺りはしっかりと言い聞かせているので大丈夫です。前の仕事でもよく一緒に居ましたから」


 妹と一緒に働ける職場って珍しい感じがするがそうじゃないのかもな。

 でもそうなると……


「妹さんが来るって聞いてなかったら今日だけベッド一緒に使ってくれ。部屋っつーか作業場以外は屋敷に一緒に居てもらう事になるけど大丈夫?」

「ありがとうございますって屋敷?」

「今回はあくまでも試験使用だから2人の腕がどれくらいなのか、知識はどうなのか確かめさせてもらいたい。俺が考えた……とも言い辛いんだが、それらが実現可能なのか、製作するにはどれぐらいのコストがかかるのか、そう言った事も相談していきたいからまだ正式に部屋とか借りてない。というか金勿体ないから屋敷に住んでもらう」


 俺がそう言うとホルンさんは口を大きく開けた。

 やっぱり金銭関係が関わっているとはいえ、雇い主と同じ屋根の下って言うのは嫌だよな。

 妹さんの事も心配だろうし。


「それはまた……試験というには随分好待遇ですね」

「そう?雇い主と同じ屋根の下って嫌じゃないの?」

「何をしてくるのか分からない相手ならそうですがノア様のご指名ですからね、信用はしてます。それに小さな工房だと親方や雇い主と同じ屋根の下って言うのもそんなに珍しい事ではないので問題ありません」

「そう言ってくれると助かる。それじゃ早速部屋と工房を見せるからついてきてくれ」


 そう言って屋敷に招いて部屋と工房を見せる。

 部屋に関しては余っている使用人用の部屋で俺の部屋のように広くはないが、1人で暮らすなら十分な広さのはず。

 工房に関してはまだ具体的に何が必要なのか、何を揃えればいいのか分からないのでイスとテーブルだけ。

 まず初めにタイプライターを作れるかどうかを確認し、その後事業を広げていきたい。


「何もなくて悪いな。魔道具作りで必要な部屋の構造に関しては色々教えてもらったんだが、道具作りとなるとよく分からなくてな。一応鍛冶場と木工が出来る場所は揃えてある。道具に関してもノコやノミ、ハンマーと鍛冶場は一応用意したが……あと他に必要な物って何かな?」

「いや~……これから何を作るのかは分かりませんが、これの作業場本当に私達だけで使っちゃっていいんですか?」

「そのための部屋だからな。それより必要な物ってない?」

「そうですね……むしろ何もない部屋ってありますかね?」

「何もない部屋?広さは?」

「そんなに広くなくて大丈夫です。それこそイスと机があればいいくらいの広さの部屋が欲しいです」

「広くなくてもいいなら……この部屋はどうだ?狭いが防音や日当たりは悪くないと思うが……」

「いえ、これくらいの部屋がちょうどいいです。あとは……魔道具を作るって話ですけど魔道具を作るための設備がないような?」

「あ、それ現在制作中。うちの母親が作れるからって頼んだ」

「……母親ってアーシェ様?」

「うん。他の魔法使いとかに任せるよりも質は良いって言うから頼んだ。あと単に金の問題」

「……節約は賛成しますがそれでこの国の魔法のトップに頼むって贅沢じゃありません?」

「そんなの知らん。使える手は全部使う。材料費は稼いで返せと言われたけど」


 タイプライターで大儲けできるかどうか分からないが父親がめっちゃ欲しがっている感じがしたからある程度は売れるだろう。

 あとは単純な大きさとか、素材とかの問題になってくる。

 それにこの部屋に準備している物はタイプライターを作るには最低限必要だろうと思った物を集めただけだから本当に必要になるのか分からない。

 問題は多分ハンコの所だろうな……


「あれ?そうなるとしばらく魔道具は作れないって事ですか?」

「そうなる。ただ今回依頼したのは魔道具じゃないけど作るのが面倒くさそうなものだから意見をもらいたくてな」


 そう言いながら2人……妹さんも見ているので3人に見せる。


「タイプライターって物なんだが、これ作れそうかな?」


 そう言いながらタイプライター(仮)を見せる。

 それを見た2人は――


「確かにこれなら魔道具と言うよりは普通の道具。それでいて需要かなりあるわね」

「ああ、事務作業をしている場所なら確実に売れるし試作品なら俺達2人だけでも十分作れる。もしこれがちゃんと売れると判断した後はどうするおつもりですか?」

「その時は2人のように魔道具の研究者などを雇うつもりだ。そして正式に起業して事務所と工場を建てる。ただ問題なのはこのうち付ける所。これかなり小さい部品だけど量産できそうか?」

「確かにこのパーツだけは難しいかも。でも魔法を使えばできるかな?」

「まぁ……それでも安定して作れるかと聞かれれば不安は残りますけどね。でもおそらく作れますよ」

「それじゃまずはタイプライターを完成できるよう俺達で努力しよう。これからよろしく頼む」


 こうしてタイプライター作りはスタートした。

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