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カードの時代の流れ

 父親に頼んでこの森にどんな魔物が棲みついているのか資料を借りて見てみると意外と多い。

 ゴブリンとかオークとか、強い奴だとオーガとかもいるらしい。

 そして発見された事のある魔物の1体としてキメラやドラゴンなども存在する。

 まぁドラゴンに関しては空を飛んで行ったのを見たと言うだけで住み着いていたわけではなさそうだが。

 過去100年分に資料によればこの森にどんな魔物が住みついているのか、しっかりと数を把握している訳ではなさそうだ。


「やっぱりこういうのはギルドに聞いた方が分かりやすいかな?」


 あるいはこっちと変わらないのか、ふたを開けるまでは分からない。

 それでもどんな魔物が居たのか記録されているのは良い事かな。

 どんな資料もないよりはマシ。


 そう思いながら資料をしまうとアバタードラゴンが俺の頭の上で欠伸をする。

 俺が召喚したがこいつは懐いているんだかそうでないのか分からない。

 基本的に頭の上で居眠りばかり。くっ付いているのだから懐かれていない訳ではないだろうが……だからと言って基本的に何かしてくる事はない。

 アバターバードの方はノアに懐いている感じだし、召喚されたから一応一緒に居るくらいの気持ちなんだろうか?


 うん……マジでワーカーホリック気味かもしれない。

 何か頭を切り替えて仕事以外の事を――


「お兄様!雪!雪降ってきた!!」


 ノアがはしゃぎながら外を指さした。

 窓越しに雪が降ってくるのが見える。


「お~本当だ。あまり積もらないと良いな」

「えー、積もった方が色々できるのに?」

「色々って寒いだろう」

「雪遊びだって楽しいよ」


 いつまでたっても子供だなっと思いながら気分転換にはちょうどいいのかな?と思った。


 ――


 翌日。


「雪遊びー!!」

「やっぱ寒」


 庭に出てリリアがはしゃいでいるのを隣で見守っている。

 何と言うか思っていた以上に積もっているし、雪かきで道を作るのだけでも大変だったのによく遊ぶ体力あるな。


「お兄様お兄様!!あれやって!!」

「あれって……どれ?」

「雪のお家!!」

「あ~、この量ならできるか」


 子供の頃に作ったカマクラ、ノアはあれが好きだったな。

 庭中の新雪を集めて固めて大きな山を作る。

 そこにスコップで人が入れる程度に穴を掘れば完成。


「出来たぞ~」

「それじゃお兄様、バトルしよう」


 そこまでセットでしたか。

 本音を言えば炬燵が欲しかったな……

 暖房器具もそんなに多くないし、大抵思いつくのは暖炉だろう。

 焚火をするのも悪くないかもしれないが、七輪とか作れないだろうか?

 でもあれどんな粘土使って焼いてるんだろう?


「はいはい。寒いから一戦だけな」


 という事で始まったバトル。

 リリアは相変わらずモンキーパニックだ。


「リリアもたまには他のデッキ組んだらどうだ?」

「えー、でもこのデッキが1番好きだから使いたいもん」

「それは分かるが色々な戦法を使えるのもデッキの楽しみの1つだろ。俺みたいに何でもかんでも組むんじゃなくてもいいからさ、せめて他の色を主軸にしたデッキ構築してもいいんじゃないか?」


 リリアは結構頑固だ。

 今のカード事業の成功させたいと言う意思もそうだが、とにかく本気でやりたいと思った事や本気で好きになった物に対して依存度が高いと言うべきか。

 まぁ大会でネタデッキに走り回っていた俺の言えた義理ではないが、それでも少しくらい違うデッキを回して気分転換してもいいのではないかと思う。


「でも……モンクーちゃん達の事裏切る事にならない?」

「遊びで裏切りもへったくれもないだろ。そんな事言ったらデッキ1つしか持てないって」


 この辺は前世の頃普通のおもちゃとして扱っていた記憶があるからかもしれないが、それにしてもリリアは気にしすぎな気がする。

 そんな事を言ったら一生デッキ1つしか持てないって。

 アニメのキャラじゃないんだぞ。


「でもお兄様だって好きなカードを主軸にして戦ってるでしょ」

「そりゃそうだ。でも色ごとに好きなカードや効果は変わる。青ならデッキ破棄が好きだから」


 ぶっちゃけデッキ破棄って便利なんだよね。

 相手が使えるカードを減らせるし、制限カードを落とせればそれだけで有利になる。

 まぁトラッシュにカードを送る事が前提のデッキ、紫デッキだと危険な事になるかもしれないが使う前にカードが無くなっていく恐怖と緊張感はかなりのストレスだ。

 あと速攻系も意外と多いんだよな、青。


「む~」

「それに同じデッキばっかりだと俺が詰まらん。たまには他のデッキ組め」

「……分かった……」


 何て言いながら戦って俺が勝った。

 デッキ作りのため屋敷に戻っても俺の部屋にいるリリア。

 そしてノアは微笑ましそうに見ている。


「モンクー以外のデッキを組むなんて珍しい」

「俺がモンキーパニック飽きたって言ったら渋々デッキ組み始めた。モンキーパニックでないと強くないっていうのも危険だしな」

「それって良くない事なの?」

「前世の感覚だと良くない。言ったろおもちゃだって。もし本気で勝ちたいとなるとどうしてもその時代によって強いデッキ、強いカードっていう物が存在するからな。時代の波に乗れないと弱いってのは俺が良く味わったもんだ」


 学生だったために強いカードを手に入れられるかは運しだい。

 カードショップで強いカードを手に入れる事も出来るが、強くて人気のあるカードはどうしても高い。

 結局財力がものをいう環境だったから子供より大人の方が強いのは自然だったな。


「時代の波。もしリリアがカード事業を成功させたらそういうのを意図的に作る必要もある。どれだけ思い入れのあるカードだったとしても、その時代にあったカードと言うのはどこにでもある」


 これはSWだけの話ではない。

 あらゆるカードゲームが通るどうしようもない物だ。

 そのせいで消えていったカードゲームもあったな……


「もし時代に合わないカードを使ってたらどうなるの?」

「ほぼ運試しみたいな感じになる。俺も前世の頃子供の頃にやっていた時と比べて格段に高速化したし、効果もかなり増えていった。今までだったらコスト4でBPが高すぎるだろとか、この効果がたったのコスト4!?みたいな事もあったからな~……」


 こればっかりは本当にどうしようもない。


「リリアはもし成功したらそれの流れを作る側になるのね」

「そういう事。買ってくれた人達を楽しませて、飽きさせないっていうのは本当に難しい。飽きられたら事業が破綻するし、かと言ってパワーバランスを崩壊させてもいけない。この辺の線引きは本当に難しいと思うよ」


 実際SWだけじゃなくて他のカードでも廃れていった効果やカードが存在する。

 SWだと『共鳴』と言うカード効果があった。

 その効果は『共鳴』と書かれたカード1枚につき効果を強化するという物。

 例えば赤の破壊系カードなら『共鳴』のカード1枚につきBP破壊効果を+1000するとか、青ならデッキ破壊枚数を1枚増やすとか、そんな感じ。


 でも現在の横展開をするよりも速度、つまり強いカードを先に引いて一気に相手を倒す形が主流になってしまったため自然と廃れた。

 同時期に生まれたカード効果はまだ生きているため、本当に残念だ。


「……ねぇ。本当にあの子にカード事業が成功させる事が出来ると思う?」


 そう聞かれると分からない。

 そもそこの世界の識字率が低ければ紙やインクだって安定供給できていない。

 そんな中で本当に成功するのかと聞かれれば、分からないと言うのが正直な気持ちだ。

 だからと言って最初から無理だと言って諦めさせるのもおかしな話だと思うが。


「こればっかりはリリアと、俺達の頑張り次第なんじゃないかな」


 デッキを作るリリアを見つめながらそれしか言えなかった。

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