魔物の生息について
王都の方にも洗濯機と乾燥機を搬入するするメイド達からマジで感謝された。
やっぱり冬だと水仕事は過酷なのはどこでも変わらない。
不具合が見つかった場合は王都にいる職員に修理を任すように言っておいたので問題だろう。
さて次は一体何を作るべきか……
もうすぐ子供が生まれると思うと1円でも多く稼がなければならない気になる。
そりゃ金がない訳ではないけど、どれだけの余裕があるのかよく分かっていない。
今俺が稼いだと言えるのはタイプライターとコピー機くらいか。
タイプライターは識字率が高い所でしか売れてないし、コピー機に関しては完全に業務用。しかもかなり規模のデカい所でしか死傷されていない。
となると本当に一般的にも利用される物は洗濯機と乾燥機が初めてといってもいいのかもしれない。
乾燥機に関しては時間をかけても自然に干す方が安上がりと思う人も居るだろうけど、洗濯機を選ぶ人は多いだろう。
次に作りたいのは正直に言えば冷蔵庫と冷凍庫。
でもこれが本当に軍事利用されないかどうかが不安であり、ぶっちゃけかなり危険な橋を渡る気がする。
でもはっきりと言うと軍事転用できない技術の方が少ないのかもしれない。
食糧の運搬も、通信も、コピー機も、やろうと思えばすべて軍事的に利用できる。
そう思うと考えすぎと言えるかもしれないがやっぱりその辺は自重すべきだと思う。
贈り物をもらう前までは火薬とかそういう物も作るべきなのかと考えた事もあったが、やはりこの世界に合わせて魔法で戦うのが常識の枠に入っているし、奇異の目で見られたり無駄に大きな期待をされる事もない。
…………いや、やっぱり考えすぎだな。
こんな考え方をしていたら何もできない。
それなら前世の事なんてすべて忘れてこの世界に合わせて生きていく方がよっぽど賢い。
ただ便利に生きたい、楽して生きたいと言う考えだけで既に行動してしまっているのだからもう遅い。
直接的な武器を生み出さなければいいだろう。
あと科学兵器の温床になりそうな物。
「お帰りなさい。みんな喜んでた?」
「ああ喜んでたよ。やっぱりみんな寒い時に水仕事はしたくないってさ」
冗談半分に言いながらノアが出迎えてくれる。
少しずつ寒くなって来たのでコートを着るようになったのだが、何故かノアが俺のコートを取ってくれる。
こういうのはメイドとかがしてくれる物なのに何でノアがするんだろう?
「それはみんなそうでしょうね。寒いでしょうから一緒にお風呂入りましょ」
「ん。ありがとうな」
そう言って一緒に風呂に入ってイチャつき、何故かアバター達が俺達の事をじっと見る。
「何だよお前ら。何か伝えたい事でもあるのか?」
なんて聞くが誰も答えない。
本当に何がしたいのかがよく分からない。
俺を監視しているだけが目的なのか、それとも俺ではない誰かを監視しているのか、本当によく分からない。
こいつら一体何なんだ??
「この子達本当にあなたに懐いてるわね」
「何でそう見えるんだよ」
ノアがゆっくり風呂に入りながら言う。
濡れた手でアバタードラゴンの顎の下を撫でると気持ちよさそうに目を細める。
そんなノリで他のアバター達の事も撫でたりして可愛がっているが、こいつらが精霊王の分霊である事も忘れてはいない。
普通に考えれば何か目的があって近付いてきたと言う方が正しいと思うんだけどな。
「だって他のメイドや執事達にはほとんど無反応らしいわよ。こうして近くに来る事すらないみたいだし」
「そうなの?」
「ええ。ご飯を用意するときもあまり関心を持たれないようで、こうして触れさせることもないみたい」
「それは亀含めてか?」
「亀の子は……全く気にしてないみたい」
亀がダッシュで逃げる事はやっぱりできないか。
出来たら亀じゃなくてスッポンかもな。
「…………冬って暇すぎない?」
「毎年こんなものでしょ。雪のせいで交通や輸送もマヒするし、畑で野菜を育てる事も出来ない。冬の間は冬眠する動物も魔物も多いし、残っている魔物はみんな強い。だからこうしているのが良いのよ」
「……魔物か」
そう言えば定番とも言えるとの戦いとか全然してないな。
まぁ冒険者って職業その物がぶっちゃけると人気がない。
そりゃ他の作品みたいに一獲千金を狙って冒険者になる人も居るが、それは贈り物が武器だった人達の場合が多い。
そうでない人はぶっちゃけそれ以外の仕事が出来なかったとか、田舎から出てきて都会にいい仕事が無かった場合だけだ。
なのでほとんどの人達はその場しのぎの危険な仕事、やらずに済むならやならい方が良いと思っている。
それに肉体的な問題もある。
騎士にも言える事だが全力で走り回ったり、戦ったりするにはどうしても肉体的な時間制限がある。
つまり老いだ。
年を取って無茶すらできないようになったら収入は0になり生きていけない。
ベテラン冒険者だったら冒険者ギルドに入って若手の指導みたいな事も出来るみたいだがそれはごくわずか。ほとんどは田舎に帰って畑仕事をするか、頑張って別の仕事を見つけるらしい。
現実が最大の敵と言う奴だ。
「そう言えば魔物の生態とか調べてなかったな。この辺にどれくらいの魔物が居るのか知らんのは良くないんじゃないか?」
「お義父様が冒険者を使って調べていたから教えてもらえばいいじゃない」
「それは分かるんだけどさ、それでも自力で調べられるよう手を使っておくべきだろ。外来種とか怖いし」
「外来種?」
「簡単に言えばこの辺に居ない魔物がこの辺にやってくる事。それで生態系がめちゃくちゃになったら大変だろ?そうならないように調べておくべきなんじゃないかってふと思っただけ」
「……そういう見方はした事が無かったわね。ただ危険な魔物を討伐できればいいと思ってたから」
「前世の世界だとその対象が狼で倒しまくってヤバい被害出たことあったからな。似たような事が起きなければいいけど」
「狼?狼が減って何でヤバい被害が出るのよ?」
「草食動物だよ。簡単に言えば狼が減ったせいでシカなどが大繁殖して草木を食べ尽くす勢いで増え過ぎたんだよ。前世の世界基準だと家畜の大量生産が可能だったからシカを倒して食べるって事も減ったから余計に増えて国中の草がシカに食べ尽くされるんじゃないかって言われてたこともある」
「それは……確かに大事ね。全然イメージできないけど」
「まぁこの世界基準だと畜産も安定しているとはいいがたいし、現状貴族や王族しか食べてないからな。普通の人達は今も狩りをして肉を得ている。だから今すぐそうなるという事はないが、頭の片隅には残しておいた方が良いかもしれない」
獣はなくとも普通に弓矢や罠で野生動物を捕まえて食べる事は出来るだろう。
だが前世と同じだけの生活基準になれば話は変わってくる。
怖いから、人間にとって不都合だからの理由で生態系を壊してきたのが人間だ。この世界の人間にだってその素質は十分あるかもしれない。
俺1人でどうこうできる問題ではないが、気にかけておくべきだ。
「……ねぇ。それなら本当に調べてみない。あなたが気のすむまで」
「え?良いのか?」
「もちろん直接あなたが調べるような事は出来る限りしないで。冒険者が魔物に襲われて死亡する可能性は非常に高いし、今は冬。凍って死んじゃうかもしれない。だから出来るだけ危険を遠ざけた状態での調査は許す」
まぁ当然の条件だろう。
そうなると父に今までの資料を借りれるのなら借りて、あるいは複写してもらっておくべきか。
後はやはり冒険者ギルドに依頼するのが手っ取り早いか。
ただ生態調査となると人を使ってどこにどんな生物がどれくらいいるのか計測する必要がある。
長期的なプロジェクトなのは当然だが、俺が居なくなった後も続いていくかどうかが不安だな……
「とりあえずできる所からやってみますか」
そういう他なかった。
今は冬で誰も動きたがらない。
強い魔物だけではなく環境も厳しいのだから誰も受けてはくれないだろう。
目指すなら……雪が解けた春辺りなのかな?




