冒険者と出会った
ゴブリンの村で考えていると茂みから音が聞こえた。
生き残りかと身構えるとそこには武装した4人組が武器を構えながらゆっくりと姿を現した。
「おいお前!これはお前がやったのか?」
剣を構えた若そうな男性が言う。
「ああそうだ。お前達は」
「俺達は冒険者だ。お前はここで何をしている」
一触即発という雰囲気が正しいのか、お互いに正体が分からないため警戒し合う。
冒険者、確かフリーで魔物退治などを生業としている集団。冒険者組合に所属し、様々な依頼をこなす人達。
今回鉢合わせしたのはゴブリン退治のためだろうか。
それにしては随分警戒しているようだが。
「俺はこいつらの戦闘能力を確かめるための実験をしに来ただけだ。ゴブリンの村はお前達の獲物だったのか」
「違うが……そいつらは使い魔か?キメラじゃないだろうな」
「キメラ?何の事だ」
本当に何の事だろうと思っていると男性の仲間だと思われる女性が男性の手に手を置いた。
「もしかしたら本当に関係がないのかもしれない。それに堂々とこんな強そうな使い魔を従えてるのに実験でゴブリンを倒すとは思えない」
「……本当にキメラと関係はないんだな!」
「そもそもこの森にキメラがいる事すら知らなかった。武器を下してくれるのならスピリット達を下がらせる」
しばらくにらみ合いが続いた後、冒険者達は武器を下した。
俺も護衛としてブレイドだけ連れて行き、他のスピリット達はゴブリンの村の真ん中あたりまで下がらせた。
これで少しはまともに話せるだろうっと思いながら近付くと若い男性が言う。
「俺はアラク。そしてジェイクとランク、ジェニーだ。武器を向けて悪かった」
「別に良い。俺はアレックス。それからさっきの話詳しく聞いてもいいか?」
俺がそう改めて問いかけるとアラクは言った。
「この辺に来たのは1週間ほど前だが、冒険者組合でこの辺にキメラが出たという討伐依頼が来たんだ。キメラは非常に危険な魔物で獅子の頭、ヤギの胴体、尻尾は蛇の化物だ。そいつを村人が発見したというからその調査に来たんだ」
「なるほど。だがその魔物が出た事と俺と何の関係がある?ずいぶん俺の事を警戒していたみたいだが」
「知らないのか?キメラはどっかの狂った魔法使いが生み出した魔物って噂なんだぞ。今回もどっかの魔法使いが連れてきたとか、どこかの国が作って森に放ったとか、いろんな噂が出てる。しかも近くの村じゃ何度も獅子の頭を見たって情報も入ってたからな。それがキメラかどうかまでは分からないが、この森に獅子がいる時点で異常だ。そんな森に魔法使いの子供がいるんだからおかしいって思う方が自然だろ」
「なるほど。色々納得した」
もしかしたら父親はこの情報を持っていたのかもしれないな。
それに人為的に生み出したと言われる魔物が徘徊している時に足手まといの子供を連れていくリスクも高い。
あとは単にブレイド達の戦闘能力を計るのに探し出すとでも思ったか?
まぁゴブリンじゃ大した敵にならなかったからちょうどいいけど。
「そのキメラって奴の見た目は今言った姿で合ってるのか?人工的に生み出された魔物なんだろ?」
「頭が獅子というだけでまだしっかりと姿を見た訳じゃない。そればっかりは何とも言えないな」
つまり見た目に関してはまだ不明か。
オオヤタ、バッドホッパー。キメラと思われる魔物の捜索を頼む。他のみんなはさらに警戒を強めてくれ。
頭の中でスピリット達にそういうと全員から頷き返すような反応が来た。
「それで……お前多分貴族の子供だよな?魔法使いだし」
「その通りだが……何で貴族の子供ってだけで魔法使いだと思ったんだ?」
「だってそんなとんでもない魔法を使えるのは貴族しかいないぞ」
「そうなのか?でも魔法使いの中でも下の中だけどな。召喚士だから」
理由を言うと彼らは首を傾げた。
「何で召喚士だからって下なんだ?それだって魔法だろう」
「まぁその通りなんだが……ほとんどの貴族達は直接攻撃魔法を使える方が優れていると考えているらしい。まぁ実際俺の力だけで火を灯してもロウソク程度の火が限界だし、水も飲み水を生み出せるくらい。直接は戦えないからな。その事を劣っていると言っているのかもしれない」
「そうなのか?俺としてはこういう強そうな使い魔を召喚できる方が凄そうだが」
アラクはそう言いながらロックゴーレムを見上げる。
まぁロックゴーレムは大体5メートルくらいの大きさなので分かりやすい強さに見えるだろう。
だがこの世界の強い弱いの基準がまだ分からない以上本当に強いのかどうか分からない。
さて、こうなると次の選択だな。
1つは彼らと共に行動する事。
もう1つは彼らと別れる事。
メリットデメリットは分からないが彼らは悪人ではなさそうだから一緒に行動するのはいいだろう。
でも彼ら自身俺と一緒に行動したがるかどうかは分からない。
まぁこれは素直に聞けばいいだけだが、キメラに対しての情報ももっと引き出せるかもしれない。
あと単に彼らから見てブレイド達がどれくらい強いのか分かるかもしれない。
とりあえず聞いてみるか。
「後は……どうする?一緒にキメラ退治する?」
「キメラ退治!?しないしない!俺達はあくまでも捜索が目的だ。キメラ退治なんて出来ねぇよ」
「てっきり倒しに来たのかと思ってた」
「まだそこまでの段階じゃない。こっちだって命は欲しいんだ。キメラ退治なんてAランクの冒険者パーティーが討伐する対象だぞ。俺達Bランクパーティーは真偽の確認だ。もし本当に居たらギルドに連絡するのが仕事だ」
「Aランク……そんなのあるんだ」
「おいおい知らないのか?貴族といってもまだまだ子供だな」
何故かホッとしたような言い方をするアラク。
少し気になる言い方だが結局俺が聞きたいのは一つだけ。
「それで結局どうする?ここで別れてキメラ探しする?それとも一緒にやる?」
「……少し待ってくれ。仲間と相談したい」
俺の質問にアラクは仲間と相談する。
のんびりと待っていると決まったようでアラクは俺に言う。
「一緒に捜索してもらえると助かる」
「それじゃ一緒に探そうか」
こうして俺と臨時パーティーを組んでキメラを探す事になった。




