64:やるなら今だ。今晩だ。
翌日。
プラサナス城滞在五日目。
世の中では日曜日。
当然、今日は視察も何もない。
私も日中の予定は、何もない。
だから本当はまだ眠りたいが……。
なんとか目をこじ開け、起き上がる。
スノーのことも起こし、着替えを行う。
オリエンタルブルーの裾の長いワンピースに着替え、白いベールをつける。いつも通り、首に十字架のペンダント。
スノーの用意も終わると、朝食をとるため、部屋を出る。
既に歩き慣れた廊下を進みながら、不思議な気持ちになる。
今晩、廃太子計画を実行する。
その実感が、なかった。
でもゴーストは退治したし、あとは計画を遂行するのみ。
ここで動かなければ、アズレークだって苛立つはず。
それにゴーストはすべて退治したので、私への信頼度は高まっている。
眠りの香を渡しても、疑われることはないだろう。
やるなら今だ。今晩だ。
「おはようございます、聖女オリビア」
「おはようございます、王太子さま」
アルベルトは三騎士のうち、ミゲルとルイスを連れている。
ミゲルとルイスは、マントは外したいつもの軍服姿。アルベルトは白シャツにインディゴブルーのジレに、ヒヤシンスブルーのクラヴァットと同色のズボン。そして茶色の革のロングブーツと、今日も爽やかな装いだ。
「昨日は途中で部屋へ戻ってしまい、すまなかったです。実は皆さんの戦闘を見ている最中に、体の不調が出てしまって……」
「そうだったのですね。それで、今は大丈夫なのですか?」
「はい。小ホールを出てしばらくすると、落ち着きました。一晩寝て、なんとかいつも通りに戻りました」
そう言ってアルベルトは微笑むが、それは不調状態のいつも通りであり、かつてのような元気な彼の姿ではない。
「スノー、王太子さまの不穏なオーラは今、どんな感じ?」
スノーはすぐにアルベルトを見て、私を見る。
「少し広がっていますが、昨日の状態から大幅な変化はないですよ、オリビアさま」
「そう。それなら安心だわ」
朝食会場となる部屋に着くと、そこには既に領主ヘラルドが着席していたが、私達が入っていくと、大急ぎで椅子から立ち上がった。
「王太子さま、聖女オリビアさま、おはようございます! 昨晩は途中で退席することになり、大変申し訳ございませんでした」
領主ヘラルドは、申し訳なさそうに頭を下げる。
するとすぐにアルベルトが応じる。
「問題ありません。かくいうわたしも、途中で部屋に戻りましたから」
「! そうだったのですね。それで無事ゴーストの方は、退治できたのでしょうか……?」
領主ヘラルドが、アルベルトと私の顔を順番に見た。
アルベルトは、笑顔でルイスを見ながら返事をする。
「それは問題なく。このルイスが朝食をとりながら、皆さまに昨日のゴースト退治の様子を、お聞かせしますよ」
「おおお、そうですか。ぜひお願いします」
そう言うと領主ヘラルドは、皆に着席するよう勧める。
皆が席に着くとすぐに朝食が始まり、ルイスが昨晩のゴースト退治の様子を語りだした。
ルイスの話を聞いた領主ヘラルドは、小ホールに50体近いゴーストがいたことを知り、目を丸くしていた。壁に描かれた絵やシャンデリアに傷はないが、床をかなり汚し、傷をつけてしまったことを、私が詫びると……。
「50体ものゴーストを退治いただいたのです。なんの文句がありましょう。ホールの床はそろそろ張り替えも検討していたところなので、丁度良いです。お気になさらないでください、聖女オリビアさま」
今回もまた怒られずに済んだことに、ホッとする。
朝食の後は一旦自室で身支度を整え、皆で礼拝に参加した。
礼拝にはマルクスも参加していたが、まだ欠伸をかみ殺している。
朝食もとっていないだろうし、その姿を見ると大変だと思わず同情してしまう。
そんなこんなで、午前中が終わった。
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次回は明日8時に「終わる……のだろうか?」を公開します♪
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