カード効果、確認
「今どんな感じだ」
「キメラとローブは一直線にこっちに向かってる」
「一直線!?何でこっちの場所が分かるんだ!!」
「多分あいつが原因だろうな」
そう言うとネクロキャットが角が生えたネズミを咥えて現れた。
「このネズミも魔物か?」
「いや……こんなネズミ見た事ない」
「となるとこいつもキメラなんじゃないか?多分獲物を探す役って所か?」
ただの予想だが多分あっていると思う。
だが同時に何で今こちらに向かっているのかが分からない。
キメラ研究をしていると仮定して、その邪魔をしてくるものを発見したから排除しに来た?
それなら大型キメラだけでいいはずだ。ローブがわざわざ背に乗ってこちらに来る必要はない。
敵として排除するのであればキメラだけを仕向ければいい。
それなのになぜわざわざ一緒に向かってくる??
「そ、それじゃ早く逃げないと!!」
ジェニーがそう慌てて言う。
「そうだな。その方が良い」
どれだけの強さなのかは分からないが危険な魔物が向こうから来ているのだから逃げるべきだろう。
となるとまた選択だ。
「で、一緒に逃げる?」
「当然だろ!」
そう言いながらアラクが俺を担いで走り出した。
「え?ちょ!」
「いくらお前が凄い魔法使いでもな、子供置いて逃げるほど余裕がない訳じゃないんだ!さっさと逃げるぞ!!」
「いや、あいつの目的が分からない以上分散して逃げる方が――」
「そう言って戦うつもりだろ。さっきからスピリット達の力を試すのが目的って言ってたからな」
図星を指されたので言いよどむ。
「お前の考えとかは間違ってないだろうよ。危険かもしれない力を知っておきたいってのはな。でも危険じゃない位置で指示する事も出来るんだろ?だったら俺達は逃げてそのスピリット達に任せるのがいいんじゃないか?」
そう言われては反論できない。
俺だってそのキメラと共にいる奴と同じ事が言える。
安全な所に居てスピリット達を遠くから指示すればいい。
本当にそれで大丈夫かとみんなを見ると、大丈夫だと強い自信に満ち溢れながら答えてくれた。
「……分かった。ブレイド、お前は俺の護衛だ」
最低限の護衛を付けて俺はアラクと共に逃げた。
みんなの事はちゃんと感じ取る事が出来るがやはり不安は不安だ。
だがスピリット達にとって最も大切なのは俺の安否である事も感じられる。
それなら邪魔にならない場所にいる方が彼らも戦いやすいだろう。
そう思いながら俺はアラクに担がれながら近くの町まで逃げる。
その間キメラがこちらに来る事はなく、むしろスピリット達に向かって進んでいるようだ。
一体何を考えているのかさっぱり分からない。
その間に町に到着した俺達は町の中に入ろうとした。
「君達は……もう帰ってきたのか。キメラの痕跡は――」
「そのキメラがこっちに来てるって教えてもらったんだよ!」
「教えて?まさか遭遇したのか!?」
「違う!この子が魔法使いでその使い魔が教えてくれたんだよ!」
「魔法が使える子供?ってアレックス様!?」
町の門を守る騎士、その顔は意外にも騎士団の100人隊長だった。
「あれ?何でお前こんな所に居るの?」
「それはこちらのセリフです!!領主様が必死でお探しなっておられますよ!!」
「あ~ごめん。もうしばらく帰れない」
「帰れないって。家出などせず――」
「来た」
スピリット達の前にキメラとローブが現れた。
他の者には一切目をくれず、本当に一直線にやってきたようだ。
ローブの男はスピリット達を見て恍惚の笑みを浮かべる。
『素晴らしい……まさかこんな所にこんな素材があったとは。これでまた研究が、キメラを強くする事が出来る!』
どうやらローブの目的はキメラを強化するための素材探しだったらしい。
確かにうちのスピリット達はそういう目で見れば最高の存在かもしれない。
だが俺もどれだけの力を有しているのか分からないのにそんな簡単に倒せると思っているのか?
「アレックス様?話を――」
「今キメラと俺が召喚したスピリット達が遭遇。これから戦う所だから邪魔しないで」
冷たく言い放つと100人隊長は黙った。
俺はその場にあぐらをかき、意識を集中させる。
スピリット全員の視界を共有するのは難しいが、ちょっと工夫すれば楽に見える。
パソコンの画面を複数存在し、それぞれの画面がスピリット達の視覚や聴覚と繋がっている。
映画とかでハッカーが無数の画面の前に座ってパソコンの画面を見ているイメージだ。
これで直接脳に情報が来る前にワンクッション挟んで脳の処理が楽になる。
既にオオヤタもバッドホッパーもこの場に到着しており、正体不明の相手とどう戦うか考えている。
だがそんな中1体だけ余裕のあるスピリットが居た。
ネクロキャットだ。
ネクロキャットはあっさりと自分の役目を全うしようと俺に許可を求めている。
本当にそれでいいのかと確認すると肯定した。
…………これだから呪術は嫌いなんだ。
『さて、そこの猫は流石に小さすぎて素材にする事は出来ませんが、やはりゴーレムとあの巨大なカラスが欲しいですね。ああでも天使のような魔物も素材にすればどんな効果になるのか気になります。でもやっぱり――ゴーレムからいただきましょう!!』
そうローブが叫んだ瞬間キメラがロックゴーレムに襲ってきた。
ロックゴーレムはすぐキメラの肩を抑えるような形で攻撃を止め、メガラタスクが尻尾の拡声器で大音量を鳴らす。
流石に騒音には答えたのか下がった瞬間ネクロキャットがキメラに襲い掛かった。
キメラはあっさり過ぎるほどあっさりネクロキャットを倒した。
――これで終わりだ。
『ふん。ただの猫がキメラに勝てるわけ――なんです?それは』
ネクロキャットの効果、呪術発動。
発動条件であるネクロキャットが攻撃し、キメラは迎撃してネクロキャットを破壊した。
よってキメラはネクロキャットと道連れになる。
ネクロキャットの死体からネクロキャットの幽霊が現れ、改めてキメラを襲う。
キメラも迎撃に入るが相手は幽霊。すでに死んでいる存在にどれだけ爪を振るおうが、鋭い牙で噛もうが関係ない。
もう既に死んでいるのだから。
だがネクロキャットの攻撃は恨みとして残り確実に殺した相手を道連れにする。
ネクロキャットの幽霊がキメラの心臓があると思われる場所を引っかくと、キメラは少しふらついた後横に倒れた。
ビエルジュ。
『…………は?なんです今の?何でキメラが倒れているんです?何でそんな猫にキメラが負けたんですか!!分からない、意味が分からない!!なんで私のキメラがそんな猫なんかに――』
そうローブが発狂している間にビエルジュがローブに攻撃した。
先ほどのオークと同じように外傷はないのに倒れて動かない。
本当にどんな仕組みなのやら。
そしてネクロキャットは役目を果たしたからか淡い紫色の光となって消えた。
そしてフィールドからトラッシュにネクロキャットのカードが移動した事も何となく分かる。
これは思っていた以上に精神的にくる。
仲間を失った痛みとでも言えばいいのか、あるいは俺がその事を認めた事か、もっと言えば両方か。
なんにせよ気分最悪だ。
だが発見もあった。
ビエルジュがローブの男を倒した時俺のライフが1つ回復したのだ。
つまりビエルジュの祝福が発動した。
オークはスピリット判定だったがローブはプレイヤー判定を受けた事になる。
この違いは人間かそれ以外なのかどうか分からない。
終わったのならキメラとローブを持って町まで来て欲しい。
きっと何かの情報があるだろうから。
俺がそう頼むとロックゴーレムがキメラとローブを掴んでこちらに向かって移動を始めた。
他のみんなもこちらに向かってきている。
「……ふぅ。終わった」
「終わったってまさか勝ったのか!?」
「ネクロキャットのおかげでな。今ロックゴーレムがキメラとローブを掴んで持ってきてる。その後はそっちに任せる」
みんなの戦闘とネクロキャットが倒されたショックが意外とメンタルに来てる。
キメラとローブを渡したら家に帰って休もうっと。




