食事休憩
バッドホッパーとオオヤタに捜索させているが、その間待ったりする理由もないの俺達もキメラを探す。
その間アラク達に色々話を聞いていた。
「へ~、冒険者のランク制度って結構多角的なんだな」
「昔は強いだけでランクはどんどん高くなっていったんだよ。でもその結果捜索とか弓使いとか支援してくれる連中の事を軽視する奴らが出てきて、その改善としてパーティー全体で評価されるようになったんだ。だから俺達全員でBランクパーティーとは言われているが、個人個人の力だけで見るとキメラを倒せるくらい強くはないんだよ」
「それじゃ個人の力だけで見たらランクを一つ落とすような感じなのかね?」
「全員が全員そうじゃないが……最近はそんな風に見られても仕方ないな」
チーム戦を重視するようになった影響という事か。
個人の実力が落ちるのはちょっと危険な雰囲気があるが、口出ししたところでいい改善案を出せる訳でもないしな。
それに戦闘に不得意なメンバーを正当に評価されるというのは悪い事ではない。
俺だってスピリット達は強いが俺自身は強くない。だから評価されないというのはある意味俺と同じ扱いを受ける事に繋がる。
実際そんな感じで問題が起きたからチーム全体で評価する仕組みに変化したんだろうしな。
そこでまた個人の実力主義に変わるかどうかは、その組織の考え方次第としか言いようがないか。
「それにしても……お前の連れているスピリット?って連中はどれくらい強いんだ?」
「分からない。だからゴブリンから始めてどれくらい強いのか確かめてたんだが、意外と相手にならなくってな。このブレイド1体だけで事足りた」
「ゴブリンの村を1体で潰すとか、どんだけ強いんだ?そいつ」
「まぁゴブリンくらいは楽勝で勝ってくれた方が助かるし、強いに越した事はないんだがな……」
本当にどこまで強いんだ?
ブレイドのBP1000はSWの中で最低基準だ。
てっきりこの世界ではゴブリンと互角くらいかと思っていたが実際にはかなり違うのでいい意味で予想を裏切られた。
だがそうなるとBP1000と同等の魔物の基準が欲しい。
一体どんな魔物がBP1000相当なのだろうか?
なんて思っているとアラクの仲間が「しっ」と言った。
「どうした?」
小声で聞くとそっとその方向に指をさした。
その方向を見てみると二足歩行の豚の魔物、オークが3匹居た。
「こういう時ってどうしてる?」
「避けるか戦うかって事か?正直に言ってキメラの存在を確認するまで戦闘は出来る限り避けるつもりだ」
「俺の目的はスピリット達の戦闘能力を計る事だからできれば戦いたい」
「……勝てるのか?」
「大丈夫でしょ」
俺はビエルジュに倒すように指示すると果敢に挑んでいった。
オーク達はビエルジュに気が付いたがビエルジュの魔法……あれ本当に魔法か?
なんか掌からキラキラ光るエフェクトが発射されオークは倒れた。
他のオークも棍棒で攻撃して来たがどれもエフェクト攻撃にあっさりと倒れた。
あれ本当に倒せたのか?
倒れるオーク達の前でどや顔をしているビエルジュだが本当に死んでるんだよな??
初めて見る戦い方に本当に倒したのか分からない。
「……おい。あれ魔法か?」
「さぁ?初めて戦わせたから何とも……」
でもどや顔しているし勝ったのは間違いない。
なので近付いてオークを確認すると確かに死んでいた。
呼吸してないから多分大丈夫……なはず。
「大丈夫そうだ」
そうアラク達に言うとアラク達も恐る恐る近付いてきた。
「本当に倒したのか?」
「呼吸してないから多分。どう倒したのかは分からないけど」
それが俺に言える精一杯。
倒したけどそのメカニズムは?っと聞かれたら何とも言えん。
アラク達も確認している間に俺も確認する事がある。
それはライフが増えているかどうか。
ビエルジュライフを削った時に俺のライフが回復する仕組みになっているが、ライフは増えていない。
単に魔物はスピリットと同じ扱いなのか、それとも他に条件があるのか、今の所は分からない。
「スゲーなこれ」
「外傷なしで倒したから滅茶苦茶価値あるぞこれ」
「どうする?解体するか?」
「解体してどうするのよ。解体中にキメラが襲ってきたら死ぬわよ」
解体か。
そういやアニメではスピリット同士の戦いだと負けると消えるか、爆散するのどっちかだったからこうして体が残るのも現実に合わせていると言っていいのかもしれない。
そう考えるとアニメって倒したって表現ハッキリしてたな。
「解体っててっきりギルドがしてくれるんだと思ってた」
「ギルドでも解体はしてくれるが解体料がかかる。それにオークだとほとんどの価値は肉だから持って行けない分は放置して他の魔物か獣の餌になるかだな」
「オークの肉って食えるのか?」
「特別美味い物ではないがな。ちゃんと処理すれば食える。俺達みたいな冒険者が旅の途中で食ったり、金のない奴が買って食うもんだ。貴族ならちゃんと農場で育てられた安全な肉を食ってるだろうさ」
「つまり価値は味じゃなくて安全性?」
「そんなところだな。やっぱり魔物と聞いただけ嫌がる奴は多いし、不安に思う奴もいる。だから魔物の肉は食えると知っていても口にするのは冒険者や貧民だけだ」
食えなくはないのか。
でも食えるって事は餌にもなるって事だよな?
「なぁ。こいつらを使ってキメラをおびき寄せる事って出来ねぇのかな?」
「おびき寄せるってこいつらを餌に使うって事か?」
「ああ。解体中はスピリット達に周囲を警戒させるし、お小遣い程度にはなるんじゃないか?」
「そりゃそうだが……」
「あとオークが食えるなら食ってみたい」
「チャレンジャーだなお前!?本当に貴族の子供なんだよな!!」
「本当に好奇心だ。あと単に殺してそのまんま放置するのは好きじゃない。食えるなら食って供養しちまおう」
「…………そういう事なら」
っという事でキメラをおびき寄せるための餌及び昼飯を確保できた。
彼らの解体するナイフさばきは見事な物でまるで服を脱がすような感じで身と皮を切り分けていく。
そして少し気になったのは牙と睾丸を回収していたところ。
「その牙と睾丸も売れるのか?」
「いや、牙はオークを討伐した証明。睾丸は精力剤として売れるんだ」
「うえ。さすがにそれは食いたくない」
「はは、ようやく子供らしい表情が出たじゃねぇか。安心しろ、オークの睾丸は薬にするのに色々手間が掛かるって話だ。焼いて食えばいいって訳じゃない」
「よくこれを薬に変えようと思ったもんだ」
「全くだ!!」
そんな感じで解体し、そのうち一匹のオークを焼いて食べる事になった。
「……何だ、少し硬いくらいで普通に食えるじゃん」
これがオークを食べた感想。
野生だからか少し筋肉質な感じがするが、別に不味いというほど固い訳じゃない。
ただ衛生上の関係かしっかりと火を通してパサついているのでタレをかけたい。
「本当に動じないのな。普通の奴だって怖がって食べない奴は食べないって言うのに」
「でも勿体ないだろ?せっかく食える物が目の前にあるのに食わないってのは」
「それだけは同意する」
そんな感じで5人で飯を食べながら休憩をとる。
それにしてもバッドホッパーもオオヤタもキメラを見つけられていないところを見るとデマだったのかもしれない。
「それにしてお前、本当に貴族の子供なんだよな?」
「その通りだが?」
「いや、子供にしては肝が座り過ぎてるって言うか、子供っぽくないんだよ。警戒心とかはほとんどないから素人ってのは分かるんだが」
「それは親にもよく言われてる。それに今の俺は色々焦ってるからな」
「焦ってる?」
「ああ。俺は10歳に神様から贈り物をもらえたわけだが、その力どれくらい強いのか全く分かってない。下手すれば家族を巻き込むかもしれないし、そうじゃないかもしれない。正体不明の力を持っている事に俺自身が怖がってるんだよ」
身近に居ない人間だからこそ正直に言えることもある。
こんな事両親に聞かれたらどんな反応をする事やら。
それを聞いたアラク達は意外そうな表情をする。
「あの力が贈り物なのは予想していたが、それを怖がる奴は初めて見た」
「俺だって剣や弓とかだったらただ自慢するだけだったかもしれねぇよ。でもここまで凄い事が出来る力を手放しには喜べないって」
「言われればそうだが……やっぱ子供が考える事じゃねぇよ。俺達もその力にあやかってる訳だしさ」
「その通りだ。本来食事は交代で取る物だ。こうして全員で食事をとれるのは君の召喚した使い魔が見張ってくれているおかげ、助かっている」
「そう言ってくれるとこっちも助かるよ」
なんて思っているとネクロキャットから警戒が入る。
よく分からない奴がこちらの様子をうかがっているらしい。
ネクロキャットの意識と同調すると、奇妙なネズミが居た。
ぱっと見は普通のネズミだが、角が一本生えている。
それと継ぎ接ぎの様な傷がある事も特徴的だろう。
それと同時にオオヤタからも連絡が入った。
森の奥深くの廃屋と思われる場所からキメラが現れた。
黒いローブを着た何者かと共に。
「釣れた」
俺がそう言うとアラク達は食事の手を止めた。
「見つけたのか?キメラ」
「ああ。オオヤタが見つけてくれた。森の深い所にある廃屋から出てくるのを発見した。しかもキメラの背に黒いローブの人間が乗った」
俺の言葉にアラク達はかなり驚いている。
どうやら予想される中で最悪のシナリオになるかもしれないな。




