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シルフィード、無双

 陛下にシルフィードの事を伝えようと駆け付けると、少し意外な光景があった。

 陛下とお妃さまがいるのは良いとして、殿下とクロエス様が一緒に居る!!

 リリアはその光景に目をキラキラさせているが、それよりも伝えるべきことを伝えなければ。


「陛下、少々よろしいでしょうか」

「どうした。そちらから声をかけてくるなんて珍しい」

「うちのシルフィードがやらかしました」

「詳しく」


 流石に精霊がやらかしたという言葉に陛下も真剣な表情になる。

 で、内容を伝えると大きく息を吐き出した。


「何だ、そういう事か。出場するくらい構わない」

「え、良いんですか?」

「構わん。ただし魔法が使えない者に対して魔法は使わないで欲しい。それから魔法も初級のもの限定にしてらえないだろうか」

「それでもいいかシルフィード?」

「もう少しマスターの前で私がしっかりと騎士である事を伝えたいが……まぁいいだろう。しかし1つお願いが」

「申してみよ」

「マスターからもらった武器は使わせていただきたいのですが」


 そう言って大事そうに双刀カザグルマを大事そうに抱きしめるが、それ本当に大したアームじゃないからな?ぶっちゃけもっと強いアームあるからな??


「それくらいは構わん。ただし今回は武闘会。風の魔法で吹き飛ばすだけというのは盛り上がりに欠ける。なので出来るだけ武器で戦ってほしい」

「承知しました!これでマスターに私が立派な騎士である事が証明できます!!」

「立派な騎士なら勝手にエントリーしないでほしかったな~」


 なんて思いながら俺達は後にする。

 そして部屋を出た後、リリアがすぐに俺に言う。


「それよりも!殿下がクロエス様と一緒に居たよ!!これって前進したって事で良いのかな!?」

「さぁな。前進してるのならいいんだが」


 というか前進してもらわないと困る。

 これ以上殿下に問題起こされては困るし、こちらにも被害が広がったらと思うと怖くて仕方がない。

 もしあれが仕事ではなくただ仲良くなって一緒に観戦してるのであれ嬉しい事この上ないが。


「前進してると良いな~。クロエス様家のため~家のため~ってずっと言ってたから、もし家とは関係なくお互い好きになって一緒になったら素敵なのになー」

「まぁそりゃそうだな。さて、俺達も観戦するか?シルフィードの試合」

「ええ!私が立派な騎士である事を証明しましょう!!」

「張り切り過ぎて他の方々を吹き飛ばさないようにね」

「もちろんですとも!!」


 シルフィードがやる気満々なのにちょっと不安が残るが俺達は観客席に向かった。

 もちろんシルフィードは出場選手側に行くのでここでお別れ、手を振って「頑張ります!!」じゃないんだよ。むしろ手加減してやるべきなんじゃないの?

 そう思いつつ貴族席と言う貴族用の席に座らせてもらい観戦する。


「全く。武闘会を観戦するつもりなかったんだけどな」

「まぁたまにはいいんじゃない。こういうのも」

「せっかくシルフィードさんが頑張るって言ってたんだから応援しないとダメだよお兄様」

「そりゃ分かるんだけどね~」


 明確に予定を決めていたわけではないが、あまりにも突然参加すると決められれば戸惑うのも無理はないと思う。

 軽~く陛下が宣言をし、武闘会が開始される。

 ちなみにこの武闘会収穫祭が行われている間は毎日行われる。

 今日は一般参加、いろんなところから来た腕自慢達が陛下の前で戦い賞品を手に入れようとする。腕のある者はたまに騎士団に身売りする事もあるらしいからスカウト目的の場でもある。

 そして明日は騎士団内で招待された騎士や、他の領地からうちの領地の騎士が強い事を教えてやれ!!みたいなノリで騎士同士の戦いも行われる。

 そして最終日の3日目に学生同士の武闘会が行われ、現在の貴族達がどれほどの物なのか見られる。


 さて、解説した後に早速予選が行われる。

 予選ではバトルロワイヤル方式であり、20人くらいが一気に戦い勝ち残った者が次の試合に進める。


 選手達は軽そうな装備だったり、普段の服装とそんなに変わらなそうな冒険者もいる。

 そんな中にシルフィードがいたが、やはり目立つな。

 ビキニアーマーと言うのもあるがほとんどが男性と言うのも目立つ理由だろう。

 参加者の中にはシルフィードの事を見て鼻の下を伸ばしている参加者もいる。


「あいつら……なめてかかると瞬殺されるぞ」

「見ただけじゃ精霊だなんて分からないでしょ。戦ったら分かるかもしれないけど」

「戦っても分からないんじゃないですか?だってシルフィードの見た目は女性ですから」


 本当に見た目だけの問題だろうか?

 何て考えてる間に試合は開始した。

 ちなみに勝利基準は戦っているステージから落下、あるいは気絶となっている。

 ぶっちゃけ明確に負かすにはステージから落とすのが最も分かりやすいがどうなんだろうか?


 そう思っている間にも大乱闘は既に始まっており、混戦状態が見られる。

 そんな中シルフィードは……めっちゃ動き回っていた。

 いつもと違い風の力を使ってはいないが、それでも純粋な足の速さで相手を翻弄しながらカザグルマで相手の足を狙い続けている。

 というかあの超前傾姿勢どうやってるの?

 アスリートだって無理そうなほぼ地面との水平を維持しながら走るってどんな筋力してるの?


 姿勢が低すぎる事、そして純粋な速さによって防御を固めてきた全身鎧の選手達はみなシルフィードにあっけなく転がされる。

 転がされた後はと聞かれれば、蹴って転がして場外にしている。

 いや人間の体に合わせている分凹凸があるはずなのに、何であんな綺麗に転がせるの?それにこの時代だと多分鉄製だろ?普通に重いのにどうやって転がしてるの??


 なんて思っている間にも速度を生かした戦い方でどんどん相手を転がしていく。

 冒険者と思われる軽装の人も戦ってはいるが、なんか想像以上にカザグルマを使いこなしている事であまり問題ない。

 俺だって最初は両端に刃がついてるのってロマンあるよな~なんて思ってたけど、実際には槍の最大の利点である長距離攻撃が微妙で、その原因こそが両端に刃があるせいで片方に思いっきり先を持つのが危険だからという理由だ。


 槍で例えると分かり辛いのなら、バットで例えてみよう。

 思いっきりフルスイングをするとき、少しでもバットを長く持つ方が遠心力も味方してより力が強くなる。

 簡単に言えばこんな感じ。

 しかしカザグルマの構造上両端に刃があるせいでバトンの様に中心を持たないと非常に危険だ。

 だからただの長い棒のように端っこを持って相手を叩くと言う槍の最大のメリットを潰してしまうのだ。


 潰して……いるはずなんだがな。

 シルフィードはカザグルマをバトンの様にくるくると回しながら相手に攻撃し、その珍しさか戦った事がないからか対応にかなりてこずっている。

 というか足りない遠心力を回転速度で補ってるの普通に脅威じゃない?

 グルグル回し過ぎて風車って言うよりは扇風機のファンとかそんな感じだよ?指突っ込んだから刃が無くても斬り落とされるレベルじゃない??


 そのせいかカザグルマに当たった人達は悶絶しており、足を抑えて苦しむ人が圧倒的に多い。

 これ魔法使わないが全然ハンデになってないんだけど。


「シルフィードってあそこまで強かったの?」

「あれでも大精霊の1体です。そもそも精霊が人型を保つ事そのものが長い時間力を蓄えていた証拠とも言えます。人間相手に苦戦する事はありません」


 レムルシャールもこの結果は当然だと言っている。

 そして当然このブロックはシルフィードが勝ち残った。


 見た目の良さや圧倒的な勝ち方からか観客からの声援も凄い。

 これマジで後から正体が精霊でしたって言い難いよな。

 言う気は全くないけど。

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