タイプライター試作中
金が欲しくてタイプライター制作なんてやっているが、同時に紙を用意しなければならない。
実際にタイプライターで文字を打った際にしっかりとインクが残らなければならないため実験用に色々用意しておかなければならない。
どんな紙を使っているのかは父親に聞いたところたったの5種類しかないのでそのうちの4種類を用意した。
何故1種類抜けているのかというと、王族が使っている紙だからだ。
王族が使う紙は非常に高価で基本的に他国の王族にへの手紙だったりするので滅多に使う機会がない。
それを実験用として大量に手に入れるのはさすがに勘弁願う。
なので俺がノアに手紙を返していた貴族用の紙が最も高価でこれに適応できるタイプライターを目指す方針となった。
今現在最も紙を消費しているのは貴族と王族、あるいは本を作っている業者ぐらいでほとんどの者は紙を使わない。
その理由が紙その物が非常に高価であり、さらに言えば識字率が低いので文字を書かないのが一番の理由だと思う。
そう考えると必然的にタイプライターを使うのは貴族王族で、あとは本を書く仕事の人くらいしか使わないだろうと俺達の中でターゲットを決めた。
あとは試作品を作っていくだけなのだが……
「……何か想像以上に試作品が出来るの早いな」
試作品だと言われて渡されてタイプライターを見ながらそう言った。
「あくまでも試作品ですから、今回は金属を使ったのはハンコの部分だけであとは全て木製です。今回はとにかくコストをかけない形で作りました」
「アレックス様の完成予想図を元に作ったので形は良いと思いますが、どうでしょうか」
カルムとホルンが本当に試作品である事を強調しながら言う。
とりあえず持ったり細かい所を見てみたりする。
そして最後にタイプライターを押してみて俺は思わずうなってしまう。
「あ~……やっぱりダメですよね……」
「まぁ正直……うん」
試作品である事は分かっているがどうしてもいい所が少ない。
「ハンコ以外全部木製のせいかな?なんだか紙が動く部分がなめらかじゃないし、実際に紙をはさんだ際にうまくいくか不安。あとこれ本当に紙に打てるの?」
「これはあくまでも形だけを整えたものなので、使用目的ではこちらを試してもらえませんか」
そう言ってだけしてきたのは武骨な鉄製のタイプライター。
受け取ってみたが子供の手で持つと重い。
それに木製の物と比べると中の構造が丸見えなのも試作品の証拠だろう。
とりあえず打ってみると……木製と比べればまぁまだマシ。
実際に紙を挟んで打ってみると……う~ん。
「やっぱり全体的に重いな。あとライプライターを押すのも意外と力がいるな」
「やっぱり重いですよね。ところでこれって男性だけじゃなくて女性も使える事を想定してますか?」
「想定してる。というか貴族の場合そういうパーティーを招くようなときは大抵女性、妻が招待状を用意する事が多いんだよ。だからそういう時でも使われる可能性が高いから女性でも使いやすいのが良いかも。打つのも軽い方が手が疲れないだろうし」
「そうなると軽い金属を見つける所から始めないとダメですね。ただの鉄では重くて使い辛いかと」
「となるとアルミ製……この世界ってアルミはもう発見されてるのか?鉄より軽い金属ってこの世界だとどんな価値だ?」
「見つかってますけど……どれもアクセサリー用として使われている事がほとんどです。タイプライターみたいにほとんどが金属の場合鉄製だから耐久性が不安ですね」
「存在はするならとりあえず手に入れてみよう。あとは……組み合わせるべきか。金属製なのは良いけど紙を挟んでいるとはいえ滑りやすさを重視しすぎると紙が止まらなくなったら元も子もないし、いっその事紙を挟む部分は鉄じゃない方が良いのか?もっとカーボンみたいな素材の方が……」
「待ってください!そういうの考えるのは私達の仕事ですから!!」
「え?でもこういうのはいろんな意見を出す方が良いんじゃ?」
「ありがたいですがそう言った事も我々の仕事なのも事実です。ですが使用した感想として意見は取り入れさせてもらいますし、改善改良させていただきます。ですが素材などに関しては我々の方が詳しいのでお任せください」
「……そういうもんか。それじゃ深い事は言わないわ。とりあえず大筋は間違ってないと思うから全体的に軽く出来そうな部分は軽くしていく方向にしよう。今のままだと重すぎる」
「分かりました。軽量化を目指していきます」
こうして試作品に関してはこんな感じだった。
口出し過ぎたかな?
素人意見じゃ逆に迷惑だっただろうか?
まぁプロにお任せ方向に変えてもいいかな?
とりあえず使った経費を確実に回収できるだけの金は欲しいな。
――
「あ、危なかった……というかあのアレックス様って本当に子供?改良点すぐに洗い出してくるの怖いんだけど!!」
「あそこまでなのは僕も驚いた。さて、ほとんどの改善点は言われちゃったけど仕事再開だね」
「いや~最初は姫様にスカウトされてラッキーくらいの感覚だったけど、ここまで環境が良いとちょっと長引かせたい気持ちも出ちゃうでしょ」
「アレックス様がどんな人なのか分からないけどそんな適当な事を言って、あとから追及されるなよ。僕は稼ぐために来てるんだから」
「それは私も一緒よ。それにしてもこんな便利な物を魔道具にしないで作るって発想はなかったな~。魔道具ばっかり作ってたから頭の中固まってたのかも」
「それに関しては僕も同意。でも確かにこれなら字を書くよりも便利だし、文字の汚さは消える。これなら報告書も簡単に作れる」
「そうよね~、アレックス様みたいに発想力があったらあそこでくすぶってなかったのかもしれないわね~」
「その辺りは姫様の言う通りだったって事でしょ。それに今回は機能的な改善点だけだったけど、次は何を言ってくるか分からないし、しっかりやらないと」
「機能が上手くいけばいいじゃない。私達はあくまでもこういうのを研究開発するのが仕事で流石に販売用の知識はないわよ?」
「あのアレックス様は俺達に色々言ってくる気がする。雇用するのは初めてって言ってたし予想してないような仕事も振られるかもしれないからな。その辺は気を付けておいた方が良いぞ」
「そう言われると……ちょっと警戒しておこうかな」
「……お姉ちゃん」
「あら、どうしてのヘレン?寂しくなっちゃった?」
「お姉ちゃんって凄い魔道具師だよね?」
「そうよ~何だって作っちゃうんだから」
「それじゃお友達のお願い、聞いてくれる?」
「お友達?お友達が出来たの!?」
「う、うん……」
「凄いわー!!今まずっと内気で友達が居なかったから心配してたのよ!!それでそのお友達は?」
「ホルン。そう安請け合いしない方が――」
「初めましてホルン様。私、リリアと申します」
「――………………」
「お姉ちゃん固まった」
「……だから安請け合いするなって言ったのに……」
「優秀な道具技師だとお聞きしました。私が欲する魔道具を作れるかどうか、ご相談に乗っていただけませんか?」
「は、はいぃ…………」




