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推しが27歳で死んでしまうので、マネージャーになって未来を変えます  作者: Liino
第2章 これから起こる未来を知っている、アイドル運営

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18. 第一回LYREN定例企画会議 ②

「ゲームしたいです!」

「俺ね、ハワイ旅行がいいな〜」

 優が発言したと思ったら、ほとんど間を置かずに凪まで続き、麗央が「おい、お前らちょっと待て」と笑いながら二人を制した。


「一個、リーダーの俺からルール。やりたいことを言うときは、それをやったらLYRENにどういう良いことがあるのか、理由も一緒に言うことな」

「えー、急に難しくなった。春さんより先生じゃん」

「お前らが自由すぎるからだよ」


 開始早々、会議室に笑いが起きる。

(……やっぱり麗央に任せて正解だったかも)


 私だったら「企画意図までセットで考えてください」と、そのまま仕事の言葉で説明してしまった気がする。同じことを言っているのに、麗央が言うとちゃんと五人の会話になる。話をまとめるというのは、ただ結論を出すことではなく、その場の空気を壊さずに同じ方向へ向けることなのかもしれない。


「じゃあ優。ゲームをすることでLYRENにどういう良いことがありますか?」

「えっ、俺から?うーん……五人の仲の良さが伝わる?」

「疑問形かよ」

 麗央がすかさず突っ込む。


「でも、それはあるんじゃない? ゲームって性格出るし」

 それまで静かにしていた玲が口を挟んだ。


「ほら! 玲も! 玲もやりたいって言ってます!」

「やりたいとは言ってないけど」

「じゃあ玲はどういう案がいい?」

 優に振られると、玲はすぐには答えず、机の上に置いていたペンを指先で転がしながら少し考えた。


「...前に春さんに言ったやつは?」

「前?」

「曲選ぶやつ」

「あ! そうね、そうね!」

 私はすぐに思い出して頷いた。


『五人で曲選ぶのは?』

『曲?』

『一人一曲、他のメンバーにやってほしい曲を選ぶとか。俺が瑛に踊ってほしい曲選んで、瑛が俺に歌ってほしい曲選ぶとか』

『それもいい!』


「あれ、私もみんなに聞いてみたかったんです。メンバーが、他のメンバーにやってほしい曲を選ぶ企画です。例えば玲さんが瑛さんに『この曲を踊ってほしい』って選んで、瑛さんは玲さんに『この曲を歌ってほしい』って選ぶとか」


「あ、それ面白そうじゃん」

 麗央がすぐに頷く。

「自分では絶対選ばないような曲が来るかもしれないし」

「そう。それがいいと思って」

 玲も小さく頷いた。

(ダンス以外にはあまり興味がないって言ってた玲が、こんなに乗り気なの、やっぱり嬉しいな……)


「俺らって、歌とかダンスのイメージもそれぞれある程度決まってるじゃないですか。でもメンバーなら、普段見てて『こっちもできそう』って思うこともあるし」


「えっ!例えばどんなところですか?」

 今日はできるだけ五人に話してもらおうと思っていたのに、玲が自分から企画について話しているのが嬉しくなってしまい思わず身を乗り出して発言してしまった。

(....でも、メンバー同士だからこそ気づけることがあるのかもしれない。それなら、私も知っておきたい)


 玲は少し考えてから、隣に座る瑛へ視線を向ける。

「例えば……瑛って歌のイメージ強いけど、意外とダンスちゃんと踊るから、俺なら踊ってほしい曲選ぶし」

「え、ちゃんとって何」

 瑛が眉を寄せた。

「リズムの取り方とか。褒めてるつもりだった」

 玲が淡々と表情を変えずに答える。


「あっ、はいはい! 俺、玲に可愛い曲やってほしい!」

 優が勢いよく手を挙げた瞬間、玲の顔が分かりやすくしかめられる。


「…………」

「まだ曲言ってないじゃん!」

「お前が俺に選ぶ可愛い曲は絶対嫌だ」

「偏見すごくない?」


「じゃあ俺は優くんにめちゃくちゃ静かなバラード歌ってほしいです」

 今度は凪が手を上げてさらりと言った。


「何で?」

「普段ずっとうるさく喋ってるから。ギャップってときめき要素じゃん。みんな大好きでしょ?」

「待って、俺そんなうるさいっけ?そんなことなくない?」

 優が全員を見回した瞬間、ほんの一拍だけ部屋が静かになる。その沈黙だけで十分答えになっていたらしく、優自身が先に吹き出した。

「あ、たしかに今も俺しか喋ってないわ!」

 自分で自分に突っ込む優につられて、私も笑ってしまった。


「じゃあ一個目、曲の企画書いとくね」

 麗央が立ち上がり、

【①メンバーが選ぶ、他のメンバーにやってほしい曲→披露】

 とホワイトボードへ書き足す。


「優はゲーム?」

「ゲーム! 理由は五人の性格と仲の良さが伝わるから!」

その下に、【②五人でゲーム】もホワイトボードに付け加えられる。


「じゃあ次、凪」

「俺ね、ハワイ旅行がいいな〜」

「だから理由は?」

「ハワイで五人の仲の良さが伝わります」

「今の時点では却下」

 佐伯さんが首を振りながら横から即答した。


「えええ、まだ会社の予算確認してないじゃないですか!」

「確認しなくても分かる」

「じゃあ国内旅行」

「交渉始めるなよ」

 麗央が笑う横で、凪はまだ諦めきれないのか「温泉なら……」と小さく呟いている。


「でも、ロケみたいなのはいつかやりたいですね」

 楽しそうなやり取りを見ているうちに、また私もつい口を挟んでしまった。


「五人だけで外に出た方が、普段の関係性も見えそうですし」

「春さんが味方してくれた!」

「あ、ごめんなさい。ハワイの味方はしてないです」

「国内ならいいんですか?」

「予算次第かと……」

 そう言いながら、確認するように佐伯さんを横目で見る。


「先生じゃなくて急に会社の人になった」

 凪がまた、ふにゃっとした笑顔を浮かべる。その顔を見ていると、つい何でも許したくなりそうになるから危ない。


「じゃあ旅行系は、将来的な候補として一応残しとこうか」

 麗央がホワイトボードの隅へ小さく【ロケ・旅行】と書き、その横に「予算」と付け足した。


「次、瑛は?」

「俺?」

「何かやりたいのある?」

 瑛はすぐには答えず、机に頬杖をついたまま少し考え、それからゆっくり口を開いた。


「……別に、そんな企画っぽいことたくさんしなくてもいいと思う」

「どういうこと?」

「普通に五人で喋ってるところ撮るとか」

「それだけ?」

「それが一番普段に近いし。ファンの人って、俺らが今みたいに喋ってるところとか、楽屋で普通に話してるところってあんまり知らないでしょ。こういう会議もカメラ回しといて、出しちゃ駄目なところだけ後で切ってもらえばいいんじゃない?」


 一瞬、麗央が感心したように瑛を見る。

「お、瑛えらいな。ちゃんと理由まであるじゃん」

「何だと思ってたの」

「『特にない』って言うかと思ってた」

「失礼」

 また笑いが起きる中、麗央が三つ目を書き足した。


【③五人の活動ビハインド】

(あ、それは確かにいいかも)

 何か特別な企画をしている姿だけではなく、その仕事を作っている途中まで見せる。二〇二六年では珍しくもない形式だけれど、今のLYRENにとっては、五人の関係性を知ってもらうにはむしろ一番良い方法かもしれない。


「じゃあ凪、ハワイ以外でもう一個」

「えっさっき案出したじゃん!なんで!」

「旅行は企画としてほぼノーカウントだから」

「ひどいなあ」とつぶやき、凪がホワイトボードを眺めながらしばらく考え込む。ふわふわした栗色の髪が、首を傾げるたびに小さく揺れた。


「……メンバーが、他のメンバーを紹介するとかは? すぐ見れる短い動画で」

「紹介?」

「自己紹介って、自分で自分のこと言うの難しいじゃん。でもメンバーが紹介するなら、自分では思ってないことも出てくるかもしれないし。例えば二十秒とかで紹介してみて、一番上手かった人がご褒美もらえるとか。LYRENを知らない人に五人のことを知ってもらうなら、自分で『こういう人です』って言うより、普段一緒にいるメンバーから紹介してもらった方が、その人らしさも出そう」


「準備もそんなにいらなそうだしね」

 佐伯さんも、うんうんと頷いて口をはさむ。

「最初に軽く試してみるなら、ちょうどいいと思うよ。これなら会社の誰も反対しないだろうし」

 

「じゃあこれかなり採用候補?」

 凪が嬉しそうに聞くと、麗央が、

【④メンバーがメンバーを紹介する】

 と書き、その横に(実現性高そう)をつけ加える。


「これは反対する理由も何もなさそうだし、上に確認してOKが出たらすぐに撮ってみようか。もちろん他の案もすごくいいから、追々社内で確認しながら企画内容を詰めていこう」

佐伯さんが笑顔で凪にそう伝えると、「やった!」と凪が小さく拍手する。


「じゃあ誰が誰を紹介する?」

 優が早くも身を乗り出した。

「くじでいいんじゃない?」

 玲が答える。


「えー、俺は玲紹介したいから、くじじゃなくて挙手して答える感じにしようよ」

 優が大きなタレ目をさらに丸くし、唇を尖らせて玲の方を覗き込む。

 

「...くじがいいと思う」

「えーなんでよ玲!俺ならめっちゃいいところ言えるよ」

「絶対余計なことも言うだろ」

「言わないって」

「信用ない」

 二人のやり取りに凪がけらけら笑い、瑛が呆れたように息を吐く。誰か一人が喋れば別の誰かがすぐに返して、その横からまた違う声が重なる。


「そういえば、麗央さんは?」

 ふと気づいて、私は麗央を見る。さっきから全員に順番に話を振っていたせいで、肝心の本人だけまだ自分の案を出していない。


「みんなに聞いてばっかりで、麗央さんがまだ意見を出してないって思って!」

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