スキンシップは大事
書斎から戻ってくるとノアが随分熱心に母親の話を聞いていた。
「そういう時は徹底的に甘えてもいいの。あの子の場合女の子には本当に甘いから、今は甘えてもいい。でもちゃんと終わった後は今度はこっちから甘やかすの。今までありがとうございました、そのお礼として受け取ってくださいって感じで」
「なるほど、確かにそれはならあの人も……」
「何の話だ?」
俺がそう聞くと肩を震わせて勢いよく見る2人。
「お、お帰りなさい。あの人から何を言われたの?」
「いや、妻が妊娠して分からないことがあったら相談しに来いって感じの話を聞かせてもらってただけです。お母様のつわりは酷かったと聞かされたので」
母親に正直に言うとなんだか黒歴史を掘り返された様な、苦々しい表情をする。
「ええそうなのよ。初めて妊娠した時は不安とかも影響してつわりが酷くって、ついあの人に……ね」
「なんだか情緒不安定だったとか」
「本当にそう。寂しさとか気持ち悪さとかがごちゃ混ぜになってそれが心をどんどん弱くなっていってあの人に意味もなく当たっちゃったりしてたから、迷惑だったわよね……」
「そういうのもあるから俺とノアの関係が上手くいっているか確認したかった感じですね。ノアも似たような話ししてたのか?」
「まぁそんな所よ。私の場合あまりつわりとか酷くないけどね」
何か誤魔化すような雰囲気。
特に変な話はしてなかっただろうに、俺には聞かせられない話という事か?
「リリア。あの2人何話し合ってたんだ?」
「あ~……あとで分かると思うよ。早ければ今夜でも」
なんだか呆れたような言い方をするリリア。
今夜にも分かると言う所には気になるが、今でなくてもその内内容が分かるなら別にいいか。
「そうか。それで他の連中は…………」
シルフィードとレムルシャールはいつも通りしてたが、アバター達がなんか増えてないか?
ドラゴンとバードは確かに召喚した。
しかし彼らの近くに蝶と亀と蛇、後何故か王都にいるはずの猫もいる。
「お母様?こいつらは……」
「ああこの子達?よく分からないけど最近ずっと庭に居たのよ。最初こそ驚いたけど、いつの間にか庭に住み着いてたし、何かイタズラする訳でもないから屋敷の中にもいるようになっちゃって。でもその猫は王都にいる子よね?連れてきたの?」
「連れてきた覚えはないのですが……」
「それにこの子達精霊みたいだからぞんざいに扱う訳にもいかないから……」
まぁそりゃそうだろうな。
というかこいつら全員精霊王の分霊だよな?
猫に関してはどこにでも現れる事が出来るとでもいうのか?
「なぁお前ら、こんな所で何してるんだ?」
そう問いかけると6体のアバターは俺の顔をじっと見てまた6体で顔を合わせる。
なんか会議でもしてるみたいだけどそういうのはもっとそれっぽい雰囲気がする場所でやってくれないか?
何で我が家の、しかも俺の部屋でやってるんだよ。
それ言ったらノア達が何で俺の部屋で話してるんだ?って話にもなるんだが。
「マスター。彼らはただ報告会をしているだけだ。大した事はしていない」
「シルフィード、でもこいつらあれだろ?全員精霊王の分霊なんだろ?」
小声で母親に聞かれないように聞くと俺に合わせて小声で話してくれる。
「そうだ。そう簡単に会えないからこそ今ここで話し合っている」
「何でここなんだよ?もっとそれっぽい偉そうな会議室でやれよ」
「精霊王は滅多にその場から動くわけにはいかない事情もある。というか少し動いただけで精霊世界に大きな影響が出る、だからこうして分霊を使った会議の方が都合がいい。あとは単にみんなここにいたからというのも大きいだろう」
何その偶然みんないたからついでに会議しようかみたいなノリ。
そんな軽いノリで良いのかと思うがもうしているのだから文句も言えない。
とりあえず満足するまで話し合え。
その後も家族全員で飯を食い、他愛ない話題で盛り上がる。
学校ではどうとか、私生活はどうとか色々聞かれたがまぁ大した話題ではない。
両親からも辺境伯仲間のあいつが入学するから気にかけて欲しいとか、仲良くするように言われたくらい。
そしてアバター達は何か固まって一緒に居る事が多い気がする。
精霊王同士気が合うのだろうか?
なんて思いながら風呂入って歯を磨いてあとは寝るだけだと言う所でアバター達も俺の部屋に入ってくる。
「いやお前らも俺の部屋に泊まるんかい」
ツッコんだが全く気にせず部屋にあるソファーの上に集まってみんなで丸くなる。
ただ土の精霊王と思われる亀だけが上れなそうにしていたので持ち上げてソファーの上に置く。
重さは普通の亀と変わらない感じ。ここに住むならなんか用意した方が良いかな?
「お待たせ」
なんて思っていたら今度はノアが入って来た。
「ノア。妊婦なんだからもちょっと温かそうな恰好したらどうだ?」
ノアの服装はネグリジェ。もう肌寒さを感じるのにその格好は体に悪いのでは?
「それじゃ隣に居て」
「はいはい」
いつも通り一緒に寝ようとしているといつもと違いノアは何故か甘えた様子を見せてくる。
もしかしてと予想は出来るが、まさか……
「なぁノア」
「何あなた?」
「もしかしてエロい事したいのか?」
「当然」
当然と言い返されるとは思ってなかった。
「え、何で??危なくない?」
危ないと言うのは俺達ではなく腹の子の事。
妊婦とそういう事をするのは良くないのでは?
「大丈夫。こういう時の方法を教えてもらったから」
「まさかリリアが後でわかるって言ってた話ってこれの事?」
あまりにもくだらない内容。
いやくだらないで片付けていいのかどうか本当に分からないけど、子供安全の方が優先されるべきでは?
「でもあなただって期待してるじゃない」
「そりゃシたいシたくないだけだったらシたいけどさ、本当に大丈夫?流産したりしたら後悔しきれないんだけど」
「だからそのためのテクニックを教えてもらったのよ、お義母様から」
「そこが一番複雑。てかマジでスんの?」
「スす。ヤるったらヤる」
ノアの目が据わってる。
何と言うか今までずっとごちそうを目の前に我慢していた猛獣の様な、そんな視線を向けてくる。
「いや本当に何で?今までもイチャイチャしてたのに」
「イチャイチャじゃ足りない。もっと愛し合いたいしずっと我慢し続けるのが辛かった」
「本番なしじゃダメ?」
「ダメ。もう我慢できない」
そりゃ俺にだって性欲はあるし、エロい事したいと思った事も何度もありますよ。
それでもね、やっぱりお腹の中の子が不安じゃん。何かあったらと思うとさ。
だから俺自身も我慢していたし、ノアも我慢してくれていた。
でも我慢しきれなかったか……10ヶ月は長いとは思ってたけどノアが先に我慢できなくなるとは思ってなかったな……
なんて思っているとふとアバターバードが俺の隣に居た。
「何してんの?」
まさか見学しに来たわけじゃないよな?
っと思っているとノアを、正確に言うとノアの腹をじっと見たら俺の事を見返す。
「やっぱりするなって?」
首を横に振る。
「それじゃ……オッケー?」
そう確認するとうすぼんやりとノアの腹が光っているように見える。
これはもしかして……腹の子は守られているという事か?
それを聞こうとアバターバードに聞こうとしたらソファーに戻ったのか視界に居ない。
それなら都合がいいと思いノアを転がして逆にベッドに押し倒す。
「あれ?アレックス?」
「我慢してたのは俺も同じだって事分からせてやる」
そう言うとノアはみだらにこれから起こる事を予想しながら笑った。




