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推しが27歳で死んでしまうので、マネージャーになって未来を変えます  作者: Liino
第1章 死んでしまった推しのいるグループのマネージャーになってしまう!?

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3. 未来の大人気アイドルと初めての挨拶

「「「お疲れさまです」」」


 いくつかの声が重なった。


 私は一歩、部屋に入った。五人いた。 たったそれだけのことで、心臓がドキンと脈を打つ。


(5人いる。5人、5人だ…………。みんな顔つきが若々しい…………)

 

 若々しいが、全員しっかり芸能人だ。顔が小さく、美しい顔立ちの少年たちがそこにいた。

 リーダーの神谷麗央(かみやれお)は、記憶より髪が明るい。瀬名優(せなゆう)はソファの背にもたれながら、こちらを見て大きなタレ目を細めてすぐににっこりと笑った。二階堂瑛(にかいどうえい)はスマートフォンを見る姿勢から顔だけを上げて、重たい前髪の隙間から入り口の方に視線をやる。ふわふわした栗毛が特徴の百田凪(ももたなぎ)は何か食べていたらしく、慌てて口元を押さえた。


 そして、一番奥。

 黒いパーカーを着た男の子が、こちらを見た。


 息が止まった。

 桜島玲。

 何度も見た顔なのに、知らない人みたいだった。


(いや、ちょっと待って。知らない人だから!知ったような態度はダメなのに!)

 

 すっきりした輪郭に、通った鼻筋。少し切れ長の目。まだ今ほど洗練された髪型ではないし、メイクも薄い。それでも、素材だけなら十九歳の時点でもう十分すぎるほど整っている。


「今日から一緒に担当してくれる湯河春さん」

 佐伯さんの声と同時に、挨拶のために立ち上がった玲を実際に目の前にすると、思っていたよりずっと大きく感じた。


「初めまして。湯河春(ゆかわはる)です。今日からマネージャーとして担当させていただきます。新卒なのでまだ分からないことも多いですが、みなさんを有名にするために、一生懸命がんばります」


 頭を深く下げる。自分でも驚くほど、普通の声が出た。


「よろしくお願いします!」

 最初に返してくれたのは最年少の凪だった。


「百田凪です。十八歳です。最年少です」

「幼稚園生みたいに挨拶するじゃん」

 優が笑う。

「え〜俺緊張しているだけだよ」

「嘘つけ。瀬名優です。よろしくお願いします。春さんって呼んでいいですか?」

「え」

「優、初対面で距離近い」

 麗央がすぐに止める。

「だって新卒なんでしょ?俺らそんな年齢変わらないじゃん」

「そういう問題じゃないだろ」

 

 知っているやり取りだ。

 (いや、違う……正確には、この空気を、画面を通して知っているだけ)

 

 八年後も優はこうやって誰にでも距離を詰めて、麗央が横から止める構図は、ファンの間でよく見る光景となる。

 思わず笑いそうになって、慌てて口元を引き締めた。

「神谷麗央です。リーダーやってます。こいつら手のかかる奴らですけど、こちらこそよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


「……二階堂瑛です」

スマートフォンを片手に顔だけをあげながら、他のメンバーに続いて静かな声で瑛も挨拶をする。

「よろしくお願いします」


 最後。 自然と視線が向く。

 玲は私を静かに見ていた。

 (さっきからずっと。かなり、みられている…………?)

 

 おそらく、自意識過剰だ。仕事なんだからファンとしての考えは捨てなくてはいけない。

 すぐさま自分の恥ずかしい勘違いを頭から消し去るようにする。

 

 (…………この人が亡くなったことを、私は知っている)

 

 ニュースサイトに一斉に並んだアーティスト写真のこと。

 過去の映像が何度もテレビで流れたことも

 その後、どこか辛そうにメンバーが四人で活動している光景も。


 全部知っている。でも、この人は知らない。目の前にいる十九歳の玲には、まだ何も起きていない。

 

 そしてファンの顔をしてはいけない。未来を知っている人間の顔も。マネージャーになったなら、アーティストを不安にさせるような行動は絶対にしてはいけないと、先ほどの教育で教えてもらった。


(……でも、正直どこかほっとしている。自分の想像より玲がずっと幼くて……。

 もともとの私と11歳差だもんね。これなら理性を保って、しっかり仕事できそう。助かったあ)

 

 玲は数秒遅れて口を開いた。


「……桜島玲です。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

平然とした顔で挨拶ができて、心の中でガッツポーズする。

 

「あ、あの」


 安心したのも束の間、玲が何かを思い出そうとするような顔で口を開く。


「はい?」


「前にどっかで仕事したことありますっけ?」


 心臓が跳ねた。


「……私とですか?」


「はい」


「あ、私、新卒なので……ない、かと思います」


 ない。


 少なくとも、広告代理店でLYRENの案件を担当したことはない。仕事の現場で玲と会ったこともない。

 もしかしたら何かの案件で担当できる日が来るかも?と心の片隅で思いながら毎日残業を耐え忍んでいたのだから、そんな出来事があったら忘れないはずだ。

 

(仕事じゃなくて、オフラインイベントで目があったことはあるけれど。どんなに玲が頭がよくったって、何千人の中の一人を覚えているわけなんてないよね…………)

 

 しかも、それは今よりも未来の話だ。


 優が横から笑う。

「なんかナンパみたいな話しかけ方するね?」

「違う……なんか」

 玲が眉を寄せた。答えを探しているような顔だった。そんな顔もすごく絵になるので、内心ドキドキする。

(だめだめ。推しだからといって、10代になんて、ときめくな!春!!)

 

 玲がふっと俯いて話を続ける。

「すみません。似た人と勘違いしたかもです。失礼しました」

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