リリアがめっちゃカードに興味を持った
「あ~……また負けた……」
しばらく平穏な時間が経ちリリアと俺はSWでよく遊ぶようになった。
最初こそカードの効果や魔石の管理に手こずっていたが今では問題なくプレイしている。
「いや、今のはギリギリだったよ。防御札が無かった負けてた」
「それでも最終的に負けちゃったら意味ないもん。あ~あ、お兄様みたいに白の防御マジックを入れる事も考えた方が良いのかな?」
そう言って自分のデッキを改良しようと必死に考えているのを見てこりゃすぐに追い越される可能性もあるなと考えてしまう。
遊ぶ用のデッキを片付けているとリリアは言う。
「ねぇお兄様。このSWってお兄様の前世の世界ではおもちゃみたいなものだったんだよね?」
「まぁそんな感じだな。それがどうした?」
「これ私達の世界でも真似できないかな?」
……これまた意外な事を言い出したな。
「この世界でSWの普及?考えた事もなかった……」
「そうなの?うまくいけばこの領地の名産になるんじゃない?」
「いや、それに関して結構大きな壁があるんだよ……」
「大きな壁?それって乗り越えられないの?」
「まずリリアに聞く。SWの普及と言っていたがどの程度だ?」
「どの程度って……」
「規模の話だ。この屋敷の中だけ?それとも領地の中だけ?それとの国の中だけ?貴族平民関係なく??」
「えっと……それじゃ……国中で?貴族平民関係なく?」
おそらく最も規模の多い物を選んだ、という感じだろう。
だが規模が大きい方が分かりやすいかもしれない。
「分かった。それじゃまずSWを販売するとして、まずは何をする?」
「まずは……カード!カードと魔石を用意する!!」
「そうだな。ではどうやってカードと魔石を用意する?」
「え、もちろんカードと魔石を作って……」
「それじゃまずはカードを作るところから考えようか。カードの絵、イラストはどうする?」
「絵描きの人に頼んで描いてもらう?」
「そうだな。それをどれくらい描いてもらう?」
「えっと……もの凄くたくさん?」
「そうだな。国中に普及させるにはもの凄くたくさんカードを用意しないといけないな」
「……魔石もたくさん必要だね」
「ああ。かなりたくさん必要だ」
これだけのやり取りでリリアにもある程度カード普及の難しさを分かったらしい。
確かにこの世界には魔法という便利なものはあるが、結局文明レベルは俺の前世の世界には敵わない。
カードを普及させる事が難しいのがその例としてちょうどいいかもしれない。
まずカードのイラスト、それを1枚描いてもらうまでは良いかもしれないがそれと全く同じものを何百枚、何千枚と描いてもらうのは人力では不可能に近い。
さらに言えばこのカードの小ささ。
手のひらサイズと言えばそこまで大きく感じない人もいるかもしれないが、1枚の精巧な絵を手のひらサイズに納めるのは非常に難しい。
前世ではイラストをパソコンでそのサイズまで縮小すれば済むがこの世界ではそんな便利な物はない。
手のひらサイズの紙に手のひらサイズのイラストを描くしかないのだ。
それを数十種類から数百種類。
SWは長い作品だからすでに数千種類を超えているだろう。
こういったチートと言ってもいい商売は現代技術、イラストを好きな大きさに調整できる、イラストを大量コピーできるなどと言ったチート技術のオンパレードでなければ販売まで生産できない。
こうして見てみるとマジでトレーディングカードって技術の結晶の様な気がしてきた。
そこからさらに新しいギミックとか、効果とか考えなければならないのだから頭が痛くなりそうだ。
強くし過ぎたらいけないし、弱いカードばかりでは面白くない。
本当に調整が難しいものだ。
「お兄様の世界って凄いんだね」
「文明的にはな。それに生産の問題がどうにかなったとしても普通の人達にまで普及する事はないだろうな」
「何で?何で普通の人達は遊ぼうとしないの?」
「まずは識字率、つまり文字の読み書きの問題だ。文字が読めるって言うのは実は一部の人達だけなんだよ」
「そうなの!?でも商人さんとか教会の人とか文字読めるよ?それに文字が読めないとどんなお仕事をすればいいのか分からないんじゃない?」
「ほとんどの人の仕事は口頭、つまり話を聞いてどんな仕事をするのか知るんだ」
「でもそれじゃ騙されちゃうんじゃ……」
「そういう悪い人の方が多い。でもほとんどの人が読めるようになってもあまり意味がないと思っちゃってるんだ。だから読み書きができない人が多い」
他にもう1つ問題がある。
それは単純に金の問題。
トレーディングカードゲームはどうしても資金がある者が有利だ。
いくつものパックが入った箱を大量に買える者は問題ないが、金が無くいくつかのパックを買うしかない資金力の低い人間にはその分レアカードが当たる可能性は低くなる。
カードショップで買えばいいという人もいるかもしれないが、確実に手に入る代わりにその金で何パック買えるか分からない金額を出さなければならない。
しかも商売だから次々とは行かなくとも一定の期間で新商品を発売し、買ってもらわなければならない。
彼らにそこまで遊びのために金をかけるかと聞かれれば、NOだろう。
だから国中にトレーディングカードゲームを広めるのは様々な問題により不可能と言っていい。
「だから簡単にはカードは普及できない。いろんな人の協力とかが必要だからね」
「ちょっと残念……いろんな人とできればもっと楽しいと思ったのに……」
「それはその通りだ。いろんな人が触れるからこそ意外なコンボが見つかったり、そんな使い方ありかっていう物が見つかったりする。それがないのは確かにつまらないな」
俺はそこまでガチ勢じゃなかったし、あのカードとこのカードを組み合わせれば面白くなるんじゃないか、みたいな発想もない。
ただ好きなカードを全力で扱える事が出来るよう考えていただけだ。
それが俺に出来る全力であり、凡人の限界だ。
「それじゃ……お父様とお母様も誘ってみる?」
「う~ん。2人とも忙しいからな、まずは普段一緒に遊んでくれるメイドとか執事とかに相手してもらう方が良いかな」
「うん!でもその分お兄様のカード色んな人に貸しちゃうけどいいの?」
「あ~……それはちょっと嫌だな」
「それじゃ私が頑張る!頑張ってお兄様よりも強くなる!!だから黄色以外の色んなマジックカード見せて!!」
そういうリリアに俺は本を貸してあげた。
山のようにあるカードを見てモンクーと一緒にあれこれ考えている姿は昔の俺を思い出す。
よくカード仲間とこんな感じでこのコンボはどうだ、このカードはどうだと相談し合ったものだ。
知り合いの中だけでもこうしてまたカードが出来て嬉しいな。




