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実家に帰って来た

 テストも無事に終わり帰省する準備を進めていく。

 今回は使用人達全員屋敷に残り、来年また使えるように管理してくれる。

 なので今回帰るのは俺とノア、リリアだけ。もちろん護衛である精霊達もみんなついてくるが。

 そして終業式を終えた次の日には実家に帰る。


「ところで本当にシルフィードとレムルシャールだけで大丈夫なのか?」

「問題ない。人を運ぶくらい何てことない」

「わたくしの場合はみなさまを安全に運べる氷の乗り物を作るだけですので大きな負担ではありませんので」


 との事。

 あとレムルシャールについて意外な事実が判明したのだが、より正確に言うとほとんどの人型精霊みんな飛べるらしい。

 飛ぼうとしないのは土とか大地に関する精霊達で、自分達の力が遠ざかる事を嫌がるかららしい。

 つまり土の精霊以外はみんな空飛べる。


 しかしシルフィードのように他の者を飛ばすとなると風精霊の専売特許と言っていいくらいの物らしい。

 やはり自分自身が飛ぶのと誰かを飛ばすのでは意味がかなり違く、非常に難しいそうだ。

 ちなみにシルフィードも一度に複数人を運ぶのは大変なのでレムルシャールに氷の乗り物を用意してもらう。

 乗り物と言っても自走するのではなく、ただ馬車の様な感じであくまでも乗る箱だ。


「本当にこういう形でいいんですか?」

「細かい所は……シルフィード、どうだ?」

「大体大丈夫だ。この形も知識から?」

「そうだね。前世の世界だと飛行機は普通に金払えば誰でも乗れるものだったから」


 3人乗りの小さな飛行機のような形に作ってもらった。

 形状はジャンボジェットに似せているが小さすぎるので本当に子供が乗るおもちゃのよう。

 それに自走する訳でもないからタイヤとかないし、エンジンもない。

 その本来必要な物が備わっていないから余計におもちゃっぽく見えてしまうのかもしれない。


「お兄様の世界じゃこれが普通に飛ぶって本当?」

「ほんとほんと。空飛べば地上の遮蔽物とか無視して直線移動できるような物だからかなり普及してた。それでも1つ1つがかなりデカいから個人で持っているのは稀だけど」

「こういう物が普及していたと聞くと改めて文明の差という物を見せつけられるわね。この形の意味は?」

「ほとんど風の抵抗を受けないためだな。速くなれば速くなるほど音や風も大きな壁になる。だから速度を求めるのであればそういう目に見えない壁を切り裂けるように頑丈に、そして少しでも抵抗を受け流せるような形を求めていった。今回はそこまでスピード重視じゃないからこれでも十分なはずだ」


 ぶっちゃけシルフィードが飛ばす負担を少しでも軽減出来ればそれでいいのである。

 それに本気で軽減するなら座るじゃなくて腹ばいになる方が良いだろう。

 でもそれは今のノアには非常に厳しい格好なのでさせる訳にはいかない。

 あと女性的に腹ばいになるってどうなんだろう?嫌なのかな??


「で、いけそうか?」

「行ける」


 という事であとはシルフィードに任せて空をぶっ飛んで行くのだった。


 ――


「ただいま~」


 フライトが終わり実家の門の前に着陸した俺達。

 門番達も最初は驚いていたが氷が透明ですぐ俺達の姿が見えた事で持っていた槍をすぐに下ろした。


「お、お帰りなさいませ。アレックス様、リリア様、ノア様。また奇妙な帰り方をしましたね」

「ノアを長旅に付き合わせるわけにはいかないからな。出来るだけ早く来た」


 そう言いながらノアの手を取り、リリアとも手を握って3人無事に帰って来た。

 屋敷に入ると母親が俺達を抱きしめながら出迎えてくれる。


「お帰りなさいあなた達!冬に帰ってくると言うから驚いたのよ。途中寒くなかった?」

「その辺りは大丈夫です。レムルシャールもいますし、シルフィードも風を避けてくれましたから」

「それよりもノア、今のあなたは妊婦なのだから少しでも体の事は気にかけておきなさい。せっかくの赤ちゃんなのだから」

「はい。必ず無事に産んで見せます」


 あまり気を張る必要もないと思うが、母は子供大好きか?

 俺達を育てた時にも感じてはいたが子煩悩なのは間違いない。

 リリアが殿下との婚約を蹴った時も文句を言わず、むしろ約束を破ったとして王室に食って掛かろうとしたと後から父に聞いた。


 それは置いておいて、やはり貴族となると後継者、子供は重要視されるのだろう。

 家督制度のような物が貴族の中にもあるのかどうか分からないが、息子が生まれれば次につながるし、女の子なら政治の道具にできる。

 普通の貴族ならそう思うだろうがヘキサグラム家では少し違う。

 男が生まれようが女が生まれようがこの領地と国境を守る事さえできればそれでいい。

 それが国への貢献であり、貴族としての誇りだ。

 だからぶっちゃけ王系への忠誠=国境を守る事と考えているから娘であっても、王家に嫁がせるよりは婿を連れてきてほしいと言う気持ちの方が強い気がする。

 まぁ今回は王家の方から婚約話を持ってきたから断り切れなかっただけだけど、もう向こうから約束破ったから気にしなくていいし、出来れば婿を連れてきてほしいなって感じかもしれない。

 これはあくまでも予想だけど。


 そして屋敷に入ると父親も待っていた。


「よく戻って来た。温まると良い」


 言葉は少なめだがノアを気遣っている雰囲気はする。


「アレックス。後で書斎に来てくれ」

「はいお父様」


 なんだかさっきから言葉が少ないような……

 でも何か嫌っているような雰囲気はないし、一体なんだろう?

 気にはなるが先にノアとリリアを部屋に送った後改めて父の書斎へ。


「お父様、アレックスです」

「入れ」


 短く言うが普段からこんなに短かったか?

 多くを語るタイプではなかったがここまで無口でもなかったはずだが……

 何て思いながら対面する形でソファーに座るが……何も言ってこない。

 何で??と思いながらも待つとようやく口を開いた。


「…………上手くいっているか?」

「……上手くとは?」

「夫婦生活の事だ。リリアもいるしその、不便をかけていないか?」


 ああ、新婚だから妹が邪魔とかそんな風に考えてたのか?


「そういった事は一切ありません。ノアもリリアと一緒に居る事で楽しそうにしていますし、女同士話が弾む事もあるんでしょう。なので特に不便とかはないですね」

「……そうか。上手くいっているようで何よりだ」


 そう言っていきを吐き出す姿は正真正銘安堵のため息。

 一体何をそんなに不安視していたのだろうか?


「お父様。いったい何をそんなに心配していたのです?」

「いや、なんだ。妻の時は色々大変だったからな、それで余計な気遣いをしただけだ」

「余計でもないと思いますが、俺自身ノアがあまりにもケロっとしているので驚きました。知識では女性は妊娠中色々大変だと聞いていたので」

「妻はそうだった。特につわりが酷くてな、肉や魚だけではなく少しでも匂いの強い物を口にすると戻してしまってな、さらに言えば精神的にも不安定になり、寂しいからそばにいて欲しいと言ったと思ったら今度は近付くなと言われたり、理解しようとしたが非常に難しかった」


 やっぱりそういう人も居るんだな。

 だがそう考えると本当にノアは体質なのか、あのアバターバードのおかげなのか分からないがいつもと全く変わらない。

 きっと世のつわりが酷かった人達にとって羨ましい環境だろう。


「なるほど、今のところはないのでご安心ください」

「それからもう1つ。妻がそちらに行っても問題ないか」

「え、お母様がですか?それは色々大丈夫なのですか?」

「ノアが初めての出産になるから少しでも手助けがしたいと言っているのだ。向こうにも産婆が居るのだから大丈夫なのではないかと言いはしたが、それでもこういう時女同士でないと分からないことがあると言われては反論し辛くてな。だからそちらでは大丈夫なのかどうか確認するように言いはした」

「なるほど……その辺りはノアと相談してから決めましょう。手伝ってほしいと言われた時はお母様にも手伝ってもらおうと思いますが、ノアが嫌だと言ったら残ってもらいます。ちなみにお父様はどうするおつもりで?」

「私は当然ここに残る。仕事の事もあるし、当主がそう簡単に長時間領地を放っておくわけにもいかない。だから王都でのことはそちらに任せる」

「承知しました」


 本当にただ心配していただけでよかったな。

 とりあえず両親には元気な姿を見せながら平和に過ごそう。

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