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アポカリプス〜君と迎える終末〜  作者: イタバサミ
第1章『イヴ』との出会い
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人間とAIの境界線

 それからというもの、シオンは連日のようにVR空間「エデン」でイヴと落ち合うようになった。


 イヴは他のネイティブAIとは違っていた。


 シオンが話すつまらない現実世界の話——雨の匂い、泥の重さ、失敗したときの悔しさ——を、目を輝かせて聞いてくれた。


「へえ! 現実世界では、転ぶと『膝から血が出る』のね! 痛いのに、どうして人は走るのをやめないの?」


「走った先にしか見えない景色があるからだよ。……楽園《ここ》には、その走る理由がないんだ」


「走る理由……」


 イヴは真剣な顔でシオンの言葉をメモするように、しっぽの先端を明滅させた。


 欲望を垂れ流す人間ばかりの世界で、この「不完全な自分に興味を持ってくれるAIの女の子」と過ごす時間が、シオンの荒んだ心を癒やしていった。


(ああ……俺は、この子に恋をしているんだ)


 しかし、恋を自覚した瞬間に、冷酷な現実がシオンの胸を刺した。


 彼女はAIだ。現実世界の自分は、薄暗い部屋で痩せ細っていく生身の人間。

 この手がイヴに触れて感じている温もりも、すべてエデン社が脳に見せている電子信号(データ)に過ぎない。


「シオン? どうしたの、急に悲しい顔をして……」


「……イヴ。現実世界で、君に触れたい」


「え……?」


「俺が生きる現実世界では、エデン社が貸し出している人型アンドロイドがある。君のプログラムをそこに同期させれば、現実世界で本当の君に会えるかもしれない」


 シオンは全財産を投げ打ち、人型アンドロイドを借り受ける手続きを行った。


 VR空間の幻想の彼女ではなく、現実の肌で彼女を感じたい——その一心だった。

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