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領内産業の開拓

 領地に帰ってきたら当然ではあるがノアを連れて帰ってきた事に屋敷のみんなは腰を抜かした。

 特に騎士団のみんなは非常に驚いており、即座にノアの護衛が誰になるか相談している。


「こういうのってノアのために護衛の騎士とかつくもんじゃないの?」

「ほとんど正式な嫁入りだから、最低限の人しか一緒に来れなかったの。でも彼女達も優秀だから大丈夫」


 そう言ってノアと一緒に来たメイド達もこれから一緒に暮らす。

 もちろん仕事はノアの身の回りの世話だし、うちのメイド達とも協力して仕事をこなす事になる。

 メイド達の人数は3人で1人はベテランの婆ちゃんで残り2人が若い感じ。

 なんとなくではあるが若い2人に関して少し騎士のような雰囲気がある。

 もしかして護衛も兼ねているんだろうか?

 もしそういうのを専門にしている人達が居るのであればリリアにも必要なのだろうか?


 その後の生活は……意外とあまり変わらない。

 貴族としての勉強をしながら領地経営の事も勉強し、魔物以外にも産業を増やす事が出来ないか現在模索中。

 一番いいのは畑とかを広げる事だが……土地そのものがない。

 より正確に言うと畑とかにできる土地がない。

 いわゆる肥沃な土地という物がなくて本当に土壌改善から始めなければならない。


「どうしたもんかな……」

「どうしたの?」


 そんな事を考えているとノアが話しかけてきた。


「領地の食料自給率を上げたくてさ、畑とか作れるところがないか考えてた」

「あ~。でもこの土地が色々厳しいんじゃない?環境というよりも魔物や動物の対策が大変でしょ」

「それもあるけど肥沃な土地そのものが少ないみたい。だからこれ以上畑とかを増やそうとしても無理。もし本気でやるとしたら土壌改善から始めないといけないから10年単位での計画が必要かもしれない」

「それ本当に大変そうね。今のこの領地の特産は魔物の素材よね?」

「そうだな。魔物の素材は色んなものに変えられるし、力のある魔物からとれる素材は希少性もあるから高く取引される。ただしそんな奴ちょくちょく出てくるわけないし、そもそも命の危険が高すぎるし、もう少し安全に働ける環境を作りたくてさ」

「それでとりあず畑を作れないか考えてたって訳ね。でもそれは厳しいと」

「ああ。だからと言って畜産関連はもっと厳しいだろうからな~。それこそ牧草とかも管理しないといけないし、魔物が食べに来る可能性も考えるとそう簡単にできない。全くしてない訳じゃないけどできるだけ魔物の森から遠ざけた場所に作ってるし、そっちを開拓するとすれば木を切り倒す必要がある。さすがに手間と労力があってない。もうちょい他にいい商売みたいなのないかな……」


 何て考えているとノアも考えている。

 なんか王家の知恵みたいなのないだろうか。


「……魔道具産業は?」

「魔道具産業?」

「他の領地で行われているけど、魔道具の生産販売はどう?魔道具を作る際にはどうしても魔物の素材が必要になるし、魔道具と行かなくても魔物の素材を使った武器の生産とかはしてないの?」


 魔道具とは魔法の力が込められた道具の総称。

 その用途のほとんどは武器として生産される事が多く、簡単に言えば銃弾の代わりに魔法の火の玉が出る杖の様な物を作られたりする。

 ただ欠点として大量生産が難しい事。何より素材集めが大変だ。

 今言った火の魔法が出るようにするには火の魔物の素材が必要になるし、水の魔法が使いたかったら水の魔物を倒すしかない。

 それに高ランクの魔物を倒せば高ランクの魔法を込めた魔道具が作れるが、スライムのような雑魚だと効果も威力も低い。

 そのため魔道具は割に合わない産業になりがちだ。


「全くしてない訳じゃないが……魔道具を作るのはかなり難しいのは分かってるだろ。魔法使いとしてだけじゃなくて技師としても腕が求められる。材料はどうにかなるかもしれないが……魔道具を作るとなったらまた別問題だぞ」

「それなら道具を作る人は別の所から雇えばいいじゃない。ちょうどあぶれてるし」

「あぶれてる?」


 よく分からない言葉に俺は首をかしげることしか出来ない。

 ノアは自信満々に言う。


「アナトアという港町があるのだけど、そこに様々な魔道具を作っている人達が居るの。でも最近は魔道具ばっかり作らされて嫌気を指している人達が大勢いてね、そろそろ本職に戻りたい~って言ってるのよ」

「どういう意味だ?さっきから矛盾してないか?魔道具を作っている人達が魔道具ばかり作って嫌気がさしてるって」

「本来その人達はただ便利な道具を作ろうとしていただけなの。その便利な道具を作る一環として魔道具の事も研究してたんだけど、それが国に目を付けられて戦闘用魔道具の開発ばかりさせられて本来の研究が出来ないって人達が一定数いるのよ。だからその人達を雇おうって話」

「便利な道具って具体的にどんなの作ってたんだ?」

「本当に便利なだけよ。火を使わずに光る木の棒とか、自然と水が湧き出るコップとか、そういう物。他の人達から見たら利のない研究として見てたけど……あなたなら新しい価値を見出す事が出来るんじゃない?」


 ノアにそう言われて少し考える。

 つまり彼らは兵器開発に疲れて日用品に近いものを作ろうとしていたわけだ。

 火を使わずに光る棒ってペンライトとか?水が湧き出るコップも飲用として使えるものを作ってたって事だよな?

 そうなると難しいかもしれないが……活版印刷も作れたりするのか?

 いやいっその事タイプライターの様な物を作らせる方が良い?この世界の文字は英語に近いから再現は可能だと思われる。

 でも魔道具である必要もないな……

 その辺は数人引き抜いた後に確認すればいいか?


 ぶっちゃけ農業とかで領地を盛り上げるのは厳しいだろう。

 その事は嫌というほど分かった。

 農業が出来たとしても森から魔物が来て農作物を食べられたら意味ないし、それを守るための施設もまだまだ少ない。

 何より土壌改善から始めなければならないのだから時間がかかりすぎる。

 俺はそれでも良いがそのあと俺の腹じゃなくて魔物や他の動物に食われるのが気に入らない。


 だから工業系に力を注ぐのは……ありかも知れない。


「聞きたいんだが魔道具を作る際に危険な物は出ないんだよな?」

「危険って言うとやっぱり魔法の暴発とか?」

「そうじゃなくて公害。え~っとつまり魔道具を作る際に出てくる毒の様な物はないのかって聞きたかった」

「そういうのは……聞いた事がないわね。よく聞くのは攻撃魔法を付与しようとして失敗して暴発したとかだから、魔道具を作っている間に毒の様な物が出たって話は聞かないわね」

「その辺の聞き取りは徹底しておきたい。もしそれが出て土地を汚すようなら進めたくないし、住民の健康被害にもつながる。その辺本当に起きないかどうかだけ確認してくれ」

「わ、分かった。それじゃ魔道具作りは前向きに検討するって事で良いの?」

「前向きには検討するがあくまでも試験段階だ。上手く作れるかどうかはそいつらの腕次第だし、俺が求める物が作れるのであれば厚遇する。どこにでもある話だ」


 世の中が便利になると思えば多少の労力は構わない。

 実際に働くのは俺じゃないし、その成果が出るまで同資金繰りをするか考えるのが俺の役目だ。

 一応貴族の息子と言うだけあって家には金があるから両親を説得して使える金をどこまで引き出せるかが勝負となる。

 一応この領地の未来の産業と言えば少しは耳を傾けてもらえると信じたいが、こればっかりは実際に話してみないと何とも言えないか。

 あとその人達の腕次第だな~。

 タイプライターが作れるとなったら食いつきそうな感じがするけど。

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