ライフ減少実験
共同研究という名目でやっと本格的な検証が出来ると喜んでいたら、先に家族会議から始まりました。
「それで、お前が年不相応の理由を話せると言っていたが本当か」
「ええ、まぁそうですね。話せはしますが……理解していただけるかどうかは分かりませんけど」
頭をかきながら父親に向かって言う。
まさか家族会議から始まると思ってなかった。
そんなに不自然でしたか?俺の今まで。
まぁそれでも全員興味津々なようなので前世の事やこの神様の贈り物について知っている事は全部話した。
前世での暮らし、カードが何なのか、神様からの贈り物の手紙の内容などを出来るだけ詳しく話した。
両親は理解しようとしているのか黙って聞き、リリアは理解できていないからかぼんやりとしている。
「――とまぁ俺にも分かっている事はこんな感じです。ご理解いただけたでしょうか」
「…………正直に言えば理解できた部分は理解できたが、異世界などにわかには信じられん。アーシェはどう思う」
「私も理解しきれていない部分はありますが、最初から貴族言葉を使えたこと、そして他の子供と比べて知能が高い理由がようやく分かりました」
「???」
妹に関しては何も理解できてないっぽい。
まぁその方が自然か。むしろ理解できてたら俺と同じ転生者じゃねぇの?とは思う。
ちなみに貴族言葉とは敬語の事である。
「しかし前世の事やその力の事、本当に全て話してしまってよかったのですか?」
「全てといっても結局自分で理解できている所までですから。これ以上は先ほど言ったように実験検証を繰り返さない限り何とも」
「うむ。魔法の事に関しては妻に一任する。それからメイド長、執事長はこの事を口外しないように」
その言葉でメイド長と執事長は頷いて答えた。
さて、理解してもらったうえでこれからの事も相談させてもらうぞ。
「それで俺の魔法に関しての勉強は許していただけるでしょうか」
「それは許可します。ただし共同研究ですから私と一緒に行います。それから普通の魔法に関しても私が直接指南しましょう。この方が都合がよさそうですから」
「なら俺はあと特に何か言うことはありません」
「本当に貴様は前世などという言葉だけを言うために集めたのだな」
「こういうのは先にぶっちゃけた方が良いと思うんで。あ~これで色々やりやすくなった」
肩の荷が下りた感じがするのは無意識にでも前世の事を隠さないといけないと思っていたのが原因だろうか。
あるいはこれから召喚に関して研究できる喜びか。
なんにせよ研究できるのだからこれから不慮の事故の様な物は事前に防ぐ事が出来るだろう。
「それで、あなたは今の所何を確かめたいと思っていますか」
「マジック、正確に言うと攻撃系魔法を使ったらどうなるのか。そしてその威力はお母様の目から見てどれくらいの威力なのかを教えていただきたいです。もしかしたら年相応、あるいは年不相応な威力が出るか分かりませんから。後スピリット達の戦闘能力を確認したいので魔物狩りにもいきたいです」
「攻撃魔法とスピリットの戦闘能力……確認したい事としては当然ね。確かに未確認の状態で使用するのは恐ろしいわ。でも魔物狩りに関しては……」
「許可しよう。ただし我が騎士団の魔物狩りに同行する形でのみ許可する。いくら前世で大人になっていたと言ってもこの世界では子供、いう事は聞いてもらう」
「分かりました。それでは今後よろしくお願いします」
良し。
これで戦闘実験も出来る。
スピリット達の戦闘能力が具体的にどれくらいなのか自分の目で調べてみたかった。
バッドホッパーがゴブリンよりも強い事は分かっているが、所詮ゴブリンだからな……もっと上位の魔物と戦って勝てるのかどうか確認したい。
俺の欲が少しずつ満たされていく感覚が非常に心地よく感じた。
――
早速次の日から魔法に関する研究が始まった。
まずは手軽な俺の方。
「マジック、『フレイムサイクロン』」
母親が魔法で作ったゴーレム、石で出来た人形に向かって攻撃系マジックを使った。
『名前 フレイムサイクロン
カテゴリー マジック
コスト 5
軽減 赤3
効果 【フラッシュ】相手のBP5000以下のスピリットを1体破壊』
フレイムサイクロンを受けたゴーレムはあっさりと爆散し両足しか残らなかった。
残っている足も爆炎で煤が付いているし、なかなかの攻撃力と言っていいだろう。
「お母様。今のは……」
「何で何で何で??召喚係でこんなに強いの出されたら本当に何でもありになる。魔力量という絶対値があるから連発出来ないけどいつでもこれが使えると考えると本当に危険すぎる。それにアレックスの話によればこれよりも強力な魔法やスピリットは存在するみたいだし、この攻撃が効かない存在の方が多いってどういうことよ。これで中級くらいってどんな世界よ」
どうやら母親は思考のかなたに行ってしまったらしい。
戻ってくるのを待ちながらフレイムサイクロンの威力を計測する。
あのゴーレムの頑丈さだけなら上級の魔物程度の防御力はあるらしい。
物理的、魔法敵にも防御力があるはずの魔物を爆散させるってかなり強力だな。
それでも弱点は当然手札にある事を前提としているので手札になければ使用する事が出来ない事。そして枚数制限も3枚までと決まっているのでどう頑張っても3発しか撃てない。
この辺はやっぱりスピリット中心に組む方が安全かな……
元々マジックデッキは極振りのマジックデッキしか使ってこなかったし、魔石管理もかなり大変。そもそもマジックを連発できるだけの魔石を生み出す事が出来るかどうか。それすら怪しい。
元々強力なスピリットを横に並べて勝つのが定石だし、マジックはあんまり重要視してないんだよね。
精々防御札に白マジックを何枚か持っておけばいいし、ライフ回復系マジックも強力だけどその場しのぎが多いからな……
何よりシンボル確保がないのは普通にメンドイ。
「攻撃魔法は今のだけ?」
あ、お母様が思考のかなたから帰ってきた。
「今使えるのはあれだけです。他の攻撃系魔法は手札にありませんから」
「使用制限があるのは流石の神もこの力を簡単に使う事を許さなかったという事かしら。それで他に確認したい事は?」
「俺のライフ減少効果ですね。あとブレイド達がどれくらい強いのか実戦形式で確かめてみたいです」
最大の謎であり確認しておかなければならない事。
それがライフ減少条件。
通常のゲームではスピリットの攻撃を食らった際にライフが減って魔石として使用可能になるがこの条件がよく分からない。
とりあえず今まで普通に生きてきてケガも病気もしてきた。
こうした言い方をすると不安に思うかもしれないが、転んで擦りむいたり、風邪を引いた事くらいはあるという意味。なので特に大きな怪我や病気にかかった事はない。
あるいはまだ神様から贈り物をもらっていなかったから、という点もありそうだがこればっかりは検証せざる負えない。
母親は躊躇いながら杖を俺に向ける。
「本当にいいんですね」
「これも必要な事なので」
「……分かりました。では初級魔法から行きます」
一応母親には俺に攻撃魔法を使うように頼んでおいた。
当たる程度では死なない初級魔法、当たったら大ケガの中級魔法、当たったら普通の人間は死ぬ上級魔法を段階ごとに使ってもらう。
といっても初級魔法の時点でライフが減ればその時点で実験は終了。物理実験に入る。
さて、どの段階でライフが減るのか実験だ。
「ストーンショット!」
石の銃弾のような魔法を使って攻撃して来た母親の魔法は俺に当たる前にバリアの様な物が現れ俺の身を守った。
そして本を開いて確認すると俺のライフが1つ減っている。
残りライフ4つ。正しい状態だ。
「大丈夫でしたか!」
「大丈夫です。でもほとんど死なない初級魔法でもライフが減ったとなると命の危険性に関係なく攻撃して来たと判断すればライフが俺の命の代わりに身を守るのかもしれないな。日常生活で発揮しなかったのは攻撃の意思が無かったからか?それとも自分の行動だから?検証したいけどこれは難しいか……それじゃ次、騎士の方お願いします」
そう言って前に出てきてくれたのはこの領地で一番のベテランである騎士団長だ。
その騎士団長は躊躇いながらも木刀を構えた。
「若様、本当によろしいのですか」
「俺自身の命を守るための準備だ。どうしても確認しておかないといけない。嫌な役割を押し付けて悪いな」
「いえ、だからといって他の者に任せる訳にもいきません。では参ります」
そう言って騎士団長は少し息を吐いた後勢いよく木剣を振り下ろした。
するとさっきと同じようにバリアが現れ俺の身を守った。
木剣はバリアに当たってへし折れてしまったのを見るになかなかの威力だったことは分かる。
今のが人を殺せるくらいだったのか、大怪我程度だったのかは分からないがまたライフが1つ減った。
これでライフは残り3つ。
「若様!ご無事で何よりです」
「そういうわりには思いっきり振り下ろしてくれたみたいじゃん。良い実験になった」
そう言いながらマジックを使う。
『名前 シャドーエリクサー
カテゴリー マジック
コスト 3
軽減 紫2
効果 【メイン】自分の魔石を1つライフに置く。
【フラッシュ】スピリット1体BP+1000』
手札にあるのは1枚だけなのでライフは1つしか回復させる事が出来ないが今は大丈夫だろう。
となるとライフ回復特化の黄色デッキも作っておいた方が良いな。
黄色はBPは低いがマジックやライフ回復の効果を持つカードがそれなりにある。
それにデッキ交換をした際にライフに置いた魔石もなかったことになるのかどうか気になる。
そう考えると次は黄色のライフ回復デッキに変えるのがいいか。
プレイヤー対象にしている効果の実験にもなる。
後で早速組んでおこう。
「アレックス。その瓶は何です?」
「これもマジックで召喚した物です。自分の魔石を1つライフに置くという効果なのでライフを1つ回復する事が出来ます」
ビーカーの中にある紫の煙を飲み込むと魔石が1つライフに移動した。
これで残りライフ4つ。
つまり俺がバリアで守られるのはあと3回のみ。
安全第一で考えるのであればライフの増加は必須事項と言える。
「先ほどの防御障壁、あれはあなたの魔法ではないのですね」
「あくまでもゲームのルールを適応した結果でしょう。ただあの障壁はあと3回しか使えないと俺は思っています」
「……それもルールなのね」
「そうです。こればっかりは覆す事は出来ないでしょうから。でもさっき見せたようにライフを回復させる方法はありますから心配しないでください」
「……分かりました。今度はあなたの魔法をこちらが模倣できるかどうか検証に付き合ってもらいます」
「はーい」
元気な返事をしながら言ったが、中身はほぼ成人しているのと変わらないと分かっているからか呆れた様な表情をする。
俺もこの世界の魔法が使えるのかどうか、確かめてみたいからな。




